西サハラ友の会通信  No. 32

(2023年8月7日)

2023年2月のニュースを送ります。今回の通信の注目ニュースは、じわじわと進むモロッコの軍備増強です。米国の兵器供与に加え、イスラエル製、中国製、トルコ製のドローンの購入と西サハラにおける実戦での使用が目立つようになっています。イスラエルやその他の国々との防衛分野での協力強化もあります。また、モロッコの人権状況をめぐる欧州議会の批判とそれに対するモロッコの反発が続いています。欧州議会はモロッコによる議員買収のスキャンダルに揺れており、しばらく応酬が続くでしょう。欧州市場で問題となっているモロッコのトマトの一部は西サハラ産ミニトマトです。

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目次

【西サハラ/占領地】

・西サハラ沖油田、デレック・グループの株主は誰か

・スペインの活動家、西サハラから強制退去

【西サハラ/解放区】

・モロッコのドローン攻撃(続報)

・RASD新閣僚、指名される

【モロッコ】

・在フランス副領事の夫、酩酊で追放

・モロッコの主張「緩衝地帯はモロッコ領だ」

・モロッコ、仏大使を召還

・モロッコの狭まる表現の自由

・モロッコ・ブラジル防衛協定、批准

・イスラエル空軍参謀総長、モロッコ訪問

・モロッコ、ガボンに肥料2千トンを寄贈

【アルジェリア】

・人権団体、政府によって突然解散

・アルジェリア、スペインへのガス供給国第1位へ復活

【スペイン】

・セウタ、メリリャの税関再開の方針を確認

・アルジェリアとの断絶でスペイン政府に補償要求

・スペインビジネス界「政府は何もしてくれない」

・カナリア諸島の「モロッコ友の会」

【フランス】

・ペガサス問題:モロッコの主張、すべて却下

【ヨーロッパ】

・欧州議会イタリア選出議員、逮捕される

・ポリサリオ戦線はテロ組織と無関係

・モロッコの政府系ファンド、EUでロビー

・モロッコ(西サハラ)産トマト、欧州市場を席巻

【オーストリア】

・オーストリアの立場「西サハラには住民投票が必要だ」

【米国】

・シャーマン国務副長官、アルジェリアに感謝

・モロッコへの兵器供与を拡大

【ロシア】

・ラブロフ外相、西サハラ問題の解決を呼びかける

【アフリカ連合】

・アフリカ連合サミット、イスラエルを締め出す

【西サハラ/占領地】

西サハラ沖油田、デレック・グループの株主は誰か

NGO西サハラ資源ウォッチはイスラエルの石油会社デレック・グループの株主リストを入手した。デレック・グループは2022年にモロッコ政府から採掘ライセンスを得た2つのイスラエル企業の一つ、NewMed Energyの親企業だ。

西サハラ沖海底の埋蔵石油の調査は前から行われており、少なくとも資源ウォッチは2013年、カナリア諸島のラス・パルマスの港に停泊する中国のBGP Prospector号の写真を得ており、その時はフランスのトタル社のために探査を行った後だった。2017年にはイギリスのGeoEx社が調査を行ったが、以来、同社はデータを他企業に売ろうとしていた。

NewMed Energy社は2022年12月6日に西サハラ沖での探査のライセンスを得たと発表した。同社は資源ウォッチの問い合わせに対して「わが社はすべての適用可能な法律に従っている」と回答してきたが、どうしてそういう結論になったのかは説明していない。この会社はテルアビブ証券取引所に登録された会社で、欧米の投資家も参加している。西サハラ資源ウォッチが入手した株主リストは、株全体の61.9%の所有分しか示していない。

