西サハラ友の会通信 No. 38(2024年4月17日)2023年12月・2024年1月分

 最初のニュース「カタールゲート」は長いので後で読んでいただいてもいいでしょう。カタールゲートの関係者はモロッコゲートの関係者でもあり、捜査の状況は参考になります。ベルギーからのニュースも弁護士を使っての世論操作であり、モロッコの情報操作に利用されているのが議員だけではないということに驚かされます。
 ノルウェーの年金基金がモロッコリン鉱石公社(OCP)を始め、西サハラに関わるビジネスを投資先から除外しているのは注目すべきニュースです。


No. 38 目次

【カタールゲート】
・政治家はどのようにカタールの肩を持ったのか

【モロッコ】
・UAEから西サハラのインフラ支援を取り付ける
・サヘル諸国と開発について会議
・ポーランドのエネルギー企業、4ヶ所を決定
・モロッコはアフリカ人権憲章の批准を拒否
・モロッコ、人権理事会の議長に選出
・モロッコ議長選出の影にイスラエル

【アルジェリア】
・アルジェリアの米国外交への期待
・アルジェリア報道:ベルギーがサハラーウィ自決権を支持
・スペインとの関係修復
・アルジェリア、モロッコの港を経由する積荷の禁止措置

【モーリタニア】
・ゲルゲラート国境の関税を171%値上げ

【スペイン】
・サハラーウィ亡命劇から38年
・トマト生産激減、モロッコからの輸入増大

【ドイツ】
・ドイツ政府、西サハラでの企業活動に保証を与えず

【フランス】
・フランス水素発電、西サハラでのプロジェクトを発表
・サルコジ:モロッコの新たな擁護者
・マクロン大統領のモロッコ訪問:西サハラ
・仏商工会議所、モロッコ「南部」に3拠点

