西サハラ友の会通信 No. 40(2024年4月分)
2024年4月分のニュースを送ります。モロッコはフランスやスペインからの投資を西サハラに呼び込もうと活発な誘致活動を行っています。スペインではモロッコからの輸入魚・青果の安全性に注目が集まっています。アルジェリアが新たな地域連合の結成に動き出し、モロッコの外交に対抗しようとしています。
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No. 40 目次
【西サハラ/占領地】
・国務省人権報告書、西サハラでの侵害を記述
・アムネスティ年次報告書、西サハラでの人権侵害を批判
【西サハラ/解放区・難民キャンプ】
・モロッコ軍のドローン、ポリサリオ戦線の車3台を攻撃
・イタリアの医療チームが到着
・難民キャンプでアラブ連帯会議を開催
【モロッコ】
・モロッコ外相:ポリサリオ戦線が停戦違反をする限り交渉しない
・モロッコのエネルギー戦略
・モロッコの債務問題
・イスラエルのドローン、モロッコで生産開始
・オーストラリア人旅行者のTシャツの地図
・ブラジルへのリン鉱石輸出増大
・リビアの王政主義聖職者をモロッコに招待
【アルジェリア】
・外相:アラブ・マグレブ連合は「昏睡状態」
・新マグレブ連合の第1回協議会合、チュニスで開催
・アルジェリア、UAEのNaturgy買収を批判
・アルジェリア、ガスパイプライン構想に自信
【ケニア】
・モロッコと西サハラの間で:ケニアの大統領
【EU】
・ボレル上級代表、モロッコ外相と電話
【フランス】
・フランス、西サハラに投資促進
・フランク・リステール貿易相、モロッコを訪問
・ムハンマド6世所有の城、売りに出される
【スペイン】
・(古い記事)NATOの圧力がサンチェス首相を変えた?
・ENAIRE、地図を修正
・マドリード商工会議所、西サハラへの投資促進
・ポリサリオ戦線、ダーフラ投資フォーラムに抗議
・2月のモロッコ産果物輸入46%増加
・モロッコ産農水産品、1年で25回の警告
・ペガサス捜査、再開
・新たに2人、ペガサスの被害者に
・国連・文明の連盟のための高級代表の発言
・国民党、西サハラ動議を議会に提出
・UAEのNaturgyの買収、反対はなく
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【西サハラ/占領地】
国務省人権報告書、西サハラでの侵害を記述
国務省は毎年出している各国別人権報告を公開した。今年は西サハラでのモロッコ当局による拷問、逮捕状なしの逮捕、刑務所でのひどい処遇、表現の自由の制限が行われていると記述している。報告書によれば、西サハラでは団体登録申請がほとんど認められず、西サハラの人権活動家は、迫害、取調べ、逮捕、ハラスメントといえる監視にさらされている。国連人権高等弁務官事務所による訪問も過去8年間一度も認められず、とくに障がいに関する特別報告者と恣意的拘禁に関する作業部会による訪問申請が受け入れられていない。(SPS, 27 Apr. 2024)
https://archive.spsrasd.info/en/2024/04/27/3252.html
アムネスティ年次報告書、西サハラでの人権侵害を批判
アムネスティ・インターナショナルは世界の人権に関する2023年の年次報告書を発表した。報告書によれば、エル=アイウンの人権活動家Mahfouda Lafkirさんがダーフラの活動家を連帯の意味を込めて訪問した後、彼女の家を監視下におき、彼女を訪ねてくるすべてのサハラーウィを逮捕し、彼らに暴力を振るい、彼女と彼女の家族を侮辱する言辞を吐いた。また、強制退去させられた外国人も多く、再生可能エネルギーを調べにきたイタリア人のロベルト・カルトーニさんを5月14日に追放した。9月4日、モロッコの警察はデ・ミストゥラ国連特使がエル=アイウンに到着した日に行われたデモを強制的に解散させ、少なくとも23人のサハラーウィに暴力をふるった。7日にはダーフラで少なくとも4人を逮捕し、2人を7時間拘束し、家族と面会させなかった。10月21日にはサハラーウィの人権団体が開催しようとした全国会議を解散させた。「モロッコ国家による重大な人権侵害の被害者の会」は2022年に事実上閉鎖され、それは2023年も継続した。(Sahara Press Service, 25 Apr. 2024)
https://archive.spsrasd.info/en/2024/04/25/3201.html
【西サハラ/解放区・難民キャンプ】
モロッコ軍のドローン、ポリサリオ戦線の車3台を攻撃
モロッコの報道によると、4月5日、モロッコ軍は軍事緩衝地帯にあったポリサリオ戦線の車3台を攻撃した。ポリサリオ戦線側はまだこれを発表していない。ただ、ポリサリオ戦線の通信のやりとりから、「解放区のミジェク地区の民間人への」攻撃があったことが確認できる。通信は死者数については述べておらず、モロッコ側の情報筋によれば、4人から6人ではないかと推測される。モロッコのメディアは、安保理での議論が大詰めを迎えるため、ポリサリオ戦線は軍事的に得点したいと考えたのではないかと推測している。(Yabiladi, 6 Apr. 2024)
https://www.yabiladi.com/articles/details/148405/sahara-nouvelle-frappe-d-un-drone.html
https://archive.is/t2WjS
イタリアの医療チームが到着
4月14日(日)、イタリアのMAM (Medicine and Assistance for the Marginalized) (周縁化された人びとのための医療・援助)のチームが難民キャンプに到着した。総勢20人のチームで、医師が16人。2度目の訪問となる。糖尿病、子どもの心身の健康について取り組む。(Sahara Press Service, 17 Apr. 2024)
https://archive.spsrasd.info/en/2024/04/15/3052.html
