西サハラ友の会通信 No. 27

9月分のニュースをお届けします。スペインがモロッコの自治案支持に方針転換したことの余波が続いています。スペインとモロッコは関係を修復し、それはスペインに経済的利益をもたらしているようです。逆にアルジェリアとの関係は悪化の一途を辿っています。アルジェリアは豊富な天然ガスを武器にスペイン以外の欧州諸国との関係を深めており、モロッコはそれを快く思っていません。西サハラを支持するのかしないのかで、ペルーやケニヤが揺れ動きました。そんな中、アフリカ人権裁判所の判決は、西サハラの自決権を確認し、その民族解放闘争をアフリカ諸国は支援する責務があるとし、原則を示しました。

目次 No. 27

News!【アフリカ人権裁判所】
・西サハラの自決権確認、支援の責務

【西サハラ/ポリサリオ戦線】
・西サハラを通る「アフリカ・エコ・レース」の中止を要請
・サハラーウィ女性国民同盟、第三世界女性会議に出席
・RASD、議長会議に参加

【モロッコ】
・タンジェのシーメンス・ガメサ社、閉鎖
・「モロッコ経済が沈む中、国王はパリの輝く灯りが好き」
・パリの国王邸にモロッコ人青年が侵入
・モロッコのAU(再)加盟をめぐる買収を暴露
・ハサン皇太子、帝王教育開始
・リン鉱石公社(OCP)、GlobalFeedの株を買う
・モロッコとナイジェリア、西サハラを通るガスパイプラインのF/S(事業化可能性調査)に入る

【モーリタニア】
・国連特使のモーリタニア訪問
・モーリタニアの鉱山探索者、モロッコのドローンで殺害か?

【スペイン】
・アルジェリアのガス価格が上昇
・アルジェリアからのガス供給量は据え置き
・アルジェリアからの書類なし移民、急増
・スペイン情報局トップ、モロッコ訪問が暴露される
・サンチェス首相の国連総会演説
・カナリア諸島での西サハラ会議
・アルジェリアへの輸出71%減
・モロッコとの関係改善の兆し
・メリリャの税関再開、2023年1月

【フランス】
・マクロン大統領、スペインとのガスパイプラインに否定的
・仏モロッコ財団、政府に自治案支持を要請
・国務院、西サハラからの農産物輸入に関する見解

【イスラエル】
・モロッコへの特使、召喚される

【中南米】
・ペルー、RASDとの外交関係を再確認
・News! ペルーの大統領が弾劾される
・グアテマラ、ダーフラに領事館開設

【国連・国際社会】
・新MINURSO団長にホンジュラスの女性司令官
・南スーダン、RASDとの関係を再開
・ケニヤ大統領・外相の西サハラをめぐる騒動
・ケニヤ大統領、RASD承認継続を確認
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News!【アフリカ人権裁判所】
西サハラの自決権確認、支援の責務
9月22日、アフリカ人権及び人民の権利に関する裁判所(通称アフリカ人権裁判所)が、西サハラ人民の自決権を擁護する判決を下した。判決は、2018年にガーナの人民会議党(People’s Convention Party)の党首であるベルナード・アンバタアイェラ・モルナ(Bernard Anbataayela Mornah)がアフリカ8ヶ国を同裁判所に提訴した事件について下されたもの。8ヶ国はベニン、ブルキナファソ、コートジボワール、ガーナ、マリ、マラウィ、タンザニア、チュニジア。提訴の理由は、モロッコが2017年にAUに加盟した際、西サハラ人民の自決権を無視して加盟に賛成したことがアフリカ人権憲章違反だというもの。なぜ8ヶ国かというと、AU加盟国は当時38ヶ国だったが、アフリカ人権裁判所が新たに設けた「個人や団体が国を相手取って提訴すること」を可能にする条項を批准していた国が2017年時点でこの8ヶ国であったところからである。
判決内容は、西サハラ人民に対する人権侵害の当事者はモロッコであり、8ヶ国にモロッコのAU加盟の責任をとらせることはできないが、西サハラ人民はモロッコの占領下にあり、民族解放を求めて闘っているのであって、アフリカ憲章20条にもとづき、他の加盟国から支援を受ける権利があるとした。また、判決はAU加盟国は西サハラ人民の権利に反する行為に及んではならないとの警告も発した。(判決文、Vanguard, 25 Sep. 2022)
https://www.vanguardngr.com/2022/09/african-court-upholds-right-to-self-determination-of-saharawi-people/

判決文(Application Number 028/2018)
https://www.african-court.org/cpmt/storage/app/uploads/public/632/e0f/3ad/632e0f3ad580e748464681.pdf

【補足】この判決の報道は一般的に西サハラの自決権を確認し、アフリカ諸国はそれを支援する責務があるとしている点を強調していますが、訴えられた8ヶ国はアフリカ人権憲章に違反したとまでは言えないという判断なので、裁判そのものは敗訴となります。この点をとらえて、ポリサリオ戦線の敗北だとコメントするメディアもありますが、それは少数派のようです。なお、アフリカ人権憲章とは、1981年にアフリカ統一機構(OAU)が採択した「人及び人民の権利い関するアフリカ憲章」のことです。