【ベルギー】
・モロッコ側に立ったベルギー人弁護士たち

【ノルウェー】
・ノルウェー年金基金、イスラエル石油会社を除外

【ロシア】
・ロシア・モロッコ外相会談

【中国】
・山東電建、モロッコOCPの石炭火力発電所建設受注

【サウジアラビア】

・サウジ、「西サハラ」の呼称を禁止

【カタールゲート】
政治家はどのようにカタールの肩を持ったのか
 (カタールはヨーロッパへの渡航でビザを免除されるよう、欧州議会議員を通じて働きかけた。贅沢な接待とおそらくは金銭で議員を買収したとの疑惑が持ち上がっている。折しも時はカタールでワールドカップが行われた2022年、買収された欧州議会副議長や元議員、秘書が逮捕され、ビザ問題は棚上げに。このカタールゲートは、モロッコからの賄賂を受け取っていた同じ議員たちのネットワークが基礎にあり、そちらはそちらでベルギー司法当局による捜査が進んでいる。この2つのゲートの根っこは同じだといえる。今回の記事はカタールゲート捜査の進捗を報告したものだ。)
 収賄ネットワークのキーパーソンで、元欧州議会議員(イタリア・社会党)のアントニオ・パンゼリは、自身の減刑と引き換えに当局の捜査に協力した。次に、パンゼリの秘書だったフランチェスコ・ジョルジ(イタリア人)は、カタール、モロッコ、モーリタニアから賄賂をもらって欧州の諸機関での密かなロビー活動に従事したことをすぐに認めた。パンゼリは、ジョルジの妻で欧州議会副議長だったエヴァ・カイリ(ギリシャ選出)が2019年にカタールの高官と密かに約束をし、見返りに25,000ユーロの現金を受け取ったと言っているが、カイリはそれを否定している。その後カイリは副議長職を解かれ、所属する政党からも除名され、4ヶ月予防拘禁に置かれた後、釈放され、今無実を訴えている。自宅にあったお金が外国に由来するものだとか、彼女と夫(フランチェスコ・ジョルジ)がパンゼリと一緒にロビー活動をしていたことなど、何も知らなかったと言い張っている。
 しかし、カイリはジョルジへの2020年11月のあるメッセージで、ジョルジを「いくつかの政府に対する信頼されたアドバイザー」と評しており、ジョルジが行っている活動を知っていたと考えられるが、彼女は彼は欧州議会でしか活動していないなどと言っている。
 カイリの元秘書の一人は警察に、中東のこととなるとカイリは必ずジョルジの意見を聞き、みなそれに従わなければならなかったと証言している。ジョルジは日に3回も4回も事務所に来ていて、もし彼がいなかったら彼女が彼に電話していたという。警察は、カタール人のビザ免除措置に関して、彼女がパンゼリ、ジョルジ、カタールの当時の外相で現首相を含む高官と緊密に連絡を取り合い、ロビー活動をしていたことを把握している。彼らとのやりとりを見ると、他にもロビーに関わっていたヨーロッパの関係者がおり、FIFA会長のジャンニ・インファンティノやフランスサッカー連盟会長のノエル・ル・グラエもそうだという。
 話は、2018年、パンゼリが欧州議会人権小委員会の委員長で、フランチェスコ・ジョルジが彼の秘書をしていた頃、カタールの現労働大臣で当時同国の人権委員会の委員長をしていたアリー・アル=マッリー(Ali Al Marri)と関係をもったところまで遡る。2018年の終わり、アル=マッリはパンゼリに最初の任務を課した。それはカタール人がEUのシェンゲン地域に入るのにビザを免除される措置を実現することだった。カタールは、その宿敵UAEとサウジアラビアが2017年からカタールに対する制裁措置を主導していることに対抗したかったのだ。
 ジョルジが2020年つくった行動計画なるものによると2022年ワールドカップまでにビザ免除措置を実現するとなっていた。
 EUのビザ政策の意思決定過程ではギリシャが鍵となるので、ギリシャ・コネクションをもつエヴァ・カイリ(ギリシャ選出)、欧州委員会副委員長のマルガリティス・シナス(Margaritis Schinas)、ディミトリス・アヴラモポウロス(Dimitris Avramopoulos)にアプローチすることになった。アヴラモポウロスは2019年まで欧州委員会の移民担当コミッショナーであり、ビザ問題の管轄だった。当時、欧州委員会はカタール人のビザ免除の要請を一顧だにしなかった。人権状況がネックとなっていたからだ。そこでパンゼリとジョルジは、アヴラモポウロスとアル=マッリの会合を2019年3月12日にストラスブールでアレンジし、さらにカタールの外相だったムハンマド・アル=タニ(Mohamed Al Thani)との会合を9月26日にセットした。その2、3週間後、カタールは「ブラックリスト国」から外された。アヴラモポウロスが作成したカタールに関する「ポジティブ」な報告書のおかげだった。
 2019年12月、アヴラモポウロスが欧州委員会を去った時、パンゼリはすでに欧州議会をやめていた。パンゼリは早速自分が設立した人権団体「Fight Impunity(不処罰と闘う)」にアヴラモポウロスを誘った。この人権団体はカタールが資金援助していたと考えられ、パンゼリのロビー活動の隠れ蓑になっていた可能性がある。
 (ロビー活動の)協定署名は2020年2月にドーハで行われた可能性が高いが、その時、カイリ、アヴラモポウロス、マルク・タラベラ(フランス選出欧州議会議員ですでに起訴されている)、パンゼリ、ジョルジらはすべてカタール側が費用をもつかたちで招待されており、高級なヤスミン・パレスレストランで夕食をとったりしている。スペインの欧州議会議員(社会党系)イグナチオ・サンチェス・アモールの秘書、フアン・ホセ・ロペスもそこにいた。
 ドーハからもどってほどなく、アヴロモポウロスはカタールのビザ免除実現に向けて動き始めた。問題は、近く退任する彼の後任となるスウェーデン人のイヴァ・ヨハンソンへの引き継ぎだった。パンゼリとジョルジは提案を通しやすくするためにクウェートとオマーンを合わせてひとつのパッケージにすることを提案した。2020年2月20日、カタールの外相アル=タニからアヴラモポウロスにメッセージが入った。「あのスウェーデン人は問題だ」ということだった。アヴロモポウロスは「考えがある」としてカイリに連絡をとった。カイリはヨハンソンのコミッショナー就任の日、彼に「クウェート・オマーン・カタールパッケージ」について(部下に)指示すべきだと進言した。警察に対しカイリは「これは政治であってロビーではない。市民にとって有益と思えば、やるべきだ」と弁明する。
 ルールとして欧州委員会委員は辞めた後2年間、委員会へのロビーを禁止されている。アヴロモポウロスはこの件で何か報酬を得たのだろうか。2021年2月、欧州委員会は彼がFight Impunityから役員報酬をもらうことを了承した。当時、Fight Impunityから報酬を得ていた役員はたった一人、彼だけだった。月額5,000ユーロ(税引き前)。同団体の事務職員によると、彼はあまり仕事をしていなかったという。