難民キャンプでアラブ連帯会議を開催
4月17日(水)、難民キャンプでアラブ連帯会議が開かれ、アルジェリア、シリア、エジプト、チュニジア、リビア、モーリタニア、スーダン、パレスチナ、イエメン、エリトリアの政治家、学者、活動家、ジャーナリストらが集まった。(Sahara Press Service, 17 Apr. 2024)
https://archive.spsrasd.info/en/2024/04/17/3082.html
【モロッコ】
モロッコ外相:ポリサリオ戦線が停戦違反をする限り交渉しない
モロッコのナッセール・ブリタ外相は4月4日、ラバトで国連事務総長特使のスタファン・デ・ミストゥラ氏と面会し、ポリサリオ戦線が毎日停戦をやぶっている状況下では交渉に応じないと述べた。また、アルジェリアが参加しない限り、モロッコは交渉しない、モロッコの自治以外の選択肢はありえないと述べた。デ・ミストゥラ氏の北アフリカへの旅行は今回で4回目となる。(Infobae/EFE、4 Apr. 2024)
https://www.infobae.com/america/agencias/2024/04/04/rabat-considera-que-un-proceso-serio-en-el-sahara-requiere-el-respeto-del-alto-el-fuego/
モロッコのエネルギー戦略
モロッコはスペインとのエネルギーを通じた関係を断ち、再ガス化施設と石油パイプラインで自立化を図ろうとしている。再ガス化はまだ初期段階にあり、2030年までに電力の52%を再エネでまかなう計画だ。グリーン水素を生産する投資家たちには30万ヘクタールの土地が用意されている。
2021年にアルジェリアがモロッコ経由でスペインに届くガスパイプラインの稼働を止めたことで、モロッコはガス不足に陥り、海外からLNGを買ってスペインの再ガス化施設でガスにしてそれをモロッコに引いていた。スペインのガス輸出に占めるモロッコの割合は12.5%から28%へと劇的に増えた。
政府の5つの省は「持続可能なガスインフラ開発計画」に3月26日に署名した。それで3つのLNG再ガス化施設と備蓄タンク、ガスパイプラインを建設する。最初の再ガス化施設はメリリャの西、ナドール・ウェストメドにオープンする。そこではタンジェ・メドに続く第2の港の建設が進んでいる。そこで作られたガスは、マグレブ・ヨーロッパガスパイプラン(スペインに続く)へと送られる。スペインからのガスはもう来なくなるが、パイプラインは稼働し続けるというわけだ。
2番目の施設はカサブランカの北、モハメディアに建設され、3番目は西サハラのダーフラに作られる。この構想は、ナイジェリアから13ヶ国、6,000kmを通って送られてくるガスをダーフラで陸揚げするというものだが、実現には25年ほどかかる。また、ナイジェリアは今年12月まで返事を留保している。さらに、アルジェリアが対抗馬となるガスパイプライン建設構想を打ち上げている。ナイジェリアからニジェールを通り、イタリアへとガスを送るものだ。
モロッコにとってガス開発は第一段階であり、次には再生可能エネルギー開発がある。3月、政府は30万ヘクタールの公的な土地を再エネ事業にあてると発表した。一方、アルジェリアもまた水素開発に名乗りを上げている。昨年、アルジェリアは2030年にヨーロッパの水素需要の10%を供給するなどと発表した。(El Confidencial, 6 Apr. 2024)
https://www.elconfidencial.com/economia/2024-04-06/marruecos-corta-lazos-energia-espana-gas-petroleo_3861912/
https://archive.is/20wsl
モロッコの債務問題
Academiaにアップされたモロッコの経済評論家、ムスタファー・ムルグ(Mostafa Melgou)氏の論説が、モロッコの債務についての情報を提供してくれる。以下はその要約。
モロッコの公的債務は9,800億ディルハム(約15兆円)ほどあり、限界に達しつつある。それはGDPの93%に達する。GDPに対する正常な債務の範囲は60%とされる。年間の返済額は450億ディルハム(約6,600億円)だ。心配なのは外貨建て債務で、ユーロとドルで4,500億ディルハムに相当する。外貨建て債務は外貨で返済しなければならない。しかし、モロッコは慢性的な貿易赤字をかかえており、それは2,200億ディルハムほどで、拡大傾向にある。さらに、海外在住モロッコ人(MRE)の仕送り金やインバウンド収入の減少、海外からの直接投資の上下などが、2008年以降国全体の収支バランスを圧縮している。結局、そこが債務返済能力を考える上で重要なのだ。もし、このまま外貨保有高が減少すれば、債務を債務で返済するというような悪循環に陥りかねない。今日、モロッコの経済成長は鈍化しており、財政赤字を借金で補っているような状況だ。財政赤字の原因は、肥大化する政府を維持するための非生産的で、無駄な経費にあり、要するにわれわれは身の丈に合わない国家を頑固に守ろうとしてぜいたくをしているのだ。(Mostafa Melgou, Academia, April 2024)
https://www.academia.edu/community/VBPD3W
イスラエルのドローン、モロッコで生産開始
イスラエルのブルーバード・アエロ・システムズ(BlueBird Aero Systems)社のCEO、ロネン・ナディール氏は軍用ドローンの生産をモロッコの工場で始めると発表した。工場はすでにできており、近い将来に操業を開始するという。イスラエル・アエロスペース・インダストリーズがブルーバード・アエロ・システムズ社の株の半分を所有している。モロッコはイスラエルとの軍事協力に熱心で、ついにイスラエルのスカイロック・ドーム対ドローンシステムの購入に合意した。そしてブルーバード社が生産する150機のeVTOLドローンとSpy Xトラッキングシステムを購入することにした。(Europa Press, 15 Apr. 2024)