【西サハラ/ポリサリオ戦線】
西サハラを通る「アフリカ・エコ・レース」の中止を要請
モナコからモロッコ、西サハラ、モーリタニアを通りセネガルのダカールに至る自動車バイクのレース「アフリカ・エコ・レース」が10月に開催されることに対し、ポリサリオ戦線は9月8日、西サハラはモロッコ軍とサハラーウィ民族解放軍が軍事的に対立している戦闘地であり、そこでの活動を行わないよう呼びかける声明を発表した。(Sahara Press Service, 8 Sep. 2022)
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/09/08/41476.html

サハラーウィ女性国民同盟、第三世界女性会議に出席
9月4-9日、チュニスで開催された第三世界草の根女性会議(Third World Conference of Grassroots Women)にサハラーウィ女性国民同盟(National Union of Sahrawi Women: UNMS)が参加した。参加したのは同盟事務局の広報担当アル=アジュラ・シェイフ・アラー(Al-Ajla Sheikh Alla)で、初日は「1月14日広場」での行進で始まった。この会議は過去ベネズエラ(2011年)とネパール(2016年)で開催されたことがある。(Sahara Press Service, 5 Sep. 2022)
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/09/05/41439.html

RASD、議長会議に参加
サハラーウィ共和国の代表団は、ジョハネスバーグで9月1日・2日に開催された第11回国会・地域議会議長会議(Conference of Speakers of National and Regional Parliaments)に出席した。モロッコの国会議長も参加していた。(Kamal Fadel tweet, 3 Sep. 2022)
https://twitter.com/Alfudail/status/1565874326817370112?cxt=HBwWgMDTzeyZjbsrAAAA&cn=ZmxleGlibGVfcmVjcw%3D%3D&refsrc=email

【モロッコ】
タンジェのシーメンス・ガメサ社、閉鎖
風力発電タービンで世界的に知られるシーメンス・ガメサ社のタンジェの工場が閉鎖となる。2017年10月に開所し、37,500平米の土地に11億ディルハム(約140億円)を投資した工場で、500人以上を雇用していた。閉所の理由は、競争の激化に加え原料や輸送費の高騰に伴う価格圧力で財政的に難しくなったとのこと。ただ、カサブランカにおいている地域本部やその他の現場の活動は維持する。(Maroc Hebdo, 16 Sep. 2022)
https://www.maroc-hebdo.press.ma/tanger-employant-500-personnes-siemens-gamesa-ferme-usine

「モロッコ経済が沈む中、国王はパリの輝く灯りが好き」
これはイスラエルの有力紙ハーレツが掲げた記事のタイトルである。同紙が書いているのは次のようなことだ。
ムハンマド6世は病気がちだ。2年前に心臓外科手術を受け、今年はコロナに感染した。最近はモロッコよりパリで多くの時間を過ごしており、電話やズームで首相たちに指示を出している。2ヶ月前、パリの街角でグラス片手に千鳥足になっている国王の動画が拡散された。その前には、モロッコ出身のドイツのズイアイテル(Zuaiter)3人兄弟のレスリング選手が、宮殿に招待され、国王と写真を撮った。それだけなら問題にはならなかっただろうが、彼らは国王との関係を使って土地を安く買い、ビジネスライセンスを手に入れた。ムハンマド6世はエリザベス女王の葬儀に出ず、息子を使わした。側近によると健康問題があったらしい。国王に劣らず病んでいるのがモロッコ経済だ。世銀は今年のモロッコの経済成長を3.2%から1.5%に下方修正した。観光業も打撃を受けた。ホテルの客室稼働率は50%以下だとみられている。こうした状況を背景に、ファティーマ=ザフラー・アンムール(Fatim-Zahra Ammmor)観光大臣が休暇をモロッコではなくザンジバルで過ごしたことに批判を浴びたのも無理からぬことだ。モロッコの失業率は12%となっているが、若者に限れば30%近い。厳しい干ばつで農村の人びとが都会に流れ込んだ。農業はモロッコのGDPの14%で人口の40%を雇用している。農村地域の仕事の15万件が大都市に吸収された。
国王は昨年、おそらくモロッコ最大の富豪、アジーズ・アハヌーシュ氏を首相に任命した。彼は推定15億ドルの資産と50の会社をもつ。首相になって公的部門の最低賃金を10%上げ、2年で月額320ドルにすると決定したが、インフレ率が8%に上がり、賃金上昇を実質的に帳消しにした。首相の約束も実現せず、国民の間には不満と怒りがたまっている。すでに首相辞任要求まで出ている。
一方で、イスラエルとの関係はとくに軍事面で活発化した。昨年11月、ガンツ国防相(当時)は最初の協力協定を締結。今年7月にはアビブ・コチャビ参謀総長がモロッコを訪問し、モロッコの国軍司令官がイスラエルを訪問した。モロッコはイスラエルのドローン「ヘロン」を買い、ポリサリオ戦線との戦争に使っている。
経済関係はまだそれほど伸びていない。昨年は9,000万ドルだったがそれを5億ドルに増やしたいと両国は考えている。他方、アラブ首長国連邦との貿易は今年7ヶ月間で14億ドルに達した。石油・ガスを除けばエジプトとの貿易額3億ドルに近い。モロッコとの関係正常化の果実を享受するのはまだ先になりそうだ。(Haaretz, 22 Sep. 2022)
https://www.haaretz.com/middle-east-news/2022-09-22/ty-article/.premium/moroccos-economy-is-sinking-but-its-king-prefers-the-bright-lights-of-paris/00000183-64e8-dd85-a9f3-66fe7bd20000