同社株の50.2%はイスラエルのイツハク・ツシュバ(Yitzhak Tshuva)氏が保有する。2番目にシェアの大きいノルウェー年金基金(政府)は2.94%で、実際には昨年12月31日、3.03%(5,500万ユーロ)にまで増やしている。ノルウェー年金基金は過去に西サハラの石油探査にかかわる企業を投資先リストから外した経緯があり、その時は「基本的な倫理規範を犯す可能性のある受け入れがたいリスク」などと批判していた。ドイツ銀行の名前が投資者10番目に上がっており、シェアは0.49%だ。他に米国の投資会社が6社、イスラエルの個人や企業が9件あがっている。(Western Sahara Resource Watch, 15 Feb. 2023)

https://wsrw.org/en/news/deutsche-bank-blackrock-among-owners-in-occupation-oil-hunt

スペインの活動家、西サハラから強制退去

スペイン・カタルーニャの活動家、ヌリア・ボラさんが2月16日、エル=アイウンに到着してすぐモロッコ当局に拘束され、強制送還された。ヌリアさんはパートナーと一緒に若者の証言を聞くために行ったのであり、逮捕されて驚いたという。「結局彼らは西サハラで起きていることが外に知られるのを恐れており、私たちがジャーナリストであろうがなかろうか関係ないのだ」と述べた。(Publico, 20 Feb. 2023)

https://www.publico.es/internacional/organizacion-finestra-mon-denuncia-marruecos-expulsa-activista-sahara.html

【西サハラ/解放区】

モロッコのドローン攻撃(続報)

モーリタニアのメディアによると、1月24日(火)、チンドゥーフからズエラートに至る路線のアズクラ(Azkoula)というところで、モーリタニアのセミトレーラー(トラック)がモロッコのドローンに攻撃された。そこはポリサリオ戦線が支配する地域(つまり解放区)だ。攻撃でモーリタニア人3名が死亡したもよう。トラックは、違法な金採掘で取った土を運んでいた。モーリタニアのメディアは、モロッコはモーリタニアが抗議しないのを弱さの表れ、あるいは「殺しのライセンス」とみなしていると批判している。(El Watan, 26 Jan. 2023)

https://elwatan-dz.com/trois-civils-mauritaniens-tues-dans-une-nouvelle-attaque-au-drone-de-larmee-marocaine-une-enieme-provocation-qui-frise-le-casus-belli

サハラ・アラブ民主共和国(RASD)新閣僚、指名される

2月14日(火)、ガーリー大統領は新閣僚を発表した。

首相 ブシャラーヤー・ハムーディ・ベユーン(Bucharaya Hamudi Beyún)

対外関係相 ムハンマド・スィダーティー(Mohamed Sidati)

内務相 マリヤム・アハマーダ(Mariam Ahmada)

法宗教相 ムハンマド・ムバーレク・アフメド・ナアナーア(Mohamed Embarek Ahmed Naanaa)

教育訓練相 ハトリー・アドゥーフ(Jatri Aduh)

保健相 サーレク・バーバー・ハサナ(Salek Baba Hasanna)

占領地・海外コミュニティ相 ムスタファー・ムハンマド・アーリー・スィード・エル=バシール(Mustafa Mohamed Ali Sid-el-Bachir)

情報相 ハマーダ・サルマ(Hamada Salma)

水環境相 アッダ・ブラーヒーム・フメイム(Adda Brahim Ahmeim)

運輸エネルギー相 サーレク・ムハンマド・ムバーレク・ムハンマド・ファーデル(Salek Mohamed Embarek Mohamed Fadel)

解放区建設・再建相 サーレム・スィード・ブラーヒーム・レブシール(Salem Sidbrahim Lebsir)

青年スポーツ相 ハサニート・ムハンマド・アシャバレル(Hasanito Mohamed Ashabalel: Ministro de Juventud y Deportes.)