https://www.europapress.es/internacional/noticia-israel-fabricara-drones-militares-planta-marruecos-20240415182156.html
https://archive.is/HcNDi
オーストラリア人旅行者のTシャツの地図
モロッコのシェフシャウエン市で、4月15日、5人のオーストラリア人旅行者が、来ているTシャツに描かれたモロッコの地図で西サハラがモロッコ領になっていないとして、当局に声をかけられたという。旅行者は世界地図をのせているウェブサイトからダウンロードしてプリントしたということだが、警察に謝罪し、二度と同じ過ちを繰り返さないと約束した。(La Razón, 15 Apr. 2024)
https://www.larazon.es/espana/investigados-cinco-turistas-australianos-marruecos-llevar-camisetas-que-incluian-sahara_20240415661d81c0c0b95c0001fa6ee7.html
https://archive.is/PxUBV
ブラジルへのリン鉱石輸出増大
(モロッコからブラジルへのリン鉱石輸出には西サハラ産リン鉱石も含まれていると想定して)2022年、モロッコからブラジルへの輸出の78%はリン鉱石公社(OCP)が扱うリン鉱石だった。2023年はそれが65%を占めた。一方、ブラジルからモロッコに輸入されたのは砂糖ととうもろこしだ。ブラジルは2024年の4月には犠牲祭用に4,300頭の牛を送る準備をしている。2023年、ブラジルがモロッコに輸出した牛は110億ドルに上った。(Africa Intelligence, 22 Apr. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/04/22/rabat-ouvre-grand-la-porte-aux-geants-du-secteur-agricole-bresilien%2C110217953-art
リビアの王政主義聖職者をモロッコに招待
2020年以降で初めて、リビアから2人の王政主義聖職者がカサブランカの宮殿で行われた宗教会議に招待された。3月29日と4月1日に開催された。呼ばれたのはイーカーズ・スーフィー研究・リビア伝統再興センターのアフマド・ムハンマド・ジャードッラー(Ahmad Mohamad Jad Allah)所長とサヌーシーア・スーフィー同胞団に近い学者(アーレム)であるアミーン・サフィッディーン・シャリーフ(Amine Safieddine Charif)氏。シャリーフ氏は歴史的にリビアの王室のイドリス1世国王と結びつきがある。イドリース1世は同胞団の創設者ムハンマド・イブン・アリ・アル=サヌーシーの孫にあたり、1951年から1969年まで国王だった。
モロッコによる招待は、ムアンマル・カッザーフィー(カダフィ)大佐が倒した国王の子孫、ムハンマド・アル=サヌーシー氏が表舞台に戻って来たことと軌を一にする。アル=サヌーシー氏は仏語紙フィガロのインタビューを受け、それは4月初めに掲載された。セヌッシ氏は、どこの国とかは明言しなかったが、「地域の国々といい連絡関係にある」などと語り、政治へ復帰する用意があると述べていた。(Africa Intelligence, 25 Apr. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/le-continent/2024/04/25/felix-tshisekedi-faustin-archange-touadera-patrick-pouyanne-paul-kagame-mohammed-vi%2C110219457-art
【アルジェリア】
外相:アラブ・マグレブ連合は「昏睡状態」
アフマド・アッターフ外相は「アラブ・マグレブ連合は昏睡状態にある」と述べ、それが息を吹き返すまで(マグレブ統合過程を)放置すべきだろうか、と問うた。答はもちろん「ノー」だ。連合は1989年、モロッコ、アルジェリア、リビア、チュニジア、モーリタニアの首脳がマラケシュに集まり設立されたが、何十年もの間、書類の上だけの存在だった。最後の首脳会議は1994年だ。そこで、アブデルマジド・テブン大統領は、チュニジアとリビア(国際的に承認された方の)とアルジェリアは3ヶ国だけで別なマグレブ機構をつくると発表した。アルジェリアの判断には2つの理由があった。1つは、イスラエルと関係をもつのはモロッコだけでその他の国々はこの点で意見が一致する。もう1つは、西サハラのダーフラ港をサヘル地方に開放するというモロッコの11月の発表を受け、その構想を阻止する必要があるというものだ。12月、モロッコはその提案をマリ、ニジェール、チャド、ブルキナファソの4ヶ国に提示した。ただ、それを実現するためには7,000キロの道路を建設する必要があり、この2月それへの支援を表明したのがスペインだった。サヘル地方のダーフラ港へのアクセスを阻止するためにはモーリタニアの参加が欠かせない。テブン大統領はモーリタニアのエル・ガズワニ大統領と電話会談をしたが、モーリタニアは新しいマグレブ機構への参加を決めていない。
モーリタニアはモロッコのドローン問題で西サハラの南、ゲルゲラートでの関税を3倍にした。モロッコとモーリタニアの関係はいいとは言えない。それを考えると、アルジェリアに利があるかもしれない。また、アラブ連盟が1960年にモロッコのモーリタニアに対する主権を支持する立場をとったとき、アルジェリアはそれに与しなかった。まだ独立していなかったからだ。さらに、一月前、テブン大統領とエル・ガズワニ大統領は、アルジェリア南部の初の税関の開所式に同席した際、チンドゥーフとズエラートを結ぶ840kmの高速道路の建設を発表した。アルジェリアのオンライン新聞TSAは、「税関の開所式と道路建設は重要だが、それ以上に、西アフリカへのアクセスルートとしてモーリタニアの戦略的重要性を高めることが重要だ」と報じた。
