西サハラ友の会通信 No. 41(2024年5月分)

 今年5月分のニュースを送ります。モロッコがスペイン政府高官をスパイした「ペガサス事件」の事実がまたひとつ明らかになり、モロッコゲート(欧州議会議員贈収賄事件)の捜査が進み、モロッコの工科大学がほとんど投資会社であるといった批判が出るなど、モロッコの「評判」はがた落ちですが、一方で、モロッコと西サハラの利権にむらがるビジネスが臆面もなく利潤を追求している様子がうかがえます。米国、フランス、スペインの西サハラを舞台としモロッコをパートナーとしたビジネスが、西サハラの自決権行使の障害となっていることは明らかでしょう。


目次

【西サハラ/占領地】
・西サハラで巨大な農園メガロポリス

【西サハラ/解放区】
・SMACOの2024年版報告書

【モロッコ】
・イスラエル企業、モロッコで軍用ドローン製造へ
・OECD、ムハンマド6世工科大学の名称を批判
・ムハンマド6世工科大学、パリで投資セミナー
・オーストラリア鉱山会社CEO、ラバト訪問
・トマト生産会社Azura、干魃と欧州からの圧力に対応

【EU】
・欧州議会収賄事件訴追検討、ベルギーで始まる

【スペイン】
・西サハラへの石油供給はスペインの2社
・モロッコ・チェアー講座、大学を変更
・スペイン下院、首相に西サハラ政策転換を再び要請
・社会労働党、外交政策転換前の協議を約束
・最高裁、ガーリー書記長をジェノサイド罪で無罪に
・フランス捜査当局がくれたペガサスの標的情報

【ポルトガル】
・西サハラへのガス供給はポルトガルから

【フランス】
・ネタニヤフ、仏メディアインタビュー

【ロシア】
・ロシア:サヘル諸国の沿岸アクセスを可能にする鉄道

【国連】
・[古い記事]ガザ戦争:UNESCO事務局長の沈黙

【西サハラ/占領地】
西サハラで巨大な農園メガロポリス
 モロッコ王室は占領地西サハラのダーフラ近郊にトマトやメロンを生産する巨大な農業メガロポリス(集積地帯)を建設した。世界的な果物・野菜の生産拠点とするつもりだ。いずれも王室と共同所有の5つの会社が関係している。一つはLes Domaines Agricolesという1989年設立の会社でムハンマド6世の投資会社に属しており、Les Domainesブランドでトマトとメロンを売り出している。この会社の子会社、Groupe d’Exportation des Domaines Agricoles (Geda)は、青果の倉庫保存・梱包・流通も手がけており、フランスのペルピニャンに拠点をもつFrulexxoという会社と連携している。その子会社、Eurextraはスペインで生産物を販売している。
 2つめは元アガディール市長、ターリク・カッバージュ(Tariq Kabbage)が率いるKabbage Groupの子会社でDomaines Abbes Kabbage (DAK)という果物・野菜の大企業だ。カッバージュ氏は現首相で元農相のアズィーズ・アハヌーシュ氏のいくつかのプロジェクトのパートナーになっている。DAKはモロッコにトマト梱包会社ももっている。
 西サハラの主たる農園会社はもともとアガディールにあった企業の子会社で、前国王のハサン2世が1970年代半ばにモロッコへの西サハラへの企業進出を促進するため西サハラで税免除措置をとったことで、西サハラに進出した。
 ダーフラ地域は栽培にも適していて、リンを含んだ水が灌漑で使われているので高品質なミニトマトができる。ダーフラでは2つの新港建設が予定されていて、そこから青果を船で運び出すことができる。ダーフラ新港への投資は米国、イスラエル、アラブ首長国連邦から来ており、2028年にはカナリア諸島のラス・パルマスと競い合う施設に発展する可能性がある。
 これらの農園で働く人々は14,000人ほどだが、ほとんどがマグレブ人と呼ばれるモロッコからの移住者で、さらに10,000人が港の労働者となっている。
 モロッコは「ジェネレーション・グリーン2023」計画の一環としてのグリーンモロッコ計画を実施してきた。それは5,000ヘクタールの農園を西サハラに建設するという、大規模農業計画だ。(Espiral21, 16 May 2024)
http://espiral21.com/marruecos-culmina-la-megalopolis-agricola-en-el-sahara-occidental/
https://www.printfriendly.com/p/g/ReRaTy

