西サハラ友の会通信 No. 7

ポリサリオ戦線党大会の様子(岩波書店『世界』2020年8月号より)

*今号より、オンラインセミナーのアンケートで配信を希望された方々にも送っています。購読者は約80人になりました。

皆様、
 新型コロナの第2波が心配なこの頃です。モロッコでも7月初めより第2波が起きていて、その勢いは第1波をしのいでいます。まず北部のタンジェを7月13日(月)に、カサブランカ、マラケシュ、メクネスなど主要都市を7月26日(日)に再びロックダウンしました。6月終わりに一度緩めたことが第2波を招いたようです。チンドゥーフの難民キャンプでも感染が始まり、初めての死者が出ました。モロッコの感染者累計は25,051人、死者367人(8月2日時点)となっています(WHOによる)。

【活動】

  1. 難民キャンプでスポーツセンター建設:日本でも募金を開始
     西サハラ友の会では、長距離陸上選手アメイダーン・サーレフさんの呼びかけに応え、難民キャンプでのスポーツセンター建設プロジェクトへの募金を始めました。みなさまからのご支援をお待ちしています。詳しくはホームページをご覧下さい。
     スポーツセンターは難民キャンプでの健康問題解決のためであり、また、若者たちに世界に羽ばたくチャンスを与えるためです。モロッコの選手として国際大会に出場することを強いられ、アイデンティティとの相克に悩み苦しんだ経験をもつアメイダーンさんは、西サハラの若者に西サハラの選手として堂々とプレーすることのできる未来を与えたいと思っています。アメイダーンさんについての感動のドキュメンタリーも現在日本語字幕を制作中。一部友の会ホームページで見ることができますので、ご覧下さい。
    https://fwsjp.org/archives/5715
  2. 初めての西サハラ・オンラインセミナーを開催
     7月11日(土)日本時間15:00-17:00、「西サハラ・抵抗のかたち Action & Music」と題するオンラインセミナーを開催した。申込者は150人、実際の参加者は約110人。30分予定をオーバーして終了した。セミナーの要約を西サハラ友の会ホームページに掲載している。
    https://fwsjp.org/archives/5619
  3. 「地図がおかしい」修正の要請
     西サハラがモロッコ領になっているような地図はたくさんあり、「国と州とのインタラクティブな世界地図(https://24timezones.com/sekai-chizu)」もそのひとつ。砂の壁を境に西側はモロッコ領、東側は別な国のように描かれている。地域名リストには西サハラがあるにも関わらず、地図では表されていない。日本語版もあるので、7月5日に修正要請を送った。これまで返答はない。

【記事等】

  1. 岩崎有一「西サハラ 砂とマグロと解放闘争」『世界』2020年8月号、pp. 206-215。
  2. 新郷啓子氏インタビュー『ふぇみん婦人民主新聞』2020年6月25日号「モロッコによる支配と収奪。日本も関わりがある アフリカ最後の植民地、西サハラを知っていますか?」
    https://fwsjp.org/archives/5604

