西サハラ友の会通信 No. 37(2024年3月)2023年10月・11月分
昨年10月・11月のニュースを整理してお届けします。スペイン議会選挙の後、結局ペドロ・サンチェス(社会労働党)が首相として続投し、連立政権を率いることになりました。選挙期間中西サハラについてキャンペーンし、サハラーウィ国会議員を初めて生みだしたスマール(SUMAR)も連立に参加しましたが、連立協定から西サハラをはずしてしまいました。。
一方、EUの裁判所ではEUモロッコ間の協定に対する審理が行われ、法務官による質問が行われました。法務官の意見発表は2024年3月21日となりました。
ヨーロッパでは、贈賄・スパイ活動や人権侵害でモロッコのネガティブなイメージが広まる一方、ビジネスの分野ではモロッコにすり寄る企業が増えており、ギャップが大きくなっているようです。
No. 37 目次
【サッカーワールドカップ2030】
・西サハラのスタジアムは使わない
【西サハラ/RASD・難民キャンプ】
・中国製ドローン、西サハラで運用される
・モロッコの攻撃で戦死者、砲弾発射車両が破壊
【西サハラ/占領地】
・ポリサリオ戦線、スマラ周辺へ砲撃
・モロッコのドローン、モーリタニアの車を爆撃
【モロッコ】
・米・仏大使を信任状授与式から除外
・モロッコにガス田発見
・批判的記者の出国を禁止
・戦車500台を米国から受領
・ポーランド、ダーフラに再生可能エネルギー巨大プロジェクト
・マアティ・モンジブ氏インタビュー:モロッコとユダヤ人
・ダーフラ・カサブランカ間の送電線計画
・国王:西サハラ沿岸へのアクセスをサヘル諸国に開く
・ダーフラの発電所計画
・モロッコ、53日経ってイスラエルを非難
【アルジェリア】
・スペインとの関係修復か?
【国連】
・安保理、MINURSO期間延長決議採択
・国連作業部会、サハラーウィ政治囚の即時釈放を勧告
【EU】
・EU司法裁判所、第1回審理
・EU司法裁判所法務官が意見を発表
【スペイン】
・スペイン国連代表部、カナリア諸島代表団を拒否
・元国民党外相のアフリカのビジネス利益
・SUMAR・PSOE連立政権協定、西サハラを含まず
・スパイ容疑のモロッコ人に国籍付与せず
・スペイン・モロッコ「トマト」戦争
・スペイン外務省HPから西サハラの自決権が消える
【フランス】
・フランスの記者買収の裏側
【ヨーロッパ】
・モロッコの諜報部員が在ベルギーモロッコ系住民に圧力
・オランダでモロッコのスパイ摘発
【米国】
・モロッコ、肥料を米国市場に売りこみ
・米国でモロッコ向け「アパッチ」ヘリコプターの生産始まる
【サッカーワールドカップ2030】
西サハラのスタジアムは使わない
国際サッカー連盟(FIFA)はスペイン、ポルトガル、モロッコ3ヶ国共同開催となる2030年サッカーワールドカップにおいて、エル=アイウンなどの西サハラの都市を開催地にしないことを決めた。自決権に関する住民投票をペンディングにしている国連決議に沿う判断となった。ワールドカップが行われるモロッコの都市は、ラバト、アガディール、タンジェ、フェズ、カサブランカ、マラケシュとなる。今夏、アフリカサッカー連盟(CAF)は2025年のアフリカカップに使うモロッコの6つのスタジアムを決定したが、こちらもエル=アイウンのシェイク・ムハンマド・ラグダフスタジアムは国際法に沿うかたちで含ませないこととした。(Espiral 21, 4 Oct. 2023)
http://espiral21.com/fifa-excluye-al-sahara-del-mundial-de-futbol-en-2030/
【西サハラ/RASD・難民キャンプ】
中国製ドローン、西サハラで運用される
9月30日(土)、中国はツイッターでモロッコにウィンロン2を販売したことに触れ、「ウィンロン2は、偵察・攻撃用ドローンとしてモロッコ空軍に販売され、エル=アイウン(西サハラ)の空域で効果的に活動している」などと述べた。それは2022年に販売されたものだという。中国はモロッコに以前ウィンロン1を販売している。モロッコは米、イスラエル、トルコ、中国からミサイルを購入している。また、モロッコはイスラエルのBarak MXミサイル防衛システムをもっている数少ない国の一つとなった。さらに2019年から3度に渡ってトルコ製のバイラクタル2ドローンを購入し、それらは西サハラのエル=アイウン、ダーフラ、スマラに配備されている。モロッコはトルコのバイカル社とアキンチ(Akinci)戦闘用ドローンの購入をめぐって交渉を始めた。このドローンはトルコ製兵器の中でも「宝石」と言われるもので、パキスタンやサウジアラビアがすでに購入している。(La Razon, 1 Oct. 2023)
https://www.larazon.es/espana/polisario-queja-marruecos-utiliza-ellos-drones-chinos_202310016519cfa91fb4a600013f7fd4.html
モロッコの攻撃で戦死者、砲弾発射車両が破壊
11月11日(土)、モロッコ軍はポリサリオ戦線の2台の軍用車両を破壊した。その内1台はグラッドロケットを発射する車で、もう1台はポリサリオ戦線兵士を移送する車だった。モロッコ軍によると、この攻撃で数人の戦死者が出たという。攻撃はドローンによるものと考えられる。最近ポリサリオ戦線はスマラ市近郊に向け2回の砲撃を行った。最初の攻撃は10月の終わり頃行われ、1人が死亡、3人が負傷した。いずれも民間人だ。2回目の攻撃は犠牲者を出しておらず、スマラの空港近くで爆発音が聞かれたという。同空港にはトルコ製ドローンのバイラクタルTB2と中国製ウィンロン1が配備されている。(Defensa, 15 Nov. 2023)
https://www.defensa.com/africa-asia-pacifico/marruecos-destruye-dron-armado-lanzacohetes-grad-frente-sahara
【西サハラ/占領地】
ポリサリオ戦線、スマラ周辺へ砲撃