【西サハラ/解放区】
SMACOの2024年版報告書
 難民キャンプに拠点をもち、モロッコが敷設した地雷の除去・住民への教育等を行ってきた「サハラーウィ地雷行動調整事務所(SMACO: Sahrawi Mine Action Coordination Office)が2024年版の報告書を出した。報告書は、SMACO Annual Report: the effects of Moroccan unmanned aerial vehicles (drones) attacks against civilians in Western Sahara current warと題され、モロッコのドローン攻撃の詳細及び燃料気化爆弾(thermobaric weapon)についての被害等を記述している。発行は2024年1月7日となっている。
 2020年停戦崩壊後に始まったモロッコ軍によるドローン攻撃は73回あり、その結果、2023年までに161人の被害者が出た。49%が死亡、23.6%が負傷者だ。また、被害者の49%がサハラーウィで、40%がモーリタニア人だ。
 2021年11月1日のドローン攻撃では燃料気化爆弾が使われたと考えられる。遺体が黒焦げになっていた。
(報告書はSMACOのサイトにアップされていますが、アクセスすると危険なサイトだとの警告が出るため次のサイトからのダウンロードがいいでしょう。)
https://sandblast-arts.org/wp-content/uploads/2024/07/SMACO-2024-Report.pdf

【モロッコ】
イスラエル企業、モロッコで軍用ドローン製造へ
 イスラエルのブルーバード・アエロ・システムズ(BlueBird Aero Systems)の創設者であるローネン・ナディール社長は、モロッコで軍用ドローンの製造を開始すると発表した。同社は、イスラエルの公営企業であるイスラエル・アエロスペース・インダストリーズが部分的に所有している。ナディール氏はイスラエル空軍の元司令官であり、発表は4月13日、スペインの雑誌『ゾナ・ミリタール(Zona Militar)』に掲載された。ただ、それ以上の詳しい情報は提供されていない。
 製造されるドローンはワンダーB型とサンダーB型だと、アブラハム協定平和研究所のイスラエル所長であるアシェル・フェドマン(Asher Fedman)は言う。これらのドローンは主に偵察、諜報活動、標的探知のためのものだ。(Le Monde, 5 May 2024)
https://www.lemonde.fr/afrique/article/2024/05/05/le-maroc-s-apprete-a-entrer-dans-le-cercle-ferme-des-constructeurs-de-drones-militaires-fruit-de-sa-cooperation-avec-israel_6231729_3212.html
https://archive.ph/KGRQb

OECD、ムハンマド6世工科大学の名称を批判
 経済協力開発機構(OECD)が、ムハンマド工科大学(略称UM6P)との協力関係を進める中で、それはOCP(モロッコリン鉱石公社)が影響力拡大の道具として使っているもので、はたして「大学」なのかという批判が出た。UM6Pは2017年に設立され、その資金30億ユーロは100%OCPが出している。いくつもの「子会社」をもっており、農業(Aradinov)、技術(SeedBox)、エネルギー(Uranext)、ホテル(Société hôtelière de Benguerir)分野で事業を行っている。そして国際的な投資銀行、Bpifrance、Chariot Green Hydrogen、ヒルトンなどと戦略的パートナーシップ関係をもっている。
 また、UM6PはInnovxという先端技術会社をもっており、電気自動車用部品製造のパイロットプロジェクトを行っている。これらはモロッコに進出してくる中国の巨大企業に対抗する意味合いがある。(Africa Intelligence, 14 May 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/05/14/l-appellation-universite-de-l-um6p-pointee-du-doigt-a-l-ocde%2C110225058-art

ムハンマド6世工科大学、パリで投資セミナー
 ムハンマド6世工科大学ベンチャーズ(UM6P Ventures)は、同工科大学の傘下にあってスタートアップの支援事業を担っている。6月3日の週、在仏モロッコ人を対象とした投資セミナーをパリで開催する。狙いはフランスで起業するモロッコ人だ。これまでもアフリカのスタートアップ事業を支援してきた。セミナーには同工科大学パリキャンパス学長、同大ベンチャーズの社長らが出席した。(Africa Intelligence, 29 May 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/05/29/l-um6p-ventures-a-paris-pour-attirer-les-startupers-de-la-diaspora%2C110241772-bre