人事・雇用・行政発展相 ムハンマド・アル=マーミー・ターメク(Mohamed Al-Mami Tamek)

文化相 ムーサー・サルマー(Musa Salmae)

社会・女性エンパワーメント相 スウィルマ・ムハンマド・ベイルーク(Suelma Emhamed Beiruk)

商業相 アフメド・バシャル・アンミー・オマル(Ahmed Bachar Ammi Oma)

経済発展相 バーバー・アフメド・ムハンマド・ヤフズィフ・フデイド(Baba Ahmed Mohamed Yahdih Afdeid)

協力相 ファトマ・シェ イフ・メフディ(Fatma Chej Mehd)

儀典局長 ブラーヒー・ムハンマド・ファーデル・スィード(Bulahi Mohamed Fadel Siyed)

法宗教相付宗教問題担当相 スィーダハメド・アレーヤート・ハンマ(Sidahmed Aleyat Hamma)

首相付公共財保護及び議会関係担当相 ファダーリー・アリー・ブーヤー(Fadali Ali Buya)

教育訓練相付職業訓練担当相 マッディー・ハヤーイ(Maddi Hayay)

大統領府官房長官 ムハンマド・シェイフ・ムハンマド・レフビーブ(Mohamed Chej Mohamed Lehbib)

各難民キャンプのウィラヤ(地区)及び行政政治地区知事も決まった。

エル=アイウン地区知事 ガウス・マームーニー(Gauz Mamuni)

アウセルド地区知事 ヒーラ・ブラーヒー(Jira Bulahi)

スマラ地区知事 イッザ・バヒーフ(Al-Izza Babeh)

ダーフラ地区知事 アブダゥ・シェイフ(Abda Chej)

ブージュドゥール地区知事 デイフ・ムハンマド・シャッダード(Deih Mohamed Chadad)

シャヒド・アル=ハフェド行政政治地区知事 ダーフ・ムハンマド・ファーデル( Daf Mohamed Fadel:)

【モロッコ】

在フランス副領事の夫、酩酊で追放

1月21日(土)、フランス東部、スイスにも近いドル(Dole)のレストランで酩酊してトラブルを起こしたモロッコ人男性が警察に確保された。男性は、モロッコの駐フランス副領事の夫で、レストランの受付に酔って現れ、爪楊枝をくれと迫り、8人用のテーブルを一人で占拠して、アラビア語で怒鳴りだした。レストランは警察を呼び、警察は彼を連れて行ったが、それで終わらず、警察で彼は警察の銃を奪おうとした。そして自分は外交パスポートをもっているといい、それは事実だったので、彼は釈放された。しかし、外交特権はその国が放棄するといえばなくなるもので、こういう場合でも特権は維持されるのか、しばらく様子を見ることになった。(Le Progres, 23 Jan. 2023)

https://www.leprogres.fr/faits-divers-justice/2023/01/23/ivre-le-mari-de-la-consule-du-maroc-embarque-par-la-police

モロッコの主張「緩衝地帯はモロッコ領だ」

2020年11月にモロッコ軍はゲルゲラートを封鎖する抗議行動をしていたサハラーウィたちを取り除くために軍事緩衝地帯に入った。ポリサリオ戦線はこれを停戦違反とみなして停戦放棄に至った。今や、モロッコは軍事緩衝地帯はモロッコ領であり、いかなる侵入にも対応すると主張している。もともと、1991年の停戦協定に追加された協定で、砂の壁の両側を緩衝地帯とし軍は入らないと決めたが、モロッコは緩衝地帯を占領下に置くことにしたというわけだ。この2年間でポリサリオ戦線の言う「解放区」の80%が失われたことはまちがいない。

モロッコがドローンの使用を始めると戦局が変わった。まずアラブ首長国連邦から(中国製の)ウィン・ロン1号(Wing Loong 1)を買った。そして最初のドローン攻撃は2021年4月7日、ポリサリオ戦線の憲兵隊長を殺害した。その後、モロッコはドローンを使ってポリサリオ戦線の兵士数十名を殺害。砂の壁に近づいた者やポリサリオ戦線側のロケット弾発射機や砲撃用の機械を使う者たちを攻撃した。