11月4日・5日(土日)と、西サハラ北部のスマラ周辺では砲撃音が鳴り響いた。エキプ・メディアによると、ポリサリオ戦線がモロッコの陣地めがけて砲撃しているとのことだ。10月29日にも同様の砲撃があり、死亡者1人、負傷者3人を出した。ポリサリオ戦線の攻撃は正確さを増している。またスマラのモロッコ空軍基地を狙えるということは、長距離砲を使っていることを意味する。(Algerie Focus, 5 Nov. 2023)
https://www.algerie-focus.com/nouvelle-arme-de-longue-portee-au-sahara-occidental-vers-une-escalade-du-conflit/
モロッコのドローン、モーリタニアの車を爆撃
11月17日(金)西サハラ占領地内でスマラにも近いメイリズ(Mheiriz)地方でモロッコのドローンがモーリタニア人の金採掘者が使っていた車を爆撃した。場所は軍事緩衝地帯で、ポリサリオ戦線側が支配するところであり、死者は出ていない。(Swissinfo/EFE, 19 Nov.2023)
https://www.swissinfo.ch/spa/sahara-occidental_destruido-un-vehículo-de-mineros-de-oro-mauritanos-en-el-sáhara-por-un-ataque-marroquí/48991168
【モロッコ】
米・仏大使を信任状授与式から除外
10月2日(月)、モロッコ国王は14ヶ国の大使など外交団代表に信任状を授与する儀式を行ったが、米・仏大使は除外された。西サハラ問題に対する両国の態度に不満を表明したものと解釈される。フランスのクリストフ・ルクルティエ(Christophe Lecourtier)大使は2022年12月に着任しており、米国のプニート・タルワール(Puneet Talwar)大使はその1月前に着任していた。このところ関係が悪化していたフランスについてはともかく、米国の大使も儀式に招待されなかったことは外交筋を驚かせている。9月8日の地震についても、モロッコはフランスだけではなく、米国と国連の人道援助も拒否していたことが明らかとなった。(El Confidencial, 3 Oct. 2023)
https://www.elconfidencial.com/mundo/2023-10-03/rey-marruecos-mohamed-enfado-sahara-ningunea-embajadores-eeuu-francia_3746742/
モロッコにガス田発見
SDXエネルギー社は、モロッコのケニトラ地方のガーブ盆地に重要なガス田を発見したと発表した。ただガス埋蔵量はわかっていない。(La Razon, 3 Oct. 2023)
https://www.larazon.es/economia/anuncian-hallazgo-importante-reserva-gas-natural-marruecos_20231003651c5cabe0d7620001dcf4ab.html
批判的記者の出国を禁止
10月3日(水)、モロッコ当局は政府に批判的な著名なジャーナリスト、アブドゥッラティーフ・ハンムーシー(Abdellatif el Hammouchi)氏の出国を認めなかった。昨年8月の本紙とのインタビューで、氏は私服警官による監視がますます厳しくなっていると不満を述べていた。氏は、2011年ノーベル平和賞受賞者のイエメンの女性活動家、タワックル・カルマン(Tawakel Karman)氏が主催するアラブ世界の民主化に関する会議に招待されていて、3日はカサブランカからイスタンブール経由でサラエボに向かう予定だった。ハンムーシー氏は今年、NGOの「第19条(Article 19)」の北アフリカ表現の自由及びメディアプログラムから賞を与えられている。(El Independiente, 4 Oct. 2023)
https://www.elindependiente.com/internacional/2023/10/04/marruecos-prohibe-abandonar-el-pais-a-un-periodista-critico/
戦車500台を米国から受領
モロッコは中国、イスラエル、トルコ、フランスからドローン等空の戦力強化のための兵器を購入しているが、米国からはブラドレー・アブラムス戦車500台を提供された。米国国防省は余剰となった兵器を各国に分配しており、モロッコが戦車を選んだという。ブラドレー戦車は、本来は兵士・兵器を運搬するための戦闘地用車両だが、ミサイルや砲弾を運ぶ他、地雷を除去したり道路を修復したりするのに役立つ。(Haffingtonpost, 7 Oct. 2023)
https://www.huffingtonpost.es/global/marruecos-encuentra-500-tanques-eeuu.html
ポーランド、ダーフラに再生可能エネルギー巨大プロジェクト
ポーランドの再生可能エネルギー専門会社、グリーン・キャピタルグループが西サハラのダーフラに8ギガワットのグリーン水素発電所を建設すると発表した。この4月、同社はカサブランカに子会社を設立し、準備にかかっている。社長はフッサーム・アブー・オスマーン(Houssam Abou-Otmane)だ。グリーン・キャピタルグループがモロッコで行う事業はグリーン水素だけではない。同社はタンジェ、オリエンタル、マラケシュ・サフィ、タザ、フェズ、エル=アイウン(西サハラ)などについて、風力や光電池を使ったエネルギー事業の可能性をみている。(Huffingtonpost, 10 Oct. 2023)
https://www.huffingtonpost.es/economia/marruecos-adjudica-proyecto-estrella-europeo.html
マアティ・モンジブ氏インタビュー:モロッコとユダヤ人