 2020年10月始め、ジョルジはタラベラに、欧州議会代表団がアラビア半島諸国と会議を行う際の行動計画を送った。それによると、「議論の途中で、カイリがビザ問題の担当となる議員を指名したいと言うので、君からできると名乗り出てくれ」ということだった。カイリは、「あれはアドバイスであって、私はジョルジの言う通りにはならない」と警察に答えた。ジョルジは、結局行動計画は実行されなかった、なぜなら代表団長がタラベラにその任務を与えたからだ。タラベラはお金は受け取っていないと言っている。
 2020年から2021年にかけてロビーは続いた。カイリが欧州委員会の内務・移民担当部局長でギリシャ人のディミトリス・ギオタコスにビザ問題で圧力をかけた。パンゼリとジョルジはギリシャ人の欧州委員会副委員長やギリシャの首相らと面会した。ギリシャ側の「抵抗」をなくすためだったと考えられる。しかし、ロビーは成果を生んだとは言えない。
 2022年4月22日、カイリは欧州委員会の3人のキーマン、つまりボレル外交安全保障担当上級代表、ヨハンソン移民担当コミッショナー、シナス副委員長に手紙でビザ免除措置を訴えた。それから1週間後、欧州委員会はクウェートとカタールにビザを免除する提案を承認した。カイリはその年の1月に欧州議会副議長に選出されていた。そこで議長になったマルタ出身のロベルタ・メツォラに「パンゼリ・ジョルジの団体の戦略に関連して」、自分は問題ないと思っているとメッセージを入れた。4ヶ月後、カイリはメツォラのためにギリシャでの休暇旅行をアレンジした。ガイド付きで、最高級レストランで夕食。「何も考えなくていいから、人数だけ教えてちょうだい」とカイリは聞いている。
 2022年11月20日、カイリはプライベートな旅行としてカタールに招待され、ワールドカップの開会試合を観戦した。彼女のミッションは移民担当コミッショナー、イヴァ・ヨハンソンの上司にあたるシナス欧州委員会副委員長の説得であり、シナスもドーハに招待されていた。EU理事会はカタールのビザ免除を承認したものの、ETIAS(欧州渡航情報認証)制度が始まるのを待ってからという条件を付けた。ETIASというのは、米国のESTAのような、シェンゲン地域へのビザ無し渡航の事前審査制度であり、2025年から開始される。カタールはそれまで待てないと思っていた。そこでカイリはシナスの説得にあたることになった。結果は上々。最終的な議会・理事会・委員会の3者協議には、担当のヨハンソンではなく、その上司のシナスが参加することになった。シナスはこのドーハへの旅でカタールの「すばらしい進歩」を称賛するツイートを流すようになっていた。
 11月20日の夜、カイリが試合を観戦した席はVVIP (Very Very Important People)席だった。そこにはカタールの首長タミーム・アル=サーニーエミールやサウジアラビアのムハンマド皇太子、ヨルダン皇太子、サッカー選手のベックマンがいた。試合後、彼女はFIFA代表団が宿泊しているホテルで夕食会を開き、フランスサッカー協会会長のノエル・ル・グラエの一行をそこに招いた。カイリは彼らに、カタールを非難する決議が欧州議会で用意されており、それに反対するよう、マクロン大統領から彼の政党の欧州議会議員に働きかけてほしいと頼んだ。
 彼女自身、11月21日にはストラスブールに戻り、議会に出て、「カタールは不可能なことを達成した」とカタールを弁護する発言を行った。委員会での投票は24日。23日、カイリはマクロン大統領の秘書に電話をかけ、決議に賛成してもいいがセクションAを拒否するよう、議員に指示してほしいと頼んだ。セクションAは移民労働者の状況を非難するとともに、カタールが贈賄と汚職によってワールドカップの開催地となったことを批判する部分だった。
 しかし、マクロン大統領へのロビーはうまく機能しなかった。フランスの欧州議会議員ナタリー・ロワソーは大統領府からも外務省からもカタールについて何の連絡も受けなかったという。一方、カイリからはさかんにWhatsAppメッセージを受け取った。彼女が決議を支持していることを非難する内容だった。
 カイリはカタールのEU大使の指示を受けていたようだ。大使はカイリに「決議をなくすために全力を尽くしてほしい。王室から電話があった。国王もFIFAも大変にお怒りだ」と、11月23日にカイリにメッセージを送っている。翌24日(決議投票日)、大使は再びカイリにメッセージを送った。「我が国政府はいかなる状況下でもセクションAを受け入れない。投票でそこを削除してほしい。」しかし、カイリの努力は無駄に終わった。彼女自身は、決議には賛成し、カタールに批判的なセクションについて棄権または反対した。
 話をビザ免除措置にもどそう。決議よりそっちが重要だった。カイリはフランスサッカー連盟の渉外担当者に電話を入れ、マクロン大統領の右腕にビザ免除措置に賛成すべきだと伝えてほしいと頼んだ。在ブリュッセルのカタール大使もカイリに「あなたを当てにしている」とメッセージを入れて圧力をかけた。
 しかし、ここで問題が発生した。クウェートが死刑囚6人の処刑を実行したのだ。しかも、ビザ問題でキーパーソンとなるシナスコミッショナーのクウェート訪問中にだ。シナスは怒りのメッセージをツイッターに流した。カイリは解決策を模索し、クウェートが死刑の執行停止を約束すればビザ免除を適用するということにした。
 しかし、そこでまたもや問題が発生。今度は議会内「リニュー(刷新)」会派が、ETIASの実施までビザ免除措置を延期するという提案をした。これは理事会が課した条件と同じだった。カイリは提案のドラフターであるスウェーデンの議員と面会し、25分もカタールについてまくしたてた。スウェーデンの議員は「すごく迷惑だった。会談は奇襲攻撃だった」などと警察に語っている。
 11月30日、投票の前日、カイリはスペインの欧州議会議員ハビエル・サルサレホス(国民党系)に「当初のラインを堅持すべきだ。リニュー会派の修正案は拒否すべきだ」と伝えた。サルサレホスは「それではまるごと拒否しよう。国民党系議員の投票については私が責任者だ」と回答している。
 12月1日、投票日、結果は採択だった。パンゼリとジョルジはカイリの努力を称賛し、「プロセスを阻止しようとする動きを封じ込めることができた」とカタール宛の報告に書いた。
 カイリは警察の取調べに対して、ジョルジとパンゼリに意見を求めたのは自分からであり、自分は中東・北アフリカについての知識が乏しい、などと答えている。
 欧州議会の最終決定は、12月13日の本会議で行われることになっていた。カタールでのワールドカップはすでに12月3日に始まっていたが、決勝戦までには間に合いそうだった。
 しかし、12月9日、パンゼリ、ジョルジ、カイリの3人はベルギーの司法当局に逮捕され、スキャンダルが明るみに出ることになった。12月12日、欧州議会はカイリを副議長職から解任。3日後、汚職が関係すると疑われる3ヶ国に対するビザ免除措置に関する決議は、一旦棚上げにする決定がなされた。現在に至るまで、決議は宙に浮いたままだ。(infoLibre, 8 Dec. 2023)
https://www.infolibre.es/economia/policia-belga-desvela-lobby-feroz-eva-kaili-favor-qatar-cortejo-metsola-borrell-decena-eurodiputados_1_1661008.html
 