次にトルコ製バイラクタルTB2を購入。2021年11以降爆撃が強化された。そのファンファーレとなったのがアルジェリアのトラックへの攻撃だ。緩衝地帯で3人のアルジェリア人民間人が殺害された。その後もモーリタニアの民間人金採掘者への攻撃は繰り返し行われている。

モロッコは2020年の終わり頃、ウィン・ロン1号をエル=アイウン近くの第4空軍基地に配備した。2022年半ばにウィン・ロン2号が到着するとそれらがエル=アイウンの基地に配備され、バイラクタルTB2はスマラに移された。ウィン・ロン1号は両方の基地におかれているが、やがてウィン・ロン2号に置き換えられるだろう。

モロッコ空軍でドローンを扱う部隊はSACR(Système Aéroporté de Contrôle et Reconnaissance: 管制偵察システム)といって、現在、先ほど述べた3機種の他に、ヘロン1号、ヘルメス900の合計5つのドローンを運用している。ダーフラ空港にある基地にはヘロン1号が配備されている。(Defensa, 5 Feb. 2023)

https://www.defensa.com/africa-asia-pacifico/como-uav-armados-marroquies-cambiaron-reglas-juego-sahara

モロッコ、仏大使を召還

モロッコは欧州議会がモロッコの報道の自由の欠如を問題にした決議を採択したことに抗議して、1月19日(木)ムハンマド・ベンシャアブーン(Mohamed Benchaaboun)駐フランス大使を本国に召還していたことを明らかにした。2022年7月に着任したばかりだった。モロッコはフランスが欧州議会決議の背後にいると疑っている。クリストフ・ルクルティエ在モロッコ仏大使は、フランスは欧州議会の決議とは関係ないと主張した。(Voz Populi, 10 Feb. 2023)

https://www.vozpopuli.com/internacional/marruecos-retira-embajador-francia-represalia-investigacion-ue.html

モロッコの狭まる表現の自由

「携帯は機内モードにしましたよね」と歴史家でジャーナリストでもあるマアティ・モンジブ(Maati Monjib)氏はインタビュー前に聞いた。彼の言うことは決して誇張ではない。モロッコ当局はペガサス(イスラエル製スマホ盗聴システム)を幅広く使っており、モンジブ氏はモロッコでペガサスを送り込まれた最初の反体制活動家だった。モロッコ人権協会(AMDH)の元代表ハディージャ・リヤーディー(Khadija Riady)氏は、モロッコでは「2014年以後弾圧が強まった。とくにエジプトのシシ将軍のクーデター以後ひどくなった。欧米はエジプトでの大々的な弾圧を許しており、体制は制裁を受けずに批判勢力を抑えられることを理解した」と言う。

政治家、労働組合活動家、人権活動家に対する弾圧もひどいが、中でもジャーナリストへの弾圧がひどい。「国境なき記者」によると、モロッコでは十数人の記者が投獄されている。その多くはサハラーウィだが、モロッコ人記者で有名なのがタウフィーク・ブーアシュリーン(Taufik Buachrine)、スレイマーン・ライースーニー(Suleiman Raissouni)、オマル・ラーディ(Omar Radi)の3人だ。性犯罪の罪を着せられて、5年から15年の刑を受けている。リヤーディー氏は「これらの容疑はすべて嘘だ。本当の理由は、汚職等レッドラインを超えて記事を書いたことだ」と言う。最新の報道の自由ランキングでは、モロッコは180ヶ国中135位。また、王室に近い実業家たちはメディアを買収したり創設したりして反体制側を誹謗中傷している。リヤーディー氏は「私たちのことを性的に堕落した者だとか外国の手先だとか、LGBTIの権利を擁護するとイスラームを破壊すると言われる」と言う。