ムハンマド5世(1909-1961)は第二次世界大戦中ユダヤ人の保護者だったとされているが、彼はユダヤ人の収容を定めたヴィッシー政権の1940年10月4日の法律に反対したことはない。彼がやったことはせいぜい密かにユダヤ人を呼んで彼らの不満に耳を傾けたことぐらいだ。実際には、ムハンマド5世はユダヤ人が公務だけでなく報道、演劇、金融、医療、法律を専門とする仕事に就くことを禁じる布告を出している。それにもかかわらず、国王がユダヤ人に寛容であったというような真実でない話がメディアを通じて流布されている。小説家のレイラ・スリマニ、ミッテラン時代の文化大臣ジャック・ラング、哲学者でコラムニストのベルナール・アンリレヴィらがそれに関わった。しかし、現実はもっと複雑で、ユダヤ人コミュニティとイスラエルに対するモロッコの関係は曖昧模糊としたものだ。
インタビューされたマアティ・モンジブ氏によると、イスラエルとの関係はモロッコがフランスの保護国だった時代の終わり頃まで遡る。そこには実際的な、土地が関わる理由があった。エルサレムにはムスリムのモロッコ人とユダヤ人が数世代にわたって住んでいて、彼らはワクフ(waqf)と呼ばれる宗教的な意味をもつ土地を購入していた。イスラエルが建国される前、モロッコでムスリムと結婚したユダヤ人でパレスチナへの移住する人の波があって、ユダヤ人名望家が移住した場合、それについて行ったモロッコ人もいた。イスラエル建国後、モロッコはそうしてイスラエルに移住したモロッコ人の利益を保護し続けようとした。
ハサン2世が国王となった1961年頃、イスラエルとの関係は限られたものだったが、王室はイスラエルとの友好的な関係を維持し続けた。ただ、それは長い間秘密だった。王室の正統性に関わるからだ。「緑の行進」で王室の権威が確立した後、1977年に国王は初めてイツハク・ラビンとモシェ・ダヤンに会い、それから10年後にシモン・ペレスと公式に会った。ただその会談はカダフィ大佐の怒りを買い、シリアからは国交を断絶された。
ハサン2世にしてみれば、イスラエルとの関係はモロッコと北アフリカ・欧州地中海のユダヤ人コミュニティとの関係の延長線上でしかなかった。モロッコのユダヤ人は長い歴史をもつ。13世紀、モロッコのスルタンはユダヤ人を保護し、14世紀には両者の関係は絶頂期を迎えた。マリーン朝(1269-1465)ではユダヤ人が今でいう首相の地位に就いたこともある。18世紀にムハンマド3世(1757-1790)が建設したエッサウィラの港は大西洋貿易の拠点となったところだが、その門には3つの一神教のシンボルが並べられている。
ハサン2世はユダヤ教に感情的な関係をもっていると言われているが、モンジブ氏によれば、彼は子どもの頃、ユダヤ人の乳母に育てられた。ただ、それは彼が米国のイスラエル大使だったマーティン・インダイク氏にそう語ったというだけで、それ以上のことはわからない。モロッコのユダヤ人の多くはイスラエルに移住したがっていた。一方で、イスティクラル党などの民族主義政党は彼らの移住に反対していた。理由は、若いユダヤ人がイスラエル軍に入り、それを強化してアラブ諸国に対抗するだろうということと、モロッコにとって頭脳流出となるからだった。しかし、ハサン2世は1960年代から70年代にかけてユダヤ人のイスラエルへの移住を促進した。1940年代末には25万人いたユダヤ人が20年後には55,000人に減り、1972年には3万人になっていた。2022年のセンサスではわずか3,000人となっている。ただ、国王は親切で移住を促進したのではない。イスラエルへの移住に際し1人当たり250米ドルを支払わせたのだ。信じがたいことに思えるが、Agnès Bensimonの『ハサン2世とユダヤ人:密かなる移住の歴史』(Hassan II et les juifs: histoire d’une émigration secrète, Seuil, 1999)という本に描かれている。
モンジブ氏は、ハサン2世がイスラエルに協力してパレスチナ解放闘争の左派の弾圧を助けたとも言う。例えば、ムハンマド・ムサッディク・ベンハドラ(Mohamed Mossadek Benkhadra)は、イスラエルから地中海でイスラエルの観光客が乗った船をシージャックしたとの疑いで指名手配され、モロッコの悪名高き公安組織DSTに1985年から93年まで密かに拘禁されていた。手錠をかけられ、相当に酷い目にあったらしく、拘禁から解放されたときまだ40才に満たなかったにもかかわらず、非常に老けて見えた。このようにハサン2世と内相だったムハンマド・ウーフキール将軍(Muhammad Oufkir)はモロッコ内左派(人民勢力国民連合など)の弾圧にやっきで、モサドからの情報提供を受けて、左派指導者メフディ・ベンバルカ(Mehdi Ben Barka)の居場所を突き止めた(バルカは1965年にパリで暗殺された)。イスラエルの首相を務めたレヴィ・エシュコル(1963-69)はベンバルカの誘拐・殺害にイスラエルが関与したことを認めている。
モンジブ氏はさらに、1970年から80年代にかけて、イスラエルは西サハラ紛争に関してモロッコにアドバイスをしていたと言う。当時、イスラエル政府やイスラエルのモロッコ系ユダヤ人の助けを借りて、西側諸国とりわけ米国のユダヤ人たちに、モロッコのイメージを守り、モロッコの立場を弁護してもらうことに成功した。モロッコ系ユダヤ人はモロッコに対する忠誠心が強く、ハサン2世はそれを利用したのだ。
イスラエルの国家安全保障評議会の議長、メイル・ベン・サバトは2020年の国交正常化交渉でイスラエルを代表したが、彼はモロッコ系ユダヤ人だった。アブラハム協定の調印日、彼はムハンマド6世国王の前で、ダリジャ(Darija)と呼ばれるアラビア語モロッコ方言で「国王万歳」を唱えた。それはモロッコ国王に対する揺るぎない忠誠を表明する行為だった。
モンジブ氏によれば、ムハンマド6世の対イスラエル政策はハサン2世の時と大きくは違わない。ハサン2世もアブラハム協定に署名しただろう。モロッコがスパイウェア・ペガサスの早い段階で顧客になりえたのはイスラエルとの友好関係あってのことだろう。