今日、マグレブ地域間の貿易はほとんどないに等しい。マグレブ諸国が行う貿易の3%が取引されているにすぎない。世界で最も経済的統合のレベルが低い地域だ。2月、テブン大統領はリビア、チュニジアとの3ヶ国自由貿易圏構想を発表した。ただ、手始めに取り組んだ相手はモーリタニアで、その整備に2億200万ユーロを投じた。モーリタニアとアルジェリアの商品は関税が免除されるということになる。モロッコとアルジェリアの間でいずれをも怒らせないよう微妙な舵取りをしてきたモーリタニアがどう動くかは、まだわからない。(El Confidencial, 6 Apr. 2024)
https://www.elconfidencial.com/mundo/2024-04-06/argelia-estrecha-lazos-con-mauritania-para-bloquear-la-oferta-de-mohamed-vi-a-los-paises-del-sahel_3861599/
https://archive.is/93QrK
新マグレブ連合の第1回協議会合、チュニスで開催
4月22日(月)、アルジェリア・チュニジア・リビア3国でつくる新しいマグレブ地域の連合の第1回協議会合がチュニスで開かれた。モロッコとモーリタニアは招待されなかった。アルジェリアのテブン大統領は、この連合は他の国に対抗して作られたのではない、扉は西の隣国にも開かれているなどと説明した。アルジェリアのアタフ外相は、1989年にモロッコで結成されたアラブ・マグレブ連合が機能していないので、その穴を埋めるためだとして、新連合の形成を擁護した。会合後の共同声明は、サヘル地域とサハラ地域に対する外国の干渉、リビアの内政への外国の干渉、パレスチナ人民に対する戦争犯罪及びジェノサイドを強く非難した。(VOA, 24 Apr. 2024; Algéria Press Service, 23 Apr. 2024)
https://www.voaafrica.com/a/tunisia-algeria-and-libya-create-new-regional-coalition/7582189.html
https://www.aps.dz/en/algeria/51871-consultative-meeting-between-leaders-of-algeria-tunisia-and-libya-need-to-unify-positions-strengthen-dialogue
アルジェリア、UAEのNaturgy買収を批判
アラブ首長国連邦(UAE)の公社「タカ(Taqa)」はスペインのエネルギー会社Naturgyの株を購入する計画だ。これがアルジェリアの逆鱗にふれた。アルジェリアはNaturgyの最も重要な取引相手だからだ。UAEはアルジェリアと反目する国で、モロッコの同盟国だ。アルジェリア政府は沈黙を保っているが、メディアはさかんにメッセージを発している。ある新聞の社説は、UAEはアルジェリアに経済戦争を宣戦布告したと述べる。他のメディアは「UAEはアルジェリアの重要な顧客を呑み込もうとしている」と書く。スペインが輸入するガスの3分の1はアルジェリアからのものだ。
アルジェリアにとってUAEが問題なのは、まずUAEがリビア東部政府を支援していることだ。UAEはNaturgyからあがる利益でトゥアレグ人たちを殺すようロシアのワグネルを雇うだろう。また、マリとニジェールの軍事政権を支援するだろう。西のモロッコはイスラエルとの関係を強化し、軍事プログラムのための資金をUAEから得ている。南では、マリ、ニジェールの軍事政権とアルジェリアは対立している。そして今度は北で、Naturgyがソナトラックと縁を切るよう仕向けているのだ。
タカの目的はモロッコのエネルギー問題を解決することだ。タカは1997年にモロッコに進出し、今では第一の民間電力会社となっている。1500万人の顧客がいる。そしてタカはモロッコとイギリスを結ぶ海底ケーブルの敷設の資金まで出すと言っている。それに電力を供給するのはモロッコ南部の太陽光・風力発電だ。
テブン大統領はこうした「アルジェリアの囲い込み」を黙って見ていることはしない。チュニジア、リビアを含めた3国による新しいマグレブ連合はこれに対抗するものだ。(El Confidencial, 23 Apr. 2024)
https://www.elconfidencial.com/empresas/2024-04-23/argelia-contra-opa-emirati-naturgy_3871569/
https://archive.is/wdpWL
アルジェリア、ガスパイプライン構想に自信
ナイジェリアのガスを欧州に届けるのに、ニジェール・アルジェリア経由の構想と、アフリカ西海岸諸国をたどるモロッコ経由の構想が、激しい競い合いを展開している。アルジェリアは自身の構想が有利だとの自信を深めている。アルジェリアの構想は全長3,000km、総額127億5,000万ユーロで、国も3つしか関係しない。一方、モロッコの構想は全長7,000km、総額250億ドル、13ヶ国と西サハラを経由するものだ。アルジェリアはこれまでアフリカ諸国の石油開発と人材育成に協力してきた。ニジェールにおける石油採掘を再開する計画であり、リビア、ナイジェリア、チュニジア、モーリタニアにおいても支援する用意がある。(El Independiente, 27 Apr. 2024)
https://www.elindependiente.com/internacional/2024/04/27/argelia-defiende-su-gasoducto-desde-nigeria-frente-a-la-utopia-del-proyecto-marroqui/
https://archive.is/IC7Ho
【ケニア】
モロッコと西サハラの間で:ケニアの大統領