こうした脅迫が効果をあげないと次は投獄だ。2020年から、すでに十数人の人権活動家が獄中で死んでいる。今有名なのはサイーダ・アル=アラミー(Saida al Alami)、リダー・ベンオスマーン(Rida Benotmane)の2人の人権活動家で、公務員を侮辱したとか虚偽のニュースを広めたとして投獄されている。ジャーナリストのオマル・ラーディは胃の病気をかかえてて適切な食事を与えられておらず、健康を害している、と彼の父親イドリス・ラーディ氏は言う。ラーディ氏によると、オマル氏は24時間隔離され、書くことも読むことも、手紙を受け取ることも禁じられている。許されているのは月に2回の家族への電話だけだという。(El Salto, 14 Feb. 2023)

https://www.elsaltodiario.com/marruecos/-menguante-margen-libertad-disidencia-marruecos-

モロッコ・ブラジル防衛協定、批准

ブラジル国会下院は2019年6月13日に調印されていた防衛協力枠組協定を批准した。協定はさまざまな分野の防衛協力に関するもので、とくに研究開発、設備支援、防衛システム及びサービスの取得を強調している。また、ブラジル・モロッコ両軍の平和維持作戦を含む作戦、そして科学技術分野で得られた知識と経験の交換も行う。さらに、訓練、指導、共同演習を強化し、それらについての情報交換を行うことになる。ブラジルの防衛産業の代表者たちは昨年5月、エンブラエルK-390(ブラジル製の空中給油・輸送機)に乗ってモロッコなどのアラブ諸国を訪問している。(Defensa, 16 Feb. 2023)

https://www.defensa.com/argentina/marruecos-brasil-firman-acuerdo-marco-cooperacion-defensa

イスラエル空軍参謀総長、モロッコ訪問

イスラエル空軍のトップ、トマル・バル大将がモロッコを訪問した。初めて空の共同演習を議論したと思われる。大使館開設はまだであるにも関わらず、国防分野の協力は進んでいる。関係正常化以来、2021年11月のベニー・ガンツ国防相の訪問があり、イスラエル国防関係者のモロッコ訪問はこれで3人目となる。(TSA-Algerie, 27 Feb. 2023)

https://www.tsa-algerie.com/le-maroc-et-israel-envisagent-des-manoeuvres-militaires-conjointes/

モロッコ、ガボンに肥料2千トンを寄贈

ムハンマド6世国王はガボンに2千トンの肥料を寄贈した。メディアのMiddle East Eye(2月22日付)は、物価高騰に苦しむモロッコ国民の抗議の声を無視し、ガボンに寄付をしているという皮肉混じりのオピニオンを掲載した。書いたのはアズィーズ・シャヒール(Aziz Chahir)氏(ラバトのジャック・ベルクセンター客員研究員、モロッコ難民研究センターの事務局長)。それによると、国王はガボンのリーブルヴィル(Libreville)に別荘をもっていて1年のうちかなりな期間をそこで過ごしている。山と積まれた肥料を前に、ガボンのアリ・ボンゴ大統領に案内される国王の映像もリリースされている。その2、3日後には、国王はセネガルに飛び、5千トンの肥料を寄贈した。いずれもアフリカの友好国を「食料危機」から救うためだとされる。SNSでは、こうした「リン外交(Phosphate Diplomacy)」が西サハラに対するモロッコの自治案支持を広めるのに役立つだろう、などという言辞が飛び交っている。(モロッコが西サハラで不法に採掘しているリン鉱石は肥料の原料であり、それを外交の道具に使って西サハラ占領への支持を集めようというのが「リン外交」)

実際、モロッコ経済は危機にある。モロッコの国家人間開発事務所(ONDH)の2019年の調査によると、国民の45%が貧しいと感じている(都市部では38.6%、村落部では58.4%)。コロナ以後は320万人が貧困層の仲間入りをしたとされる。世銀は1月11日に出したグローバル経済の現況に関する報告書で、モロッコの2023年の成長率は4.3%から3.5%に減ると予想した。昨年の干魃の影響が大きい。1月14日に世界経済フォーラムが出した報告書でもモロッコは危機的だと書かれている。