バイデン政権が西サハラの自決権支持に立ち返る可能性が出てきたのは、モロッコがアブラハム協定をまだ実現していないからと言えるだろうかという問いに対して、モンジブ氏は、モロッコがアブラハム協定に署名したのは米政府の支持とイスラエルの諜報技術が欲しかったからだが、モロッコはこの両面においてすでに敗北を期したといえると言う。バイデン政権はトランプの約束から後退しているし、イスラエルの諜報部はハマスの攻撃を事前に察知することができなかった。イスラエルの治安組織が信頼できるものと思われたのは10月7日までだったのだ。(Marianne, 12 Oct. 2023)
https://www.marianne.net/monde/afrique/maati-monjib-hassan-ii-a-monnaye-le-depart-de-chaque-juif-marocain-en-israel
ダーフラ・カサブランカ間の送電線計画
モロッコの国家電気水道事務所(ONEE)はダーフラとエル=アイウンの間で行われている風力・太陽光発電を、1,400kmの送電線を使ってモロッコ中央部に送電する計画をもっている。2026年までに1,500メガワット、残りを2028年までに送れるようするつもりだ。現在、プロジェクトは業者選定の段階にある。2024年下半期には業者が決定する予定だ。(ledesk, 1 Nov. 2023)
https://ledesk.ma/2023/11/01/electricite-verte-lonee-veut-tirer-un-cable-de-1-400-km-entre-dakhla-et-casablanca/
国王:西サハラ沿岸へのアクセスをサヘル諸国に開く
11月6日(月)、「緑の行進」48周年を記念する国民に向けての演説で、ムハンマド6世は、西サハラ問題に関してモロッコは以前より強力で確固たる立場にあると述べ、サヘル諸国に対し西サハラ沿岸部へのアクセスを開く考えを明らかにした。8分間の演説の中で、国王は、西サハラを含む大西洋岸の開発が進んで、そこがアフリカ大陸ひいては世界への(モロッコの)影響力増大の拠点となることを願っている、と述べた。そして、深刻な治安・政治・経済的な危機をかかえるサハラ以南の国々、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャドといった国々の状況改善には、これらの国々のインフラ整備と交通網・通信網の整備が必要であり、モロッコはそのための港湾・鉄道インフラを提供する用意がある、と述べた。(El Debate, 7 Nov. 2023)
https://www.eldebate.com/internacional/20231107/mohamed-vi-promete-convertir-costa-sahara-occidental-centro-influencia-continental_151833.html
ダーフラの発電所計画
アジーズ・アハヌーシュ(現モロッコ首相)とモロッコBMCE銀行(貿易銀行)を所有するオスマーン・ベンジェッルーン(Othman Benjelloun)が投資するグリーン・オブ・アフリカ(GoA)社は、西サハラのダーフラに風力発電所を建設する資金を探している。調達の目標総額は29億ディルハム(2億6,170万ユーロ)で、モロッコの銀行から19億ディルハム(1億7,150万ユーロ)を集めたいと考えている。アハヌーシュ首相の持株会社アクワ(Akwa)社はGoA社の50%を所有し、ベンジェッルーンの持株会社は「オ・カピタル(O Capital)」社。3年間で220MWを発電する発電所の運用まで行く計画だ。同社の経営をまかされるのはアフメド・ナックーシュ(Ahmed Nakkouch)で、彼はかつて王室の持株会社「アル・マダ(Al Mada)」のエネルギー会社ナレヴァ(Nareva)の社長をつとめ、民間部門への投資を促進する影響力のあるCluster EnRという協会のメンバーだ。
もともとこの風力発電所は2018年にマラケシュ近くのサフィでベルギー・オランダ企業ウィンドヴィジョン(Windvision)社が始めたものだが、2021年にGoA社がサフィの風力発電所の最大株主となった。その後、プロジェクトはダーフラに移され、認可は2023年まで延長され、2023年1月、アクワ社とオ・カピタル社がGoA社を独占するようになった。
今年11月初め、国家電気水道事務所(ONEE)はダーフラとカサブランカの間の送電線への入札を呼びかけたばかりだ。この数十億ディルハムを要する送電線ができるとGoA社がつくる電力をモロッコへと送ることが可能となる。(Africa Intelligence, 24 Nov. 2023)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2023/11/24/l-operation-de-green-of-africa-aupres-des-banques-pour-financer-sa-centrale-de-dakhla%2C110099981-art
モロッコ、53日経ってイスラエルを非難
11月29日(水)、53日の沈黙を破り、ムハンマド6世はイスラエルを非難し、ガザでの恒久的停戦を呼びかけた。「パレスチナ人民との国際連帯デー」に国連へのメッセージの中でそう述べた。国王はメッセージでイスラエルが「国際法の重大な違反」を行った、モロッコはパレスチナ人民の東エルサレムを含む独立国をつくる正当な権利を支持すると述べた。(El Independiente, 29 Nov. 2023)
https://www.elindependiente.com/internacional/2023/11/29/mohamed-vi-rompe-53-dias-de-silencio-para-denunciar-ahora-las-flagrantes-violaciones-de-israel-en-gaza
【アルジェリア】
スペインとの関係修復か?