ケニアのルト大統領はモロッコのムハンマド6世国王と面会する計画だが、一方でこれまで西サハラ(サハラ・アラブ民主共和国)とも強い関係を維持してきた。ルト大統領のモロッコ行きは、ガーナ、リベリア、そしておそらくセネガルと西アフリカ諸国を訪問する旅となり、モロッコでは大使館の開設が予定されている。そして次にはモロッコ国王のケニア訪問が計画されている。ケニアは肥料工場の建設を望んでおり、国王の訪問中に開所式を行いたい意向だ。ただ、ケニアはアフリカ連合の総裁ポストを狙っており、西サハラ問題で特定の立場をとることは避けたい。モロッコとの関係を深めながら、アルジェリアとの関係も強化しようとしている。(African Intelligence, 2 Apr. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-est-et-corne/2024/04/02/entre-rabat-et-le-sahara-occidental-william-ruto-sur-une-ligne-de-crete%2C110198293-eve
【EU】
ボレル上級代表、モロッコ外相と電話
EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、ブリタモロッコ外相と電話会談を行い、今ほどEUモロッコ関係が重要な時はないとして、EUとモロッコの協定の将来が危ぶまれる中、新たな刺激(a new impetus)が必要だなどと話しあった。(Europa Press, 4 Apr. 2024)
https://www.europapress.es/internacional/noticia-borrell-considera-mas-importante-nunca-impulsar-relaciones-ue-marruecos-20240404093640.html
https://archive.is/a720X
【フランス】
フランス、西サハラに投資促進
フランスの2つの金融機関、Bipfrance(Banque publique d’investissement 公的投資銀行)とProparco(アフリカ開発に特化した開発銀行)は、西サハラへ活動を展開する許可を外務省からえた。1月末にはナントで「モロッコ・フランス・エコノミックデイズ」と称するフェアーが行われたが、それから2、3週間後、クリストフ・ルクルティモロッコ大使はゲルミン(西サハラの北230kmにある)に行き、CFCIM(カサブランカにあるフランス商工会議所)支所の開所式に出席した。同時に仏語学院による移動式図書館(Bibliotobiss)プロジェクトもスタートした。昨年末、ムハンマド6世が大西洋岸地域の開発を呼びかけて以後、淡水化事業、グリーン水素生産、ダーフラ新港建設、ダーフラ・カサブランカ電線建設、農産品輸出など、ビジネスチャンスは多い。フランスは湾岸諸国、アメリカ、中国などの投資家に遅れを取りたくないと思っている。4月にはフランスのフランク・リステール欧州・外務大臣付貿易・誘致担当大臣がモロッコを訪問する。
西サハラで活動するフランス企業としては、電気・ガス業界を主導するEngie(エンジー)が先鞭をつけ、大きなインフラ事業で役割を果たしてきた。2019年以来、ダーフラで風力発電で淡水化事業を行っている。これまでフランスの主要金融機関から資金調達できる可能性はなかったため、モロッコ国王の持株会社「アル・マダ」のエネルギー部門子会社であるNarevaと組んできた。今やフランス外務省の後ろ盾を得て、ダーフラ・カサブランカ電線事業に熱い視線を注ぐ。
モロッコに14年も暮らしたEngieのCEO、キャサリン・マクレガーは大のモロッコびいきで、2021年に社長になってからはフランス・モロッコ間の外交的緊張を和らげようと奮闘した。3月半ば、彼女はモロッコを訪問し、投資担当大臣やエネルギー大臣と面会している。(Africa Intelligence, 1 Apr. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/04/01/paris-veut-booster-ses-investissements-au-sahara-occidental%2C110198178-art
フランク・リステール貿易相、モロッコを訪問
4月4日、モロッコを訪問したリステール貿易相は、(西サハラの)ダーフラと(モロッコの)カサブランカを繋ぐ高圧電線事業に、フランス開発庁はその傘下にあるProparcoを通じて投資する可能性があることを示唆した。2月末にセジュルネ外相がモロッコを訪問した際、彼は、フランスの立場は明らかであり、それはモロッコの2007年の西サハラ自治案を支持するというものだが、国連安保理の枠内でしか動かない、と述べた。フランスの外交的立場は変わらないものの、西サハラの経済開発もまた支援するというのが、フランスの立場だ。3月31日、モロッコのメディアはフランスの発表を報道し、フランスによるモロッコの西サハラに対する主権の間接的な承認だなどと解釈した。モロッコのフランス人実業家たちも政府の発表を喜んだ。政府が株の23.64%をもつエンジー(Engie)はモロッコ王室の持株会社「アル・マダ」が所有するナヴェラ(Navera)というエネルギー会社と2019年から持株50%ずつの合弁会社を運営している。この会社は、ダーフラ地区で海水の淡水化や風力発電を構想している。
政府が100%所有する仏電力会社(EDF)もある。その社長キャサリン・マッグレガー(Catherine MacGregor)は3月にモロッコを訪れ、モロッコ側の投資相やエネルギー移行相と会談した。EDFは北部タザの風力発電所を建設している。マッグレガー氏は14才になるまでモロッコで育った人物で、マクロン大統領の仏モロッコ関係修復の試みの「シェルパ」とみなされている。