パリの国王邸にモロッコ人青年が侵入
9月22日か23日の夜、パリ第7区エミール・デシャネル地区、エッフェル塔近くのムハンマド6世の邸宅にモロッコ人移民の青年が強盗目的で侵入したもようだ。邸宅はサウジアラビアの王子で国防副大臣の所有物だったが、ムハンマド6世が8,000万ユーロで購入した。(Afrique sur7, 23 Sep. 2022)
https://www.afrique-sur7.ci/488674-roi-du-maroc-france-residence

モロッコのAU(再)加盟をめぐる買収を暴露
アルジェリアのメディア「Jeune Indepéndant」が、モロッコ政府のアフリカ諸国に対する買収の事例を暴露する記事を掲載した。概要は以下の通り。
ソーシャルメディアに漏洩した在ダカール(セネガル)モロッコ大使館の公文書によると、元セネガル外相マンクール・ンディアイェ(Mankeur Ndiaye)は毎年同大使館を訪れ、モロッコ政府への協力金としてお金を受け取っていた。文書は2014年9月9日にモロッコのセネガル大使ターリブ・ベッラーダ(Taleb Berrada)がブリタ外相に宛てて書いたもので、その内容は、セネガル外務省が推薦する3人のメッカ巡礼の経費にあてるため、ブリタ外相個人の名前で140,784ディルハム(約12,500ユーロ)をセネガル外相に直接手渡したというもの。
Chris Colemanという偽名を使うフランスのハッカーは、モロッコの電子メールをハッキングし、モロッコがAUに加盟するために各国外交官に金を渡していたことを暴露した。あるメールは、当時のモロッコ外務省アフリカ局長のモハー・ワリー・タグマ(Moha Ouali Tagma)が2014年5月5日、外相にあてて書いたもので、アジス・アババで開催される「次回アフリカ連合サミットにかかる準備の提案」と題されており、「”友人”1人につき5,000ユーロの個別の封筒」を渡すことを提案している。手紙には特定の国々の代表団を代表する”友人”のリストが添えられている。また、2014年6月4日付の電子メールで、モハ・ワリ・タグマはAU委員会の委員長の首席補佐官をしていたブルキナファソのジャン・バプティスト・ナタマ(Jean-Baptiste Natama)にモロッコ政府と協力し続けるよう2,500ドルを渡すオファーをしている。こうしてモロッコはAUの議席を汚職によって獲得し、AUが西サハラの自決権行使の住民投票で役割を果たさないよう妨害をしている。(Jeune Indépendan, 20 Sep. 2022)
https://www.jeune-independant.net/nouveau-scandale-du-makhzen-des-pots-de-vin-colossaux-pour-rejoindre-lua/

ハサン皇太子、帝王教育開始
5月8日に19才になったムハンマド6世の王子、ハサン皇太子(Moulay Hassan)は今や宮殿に自分のオフィスをもつ。皇太子はまだ大学生で、10月にはムハンマド6世工科大学の政治経済社会科学部での勉学に復帰する。王位継承の日まで皇太子は儀礼的な役割を果たすのだが、これまで2度の閣僚会議に出席したこともある。シラク元大統領の葬儀には肺炎になった父・国王の代理として参列した。より政治的なところでは、2020年12月のジャレド・クシュナー氏(トランプ元大統領の娘婿で元大統領上級顧問)との交渉にも参加していた。(Africa Intelligence, 22 Sep. 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2022/09/22/le-prince-heritier-moulay-hassan-plonge-dans-le-grand-bain-du-cabinet-royal,109824174-gra

リン鉱石公社(OCP)、GlobalFeedの株を買う
株の95%を王室が所有するモロッコリン鉱石公社(OCN)は、スペインの肥料・飼料会社フェルティナグロ・バイオテックグループ(Fertinagro Biotech group)に属する飼料製造会社グローバルフィード社(GlobalFeed)の株の50%を購入した。フェルティナグロ社とOCNの提携は以前からあり、2019年に濃縮肥料を生産する合弁会社をモロッコに設立したことがある。今回の株買収は、サンチェス政権がモロッコの西サハラ自治案を支持したことの見返りとして、モロッコが了承したものと考えられる。(El Confidencial, 28 Sep. 2022)
https://www.elconfidencial.com/empresas/2022-09-28/mayor-empresa-publica-marruecos-expansion-espana_3497382/