【モロッコ】
UAEから西サハラのインフラ支援を取り付ける
 12月4日(月)、ムハンマド6世国王は5年ぶりにアラブ首長国連邦(UAE)を公式訪問し、インフラ建設費用にかかる12本の協定に署名した。その中にはダーフラの港やメリリャ近郊のナドール港の建設が含まれていた。また、ダーフラの空港近代化や観光開発に対する投資も含まれていた。UAEはフランスに次いでモロッコへの投資が多い国だ。(El País, 5 Dec. 2023)
https://elpais.com/economia/2023-12-05/mohamed-vi-impulsa-con-emiratos-arabes-las-infraestructuras-del-futuro-de-marruecos-en-su-primer-viaje-oficial-en-cinco-anos.html

サヘル諸国と開発について会議
 12月23日、モロッコが主催し、ニジェール、マリ、ブルキナファソ、チャドの外相がマラケシュに集まり、サヘル諸国の大西洋へのアクセスについて議論した。(注記:大西洋とはダーフラの新港を指しており、西サハラ占領を規制事実化するのにサヘル諸国を巻き込もうという考え。)(Swissinfo/EFE, 23 Dec. 2023)
https://www.swissinfo.ch/spa/marruecos-sahel_marruecos-estudia-con-mali–n%C3%ADger–burkina-faso-y-chad-promover-el-desarrollo-en-el-sahel/49083004

ポーランドのエネルギー企業、4ヶ所を決定
 ポーランドの再生可能エネルギー企業、グリーンキャピタル社は、モロッコに2つの子会社を設立した。今回、グリーンキャピタル社が風力発電を行う地点を4ヶ所決定したとがわかった。それらは、ウナガ(Ounagha)というエッサウィラから25kmの町、西サハラのエル=アイウンから100kmにあるブークラー(リン鉱石採掘地)、ハッサナ、ダーフラである。(Le Desk, 1 Jan. 2024)
https://ledesk.ma/enoff/enr-le-polonais-green-capital-identifie-quatre-localites-pour-ses-projets-eoliens/

モロッコはアフリカ人権憲章の批准を拒否
 1月8日、ポリサリオ戦線ジュネーブ担当のウッビー・ブシャラーヤー・アル=バシール氏は、記者発表用の声明で、モロッコは西サハラを軍事占領し、アフリカ人権及び人民の権利憲章の批准を拒否しており、国連人権理事会の議長になることはできないと述べた。もし、モロッコが議長国に選出されたら、国際機関の機能不全をさらに証明することになる言わなければならない。モロッコはアフリカ人権及び人民の権利憲章の批准を拒否している唯一の国である。(L’Expression, 9 Jan. 2024)
https://www.lexpressiondz.com/internationale/le-maroc-ne-peut-presider-le-conseil-des-droits-de-l-homme-377503

モロッコ、人権理事会の議長に選出
 10月10日、国連人権理事会はモロッコのジュネーブ大使であるオマール・ズニーベル氏(Omar Zniber)を2024年の議長として選出した。人権理事会メンバー国は47ヶ国で、選挙は無記名投票で行われた。対抗馬は南アフリカのニコシ大使で、投票の内訳は、ズニベール氏30票、ニコシ氏17票だった。2023年12月に選出された副議長国はインドネシア、リトアニア、パラグアイ、フィンランドの各大使が務めている。(Office of the High Commissioner on Human Rights, 10 Jan. 2024)
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2024/01/human-rights-council-elects-omar-zniber-morocco-serve-its-president-2024

モロッコ議長選出の影にイスラエル
 アルジェリアのメディアによると、モロッコが人権理事会議長国に選ばれた背景にはイスラエルの役割があったという。南アフリカは17ヶ国の票しか取れなかった。もし南アフリカが議長国になっていたら、イスラエルやアメリカにとって大変な脅威になっていただろう。その点、モロッコならイスラエルは心安らかだ。2020年、人権理事会メンバー国の改選があった際、192ヶ国の投票で15ヶ国が選ばれた。アフリカではセネガル、コートジボワール、マラウィ、ガボンだ。モロッコはたったの1票(モロッコ自身の票!)しか得られなかった。(Algerie Patriotique, 13 Jan. 2024)
https://www.algeriepatriotique.com/2024/01/13/comment-et-pourquoi-israel-a-fait-elire-le-maroc-a-la-presidence-du-cdh-de-lonu/

【アルジェリア】
アルジェリアの米国外交への期待
 アルジェリアのメディアで、最近の米国の対モロッコ外交の変化への期待感が高まっている。在アルジェリア米国大使のチンドゥーフ訪問が2度続いたためだ。最初の訪問は11月16日で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が主宰した援助国会合に出席するためで、そこでエリザベス・ムーア・オービン大使は、米国は国連のプロセスを支持すると強調した。これはバイデン政権の方針であり、変わったところはない。しかし、大使のチンドゥーフ訪問自体、モロッコのメディアの反発を招いた。2度目の訪問は11月29日で、サハラーウィ女性と一緒に撮った写真が物議をかもした。背景に、西サハラの旗と ブラーヒーム大統領の写真があったのだ。アルジェリアのメディアは、それは米国の西サハラへの支持を暗に示した外交的行動だと評した。(Algerie Focus, 3 dec. 2023)
https://www.algerie-focus.com/sahara-occidental-les-etats-unis-redefinissent-leur-position-face-a-la-question-marocaine/