Proparcoはまた、2022年以来(西サハラの)エル=アイウンに支店をもつLaprophanという製薬会社や、西サハラで送金・金融業に従事するCash Plusにも投資している。Mediterrania Capital Partnersは2020年以来モロッコで広く医療事業を営む「アクディタル(Akdital)」に投資しており、それは2024年末、ダーフラにクリニックを開設すると発表している。
2023年11月、ProparcoはMC IVファンドというBpifrance銀行による投資会社と合併した。MC IVファンドは、モロッコ王室の持株会社「アル・マダ」の長年のパートナーだ。Bpifranceはすでに数年、Tamwilcomとも協力している。Tamwilcomは、かつてのCentral Funding Guarantee Fundであり、モロッコの銀行と連携して西サハラでの事業開発のために仕事をしている。
リステール貿易相は1月以降、モロッコを訪問した2番目の閣僚となるが、それは今後一連の閣僚のモロッコ訪問が続く先駆けでもある。ブリュノ・ルメール(経済相)、ジェラルド・ダルマナン(内相)、マルク・フェスノー(農相)、ラシダ・ダティ(文化相)といった閣僚が来る予定となっている。(Le Monde, 5 Apr. 2024)
https://www.lemonde.fr/afrique/article/2024/04/05/la-france-se-dit-prete-a-investir-directement-au-sahara-occidental-au-cote-du-maroc_6226184_3212.html
https://archive.is/0CbYn
ムハンマド6世所有の城、売りに出される
ロートシルト(ロスチャイルド)家が所有していたパリ郊外の城、シャトー・ダルマンヴィリェ(Chateau d’Armainvilliers)は1984年、モロッコ国王ハサン2世が購入したものだが、1999年に国王が亡くなると、王子がそれを相続した。それが今、売りに出されている。価格は4億2500万ユーロ。フランスどころか世界でも一番高い城ではないかと思われる。すでにアジアの富豪が何人か手を挙げているそうだ。1,000ヘクタールの土地に囲まれ、100の部屋をもつ。ハマーム(アラブ風の浴場)もある。なぜハサン2世がこんな城を買ったのか、当時はマスコミも注目しなかったが、ひょっとして何回ものクーデターの危機に遭遇した国王が、逃げる安全な場所を確保しておきたかったのかもしれない。(El Independiente, 13 Apr. 2024)
https://www.elindependiente.com/internacional/2024/04/13/a-la-venta-por-425-millones-de-euros-el-antiguo-castillo-de-mohamed-vi-en-paris/
https://archive.is/I9jFa
【スペイン】
(古い記事)NATOの圧力がサンチェス首相を変えた?
スペインのデジタルメディアEl Cierre Digitalは、2022年4月27日付けで出した記事において、サンチェス首相が西サハラ問題で方針転換した背景には、北大西洋条約機構(NATO)の圧力があったと報じていた。国防省諜報部の部員が、El Cierre Digital紙にそう語ったという。NATOは、ダーフラ港に新たな軍港がつくられるため、カナリア諸島やカーボヴェルデ周辺(すなわちマカロネシア)で影響力を失わないようモロッコの機嫌をとる必要があったという分析だ。NATOは、米国とイスラエルの後ろ盾をえて北アフリカに拡大するモロッコ国王の影響力に注目していたという。(El Cierre Digital, 27 Apr. 2022)
https://elcierredigital.com/investigacion/413684259/otan-presiono-sanchez-autonomia-sahara-control-norte-africa.html
https://archive.is/aVDVC
ENAIRE、地図を修正
西サハラ友の会通信No. 39「ENAIRE、西サハラをモロッコ領と表示」の記事において、ENAIREはそうした地図の使用を弁明していたが、約1月後、ENAIREはモロッコと西サハラの間に線を引いた地図に変更していたことが明らかとなった。前回、El Independiente紙がENAIREの地図の件を報道した4日後、モロッコのメディアはモロッコの勝利を大々的に報じた。しかし、最終的には地図の修正を求めていたポリサリオ戦線の言い分を聞いたかたちだ。(El Independiente, 5 Apr. 2024)
https://www.elindependiente.com/espana/2024/04/05/enaire-rectifica-el-polemico-mapa-y-separa-el-sahara-occidental-de-marruecos/
https://archive.ph/Q5HAR
マドリード商工会議所、西サハラへの投資促進
4月16日(火)、マドリード商工会議所は「スペイン・モロッコビジネスフォーラム」を開催する。名前からするとよくあるイベントのように思われるが、今回のテーマは西サハラのダーフラへの投資で、マドリード市や州政府のロゴが使われている。駐スペインモロッコ大使、ダーフラ地区知事がスピーチを行う。ダーフラ地区の経済ポテンシャルとしては、新港建設、観光、漁業・養殖などがある。スペインのダーフラへの投資の話はこれが最初ではない。2月には、あるスペインの企業がダーフラにホテルを開設するとの報道があった。ポリサリオ戦線はこれを非難した。プブリコ紙がマドリード市に問い合わせたところ、「市の協力は商工会議所との協定に基づくもので、会議はモロッコ大使館が商工会議所に要請して開催された。関心のある企業が参加するというものだ」という答が返ってきた。市としてのミッションとして行っているわけではなく、プロモーションだという。目的は企業が最善の決定をできるよう情報提供するということ、なのだそうだ。マドリード州からの返答では、「協力は協定に基づくもので、州として今回のイベントのスポンサーになっているわけではないし、参加もしない」ということだった。(Público, 9 Apr. 2024)