オーストラリア鉱山会社CEO、ラバト訪問
 オーストラリアの巨大鉱山会社FertescueのCEO、アンドリュー・フォレスト(Andrew Forrest)氏が今週ラバトを訪問し、OCP(モロッコリン鉱石公社)と進めているジョイントベンチャーについて関係高官らと面会する予定だ。FortescueとOCPの提携は、あまり盛んでないオーストラリア・モロッコ間の経済関係を大いに進展させることになるだろう。数ヶ月前、リチウム電池生産に特化したオーストラリアの企業がモロッコ政府のアプローチを受けた。モロッコはリチウム電池の大工場建設を計画しており、オーストラリアはそれに関心を示していた。また、オーストラリアは海水の淡水化事業にも関心をもっている。オーストラリアの灌漑専門会社、Rubicon Waterはすでにモロッコの治水分野で存在感を示している。(Africa Intelligence, 28 May 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/05/28/le-patron-du-geant-minier-australien-fortescue-attendu-a-rabat%2C110240603-bre

トマト生産会社Azura、干魃と欧州からの圧力に対応
 Groupe agricole Tazi (GAT)は、タジ一族が経営する企業群の中にあってミニトマト生産で群を抜く農業企業だ。ブランド名はAzura。創業者のムハンマド・ターズィ(Mohamed Tazi)と妻は娘たちに株を売り渡し、今では経営権が彼女らに移っている。最近、フランスとスペインのトマト農家の抗議が強まっている上に、干魃もあって苦心している。解決策として、食品廃棄削減と海水の淡水化事業にビジネスを拡大している。
 1,200ヘクタールものトマト農園をもつAzuraは、2023年5億ユーロの売上高を達成した。問題は、ミニトマトが水を大量に使うということ。Azuraはモロッコ南部のスス地方(アハヌーシュ首相の地盤)と西サハラのダーフラを拠点とする。いずれも干魃に弱い地域であり、Azuraは必要な水のすべてを海水を淡水化して得ている。タジ一族の企業はアガディールで淡水化事業にも参加し、2022年から操業を始めている。
 さらにAzuraは2024年1月、フランスの食品廃棄分野の大企業Suezと契約し、2基の廃棄物再生工場を稼働させることにした。目標は年間42,000トンのコンポスト(堆肥)と43,000トンの固形再生燃料の半製品を生産することだ。すでに2016年、当時農相だったアハヌーシュ氏の支援を受けてはまぐり(貝)の養殖も始めている。
 欧州の農家からの圧力については、今年3月にEU司法裁判所法務官の意見が発表され、西サハラ産トマトの原産地表示の変更が求められる可能性が高いという状況の中で、Azuraの新しい副社長にアビール・レムセッフェル(Abir Lemseffer)が任命された。彼女はアハヌーシュ農相時代の農業局長だった人物で、EU諸機関、モロッコの事業者連合、企業団体とのコーディネーター役を務めている。(Africa Intelligence, 30 May 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/05/30/secheresse-pressions-europeennes_-le-geant-de-la-tomate-azura-en-quete-de-solutions%2C110241468-art
 
【EU】
欧州議会収賄事件訴追検討、ベルギーで始まる
 元・現欧州議会議員やスタッフがモロッコから金品を受け取った収賄事件についてソワール紙やRTBF(ベルギーフランス語放送)、汚職撲滅事務所(OCRC)が調査し、報告書を作成したが、最高検察庁とブリュッセル(地方)検察庁との間で綱引きがあった後、今年3月にブリュッセル検察庁が捜査を開始することになった。ただ、どこの裁判所で起訴するかなど、詳細についてはコメントを控えた。3月末の段階では、導入された新しい刑法の「民主的過程への外国の干渉」に関する条項はまだ存在しなかった。4月初めにこの条項の施行が始まり、連邦検察は早速欧州議会のロシアゲートに適用している。ロシアゲートでは極右の議員やアシスタントがロシアの主張を議会で代弁し、金銭を受け取っていたとされる。
 RTBFは西サハラ問題を見ている。とくに連邦議員(PS)でありファルシエンヌ市長であるユク・バイェ氏(Huques Bayet)だ。元欧州議会議員でもある氏は、ベルギーでモロッコの西サハラ自治案を支持する委員会コベサ(Cobesa)の委員長を務める。委員会の設立発表は、2022年5月、ブリュッセル記者クラブで行われた。委員会はベルギー政府にモロッコの自治案を支持するよう働きかけようとしており、設立式にはモロッコのムハンマド・アムール大使も出席していて、実は式典の開会宣言をし、会場費620ユーロを支払ったのも彼だった。RTBFは、バイェ氏の6月9日の再選を前に行った演説にも注目した。すると、彼がしゃべったことはムハンマド6世が「モロッコ領サハラ」について語ったことを一言一句まねたものだった。(Le Soir, 10 May 2024)
https://www.lesoir.be/586674/article/2024-05-10/enquete-ouverte-sur-les-ingerences-marocaines-en-belgique