アルジェリア報道:ベルギーがサハラーウィ自決権を支持
 アルジェリアの報道によると、ベルギー外務省運営委員会の委員長代理を務めるテオドーラ・ヘンツィス(Théodora Gentzis)氏は、第4回アルジェリア・ベルギー二国間政治協議の場で、西サハラの自決権を支持すると述べた。アルジェリアからはルネス・マグラマネ外務事務次官が出席し、協議の共同司会を務めた。ベルギーでは前の週にRTBFテレビ局がモロッコの欧州政治家に対する贈賄問題を取り上げていた。(ANN: Algerian News Network, 13 Dec. 2023 )
https://anndz.dz/fr/2023/12/13/sahara-occidental-la-belgique-soutient-le-droit-a-lautodetermination-du-peuple-sahraoui/

スペインとの関係修復
 昨年秋からアルジェリアとスペインの関係は回復に向かい、今や完全に元に戻ったといえる。その理由は、スペインのサンチェス首相の昨年秋の国連総会のスピーチだ。サンチェス首相は国連で、西サハラ問題について、国連憲章及び安保理決議に基づき、双方に受け入れ可能な政治的解決を支持すると表明した。また、国連事務総長特使の努力を支持するとも述べた。(L’Expression, 13 Jan. 2024)
https://www.lexpressiondz.com/nationale/le-degel-acte-377641

アルジェリア、モロッコの港を経由する積荷の禁止措置
 1月10日、スペインとの商業取引を再開した日、アルジェリア銀行協会は加盟銀行に対してモロッコの港を経由する商品の輸入に対する決済を行わないよう通知を出した。これまでモロッコのタンジェ港がアルジェリア向け貨物船の経由地となっていたが、これからはアルヘシラス(ジブラルタル海峡)、ヴァレンシア、バルセロナなどスペインの港がタンジェ港にとって代わる。ただ、アルジェリアの輸入業者にも影響があるため、1月12日までに積み込まれた輸入品については決済を行うよう、29日に追加の通知を行った。(TSA-Algerie, 31 Jan. 2024)
https://www.tsa-algerie.com/boycott-des-ports-marocains-lalgerie-prend-une-nouvelle-mesure/

【モーリタニア】
ゲルゲラート国境の関税を171%値上げ
 モーリタニアが西サハラ南部のゲルゲラートの国境での関税を突然171%値上げし、モロッコやモーリタニアの業者を驚かせている。これまで1,600ユーロ払っていたトラックは4,600ユーロ払わなければならなくなった。モロッコやモーリタニアの野菜果物卸売業者は小売価格を上げなければならないと言う。この措置は、モロッコのドローンが西サハラ領内でモーリタニアの民間人を殺害していることへの報復とみられている。(Maghreb Online, 7 Jan. 2024)
https://www.moroccomail.fr/2024/01/07/mauritanie-maroc-attaques-au-drone-orpailleurs-eleveurs-gleibat-el-foula-bir-moghrein/

【スペイン】
サハラーウィ亡命劇から38年
 1985年9月、21人のサハラーウィの青年たちがモロッコからの劇的な逃避行を実行し、セウタに逃げ込んだ。モロッコは21人の引き渡しを求めたが、スペイン国内のメディアがさかんに報じ、人権団体も彼らの保護を主張したため、政府も引き渡すわけにはいかず、彼らをセウタで収容し、最後はチュニジア経由でアルジェリアの難民キャンプへ亡命させた。あれから38年。当時の逃避行のメンバーたちはスペインのマラガ市の郊外に集まった。彼らはマドリード協定を非難し、モロッコ軍が行ったジェノサイドや、スペインがモロッコ軍の侵略をまったく止めなかったことなどを批判した。(Grupo de los 21, 10 Dec. 2023)
https://espacioseuropeos.com/2023/12/reunion-en-malaga/

トマト生産激減、モロッコからの輸入増大
 2、3週間前、EUトマト市場モニター(EU tomato market observatory)の会議が行われ、欧州委員会自身はスペインのトマト栽培地が2035年までに21.5%、生産が22%落ちるとの予測を提示した。一方、モロッコからのトマト輸入は増えると予測した。そう報告したのは、EUの会議に出席したCOAG(スペイン農業畜産業連絡協議会)の果物野菜部門担当、アンドレス・ゴンゴラ氏(Andrés Góngora)だ。
 彼によると、モロッコ産を始め第三国の農産物を輸入すると、すべての欧州諸国に被害をもたらすが、とりわけスペインに大きなダメージを与える。このままだとスペインは2035年までに輸入超過に転じてしまう。
 EUの貿易統計を見れば、モロッコ産トマトの輸入がスペインのトマト栽培を害しているさまが見て取れる。モロッコからのトマトの輸入は2013年から2022年にかけて52%増大した。ただ、トルコからのトマト輸入も同じ時期に4位に増えている。
 ゴンゴラ氏は、輸入品も欧州の基準に従ったものでなければならないと主張する。
 さらに、10月からモロッコはトマトやタマネギ、じゃがいも栽培に補助金を出す。COAGによれば、補助金額はトマトの場合ヘクタール当たり3,600から6,300ユーロになるという。加えて、モロッコの生産者は2億ユーロ相当の窒素肥料と60万トンのリン肥料を補助してもらうという。
 ゴンゴラ氏は、農産品輸入の規制緩和は進めるとしても、農産物輸出促進の補助金を違法と言えるほどまでに受けている国からの輸入はダンピングに等しいと語る。彼は、欧州委員会がそうと知っていて救済しようとしないと批判する。「逆に、欧州委員会は生産者を見捨てており、企業は海外で安く生産してEU市場に輸出攻勢をかけている」という。(Voz Populi, 16 Dec. 2023)
https://www.vozpopuli.com/economia_y_finanzas/marruecos-espana-tomates.html