https://www.publico.es/politica/ayuso-almeida-avalan-foro-empresarial-invertir-sahara-occidental-ocupado-ilegal.html
https://archive.is/Oglry
ポリサリオ戦線、ダーフラ投資フォーラムに抗議
スペイン商工会議所が開催する(西サハラの)ダーフラへの投資フォラームに、ポリサリオ戦線が、もし開催を中止しなければ、他のアクションをとると反発し、商工会議所その他関係機関に不満の意を伝えた。在スペインのポリサリオ戦線代表、アラビ氏は「経済的利益があるからといって国際法に違反していいことにはならなず、この場合、西サハラ人民の人権をそれに従属させてはならない」と述べた。(El Independiente, 12 Apr. 2024)
https://www.elindependiente.com/espana/2024/04/12/el-polisario-exige-la-cancelacion-del-foro-de-inversion-de-camara-de-madrid-y-amenaza-con-adoptar-otras-acciones/
https://archive.is/kWSAT
2月のモロッコ産果物輸入46%増加
スペインのモロッコからの果物輸入は2月、前年同月比で46%増加した。重量では1,290万kgから1,890万kgへ増えた。経済貿易ビジネス省がデータを公表した。4月19日、モロッコ産イチゴに肝炎ウィルスが発見された。今年に入って3度目になる。すでにスペイン国内で市場に出荷されるところで、販売地への配送中、検疫でのウィルス発見が知らされたのだ。当局はただちにその回の輸入分にまったをかけた。
モロッコからの輸入が増えたのは果物だけではなく、野菜もだ。野菜は前年2月の2,780万kgから今年2月の3,530万kgへと、前年同月比で27.07%増えた。野菜も問題になっている。例えば、本紙がある研究所に依頼した検査では、モロッコ産の豆が0.029 mg/kgのエマメクチンB1a安息香酸塩(Emamectin benzoate B1a)を含んでいた。これは欧州委員会の規則No. 293/2013で0.01mg/kg以下に規制されているもので、警告があったにも関わらず、サンチェス政権はこの規制を越えた食品について報告をしなかった。
3月には、2月19日に輸入されたモロッコ産イチゴにA型肝炎ウィルスをもっている微生物が発見されたとして、食料緊急警報システム(RASFF)が政府に緊急措置を要請した。農業団体は輸入品の検査に自分たちも参加させるよう政府に求め、政府はそれを受け入れた。また、農業団体はいわゆる「ミラー条項」の適用を求めた。それは欧州の農家たちが課されている植物防疫上の条件を輸入品にも求めるということだ。しかし、こうした状況であるにもかかわらず、4月のモロッコ産果物野菜の輸入は増大した。(OK Diario, 21 Apr. 2024)
https://okdiario.com/economia/asi-llego-fresa-hepatitis-espana-disparo-importacion-frutas-marruecos-46-febrero-12706481
モロッコ産農水産品、1年で25回の警告
昨年、食料緊急警報システム(RASFF)がモロッコからの農水産品について発した警告が25回に及んでいたことがわかった。それは、魚のアニサキス、豆の糞便性大腸菌(E-coli)、メロンの残留農薬、魚のサルモネラ菌、イチゴのA型肝炎ウィルスなどだ。198回発せられた欧州レベルの警告のうち70%がモロッコからの産品で、139品目がスペイン市場に流れ込んでいる。欧州委員会が発したそうした25回の警告のうち14品目は「深刻、あるいは潜在的に深刻」なレベルに達していた。つまり、摂取により健康に影響があるというレベルだ。(OK Diario, 27 Apr. 2024)
https://okdiario.com/espana/espana-registra-25-alertas-productos-marruecos-ano-anisakis-hepatitis-bacterias-fecales-12726714
ペガサス捜査、再開
スペインの裁判所のホセ・ルイス・カラマ判事はペガサスに関する捜査を再開した。再開の決定は、フランスの当局からの欧州捜査指令を受け取ったからであり、指令にはフランスで2021年に集められた新たな情報が含まれているという。それはフランスのジャーナリスト、弁護士、NGO、政府職員、議員の電話に侵入した形跡があるというもの。スペインでは、サンチェス首相を始め、ロブレス防相、マルラスカ内相、プラナス農相の携帯が狙われたとされている。
2023年7月にカラマ判事が案件を閉じたのは「一時的な棄却」であって、イスラエルからの司法協力が「絶対的に」不足している中で捜査を続けられないと判断したためで、行政に対して外交チャンネルを使って捜査を続けるよう求めたのだった。今回、フランスから情報提供があって捜査を進められると判断し、捜査の再開を決定した。フランスから提供されたものの中には、「侵入の指標(indicators of compromise)」が含まれており、それによってハッカーの侵入があったかどうかを検知できるという。指標には、IPアドレス、ドメインネーム、問題のある添付書類、ネットワークのトラフィックパターン、変則的なユーザーの行動などが含まれる。スペインの国立暗号センターが入手したデータとの照合が可能になると考えられる。(El País, 23 Apr. 2024)