モロッコとナイジェリア、西サハラを通るガスパイプラインのF/S(事業化可能性調査)に入る
ベルギーに拠点を置くNGO「西サハラ資源ウォッチ」は、9月28日、モロッコとナイジェリアが西サハラを通るガスパイプライン建設に合意したことを明らかにした。それによると、ナイジェリア石油公社は9月15日、ナイジェリア・モロッコガスパイプラインのフィージビリティ・スタディー(事業化可能性調査)について、モロッコの国営炭化水素鉱山事務所(National Office of Hydrocarbons and Mines: ONHYM)と西アフリカ経済共同体(ECOWAS)とラバトで覚書に調印した。このパイプラインの終着点は西サハラのダーフラになるもようである。
構想されているパイプラインは全長5,300km、ナイジェリアのブラス島からダーフラ沖に至り、そこから陸に上がって1,700km先のモロッコ北部のマグレブ・ヨーロッパガスパイプライン(Gazoduc Maghreb Europe: GME)に接続する。全長7,000kmを越える。GMEはアルジェリアのガスをモロッコ経由でスペインに送るパイプラインとして使われていたが、2021年11月以来、アルジェリアがガス送付を停止している。5,300kmに及ぶパイプラインはECOWAS加盟国にもガスを供給し、さらにヨーロッパにも供給することになるだろう。フィージビリティ・スタディーはサウジアラビアに拠点を置くイスラム開発銀行とOPECの国際開発基金が資金を出し、オーストラリアのウォーリー社(Worly Ltd.)が請け負う。(Western Sahara Resource Watch, 28 Sep. 2022)
https://wsrw.org/en/news/gas-pipeline-planned-to-cross-occupied-land

【モーリタニア】
国連特使のモーリタニア訪問
国連事務総長の西サハラ担当特使スタファン・デ・ミストゥラ氏はモロッコ、アルジェリア、難民キャンプの後、モーリタニアを訪れた。大統領との会談では紛争解決に果たすべきモーリタニアの役割について議論された。モーリタニアはサハラ・アラブ民主共和国を承認しているが、紛争に関しては「中立」である。ポリサリオ戦線はモーリタニアに代表部をおいていないが、モーリタニアには大きなサハラーウィコミュニティがあり、政府は多くの便宜を図っている。(Swissinfo, 12 Sep. 2022)
https://www.swissinfo.ch/spa/s%C3%A1hara-occidental-onu_de-mistura-en-nuakchot-para-buscar-una-salida-al-conflicto-del-s%C3%A1hara/47893912

モーリタニアの鉱山探索者、モロッコのドローンで殺害か?
モーリタニアの治安当局筋によると、西サハラの最南端地区で、おそらくモロッコ軍のドローン攻撃とみられるものでモーリタニア人の金採掘者が少なくとも2名、死亡した。さらに1人が負傷したという。今年1月3日には西サハラの同じ地区で3人の金採掘者が空からの爆撃で死亡し、4人が負傷するという事件があった。11月5日も、ロケット砲の爆弾の破片で2人の金採掘者が軽い怪我を負う事件もあった。いずれも、いわゆる緩衝地帯*でおきたものだ。モーリタニアの北部では数千人のモーリタニア人が金の採取を行っており、政府は警告を出しているが、西サハラ領に入ってしまう者がいる。(EFE, 12 Sep. 2022)
https://www.swissinfo.ch/spa/mauritania-sah%C3%A1ra-occidental_mueren-dos-mineros-mauritanos-en-un-bombardeo-a%C3%A9reo-en-el-s%C3%A1hara-occidental/47895102

*緩衝地帯 ポリサリオ戦線とモロッコが1991年の停戦協定に追加的に合意した1997年の軍事協定第1号において定められた軍事行動をしない西サハラ領内の地帯。砂の壁から5kmの範囲を指す。以下の[速報]西サハラ、停戦崩壊か?(2020年11月13日)を参照。https://fwsjp.org/archives/5844

【スペイン】
アルジェリアのガス価格が上昇
スペインでアルジェリアのガスを販売しているナトゥルギ(Naturgy)社は、アルジェリアのソナトラック(Sonatrach)社との交渉において、昨年10月・11月期に遡って、フランス・エンジー(Engie)社、イタリアENI社が購入しているアルジェリア・ガスの価格と同じ価格を支払うということに合意した。ただ、ガス市場の将来について両者は異なる展望をもっており、契約期間をいつまでにするかで合意に達していない。(El Confidencial, 12 Sep. 2022)
https://www.elconfidencial.com/empresas/2022-09-12/gasistas-de-espana-argelia-subida-precios-plazos_3488937/