アルジェリアは、スペインとの関係を停止して19ヶ月が経ったところで、関係正常化に向けての第一歩としてスペイン大使を任命した。新しい大使は、アブドゥルファッターフ・ダグムーム(Abdelfetah Daghmoum)。アルジェリアは関係正常化の理由を明らかにしていないが、アルジェリア出身の北アフリカ専門家ヤヒヤ・ズビール氏(Yahia Zoubir)によると、スペイン政府のパレスチナ問題に対するスタンスがアルジェリアで評価されたのではないか、という。また、国連総会でのサンチェス首相の演説が、モロッコの西サハラ自治案を支持する方針に転換したことには触れず、国連憲章と安保理決議の枠組みでの相互に受け入れ可能な解決を支持すると述べたことも評価されたと考えられる。(El Periódico de España, 7 Nov. 2023)
https://www.epe.es/es/internacional/20231107/argelia-descongela-relacion-espana-anos-94278831
【国連】
安保理、MINURSO期間延長決議採択
10月30日(月)、国連安全保障理事会はMINURSOのマンデートを2024年10月31日まで延長する決議2703 (2023)を、賛成13、棄権2(ロシア、モザンビーク)で採択した。決議は、西サハラ人民の自決を許すような公正で、永続的、双方に受け入れ可能な政治的解決をめざし、前提条件なしの交渉を誠実に復活させることを求めている。(United Nations, 30 Oct. 2023)
https://press.un.org/fr/2023/cs15471.doc.htm
国連作業部会、サハラーウィ政治囚の即時釈放を勧告
10月11日付けで、国連恣意的拘禁に関する作業部会は、2010年のグデイム・イジーク抗議キャンプに関連して逮捕された24名のサハラーウィ活動家の拘禁について、即時釈放するようモロッコ政府に勧告する文書を発表した。判断の理由は、弁護士へのアクセスの否定、拷問による自白の強要、公正さを欠いた裁判などである。同作業部会は他国政府についてもモロッコに圧力をかけるよう勧告している。また、国連拷問委員会は5人のグデイム・イジーク政治囚が拷問による自白に基づき裁判が行われ、投獄されたとモロッコを批判した。(Western Sahara Resource Watch, 27 Nov. 2023)
https://wsrw.org/en/news/un-body-asks-for-immediate-release-of-saharawi-prisoners
https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/issues/detention-wg/opinions/session96/A-HRC-WGAD-2023-23-AEV.pdf
【EU】
EU司法裁判所、第1回審理
EUモロッコ農水産品自由化協定と漁業連携協定が西サハラを含む問題についてポリサリオ戦線がEU理事会を訴えていた裁判の控訴審の第1回審理が10月23日(月)に開かれた。審理はポリサリオ戦線の原告適格性をめぐって双方が意見を述べた。EUの一般裁判所(一審)は上記の2協定については西サハラ人民の代表たるポリサリオ戦線の承諾が必要であるとの判断を示していた。欧州委員会を代弁した同委員会法律顧問のダニエル・カレハ(Daniel Calleja)は、まずEU外交政策がポリサリオ戦線から承認を得なければならないとしたら、それは法律がおかしい(error de derecho)と主張した。そしてポリサリオ戦線は「当事者のひとつ」にすぎず「唯一の代表」ではない、領域の20%しか支配しておらず、貿易や漁業の協定を実行する行政機構をもっていない、と主張。さらに、現地での漁業や持続可能性を保証できるのはモロッコしかなく、協定は原産地を証明できる行政府を必要としている、協定の停止は経済発展を阻害する、漁業協定によってEUが支払うお金は収入源になっているとも述べた。
一方、ポリサリオ戦線の弁護士ジルス・デヴァース(Gilles Devers)は、EUが漁業ライセンスに対して支払うお金は抑圧者モロッコに行き、その不法で植民地主義的な占領を支えることになるのであって、西サハラの人びとのためにならないと述べた。また、協定は国際法を侮辱するものであり、サハラーウィ人民の自決権を無視し、天然資源に対する恒久主権の尊重に反していると主張した。また、西サハラの産物は欧州にモロッコ産として輸入されており、モロッコの関税クオータに入れられ、モロッコの輸出実績としてカウントされていることを指摘した。
1979年国連総会決議はポリサリオ戦線を「西サハラ人民の代表」と描いており、紛争解決のいかなる努力においても完全に参加すべき、としている。EUモロッコ関係については、2022年のモロッコの輸出額の56%はEU市場向けてあり、輸入の45%がEU加盟国からのものとなっている。(La Vanguarda/EFE, 23 Oct. 2023)
https://www.lavanguardia.com/vida/20231023/9322812/ue-frente-polisario-chocan-vista-tjue-acuerdo-comercial-marruecos.html
EU司法裁判所法務官が意見を発表
2回目の審理が10月24日(火)に行われた。出席したEU司法裁判所法務官は2024年3月21日にEUモロッコ農水産品自由化協定と漁業連携協定について意見を公表するつもりでいると述べ、EU側に種々の質問を行った。法務官とは裁判所が指名する法律専門家で、今回の案件についての法務官は、ザグレブ大学法学教授であるタマラ・カペタ(Tamara Capeta)氏だ。法務官の意見は裁判官たちの判断に大きく影響を与えるものと考えられている。法務官は、モロッコが西サハラ産の果物・野菜の原産地表示をモロッコと異なるものとして記載する義務があるかどうかを調べたいと思っていた。協定はそうした区別をするよう求めているが、欧州理事会の弁護士フレデリック・ナールト(Frederik Naert)氏は、原産地を正しく記載するのはモロッコの責任だと主張する。「協定は(産品の)管理を行う能力をもった機関の存在を求めているが、西サハラには通常の国のような機能を果たす機関がない」と言って、それを正当化した。また、法務官は協定締結に先立ち、欧州委員会はいかなる市民及び経済主体と協議を行ったか、またそれが得た了解は西サハラ人民のものといえるかどうかを見極めたいと思っている。