https://elpais.com/espana/2024-04-23/la-audiencia-nacional-reabre-el-caso-del-espionaje-con-pegasus-tras-recibir-datos-de-francia.html
https://archive.ph/wsFyz
新たに2人、ペガサスの被害者に
ペガサス捜査が再開されたことを受けて、被害者が2人名乗り出た。ひとりはモロッコの反体制ジャーナリスト、ヒシャーム・マンスーリー氏(Hicham Mansouri)で、もうひとりはポリサリオ戦線の現ジュネーブ代表、ウッビー・ブシュラーヤー・アル=バシール氏だ。2人のスマホは、スペイン内相のスマホから6.3ギガバイトのデータを盗み出したユーザーと同じアカウントから侵入された。そのアカウントはlinakeller2203@gmail.comで、それはフランスの西サハラ活動家、クロード・マンジャンさんなどのスマホにも侵入している。ウッビー・バシール氏のスマホは2021年3月15日に侵入されたとされ、それはスペインの内相・農相のスマホへの侵入より数ヶ月早い。さらに、マンジャン氏が住むイヴリー・シュル・セーヌ市の市長のスマホも侵入されたという。人口55,000人のこの市は難民キャンプのひとつの集落と姉妹都市協定を結んでいる。(El Independiente, 26 Apr. 2024)
https://www.elindependiente.com/espana/2024/04/26/las-otras-victimas-de-pegasus-que-prueban-la-conexion-de-marruecos-con-el-espionaje-a-robles-y-marlaska/
https://archive.is/2ooyW
国連・文明の連盟のための高級代表の発言
国連・文明の連盟のための高級代表(High Representative for the UN Alliance of Civilizations)という何やら聞いたことないような役職についているのは元スペイン外相で、現在国連事務次長となっているミゲル・アンヘル・モラティノス(Miguel Angel Moratonis)だ。彼は一度ならず、サンチェス政権が西サハラ問題に対する立場を転換したことを支持する発言を行っている。サパテロ政権時代の外相でもあり、サンチェス政権の行動を「誇らしい」とさえ形容した。サパテロ政権時代に政府はモロッコの自治案を支持する考えになっていたので、サンチェス政権の姿勢はそれほどラディカルな転換ではない、とも述べている。また彼は、モロッコとの関係は単に重要だというのではなく、死活的に重要だ、21世紀はアフリカ、地中海、ヨーロッパの世紀だ、そしてその中心的縦軸となるのがスペイン・モロッコ関係だ、モロッコとの関係は戦略的なものだ、と述べている。(El Independiente, 27 Apr. 2024)
https://www.elindependiente.com/espana/2024/04/27/moratinos-confiesa-estar-orgulloso-del-cambio-de-posicion-de-espana-en-el-sahara/
https://archive.is/irhW6
国民党、西サハラ動議を議会に提出
国民党は国会下院本会議に、サンチェス政権がモロッコの西サハラ自治案を支持する立場へと転換したことを批判し、立場を元にもどすよう求める動議を提出することにした。サンチェス政権の立場転換は、政権与党連合を構成するSumarや民族主義派、独立派がそれを受け入れていないため、社会労働党にいくつかの敗北を強いている。国民党の動議はまた、メリリャとセウタの税関がいつオープンになるのか、そのタイムスケジュールを公表するよう求めている。また、動議は、中東和平における2国解決策を支持する立場を再確認し、ウクライナに対してスペインがイギリスと(ジブラルタル海峡をめぐって)交渉できる立場にあることを伝え、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアの独裁政権が行っている人権侵害を非難するよう求めた。とくにベネズエラに関しては国際選挙監視団を派遣し、自由で公正な選挙が行われるよう国際政治の場で主張することを求めた。(Europa Press, 28 Apr. 2024)
https://www.europapress.es/nacional/noticia-pp-llevara-nuevo-congreso-giro-sahara-revocar-apoyo-unilateral-sanchez-marruecos-20240428122956.html
https://archive.is/Adqs1
UAEのNaturgyの買収、反対はなく
サンチェス首相はUAEのムハンマド・ビン・ザーイド・アル=ナヒヤーン大統領と電話会談し、二国間問題は議論せず、中東問題を軸に話し合ったとされるものの、おそらくNaturgyの株買収の件を話し合った可能性がある。サンチェス首相は電話の後、UAEをほめ讃えたが、両国関係が良好でなければそういう発言にはならないだろう。その後、Naturgy株の買収問題は、その動きに近い筋の情報によると、閣僚の反対もなく前に進んでいるそうだ。
計画によれば、UAEのタック(Taq)社とスペインのCriteria Caixa社がそれぞれNaturgyの株の40%を保有することになるようだ。ただ、不確定要因は政治であり、この会社がもともとカタロニアの資本だということで、カタロニアの選挙も近い。また、第二副首相のヨランダ・ディアスは売却に反対だという。(El Mundo, 28 Apr. 2024)
https://www.elmundo.es/economia/2024/04/28/662e9042e85ece6e528b4574.html
https://archive.is/3dXMr
以上。