【占領地情勢】

  1. 西サハラ占領地の新型コロナ感染状況
     MINURSO(国連西サハラ住民投票ミッション)は7月半ばまで西サハラにおける新型コロナ感染状況をアップデートしていたが、それ以後、ウェブサイトからも関連情報を削除している。理由は不明。7月14日の時点では、それまでに西サハラ(砂の壁の西側:WoB)で766人の感染が確認され、その内452人は回復したと書かれていた。砂の壁の東側(EoB)を入れると合計794人の感染が報告され、その内467人が回復。2人が死亡したという。
     西サハラでは7月初めに急激な感染拡大が起きた(モロッコ全体では第2波にあたる)。理由は、3月20日に始まったモロッコ全土のロックダウンが6月25日から緩和され、西サハラにいた多くのモロッコ人移民がモロッコに一時帰省した後、西サハラに戻ってきたことにあるようだ。その大量移動がきっかけとなって西サハラに感染が拡大したと疑われる。(ノルウェー西サハラ支援委員会のHP)
    https://vest-sahara.no/en/news/follow-the-latest-news-on-corona-in-western-sahara
  2. モロッコの国家港湾局、ラムヒリズの漁港建設プロジェクトを再開
     3月28日、国家港湾局は西サハラのラムヒリズの漁港建設プロジェクトに関する4件の入札募集を発表した。2億ディルハム(約22億3,000万円)のプロジェクトだ。ラムヒリズはモーリタニアとの国境から100kmに位置する。2017年には400mの防波堤が完成したが、ダーフラ漁港の開発が優先されて、ラムヒリズは後回しになった。しかし、モハメド6世が農水大臣に命じて南部の開発が進むことになった。(Maghreb Confidentiel, 2 April 2020)
  3. 政治囚アル=フセイン・アァマドール(フセイン・ブラーヒーム)がハンガーストライキ
     7月22日、政治囚のアル=フセイン・アァマドール(フセイン・ブラーヒーム)(注:モロッコの発音ではアル=フセインはラフシーン)は、マレケシュの控訴裁判所から戻ると懲罰房に入れられた。そのためハンガーストライキに入った。アァマドールは、事前に公判を知らされず、弁護士も家族も来れなかったため、審理の延期を求め、審理への参加を拒否した。すると刑務所に戻るなり、換気扇もない箱のような小さな懲罰房に入れられた。次の公判は9月23日に予定されている。そもそも、独立を主張する学生グループの指導的立場にあった彼は2019年1月19日にスペインのランザロテに船で到着し、亡命を申請した。しかし、スペインは申請を却下し、モロッコに送還してしまった。2019年11月26日に一審で12年の刑を言い渡されていた。(Por un Sahara Libre.org, 26 July 2020)
    https://porunsaharalibre.org/2020/07/26/saharawi-political-prisoner-lahoucine-amaadour-husein-brahim-in-isolation-goes-on-hunger-strike/?lang=en
  4. 殺された青年の追悼の会を妨害
     10年前に殺された青年サイード・ダンバールの追悼の会がエル=アイウン市内の自宅で行われた際、参加しようと集まった人たちをモロッコ警察が妨害した。ダンバールは2010年12月22日(グデイム・イジーク抵抗キャンプ事件の直後)、サイバーカフェを出たところで警察の銃弾を浴び、翌日家族は彼の死亡を告げられた。銃弾は眉間を貫通していたという。警察官のジャマール・タケルムシュトが殺人罪で15年の刑を言い渡されたが、警察の組織的関与は認められなかった。ダンバールの家族は殺害事件以来、夜襲などさまざまな嫌がらせを受けている。(Por un Sahara Libre, 23 July 2020)
    https://porunsaharalibre.org/2020/07/23/said-dambars-family-house-under-police-siege/?lang=en
  5. 政治囚の釈放
     政治囚サーレク・ブーソーラ(Salek Bousola)、ルギービー・サイィド・エル=ヤジード( Rguibi Sidi el Yazid)、ムハンマド・アリー・エル=カウリー( Mohamed Ali Elkaouri)、アッガーイ・ドゥウィーヒー(Aggay Douihi)、エル=ハーフィズ・エッリヤーヒー(Elhafed Errayahi)が7月20日にモロッコ各地の刑務所から釈放された。

【難民キャンプ情勢】

  1. 最初の死者
     7月27日の報道によると、チンドゥーフの難民キャンプでは4名の陽性者が出て、1名が死亡したとのことである。難民キャンプには17万人が暮らすが、人々の健康状態は悪く、医療インフラも整っていない。女性の52%は貧血症とされ、成人の11%が糖尿病を患い、6%がセリアック病(グルテン関連免疫疾患)とされる。(Por un Sahara Libre.org, 27 July 2020)
    https://porunsaharalibre.org/2020/07/27/first-deceased-by-coronavirus-in-the-saharawi-camps/?lang=en