アルジェリアからのガス供給量は据え置き
ナトゥルギ社とソナトラック社の交渉は9月28日(水)に終了した。ソナトラックのタウフィーク・ハッカール(Toufik Hakkar)社長は、新価格と追加供給量は秘密だが、スペインに対してはメドガス(Medgaz)パイプラインによる供給キャパシティをフルに使っており、それでスペインとの契約分は満たしているので、スペインへの供給量を増やす予定はない、そのためには新たなパイプランへの投資が必要だと述べた。
アルジェリアは世界で10番目の天然ガス生産国で、ロシアに代わる主要なガス供給国となっている。イタリアはアルジェリアから25億立方メートルの追加的供給を今年末までに受けることになっている。(El Periodico de la Energía, 29 Sep. 2022)
https://elperiodicodelaenergia.com/sonatrach-y-naturgy-a-punto-de-firmar-un-nuevo-acuerdo-de-precios-mas-caros-de-suministro-de-gas-a-espana/
アルジェリアからの書類なし移民、急増
この金曜から日曜だけで(9月9-11日)アルジェリアから書類をもたずスペインに入国した者が9,927人いたが、アルジェリアが帰還者受入れを拒否しているため帰国させることができない。理由としては、天候が良く、波も小さいというのが考えられるが、モロッコに政治的意図がないとも言い切れない。(El Confidencial, 13 Sep. 2022)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-09-13/record-inmigracion-irregular-argelia_3489343/

スペイン情報局トップ、モロッコ訪問が暴露される
通常、スペインの国家情報センター(CNI)要人の各国訪問はメディアには公表されないが、今のセンター長エスペランサ・カステレイロ氏(Esperanza Casteleiro)が9月15日(木)にモロッコを訪問した際、モロッコ政府は彼女の写真と声明までも公表した。モロッコ側の情報局トップはアブドゥッラティーフ・ハンムーシー氏(Abdellatif Hammouchi)であるが、彼は秘密警察の長でもある。モロッコ史上彼ほど権力をもった警察トップはおらず、その力は内相以上といわれる。ハンムーシー氏の協力者が会議の写真をモロッコ政府と近いメディアからスペインの記者たちに送ったようだ。ハンムーシー氏は6月16・17日、米国からの帰途でマドリッドに寄り、治安・情報関係者と会談した。スペインの防衛省はそれを否定しているが。その後、彼はコスタ・デ・ソルに行って家族との夏休みを過ごした。ハンムーシー氏はモロッコにおけるイスラエル製スパイ・ウェアー、ペガサスの導入の立役者だとみなされている。7月22日、Mediapartというフランスの新聞が「ペガサス・スキャンダルの中心にアブドゥッラティーフ・ハンムーシーあり」との見出しを掲げ、Le Point誌は、「フランスを困らせるモロッコのスパイ、アブドゥッラティーフ・ハンムーシー」と表紙に書いた。カステレイロ氏との写真を公表した思惑は、ペガサス・スキャンダルにも関わらず、彼がまだ欧州の情報界にとって価値があり、評価されている相手だということを知らしめたかったのではないかというのが、情報界に詳しい筋の分析だ。ハンムーシー氏は2014年2月20日、フランスの司法警察が2件の拷問の訴えを調べていた予審判事のところに連れて行こうとして失敗したことがあった。それ以来、彼はフランスは行っていない。スペインへはペガサス・スキャンダルが発覚する前の2019年9月の訪問が最後で、その時はスペイン内相の招待で勲章をもらうためだった。(El Confidencial, 16 Sep. 2022、Ignacio Cembrero筆)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-09-16/marruecos-rehabilitar-artifice-pegasus-exhibre-reunion-directora-cni_3491425/

サンチェス首相の国連総会演説
サンチェス首相が国連総会で演説するのは今回で4回目になる。2018年の最初の演説では、西サハラの自決権に触れた。しかし、それ以後首相の演説から西サハラの自決権への言及は消えた。その代わり、この紛争の解決における国連の中心性を強調するようになった。しかし、安保理の西サハラについての最新の決議、昨年10月の2602号は、自決権に言及している。そして自治案については歓迎すると述べているだけだ。(Publico, 19 Sep. 2022)
https://www.publico.es/politica/libre-determinacion-sahara-derecho-menciono-sanchez-onu-2018-elimino-despues.html