【ドイツ】
ドイツ政府、西サハラでの企業活動に保証を与えず
 ドイツ連邦議会のアリー・アル=ダイラミー議員(左翼党)は、政府がシーメンス・エネルギー社に150億ユーロ相当の政府保証をつける件について、ロベルト・ハベック経済・気候保証大臣に質問書を提出した。シーメンス・エネルギー社は占領地西サハラでビジネスを行っている。11月15日に出された大臣からの回答は、政府は西サハラでのプロジェクトを支持しない、政府保証は西サハラを除外する、というものだった。(Deutscher Bundestag, 13 Nov. 2023)
https://dserver.bundestag.de/btd/20/094/2009409.pdf

【フランス】
フランス水素発電、西サハラでのプロジェクトを発表
 11月15日、フランスのHDFエネルギー社はモロッコのファルコン・キャピタル・ダーフラ社と8GWのグリーン水素発電事業を「モロッコのダーフラ地域」で行うと発表した。プロジェクトは「白い砂丘(White Dunes)」と呼ばれ、2025年に建設を開始し、2028年に生産を始める。8GWの水素発電を支えるのは、10GWの風力発電と7GWの太陽光発電だ。今月、モロッコ政府は2024年度予算でファルコンプロジェクトを始めとする一連の再生可能エネルギー事業に15万ヘクタールの「公用地(public land)」を提供すると発表した。HDFエネルギー社の記者発表もこの面積を確認している。
 モロッコの再生可能エネルギーは実際には多くが西サハラで生産されている。2030年までに西サハラはモロッコ全体の風力発電の47.20%を、また太陽光発電の32.64%を生産するようになると推測される。(Western Sahara Resource Watch, 30 Nov. 2023)
https://wsrw.org/en/news/hdf-energy-announces-dirty-green-hydrogen-plans-on-occupied-land

サルコジ:モロッコの新たな擁護者
 最近、スペインのアンテナ3(テレビ局)の「Espejo Público」(大衆の鏡)という番組で、元フランス大統領ニコラス・サルコジ氏は、改めて西サハラに対するモロッコの主権を支持する発言を行った。彼の近著『闘いの時(Le Temps des combats)』を紹介しながら、「サハラーウィ共和国は必要なのか」との疑問を投げかけた。サルコジ氏の論理は、ムハンマド6世がイスラム過激派を封じ込める能力をもち、そのためモロッコが西サハラを統治するのも当然だというものだ。彼の意見はフランス右派を代表するものであり、共和党を率いるエリック・シオッティ(Eric Ciotti)も同様の意見を述べている。サルコジ氏は著書の中で、西サハラ問題においてモロッコを支持することはフランスの「戦略的利益」であると述べ、独立してやっていけるかどうかあやしいサハラーウィ共和国は無視すべきだと、マクロン大統領に提案している。(Canarias Semanal, 14 Dec. 2023)
https://canarias-semanal.org/art/35410/sarkozy-el-arquitecto-de-la-alianza-franco-marroqui-y-su-vision-del-sahara-occidental

マクロン大統領のモロッコ訪問:西サハラ
 延期が重ねられていたマクロン大統領のモロッコ訪問の準備が進んでいる。西サハラ問題については、モロッコはモロッコの西サハラに対する主権承認を求めているが、フランスはそこには踏み込まず、しかし西サハラへのフランス企業進出を進めたい考えだ。エル=アイウンとダーフラでフランス文化に関する事業を行いたいと考えている。(Africa Intelligence, 18 Jan. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/01/18/dans-les-coulisses-des-preparatifs-de-la-visite-d-emmanuel-macron-a-rabat%2C110149139-eve

仏商工会議所、モロッコ「南部」に3拠点
 フランス商工会議所はアガディール(モロッコ)、エル=アイウン(西サハラ)、ダーフラ(西サハラ)に次いでゲルミン(モロッコ)にも支部を設置する。2月7日、8日に開所式を行う。在モロッコ仏大使も出席する。これによって3つの地域投資センターが完成する。Dakhla-Oued-Eddahab、Laayoune-Sakia El Hamra、そしてGuelmin-Oued Nounで、それらを貫くテーマは「ブルーエコノミー」すなわち大西洋沿岸経済ということだ。ゲルミンはグリーン水素を生産するポテンシャルが高いということでとくに人気がある。(Africa Intelligence, 29 Jan. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/01/29/la-chambre-francaise-de-commerce-et-d-industrie-du-maroc-se-renforce-dans-le-sud%2C110152862-bre