【スペイン】
西サハラへの石油供給はスペインの2社
 NGO西サハラ資源ウォッチは、西サハラへ石油を供給しているのはスペインのCepsaとRepsolという2社であることを明らかにし、継続的なモニターからその供給量を算出した。2023年、CepsaとRepsolは西サハラに供給される石油の84%を取り扱った。西サハラ資源ウォッチは昨年西サハラの港に入った23隻の石油タンカー114回分の運航を調べた。そのほとんどすべてがスペインを出発地としており、9.35%はモロッコからのタンカーで、1隻だけブルガリアからのものだった。供給された石油は50万5,000トンで、前年度とほぼ同じだった。これらのタンカーはエル=アイウンに83回、ダーフラに74回来ている。西サハラに運ばれる石油の多くは占領下での不法な資源の略奪、あるいは軍用に用いられている。(Western Sahara Resource Watch, 6 May 2024)
https://wsrw.org/en/news/cepsa-repsol-still-secretive-on-controversial-oil

モロッコ・チェアー講座、大学を変更
 モロッコ政府の資金援助による講座(モロッコチェアー)を昨年やめたサラマンカ大学に代わり、ハエン大学(アンダルシア自治州)が3つのモロッコの大学と連携するかたちで引き受けることになった。3つの大学とは、ムハンマド5世大学(ラバト)、アブデルマレク・エサアディ大学(タンジェ)、イブン・トファリ大学(ケンティラ)だ。社会労働党の元指導者たちホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ氏やマリア・アントニア・トルイッロ氏がモロッコの西サハラに対する立場を弁護する講演を行った。ムハンマド5世大学のアフリカ研究センターは体制による人権侵害批判で知られるマアティ・モンジブ教授(歴史学)を追放したことがある。
 サラマンカ大学におけるモロッコチェアーの目的は「スペイン社会に存在するステレオタイプに対して闘い、モロッコの真の顔を知らしめる」というものだったが、サラマンカ大学はモロッコチェアーをすでに停止している。
 モロッコの批判的ジャーナリストで政治学者であるアブドゥッラティーフ・エル=ハマムーシー(Abdellatif el Hamamouchi)は、「今モロッコの学問の自由は最悪の状況にある。統治のあり方、権力の分散、セキュリティ(公安問題)といったテーマを研究すれば大学から追放される。それがマアティ・モンジブに起きたことだ」と述べる。(El Independiente, 17 Mary 2024)
https://www.elindependiente.com/espana/2024/05/17/marruecos-impulsa-una-nueva-catedra-en-espana-tras-la-paralizada-en-la-universidad-de-salamanca/
https://archive.is/2ux54
スペイン下院、首相に西サハラ政策転換を再び要請
 スペイン下院本会議において、ホセ・アバーレス外相に対する質問の結果、国民党(PP)が動議を提出し、一つ一つについて個別に投票が行われた。動議は2022年3月のサンチェス首相による(自治案を唯一の解決策とする)一方的な西サハラ政策変更を無効とし、西サハラ問題に関して(中立的な)伝統的立場へと復帰するよう求めるもので、つもは与党と連携する党の支持もえて賛成多数で可決された。加えて、別な動議はメリリャとセウタの税関の再開に関してモロッコと合意したスケジュールを公表するよう求めた。パレスチナに関して2国解決に賛同する動議には唯一Vox(極右政党)が反対票を投じた。(Europa Press, 23 May 2024)
https://www.europapress.es/nacional/noticia-congreso-vuelve-pedir-sanchez-revoque-giro-unilateral-sahara-20240523150053.html

社会労働党、外交政策転換前の協議を約束
 社会労働党(PSOE)は、Sumarを含め議会内で連携する諸政党とのこれ以上の衝突を防ぐため、主要な外交政策の転換をする場合、事前に協議するとした法案を了承した。先週、売春廃止法案、土地法案をめぐる対立があったが、今週ウクライナに11億ユーロの武器供与を決めたことへの抗議として、月曜日、ゼレンスキー大統領がスペイン議会を訪問した際、ERC、EH、Bildu、ポデモス、BNGが席を立った。過去には西サハラ問題での大きな転換があった。この支援には社会労働党内部からも批判が噴出していた。(El Periodico, 28 May 2024)
https://www.elperiodico.com/es/politica/20240528/psoe-choque-socios-control-previo-politica-exterior-103029843
https://archive.is/NzHwO