ある時点でEUの法律顧問、ダニエル・カレハ氏は、EUがモロッコとの協定締結が西サハラの住民にもたらす利益を評価していると述べ、それは54,000の雇用を生み、8,000万ユーロの輸出を促進すると述べた。しかし、カペタ法務官は調子を荒げて、カレハ氏は何も答えていない、自分は欧州委員会がサハラーウィ人民の承諾を得たのかどうかを聞いているのに、と返答する場面があった。そして、「EUはサハラーウィ人民から承諾を得ようとはしなかった、ただ彼らに利益があるかどうかを言っているだけだ」と結論した。(Investing.com, 24 Oct. 2023)
https://es.investing.com/news/stock-market-news/abogada-general-de-la-ue-dara-el-21-de-marzo-su-opinion-del-acuerdo-comercial-uemarruecos-2477244
【スペイン】
スペイン国連代表部、カナリア諸島代表団を拒否
国連の第四委員会非植民地化特別委員会が10月4日から6日までニューヨーク国連本部で開催され、それに出席してサハラーウィの自決権を支持する陳述を行ったカナリア諸島代表団(行政とNGOの合同代表団)との面会を、スペイン政府国連代表部は拒否した。一方米国、ドイツ、ノルウェー、アルジェリア、日本、ベルギー、モザンビーク、アイルランド、キューバ、イラク、ポルトガル、ブラジルなどは同代表団との面会を行った。カナリア諸島代表団はスペイン政府を西サハラの施政国としての責任を果たしていないと批判した。(Contramutis, 8 Oct. 2023)
https://contramutis.wordpress.com/2023/10/08/una-delegacion-canaria-defiende-en-naciones-unidas-el-derecho-del-pueblo-saharaui-a-la-autodeterminacion/
元国民党外相のアフリカのビジネス利益
(やや前の記事ですが興味深い内容なので、今回掲載します。)元国民党(中道右派)外相アナ・パラシオ・デル・ヴァッレ・レルスンディ(Ana Palacio del Valle Lersundi)は、Palacio y Asociadosというコンサルティング会社の設立者で、この会社の顧客に「アフリカ50」というインフラ投資連合(プラットフォーム)がある。「アフリカ50」はモロッコに本拠地をもち、アフリカ31ヶ国政府の他、アフリカ開発銀行、西アフリカ諸国中央銀行(BCEAO)やモロッコ国立アル・マグリブ銀行(中央銀行)が参加し、50億ドルものエネルギー、運輸、ICT、ガス部門のプロジェクトに資金を提供してきた。参加国にはモロッコを始め、チュニジア、モーリタニア、ナイジェリア、セネガル、エジプト、ケニアなどがいるが、アルジェリアは入っていない。また、南部の南アフリカ、アンゴラ、モザンビークも入っていない。アナ・パラシオはモロッコとの関係がとくに深く、西サハラ問題でモロッコのアドバイザーをしてきた。現在、スペインの送ガス事業者エナガス(Enagás)、バイオテック会社のファルママル(Pharmamar)、AEEパワー(エネルギーインフラ)の役員を務めている。他にもオールタナティブ投資を行うInvestcorpの顧問役であり、米国大西洋評議会の役員など、多くのポジションをもっている。(+queenperiodico, 25 Jun. 2023)
https://queunperiodico.blogspot.com/2023/06/ana-palacio-ex-ministra-del-pp-lobista.html
SUMAR・PSOE連立政権協定、西サハラを含まず
10月24日(火)、サハラーウィ国会議員を誕生させた左派連合スマール(SUMAR)と社会労働党(PSOE)の連立政権協定について、スマールの代表ヨランダ・ディアス(Yolanda Diaz)が記者会見を行った。スマールは選挙期間中西サハラ問題を強く訴えていたが、サンチェス率いる与党PSOEとの48ページに及ぶ政策協定文書には、西サハラ問題そのものの言及もなかった。一方、モロッコについての言及もされていない。文書は北アフリカとの関係について「利益と価値を組み合わせ、協力か紛争かの二者択一的な展望を克服する。緊張に際しては、対話を重視し、われわれの価値や目的を放棄することなく、人権を常に中心に置くアプローチをとる」などと記している。(El Independiente, 24 Oct. 2023)
https://www.elindependiente.com/espana/2023/10/24/el-acuerdo-psoe-sumar-renuncia-a-la-causa-saharaui-e-incide-en-el-reconocimiento-de-palestina/
スパイ容疑のモロッコ人に国籍付与せず
10月9日、全国管区裁判所(Audencia Nacional)の行政訴訟法廷(la Sala de lo Contencioso-Administrativo)は、スペイン国籍を申請したモロッコ出身者に国籍付与を認めない判決を下した。国家情報センター(CNI)が法廷に送った報告書は、申請者が1999年以来モロッコのスパイをスペインで行っている疑いがあると記述していた。本人は24年間そうした活動を行っていたことを「否定しなかった」と判決は述べている。これで、モロッコ人のスペイン国籍申請者でモロッコのためのスパイ活動をしていたという理由で申請を却下された者は7人目となった。申請者は上級裁判所に控訴することが可能だ。
先の5月には、ポリサリオ戦線と西サハラについてスペインで情報を収集していると考えられるモロッコ人のスペイン国籍申請が却下されている。(El País, 27 Nov. 2023)