【ベルギー】
モロッコ側に立ったベルギー人弁護士たち
 グデイム・イジーク裁判を傍聴したベルギー人弁護士が3人いた。彼らはモロッコの依頼を受けていた。宮殿に宿泊し、ディナーを供され、報酬を払われ、ムハンマド6世のパーティーに招待されていた。2019年のFacebookに、ソフィー・ミシェズ(Sophie Michez)とムハンマド6世が一緒に写っている。それは国王の戴冠記念日のために用意された高官たち用の席だった。
 グデイム・イジーク裁判の控訴審にはベルギー弁護士協会が傍聴団を派遣した、とされる。メンバーはピエール・ルグロ(Pierre Legros)(元ブリュッセルフランス語弁護士会会長)、ソフィー・ミシェズ、アンドレ・マルタン・キャロンゴジ(André Martin Karongoji)、エマニュエル・カルリエ(Emmanuel Carlier)だった。驚くべきことに、裁判傍聴後彼らはモロッコのメディアのインタビューを受け、モロッコとブリュッセルで記者会見を開き、裁判は「模範的」だったとの見解を発表した。
 グデイム・イジーク被告らの弁護をしたイングリッド・メトン弁護士は信じられないと言った。ベルギーの弁護士たちが見解を発表した時、彼女はすでに自白が拷問によって取られたことを非難していたし、公判では西サハラを「占領地」と呼んだことで裁判長から脅されていた、被告との面会も許されず、起訴状も見ることができないといった事実を非難していた、という。どこを「模範的」というのかわからない、と彼女は言う。
 そこで本紙取材班は、ベルギー弁護士会にこの傍聴団派遣の経緯について尋ねた。そこで弁護士会長事務所の事務長から返ってきた答えは、「その4人が傍聴団として派遣されたというのは知らない」、また正式な報告書もないというものだった。
 そこでピエール・ルグロ氏に連絡をとると、彼は、彼に依頼をしたのはモロッコであり、自分はそのことを隠したことはないと述べた。ルグロ氏は有名な弁護士であり、ロラン王子のアドバイザーでもある。しかし、当時の報道をみても、モロッコの依頼によるなどという話はまったく書かれていない。
 要するに、これらベルギーの弁護士たちはモロッコによって「選ばれ」、その政治的裁判を分析したということだ。彼らの見解はNGOなど多くの他の傍聴者たちの見解とは真逆のものとなった。それでもルグロ氏は中立性が欠如していたとは認めない。「私は根本的に私の意に反するようなことは見なかった。すべての公判に出たわけではないし、裁判全体を見たわけでもないが、私の欲するものにはアクセスできた。被告の弁護人、民間団体、そして検察にも」と述べた。
 次に、エマニュエル・カルリエ弁護士に連絡を取った。カルリエ氏もモロッコの内務省からの依頼であったことを認めた。ただ、報酬をもらったのかという問いには「弁護士として、料金を述べることはない。払われたとしても、象徴的なレベルだ」と答えた。発表した見解が真逆だった点については「われわれは裁判の是非について意見を述べるために行ったわけではない。私には、被告側も自由にしゃべれているように見えた」と答えた。そして、傍聴団の独立性が問題になっている点については、「知っている。しかし、だからといってわれわれの傍聴団を非難することはできない。あの裁判はモロッコとアルジェリアの西サハラをめぐる地政学の反映に他ならない。傍聴者は、モロッコかアルジェリアか、それぞれ味方するところがあり、いずれの場合も独立性というのはありえない」と述べた。
 カロンゴジ弁護士も中立性の欠如という批判は当たらないという。「モロッコの支払いを受けたとしても、それは私の観察には影響を及ぼさなかった。モロッコが私の行動を規定したわけではない。この傍聴団への参加をもちかけたのはピエール・ルグロだった。彼はモロッコ政府の監督を受けるが、君は自由に傍聴してくれと言っていた。私たちは宮殿(ラバトの有名5スターホテル)に泊まった。モロッコを弁護したという気はしない」と述べた。
 ソフィー・ミシェズ弁護士は、裁判の後、モロッコのメディアに何度も登場し、モロッコでの西サハラとチンドゥーフ難民キャンプに関する会議にも参加した。彼女はグデイム・イジーク裁判を傍聴したこと、国連の場においてチンドゥーフ難民キャンプの人道援助に絡む汚職を非難した。
 本誌の取材の範囲では、ミシェズ氏は西サハラにも難民キャンプにも行ったことはない。何度も連絡を入れたが、本紙の質問にはまったく答えなかった。
 2019年、ソフィー・ミシェズ氏はムハンマド6世国王の戴冠記念日に国王と握手している。彼女のFacebookによれば、彼女は儀典担当部局から個人としての招待を受けたという。また、彼女はタンジェの高級ホテルでポーズを取っている写真も載せている。本誌の調査によれば、戴冠記念式典に招待された人たちはみな王室がその費用を出していた。さらに、モロッコ友好協会(Les Amis du Maroc)主催の会議で、ラティーファ・アイト・バアラー(Latifa Aït-Baala)やフランシス・デルプレ(Francis Delprée)と一緒にいる写真がある。この2人は、「影響を受けるベルギー」という本紙の別の記事に登場する政治家たちだ。
 ベルギー弁護士会会長事務所の事務長によると、弁護士がクライアントの立場を表明するのは何ら倫理規程に違反しない。また、クライアントの名を明かさないのも、そう求められればそうするだろう、という。
 モロッコの反体制ジャーナリストでフランスに亡命しているヒシャーム・マンスーリー(Hicham Mansouri)氏は、「モロッコでは、体制と秘密警察が作り上げる誹謗中傷を目的とするメディアがある。司法と警察と秘密警察とメディアが一緒になって動くマシーンのようなもので、世論を操作するのに使われる。とくに弁護士のような偽の専門家を使う。お金を受け取ってそれに加担する人たちもいる。非常に効果的だ。誰も彼らが言っていることをチェックしたりしない」と述べる。(RTBF Actus, 15 Dec. 2023)
https://www.rtbf.be/article/investigation-ces-avocats-belges-qui-defendent-discretement-les-interets-du-maroc-11261659