カナリア諸島での西サハラ会議
ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ元首相、彼の政権時代の国防相ホセ・ボノ、カナリア諸島の社会労働党(PSOE)議員、元法相フアン・フェルナンド・ロペス・アギラルが、今週木・金に、カナリア諸島ラス・パルマスで「サハラーウィ平和運動(Saharawi Movement for Peace: MSP」が開く会議のメインスピーカーたちである。MSPは、今年6月7日にエル・パイス紙が1面で報じた国家情報センター(CNI)の報告書でモロッコの情報局の隠れみのとされている団体で、その代表はハッジュ・アフマド(Hach Ahmed)である。他にもファーデル・ブレイカー(Fadel Breica)がいるが、彼の唯一の収入源はモロッコの情報局、DGEDである。DGEDの長官ヤーシーン・マンスーリー(Yassin Mansouri)はムハンマド6世国王の学校時代の友達である。MSPはDGEDとの関係を否定している。彼らはモロッコの自治案を推すために参加している。3人のPSOEの重鎮は長い間モロッコを擁護する役割を果たしてきた。サパテロは2015年、ダーフラでの投資促進のフォーラムに参加した。ロペス・アギラルは今回欧州議会の市民的自由・正義・内政委員会の委員長として演説をするが、欧州議会の左派議員たちは、西サハラはその委員会の管轄ではないとして不快感を示している。
とくに西サハラについての考えが激しく変化したのはボノである。2001年8月21日、カスティリャ・ラ・マンチャ州の首相であったボノは「モロッコ国王はスペイン国王を兄弟だと呼んでいるが、モロッコの北部はマフィアに支配されていて、人を騙してスペインに送り込んでいる民主主義でもなければ友好国と考えることもできないような国を兄弟と呼び合うべきではない。(モロッコは)もはや考古学博物館にもで入るべき君主国家であり、個人的権力が陰で支配する独裁国家なのである」などと批判していた。
会議の最後を飾るのはスペイン語のメディア「アタラヤル(Atalayar)」の社長であり西サハラへのモロッコの主権の擁護者、ハビエル・フェルナンデスである。彼は1月27日、モロッコの国営通信社(MAP)に「モロッコ国王のイニシアティブこそがもっとも実現性の高い解決案であり、スペインはその解決に参加すべく一歩を踏み出すべきである」と述べた。
このラス・パルマスの会議はサハラーウィ・カナリア・フォーラムが共催している。「平和運動」にしろ「カナリア・フォーラム」にしろ資金はあまりない。平和運動はウェブサイトすらもっていない。400席もあるホールを借り、モロッコや西サハラからも招いて数百人規模で会議を開く資金をもっているとは思えない。このためにモロッコのスペイン領事館は250人分のビザを速やかに出したという。
カナリア諸島の民族主義的政党はこぞってこの会議を批判している。ヌエバ・カナリアはカナリア諸島地方政府の与党である社会労働党と連携しているが、9月15日、この会議がモロッコの情報局の支援を受けており、モロッコによる西サハラの不法で暴力的な占領の戦略の一部であると述べた。野党のカナリア諸島連合は、「会議はサンチェス首相がもたらした災害を正当化しようという試みに他ならない」と批判した。(El Confidencial, 20 Sep. 2022: Ignacio Cembrero筆)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-09-20/zapatero-congreso-sahara-inteligencia-marroqui_3493292/

アルジェリアへの輸出71%減
今年6月と7月のアルジェリアへの輸出は合計9,520万ユーロで、昨年同時期の3億3,000万ユーロと比べて、71%減った。7月のアルジェリアへの輸出額は2,860万ユーロで、前年同月は1億5,560万ユーロだった。6月についてみると、今年は6,660万ユーロで昨年は1億7,400万ユーロ。一方、アルジェリアからのガス輸入は増えた。例えば、6月は5億1,460万ユーロ輸入しており、昨年同月比41.9%増となった。
理由は、サンチェス首相の3月18日の西サハラ問題での方針転換後、6月8日にアルジェリアがスペインとの友好条約を停止し、以来アルジェリアの業者が輸入を制限しているためだ。アルジェリア銀行金融協会は6月9日以降、すべてのスペインを起源・目的地とする商品・サービスのための口座引落し(direct debit)を凍結した。状況は3ヶ月経った今でも改善していない。アルジェリアのスペイン大使は6ヶ月間不在のままである。
今年に入ってのこれまでの状況をみれば、スペインのアルジェリアへの輸出額は9億4,020万ユーロで15.3%減、輸入額は46億6,680万ユーロで108.6%増。スペインのモロッコへの輸出は1月から7月までで69億5,580万ユーロで30%増、輸入は52億6,830万ユーロで22.1%増であった。
アルジェリアにしてみれば、スペインは、中国、フランス、ドイツの次に輸入額の多い国であり、輸出はイタリア、フランスに次いで3位となっている。一方、スペインにとって、総輸出額に占めるアルジェリアの割合は0.7%に過ぎず、21番目の輸出先である。アフリカではモロッコに次いで2位。また、スペインの総輸入額に占めるアルジェリアの割合は0.9%で25位となっている。以上のようにアルジェリアとの貿易量はさほど多くはないが、スペインはその燃料の92%をアルジェリアから輸入している(2020年)。また、スペインのアルジェリアへの投資もエネルギー部門に集中している。(The Objective, 21 Sep. 2022)
https://theobjective.com/economia/2022-09-21/espana-argelia-sanchez-sahara/