最高裁、ガーリー書記長をジェノサイド罪で無罪に
 ブラーヒーム・ガーリーポリサリオ戦線書記長に対するジェノサイド罪の訴訟で、スペイン最高裁は告発側の控訴を棄却した。一審では無罪判決が出ていた。ガーリー氏は1975年から1990年の間にモロッコ人を拷問した等の罪で、刑事告発されていた。最初は2012年に告発されたが、2021年5月にガーリー氏がスペインに来たことを利用して裁判が再開された。(El Independiente, 24 May 2024)
https://www.elindependiente.com/espana/tribunales/2024/05/24/el-supremo-confirma-el-archivo-de-la-querella-contra-brahim-ghali-por-genocidio/

フランス捜査当局がくれたペガサスの標的情報
 ロブレス、マルラスカ両元大臣に対するイスラエルのスマホスパイソフトウェア−、ペガサスを使ったスパイ活動について、フランスの捜査当局がスペインの裁判所に提供した情報により、モロッコがスパイをしていた可能性が高いことが明らかになった。フランスでペガサスが標的にしたのは、西サハラ活動家クロード・マンジャン氏、ポリサリオ戦線のウッビー・バシール氏、イブリー・シュル・セーヌ市の市長フィリペ・ボアスー氏、在フランス反体制モロッコ人ジャーナリストのヒシャーム・マンスーリー氏たちだった。その際使われたメールアドレスlinakeller2203@gmail.comがスペインでも使われていた。また、フランスの西サハラ活動家へ攻撃とスペインの大臣たちへの攻撃はほぼ同じ時期に起きていた。すなわち2021年夏であった。(Diario de León, 27 May 2024)
https://www.diariodeleon.es/nacional/240527/1544747/pista-acerca-pegasus-pone-foco-marruecos.html
https://noteolvidesdelsaharaoccidental.org/la-pista-acerca-de-pegasus-pone-el-foco-en-marruecos/

【ポルトガル】
西サハラへのガス供給はポルトガルから
 NGO西サハラ資源ウォッチの継続的なサーベイによると、占領地西サハラへもっとも多くガスを供給しているのはポルトガルの港発のタンカーであることが判明した。2023年中にエル=アイウンに液化ブタン(ガス燃料)を運んだ14回(13隻)のタンカー航行を分析した結果、供給ガスの総量は約36,000トンに及ぶと計算される。13隻の内4隻がポルトガルのシネス(Sines)港を出発したタンカーで、約13,600トン、年間総量の38%を運んだと考えられる。ただ、扱っている会社はわかっていない。
 米国もまた占領地西サハラへのガス供給においては突出している。2023年には10,000トンのガスを西サハラに供給した。2022年は17,000トンだった。米国の場合、港はCorpus Cristi、Houston、Norfolkだ。(Western Sahara Resource Watch, 15 May 2024)
https://wsrw.org/en/news/portugal-biggest-exporter-of-gas-into-occupied-western-sahara

【フランス】
ネタニヤフ、仏メディアインタビュー
 アルジェリアの報道によると、ネタニヤフ首相は仏メディアのインタビューで、ガザ戦争のことを「ユダヤ・キリスト教文明(Judeo-Christian civilization)の野蛮に対する」闘いだと述べ、批判を浴びた。言わんとすることは「ムスリム世界に対する」ということだ。これがフランスで批判を浴びたのは当然として、モロッコでも見逃されなかった。しかし、その理由はまったく別なことだった。
 モロッコにとってショックだったのはガザに関することではない。モロッコ政府はイスラエルのガザ攻撃を決して非難しないからだ。問題となったのは、インタビューでネタニヤフが示した地図上でモロッコが西サハラと切り離されていたことだ。これをモロッコのメディアは「またしても失言、これで3度目」と評した。イスラエル政府は「技術的な間違い」として謝罪したと報じられた。(TSA, 31 May 2024)
https://www.tsa-algerie.com/quand-benyamin-netanyahou-choque-le-maroc/