https://elpais.com/espana/2023-11-27/una-sentencia-saca-a-la-luz-24-anos-de-espionaje-para-marruecos.html
スペイン・モロッコ「トマト」戦争
COAG(スペイン農業畜産協議会 Coord. Organizaciones Agricultores y Ganaderos)本部の野菜・果物部門の代表、アンドレス・ゴンゴラ氏は「モロッコはヨーロッパに32万トンの野菜・果物を関税なしで輸出していいことになっているが、実際には60万トンが流入している。いつモロッコが関税を払ったのか、誰も知らない」と語る。EUは加盟国からそうした情報を得ていないという。英国への最大のトマト輸出国は今やスペインではなくモロッコだ。アンダルシアではこの5年で12,000ヘクタールから8,000ヘクタールへと、4,000ヘクタールものトマト栽培農地が消えた。カナリア諸島ではもはやトマトは栽培されていない。本来であればEUへの輸出の際100キロ超過するごとに46ユーロを払わなければならないが、「モロッコの輸出割当分について誰も監視しておらず、協定は守られていない」と彼は言う。
モロッコ産トマトは小売りではいつもスペイン産トマトより20セント安く売られている。スペインのトマトが1ユーロなら、彼らは70セント、80セントという値を付けるのだ。モロッコでは労働者の賃金はスペインの10分の1だ。
西サハラではすでに1,000ヘクタールの砂漠が農地に転換されている。今後10年で5,000ヘクタールになるだろう。それはダーフラ近郊のことだがヴィラ・シスネロスでもトマトは栽培されている。土地は国王の領地だ。今日ダーフラでは950ヘクタールの土地で6,600トンの主にはトマトが生産されている。他にはメロンも生産されている。トマトの生産性は、大きいものもプチトマトもヘクタール当たり44トンだ。
ダーフラにはDakhla Connectという投資事務所があり、魅力的な税制を提供している。灌漑は地下水で、「非常に質がいい」とDakhla Connectのウェブサイトは宣伝し、海水の淡水化事業も進行中とのこと。ゴンゴラ氏は「西サハラにはルールがない。基準などないのだ。灌漑で作った作物も違法ではない。農民たちの伝統的な井戸は干上がっている。30m、40m、100mだって掘るんだ」と語る。
サハラーウィの活動家、ザルガ・アブドゥルアーニー(Zarga Abdelani)によると、ダーフラの生産現場だけでも14,000人の雇用が生み出されている。しかし、雇われるのはスス(Souss)地方のモロッコ人だけで、住宅も支給されている。ザルガは「それは植民地化戦略だ」と言う。農園はサハラーウィを「信用していないので」雇わない。また、彼らはスス地方ですでに農園経営の経験があり、そこの労働者はサハラーウィより手慣れている。「こうしてサハラーウィを人口比で逆転しようとしているのだ」と言う。
さらに、トマトはスス地方のアガディールに運ばれ、そこで船に積み込まれる。「本当は西サハラ産と表示しなければならないのに、これはさらなる不正だ」とゴンゴラ氏は言う。そして「もしスペインがトマト戦争に負ければ、エンドウ豆の二の舞になる」と警告する。(El Español, 27 Nov. 2023)
https://www.elespanol.com/reportajes/20231127/guerra-tomate-espanol-va-ganando-marruecos-cultivar-sahara-occidental/812668750_0.html
スペイン外務省HPから西サハラの自決権が消える
スペイン外務省のウェブサイトで、スペイン外交はサハラーウィの自決(の実現)に取り組むと述べた部分が削除されていることがわかった。今そのページは「該当ページなし」と表示されるようになっている。(El Independiente, 30 Nov. 2023)
https://www.elindependiente.com/internacional/2023/11/30/exteriores-borra-de-su-web-un-apartado-que-reconocia-el-derecho-a-la-libre-determinacion-del-pueblo-saharaui/
【フランス】
フランスの記者買収の裏側
携帯電話の中にあった「会計」と題された16ページのノートでは、(相手の名前や金額が)略記号で記されていた。例えば「私はHに2のボーナスを12月17日に与えた」、「2を2月26日にロワシーで渡した」、「Mに2を用意した」などと書かれている。経済犯罪追及部(BRDE)は、Hとは第2ローヌ選挙区選出のNupes(新人民連合環境・社会)の議員、ユベール・ジュリアン=ラフェリエール(Hubert Julien-Laferrière)であると見ており、MについてはBFMTVニュースチャンネルのラシード・ムバールキー(Rachid M’Barki)だと見ている。他にもパリの弁護士らが含まれているようだ。
ムバールキーについては、彼が放送したニュースの13箇所につき、上司の許可を得ることなく、カタール、西サハラ、スペイン・モロッコ経済フォーラム、ロシア制裁のオリガルヒに対する影響などに関して、局の編集方針とは違う外国の宣伝と思われる内容を突っ込んだとされている。彼はすでに解雇されている。局員の証言によると、ムバールキーは編集長がいない夜に報道内容の承認プロセスをすっとばしていた。捜査は、ロビーストのJean-Pierre Duthionがジュリアン・ラフェリエールとムバールキーと頻繁に連絡をもっていたことを突き止めているが、背後で糸を引いていたのは政治評論家でカタール専門家のナビール・エンナスリー(Nabil Ennasri)だ。拘禁中のDuthionの証言によると、エンナスリーが彼にお金を払って連絡先を入手したということらしい。それでDuthionは2000から5000ユーロをもらったという。(Le Parisien, 6 Oct. 2023)
https://www.leparisien.fr/faits-divers/cash-deputes-et-journalistes-cibles-qatar-revelations-sur-le-scandale-de-corruption-dans-la-politique-et-les-medias-05-10-2023-4KS3EK7SM5AMXL7WYSEJYNV6QM.php