モロッコとの関係改善の兆し
9月21日(水)、アルバレス外相とモロッコのブリタ外相はニューヨークで開かれている国連総会のかたわら会談し、近々ハイレベル会議(RAN)を開催することで合意したと発表した。おそらく年末までには開催される見通しだ。RANは2015年以来開催されていない。両国はセウタとメリリャを通じた貿易を再開する。改善修復の理由は、まず、モロッコからの移民の波が過去4ヶ月間に約20%減っていることがあげられる。最新のスペイン内務省の数値では、昨年に比べて海を渡ってくる移民は19%減った一方で、陸(セウタとメリリャ)を通じた移民が40%増えた。全体としては16.5%低下した。モロッコ内務省のハーリド・ゼルワーリー移民国境監視局長によると、今年は欧州への40,600件の渡航未遂を捕らえ(2021年より11%増)、124個の違法な移民ブローカーネットワークを摘発した。また、夏に140万人が欧州からモロッコに帰省する波(「海峡横断作戦」と呼ばれている)も今年は13%減となり、2019年(コロナ前)のレベルに近づいた。セウタとメリリャのモロッコとの貿易再開も近い。さらに、モロッコはEUから増額された国境管理のための資金援助を受け取るだろう。EUはこれから国境管理のための5億ユーロの予算を承認することになる。これは前回の3億4,300万ユーロの50%増にあたる額だ。(Columna Digital, 23 Sep. 2022)
https://columnadigital.com/marruecos-y-espana-normalizan-relaciones-tras-contenerse-la-presion-migratoria-espana/

メリリャの税関再開、2023年1月
社会労働党(PSOE)メリリャ支部書記長のグロリア・ロハス氏は、メリリャの税関が2023年1月に再開されるという政府の発表を歓迎すると述べた。国民党(PP)メリリャ支部長のフアン・ホセ・インブロダ氏は、4年前に一方的に税関を閉じたのはモロッコ側であり、今回の再開で元にもどったにすぎない、そのためにスペインは大きな代償を払った、サンチェス首相はこれで何を得たのか説明して欲しい、と政府を批判した。(Europa Press, 24 Sep. 2022)
https://www.europapress.es/ceuta-y-melilla/noticia-psoe-melilla-celebra-reapertura-aduana-mientras-pp-afea-entregado-sahara-estar-2018-20220924172340.html

【フランス】
マクロン大統領、スペインとのガスパイプラインに否定的
9月初め、スペインとドイツは欧州への安定的ガス供給のためにフランスとスペインを結ぶパイプラン(MidCat project)の建設再開を提案したが、マクロン大統領はそれが問題を解決するとは思わないとして、拒否した。同プロジェクトにはすでに5億ユーロが投じられたが、欧州委員会が利益を生まないとして建設を中止していた。現存のバスク(フランス側)とナヴァッラ(スペイン側)を結ぶパイプラインの利用率は53%に留まっている。また、8月にガスを輸出したのはフランスからスペインに対してだった。新たなスペイン・フランスガスパイプラインが欧州への安定的ガス供給に役立つとは考えにくい。(RT: Russia Today, 5 Sep. 2022)
https://actualidad.rt.com/actualidad/440735-macron-rechazar-gasoducto-midcat-espana-

仏モロッコ財団、政府に自治案支持を要請
モロッコのメディアによると、ボルドーに本部をもつ「平和と持続的開発のためのフランス・モロッコ財団」は、政府に西サハラ問題で立場をはっきりさせるよう訴えた。同財団は、モロッコ南部諸州は8世紀のイドリシッド王朝時代(789-985)からモロッコなのであり、南部の諸部族がもつ北部との親族・部族関係がその明確な証拠である、などと主張している。さらに、モロッコはユダヤ人に悪名高き黄色い星(ダビデの星)を強制しなかった、ムハンマド5世はドゴールによって勲章(Companion of the Liberation)を与えられた等、フランスとモロッコの絆を強調した。(Les Infos, 28 Sep. 2022)
https://www.lesinfos.ma/article/1419273-Sahara-marocain-La-Fondation-France-Maroc-appelle-Paris-clarifier-sa-position.html

国務院、西サハラからの農産物輸入に関する見解
フランス国務院(Conseil d’Etat)は2022年6月に、西サハラからの農産物輸入についてはフランス政府の言い分を退け、EU裁判所の裁定を仰ぐべきだとの見解を出していた。EU裁判所は2016年と2018年、西サハラ産農水産品をモロッコ産と称することはEU法に反するとの判断を出している。現在、欧州委員会は控訴しているので、最終判断がまたれるところである。国務院の見解は、農民連合(Confédération paysanne)からの諮問を受けて出されたもの。9月22日、ポリサリオ戦線は国務院の発表を歓迎した。(Sahara Press Service, 22 Sep. 2022)
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/09/22/41715.html

【イスラエル】
モロッコへの特使、召喚される
イスラエルのモロッコへの特使であるダヴィド・ゴヴリン(David Govrin)(33才)がセクハラ疑惑等のため、9月6日(火)、本国に召還された。モロッコ人女性に対するセクハラ疑惑の他、イスラエルの在モロッコ外交事務所のセキュリティでももめ事があり、あるビジネスマンを大使館業務に深く関わらせすぎたという問題もあった。モロッコのイスラエル外交事務所は大使館に昇格される予定になっていたが、まだ実現していない。(New York Times, 6 Sep. 2022)
https://www.nytimes.com/2022/09/06/world/middleeast/israel-morocco-envoy-misconduct.html