【ロシア】
ロシア:サヘル諸国の沿岸アクセスを可能にする鉄道
 モロッコが米国の支援を受けて、海岸をもたないサヘル諸国のダーフラ(西サハラ)へのアクセスを可能にする交通網を整備しようとしている。これに対抗し、ロシアはマリ、ブルキナファソ、ニジェールをギニアビサウへ繋ぐ鉄道網を支援しようとしている。(La Razón, 18 May 2024)
https://www.larazon.es/internacional/rusia-ofrece-paises-sahel-salida-mar-ferrocarril-guinea-bissau_202405186648f8ef2dc8ee000187e1ec.html

【国連】
[古い記事]ガザ戦争:UNESCO事務局長の沈黙
 ガザでの戦争が始まって100日たった頃、現地では学校や記念碑が灰燼と化しているというのに、その分野に関わるユネスコのオードリー・アズレー事務局長が沈黙を保っていることを不思議に思う人々がいる。彼女の父、アンドレ・アズレー氏は影響力のあるモロッコ系ユダヤ人で、ハサン2世前国王の時代から、ムハンマド6世現国王に至るまで、国王アドバイザーを務めている。そのことと関係あるのではないかと疑っている。
 こうしたユネスコの沈黙に失望し、カタールの現エミールの母、シェイハ・モーーザ・ビント・ナーセル(Sheikha Moza bint Nasser)さんは20年以上務めたユネスコ親善大使を辞任した。「ガザで生徒たちが攻撃され、学校が破壊されているときに、ユネスコが沈黙していることに失望した。それはあらゆるレベルでユネスコの方針とは相容れないことなのに」と、彼女は理由を述べた。さらに「松浦晃一郎事務局長の要請を受け、基礎・高等教育に関するユネスコの特別大使の仕事を引き受けた。私はユネスコに多大な尊敬の念を抱いており、教育を変革し、またそれを守ることができると大いなる希望を抱いていた」と述べた。
 彼女が批判の矛先を向けるオードリー・アズレー氏はマヌエル・ヴァラス政権時代の文化大臣であり、オランド大統領(社会党)の文化アドバイザーだった。モロッコ人作家カティア・アズレーとモロッコのユダヤ人コミュニティで最も影響力のあるアンドレ・アズレーの子として生まれ、フランス国籍をもっている。
 10月7日のイスラエルによるガザ攻撃開始から、すでに1,100人のが死亡した(1月の時点)というのに、ユネスコはガザでのジャーナリストの死に関して批判をしたに留まる。ただ、その死亡者数も23人となっており、パレスチナ当局やジャーナリストの国際団体が80人から100人と言っているのと大きくかけ離れている。しかも、ユネスコの非難声明の中に文化遺産や教育施設の破壊は含まれていない。国連自身、374校が破壊されたと言っているにもかかわらずだ。
 本紙の問い合わせに対して、ユネスコ筋は、ユネスコは教育、文化、ジャーナリストの保護に深く憂慮している、と返答した。そして、ユネスコは10月27日、教育施設の保護に関する声明を発表しており、学校が避難場所となっており、そういう学校を攻撃したり、学校を軍事的な目的に利用することは国際法に反すると述べている、と述べた。ただ、それ以後、ユネスコは沈黙を保っている。
 議論の中心にはアズレー事務局長と、それまで「パレスチナ寄りで反イスラエル的な決議を出してきた」ユネスコを、イスラエルのメディアによると「救済した」とされるミッションがある。それによって、ユネスコ指導部は反ユダヤ主義(anti-Semitism)とホロコーストの否定に断固たる立場をとるようになった。世界ユダヤ人会議と連携し、オンラインのホロコースト教育素材を開発した。メタ(Facebook)やTikTokもそれを使っている。また、全米ユダヤ委員会や全米教師連盟と一緒に、オンラインの研修事業を行い、欧州委員会とも反ユダヤ主義と闘うための教員研修を12ヶ国で行った。
 彼女の父、アンドレ・アズレー氏はムスリム世界で最も影響力のあるユダヤ人などと呼ばれたが、今では82才と高齢で、さまざまな財団を率いてはいるものの、もはやモロッコ国王に直接アクセスすることはできなくなっているという。(El Independiente, 17 Jan. 2024)
https://www.elindependiente.com/internacional/2024/01/17/el-silencio-sobre-gaza-de-la-unesco-dirigida-por-la-hija-de-azoulay-el-poderoso-consejero-de-mohamed-vi/
https://archive.is/Wpb00

以上。