【ノルウェー】
ノルウェー年金基金、イスラエル石油会社を除外
 ノルウェー年金基金(1兆5,000億ドルの資産)は12月18日、イスラエルの石油開発会社デレック・グループを投資の対象から除外したことを明らかにした。投資額は5,700万ドルだった。理由は、デレック・グループの子会社NewMed Energryが2022年12月に西サハラ沖合での石油探索事業の契約を行ったからである。ノルウェー年金基金はデレック・グループの2番目の投資者であり、株の3%を保有していた。12月18日に公表された(作成は5月30日)同基金の倫理評議会による15頁におよぶ分析では、モロッコは西サハラの資源に対する法的、主権的権利をもたないと述べられている。
 2016年にも、ノルウェー年金基金は米国のコスモス・エネルギー社とそのイギリスのパートナーであるケアン・エネルギー社を、西サハラ沖合での同様の石油採掘を理由に投資対象から外したという経緯がある。2005年には、米国のケール・マッギー社(Kerr-McGee)を西サハラ沖合での石油採掘を理由に除外したので、デレック・グループは4社目ということになる。当然ながら、ノルウェー年金基金はモロッコリン鉱石公社(OCP)も除外している。
 デレック・グループに投資している会社として、ドイツ銀行(Deutsche Bank)、バンガードグループ、ブラックロックの3社が知られている。(Western Sahara Resource Watch, 19 Dec. 2023)
https://wsrw.org/en/news/norway-excludes-israeli-oil-company-over-western-sahara

【ロシア】
ロシア・モロッコ外相会談
 12月20日、ロシアのラブロフ外相はモロッコのブリタ外相とマラケシュで会談し、共同記者会見で以下のようなコメントを行った。
 まず、両外相はムハンマド6世国王とプーチン大統領の2002年の戦略的パートナーシップに関する宣言と2016年の詳細な戦略的パートナーシップに関する声明について、両文書が今以て有効であることを確認し、その実行に向けての議論を行った。
 西サハラ問題については、ロシアは進展を見たいと思っている。ロシアのアプローチは従来と変わらず、バランスがとれ、バイアスはない。ロシアは、安保理決議に基づいた持続的で長期的な解決に向けて速やかな進展があるよう支援を行う。ロシアは国連事務総長特使を支持し、MINURSOは地域の安定に役割を果たしており、その活動が実効的であるために必要な条件を確保することが必要だと考えている。(ロシア外務省、20 Dec. 2023)
https://mid.ru/en/foreign_policy/news/1922176/

【中国】
山東電建、モロッコOCPの石炭火力発電所建設受注
 2013年からモロッコで事業を行っているSepco (Shandong Electric Power Construction Corp: 山東電力建設有限公司) は2023年末、モロッコリン鉱石公社(OCP)の石炭火力発電所建設プロジェクトを受注した。発電所は、カサブランカの南西のジョルフ・ラスファール(Jorf Lasfar)にあり、3基目の石炭火力発電所となる。発電容量は67MW、費用は3,000万ユーロ。すでに建設された2基の発電所はそれぞれ日本(三井物産)と韓国(大宇財閥)が受注していた。(Africa Intelligence, 30 Jan. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/01/30/centrales-electriques–le-chinois-sepco-fait-affaire-avec-l-ocp%2C110153637-art
(注記:2012年、JBICはジョルフ・ラスファール石炭火力発電所建設に2億1,600万米ドルを限度とする融資を行っている。この融資はJBICとしては初のモロッコにおけるプロジェクトファイナンス案件となった。)
https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2012/0621-6444.html

【サウジアラビア】
サウジ、「西サハラ」の呼称を禁止
 サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「西サハラ」の呼称を正式には用いないよう命令を発した。モロッコのメディアは、西サハラがモロッコ領であることを認めたことになると報じている。西サハラとモロッコの間に点線を引くことも許されなくなるという。こうした措置をサウジは過去5年間採ってきたが、今回はそれが官房長から各省庁へ通達として出された。サウジは昨年の国連総会第4委員会でもモロッコの自治案を支持すると述べていた。(La Razón, 25 Jan. 2024)
https://www.larazon.es/internacional/arabia-saudi-oficializa-reconocimiento-marroquinidad-sahara_2024012565b2a2f3327cdd0001dafbf4.html

以上。