【国際情勢】

  1. 国際司法裁判所の勧告的意見:インド洋チャゴス諸島の分離は不法
    (注:最近のニュースではないのですが、これに言及する論考を最近見つけ、重大な意味があると考え、ここでお知らせすることにしました。)
     2019年2月25日、国際司法裁判所は、モーリシャス独立の際チャゴス諸島(Chagos Archipelago)が分離されイギリス領として残ったプロセスは国際法で定めた非植民地化の原則に沿って行われなかった、したがって不法だとの勧告的意見を発表した。モーリシャスはマダガスカルに近い国。モルジブの南にあるチャゴス諸島はそこから2,000km以上離れている。ここが問題になる背景には、チャゴス諸島の中の最大の島であるディエゴガルシア島(Diego Garcia)にあるアメリカ軍施設がある。1960年代半ば、イギリスはアメリカがディエゴガルシア島に軍通信施設を置きたい意向をもっていることを受けて、アメリカに島を貸し出すため、1965年、モーリシャスからチャゴス諸島を含む島嶼群を切り離し、イギリス領インド洋地域(BOIT: British Indian Ocean Territory)として統治を継続した。その際、モーリシャス島民の代表と(だけ)協議し、イギリスはモーリシャスに300万ポンドのお金を渡した。モーリシャスは1968年に独立。イギリスは1967年からチャゴス諸島の住民をモーリシャスに移住させる政策を実施し、その後も島民の追放政策を続けた。現在、ディエゴガルシア島は無人となって米軍施設のみがあり、イギリスは立ち入りを禁止して、島民は戻れなくなっている。(要するに、米軍のインド洋基地を確保するため、英米が計って、チャゴス諸島を切り離して英海外州とし、島民を全員追い出した、ということ。)
     国際司法裁判所の勧告的意見は、国連総会の付託によるもので、その重要性は、それが1965年時点で、自決権はモーリシャス、チャゴス諸島、セイシェル(その後独立)を含むイギリス領インド洋諸島の住民全体に属する権利であって、非植民地化に際してイギリスはそれを適切に行使させなかったと判断したところにある。モーリシャスだけ分離して独立させるというイギリスの政策は、非自治地域の領土的保全の原則を尊重していない、としたのである。したがって、この判断の帰結として、イギリスはその施政国としての責任を今なお全うしておらず、チャゴス諸島を速やかに非植民地化しなければならないとの意見を述べた。
     イギリスはこれに反発している。
     この勧告的意見の西サハラ問題に対する意味は、2019年になってもなお、不適切な非植民地化によって生まれた状態は不法状態が継続していると判断されること、その不法状態の解消に施政国(=スペイン)は責任をもち続けていること、自決権は非自治地域全住民に属する権利であり、自決権行使なき帰属の変更はありえないこと、を確認したところにある。
     したがって、スペインの責任は放棄されえぬものであり、マドリッド協定は不法であり、適切な自決権行使(住民投票)なきモロッコへの併合はありえない、ということになる。
    https://www.icj-cij.org/en/case/169
    https://nationalismstudies.org/lessons-to-be-learned-from-the-deadlock-of-decolonization-of-western-sahara/
  2. ケーラー氏の後継、決まらず
     国連事務総長の特使としてモロッコとポリサリオ戦線の協議の調整にあたっていた元ドイツ大統領、ホルスト・ケーラー氏の昨年5月の辞任から1年以上が過ぎた。今年の2月、後継としてスロバキアの元外相、ミロスラヴ・ラチャーク氏が候補にあがったが、2006年にモンテネグロ独立の是非を問う国民投票でEUの選挙監視員を務めた経歴をモロッコが嫌って、実現しなかった。(Africa Intelligence, 5 March 2020)
    https://www.africaintelligence.fr/mc-/hommes-de-pouvoir/2020/03/05/sous-pression-de-rabat-guterres-cherche-un-successeur-a-k%C3%B6hler,108396765-brc?CXT=PUB
  3. EUCOCO、西サハラセミナーを開催
     6月24日(水)、サハラーウィ人民支援連帯欧州会議(EUCOCO: European Conference of Support and Solidarity with the Sahrawi People)という支援団体が「西サハラ紛争の解決:ホルスト・ケーラー国連特使辞任から1年」と題するオンライン会議を開催した。ピエール・ギャランEUCOCO議長、ウビー・ブシャラーヤー・アル=バシールサハラアラブ民主共和国欧州代表、サイード・アル=アイヤーシーアルジェリアサハラーウィ人民連帯委員会委員長、ジル・ドーバーポリサリオ戦線法律顧問、元国連事務総長西サハラ特使のフランチェスコ・バスタリ氏、欧州議会内グループ「サハラーウィ人民に平和を」代表のヨアキム・シュスター氏等が参加。会議の最終宣言は、新たな国連特使の速やかな任命を求め、モロッコによる国際義務違反を批判し、スペインの非植民地化に対する責任を求め、欧州委員会にEU司法裁判所裁定に従うよう求めた。(Algeria Press Service, 25 June 2020)
    http://www.aps.dz/en/world/34692-symposium-on-western-sahara-call-for-resumption-of-un-process
    https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2020/06/27/26486.html

以上。
いよいよ暑くなって来ました。と思いきや、早速台風到来となりそうですね。お気を付け下さい。(松野)