【ヨーロッパ】
モロッコの諜報部員が在ベルギーモロッコ系住民に圧力
モロッコ出身でベルギー国籍をもつ3人の女性が、モロッコの諜報部から圧力を受けているとして、匿名でメディアに語った。3人はいずれも地域でモロッコ系住民のコミュニティ活動を組織する立場にあり、それゆえモロッコ当局の関心を引いた。彼女たちはモロッコ出身であり、モロッコに忠誠を誓うけれども、団体はモロッコのために活動しているのではない、在ベルギーモロッコ人コミュニティのための非営利の活動である、それをモロッコの諜報部が団体の安全を脅かすようなことをさせようと圧力をかけてくると訴えている。協力しなければ、名誉を毀損するやり方で社会的に抹殺すると脅す。3人の内1人は最近までブリュッセルのモロッコ総領事館で働いていたが、「横領」の疑いで解雇されたという。
3人によれば、モロッコは誹謗中傷というテクニックを使う。こいつらは悪いモロッコ人だ、モロッコの利益に反する立場を支持しているなどという噂を広める。ベルギーに生まれたかモロッコに生まれたかは関係ない。彼女たちは、ベルギー当局にこうしたモロッコの諜報部の活動をやめさせてほしいと訴える。(DH, 17 Oct. 2023)
https://www.dhnet.be/actu/faits/2023/10/17/le-cri-dalerte-de-3-belgo-marocaines-envers-les-services-belges-des-agents-marocains-actifs-en-belgique-font-pression-sur-nous-72HN5SH2KJFK3ENSY3N54AGP5U/
オランダでモロッコのスパイ摘発
オランダで先週逮捕されたアブドゥッラヒーム・エル=M(64才、フルネームは非公表)は、国家反テロ・治安国家調整庁(NCTV)の上級分析官だった。10月26日、オランダ検察当局はロッテルダム在住のM.は、35才の女性警察官と一緒に、外国政府のスパイとして国家機密を漏洩させたため逮捕されたと発表した。女性警察官は以前はNCTVに勤めており、その後警察に異動したという。予審判事は10月31日(火)、2人を2週間独房に収監した。M.が奉仕していた国は明かされなかったが、モロッコ出身であることがわかっており、マスメディアはこぞってモロッコのスパイではないかと報じた。M.は数十年前にオランダに移住し、すでにオランダ国籍を取得している。2001年以降、彼は過激化、テロリズム、国家の安全への脅威といった情報に触れる特権を得ていた。(El Confidencial, 4 Nov. 2023)
https://www.elconfidencial.com/mundo/2023-11-04/analista-terrorismo-paises-bajos-a-sueldo-marruecos_3767631/
【米国】
モロッコ、肥料を米国市場に売りこみ
西サハラのリン鉱石を採掘して世界に売っているモロッコリン鉱石公社(OCP)は、競争相手のモザイク社(ミネソタ州本社)との法的係争があって2年間米国市場から手を引いていたが、今や安い肥料価格を武器に米国市場への復帰を狙っている。10月初め、北米OCP(OCPの子会社)の利益をワシントンで擁護するCornerstone Government Affairsという広告会社はロバート・ボニー農務次官補のオフィスにある資料を送付した。それは米国が輸入している肥料を国別に示したもので、そこに2022年に4,000万トンを生産したモロッコは含まれていなかった。資料は、米国では肥料の需要が高まっておりブラジルやインドからの肥料価格が高くなっている、モロッコの肥料を輸入することなく米国の農家は救われない、と主張するものだった。
OCP側は楽観的だ。米国国際貿易委員会と商務省は、OCPの株の95%は国が保有するもので競争を歪めているというモザイク社の申立てを受けて、2021年モロッコ産肥料に対する相殺関税を課した。以来、モザイク社とOCPは激しい闘いを法廷で繰り広げている。9月、米国の国際貿易裁判所は国際貿易委員会に対してモロッコ産肥料に対する相殺関税をアセスし直すよう命じた。
また、チュニジアのGafsaリン鉱石社(CPG)は2023年9月末の時点で20万トンの肥料を米国に輸出した。2022年全体で9万トンだったのと比べると大きな前進だ。米国が2023年7月の段階で米国が輸入したリン酸一アンモニウムのうち7%がチュニジア産だ。リン酸二アンモニウムとなると10%のシェアを誇る。2022年のチュニジアのリン酸の生産量は400万トンだが、2011年以前の800万トンへ復帰することを期待している。(Africa Intelligence, 19 Oct. 2023)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2023/10/19/le-lobbying-du-geant-des-phosphates-ocp-pour-regagner-le-marche-americain%2C110077402-art
米国でモロッコ向け「アパッチ」ヘリコプターの生産始まる
マクダネル・ダグラス社が開発し、現在はボーイング社が生産している世界で最も高い殺傷能力をもつ攻撃用ヘリコプター「AH-64Eアパッチ」のモロッコに向けた生産が始まった。モロッコは24台注文しており、2024年末までに納入される予定だ。アパッチは昼夜を問わず飛行でき、天候にも左右されない。対戦車ミサイルを発射でき、射程3,000mの銃を装備している。もともとはベトナム戦争用に開発されたものだが、強力な攻撃能力ゆえ「空飛ぶ戦車」などと呼ばれている。(La Razón, 16 Nov. 2023)
https://www.larazon.es/espana/defensa/enemigo-puertas-empieza-construccion-apache-ah64e-marruecos-helicoptero-mas-letal-mundo_202311166556412332499c000145b69b.html