【中南米】
ペルー、RASDとの外交関係を再確認
9月9日、ペルーのペドロ・カスティジョ大統領は、サハラ・アラブ民主共和国(RASD)の自決権を擁護すると発表した。一月ほど前の8月18日、外相がモロッコのナセル外相と電話会談した後、RASDの承認を撤回すると発言し、問題になっていた。9月9日に外相は辞任。(友の会通信 No. 25[9月20日]を参照)(EFE, 9 Sep. 2022)
https://www.efe.com/efe/america/politica/castillo-reafirma-la-defensa-de-r-saharaui-semanas-despues-romper-relacion/20000035-4880947

News! ペルーの大統領が弾劾される
その後12月8日、カスティジョ大統領は議会によって弾劾されてしまった。副大統領だったディナ・ボルアルテが大統領になった。ペルーでは初の女性大統領。(BBC, 8 Dec. 2022)
https://www.bbc.com/news/world-latin-america-63895505

グアテマラ、ダーフラに領事館開設
9月22日(木)、グアテマラのマリオ・ブカロ・フロレス外相とモロッコのブリタ外相はニューヨークで会談した後、共同声明で、グアテマラがダーフラに領事館を開設すると発表した。フロレス外相は「われわれにとって、主権、平和、領土保全は非常に重要だ。われわれは本件に関するモロッコの立場を支持する」と述べた。(Infobae, 23 Sep. 2022)
https://www.infobae.com/america/agencias/2022/09/23/guatemala-anuncia-que-abrira-un-consulado-en-el-sahara-occidental/

【国連・国際社会】
新MINURSO団長にホンジュラスの女性司令官
MINURSO(西サハラ住民投票派遣団)の新団長はホンジュラス軍資材部のディノラ・エリザベト(Dinora Elizabeth)中将に決まった。(Journal Tahalil, 4 Sep. 2022)
https://www.journaltahalil.com/sahara-une-femme-du-honduras-a-la-tete-de-la-minurso-a-mahbes/

南スーダン、RASDとの関係を再開
9月20日(火)、南スーダンとサハラ・アラブ民主共和国(RASD)は「最も高いレベルで」再開することに合意した。国連総会に来ていたフセイン・アブデルバキ・アクン(Husain Abdelbaki Akun)南スーダン副大統領とサーレクRASD外相が文書に署名した。(Europa Press, 20 Sep. 2022)
https://www.europapress.es/internacional/noticia-sudan-sur-republica-saharaui-acuerdan-restablecimiento-relaciones-diplomaticas-20220920210745.html

ケニヤ大統領・外相の西サハラをめぐる騒動
ケニヤのウィリアム・ルト大統領は、就任翌日の9月14日、RASDの承認を取り消すとツイートした。RASDのガーリー大統領は就任式に出席していたにもかかわらずだ。そして3時間後、そのツイートの西サハラに関する部分が削除された。一体何が起きたのか説明もないまま時が過ぎ、9月16日、外務省の事務次官が各局長と大使館に通知を送り、ケニヤはOAUのRASDをメンバーとして受け入れる1982年の決定を堅持し、1991年の国連安保理の住民投票に関する決議を支持していると書いた。要するに、通知はケニヤの伝統的なポリサリオ戦線支持の方針を確認したものだ。そして大統領に痛烈な皮肉を浴びせていた。曰く「ケニヤはツイッターやソーシャルメディアで外交は行わない」と。安全保障研究所(ISS)のポール・サイモン・ハンディ氏は「明らかに政府の中で影響力をめぐる競争がおきている」と言う。ルト氏が西サハラ問題でトラブルに巻き込まれたのはこれが初めてではない。まだ副大統領だった4月、ルト氏が在ナイロビ・モロッコ大使の前で自治案を「サハラ問題の最善の解決策」と評したことで、在ナイロビ・モロッコ大使が、ルト氏は自治案に支持を表明してくれたなどと公に言ってしまったことを否定しなければならなかった。ことの真偽はともかく、モロッコ大使の一件はルト氏のなびきやすい性格を物語っている。当時のモロッコの政府に近いメディアLe Deskは、ケニヤのナンバー2であるルトをカードとして使おうとしていた。。。ケニヤはアフリカ連合(AU)でも発言権があるので、今回の取り込みを通じてモロッコ外交は将来にわたって重要な支援を受けていくだろう」と書いた。(Le Monde, 20 Sep. 2022)
https://www.lemonde.fr/afrique/article/2022/09/20/le-rocambolesque-embrouillamini-du-kenya-sur-le-sahara-occidental_6142456_3212.html

ケニヤ大統領、RASD承認継続を確認
9月23日と思われるFrance24のインタビューで、ルコ大統領は、西サハラについてのケニヤの立場は変わっておらず、民主的な方法で解決されるべきだというものと述べた。インタビューアーは「ツイートは間違いだったのか」と問い詰めたが、それには直接答えず「立場は変わっていない」と返答した。インタビューはYouTubeで見ることができる。これを受けて、24日、ポリサリオ戦線はルコ大統領の発言を歓迎する旨、発表した。(France24, 23 Sep. 2022; Sahara Press Service, 24 Sep. 2022)
https://www.youtube.com/watch?v=WTdX5OL51Ng
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/09/24/41791.html

以上。