オピニオン記事によると、村落地域の貧困はイスラーム主義運動と左派への支持を生みだしている。それが南部の2州でポリサリオ戦線のリクルートを助けているのは驚くにあたらない。(Middle East Eye, 22 Feb. 2023)

https://www.middleeasteye.net/fr/opinion-fr/maroc-manifestations-pauvrete-roi-mohammed-6-economie-gouvernance

【アルジェリア】

人権団体、政府によって突然解散

ミシェル・シソン米国務次官補(ワシントンのNGO担当)のアルジェリア訪問に先立ち、アルジェリアの人権団体が政府によって解散させられた。次官補のアルジェリア訪問は1月21日に予定されていて、NGOとの面談の前日、アルジェリア人権擁護連盟(LADDH)は裁判所の命令により解散させられた。裁判所命令は2022年5月の内務省の申立てに基礎をおくものだが、NGOによると、国務次官補と面会させないために仕組まれたものだという。また、同じ週、ベジャイア(Béjaïa)の人権ドキュメンテーションセンター(LADDHの支部)も解散させられた。1月28日、ティジ・ウズ(Tizi Ouzou)にあるその支部「人権・市民権の家」も閉鎖された。国家反逆的な言説を流布しており、国際団体と疑わしい関係をもっていることが訴えられていた。LADDHは1983年に設立され、ヌールッディーン・ベンイスアド(Noureddine Benissad)が率いていたが、内紛によって3つの団体に分裂している。LADDHが解散させられる前にも、2019年以来いくつかの団体が解散させられている。青年行動連合(Rassemblement Actions Jeunesse: RAJ)のメンバー数人は投獄され、SOSバーブ・ル=ウェッド(Bab El-Oued)も2019年のデモに積極的に参加し「海外資金」受入れを理由に訴追された。シソン次官補は滞在中、大統領、外相と面会した他、「国境なき記者」のアルジェ代表、ジャーナリストのハーレド・ドゥラーレニー(Khaled Drareni)とも面会した。彼はアルジェリにおける表現の自由の状況を象徴する人物である。(Africa Intelligence, 2 Feb. 2023)

https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2023/02/02/la-mission-contrariee-de-la-secretaire-d-etat-adjointe-americaine-michele-j-sison-a-alger,109908646-art

アルジェリア、スペインへのガス供給国第1位へ復活

2月9日、エナガス社(Enagas)は、2023年1月のスペインへのガス供給国としてアルジェリアが一位だったと発表した。2022年1月、アルジェリアは西サハラ問題で立場を後退させたスペインに対してガス供給を減らし、米国に首位の座を譲っていたが、今回復権したかたちだ。エナガスによると、1月のスペインの総ガス供給のうち25%がアルジェリアのものだという。(Reuters, 9 Feb. 2023)

https://www.marketscreener.com/quote/stock/ENAG-S-S-A-409361/news/Algeria-regains-spot-as-Spain-s-top-natural-gas-source-Enagas-42946535/

【スペイン】

セウタ、メリリャの税関再開の方針を確認

2月2日(火)、スペインとモロッコはセウタとメリリャの税関開設・再開の方針を確認し、その試験を1月27日から行うことにした。正式な開始がいつになるかは決めなかった。セウタの税関設置とメリリャの税関再開は、スペインがモロッコの自治案を受け入れたのと引き換えに得た利益のうち最大のものである。(El Pais, 2 Feb. 2023)

https://elpais.com/espana/2023-02-02/pedro-sanchez-en-marruecos-el-compromiso-es-evitar-lo-que-sabemos-que-ofende-a-la-otra-parte.html

アルジェリアとの断絶でスペイン政府に補償要求

アルジェリアとの貿易が激減したことで、アルジェリアに資産をもつスペイン企業はスペイン政府を相手取って補償要求を行うつもりだ。約20社がスペイン政府の西サハラ問題に対する突然の方針転換で大損害を受けたと主張。しかし、政府は今後の投資先としてアルジェリアよりモロッコを選んだのであり、事業家たちに国を変えた方がいいと提案している。政府は損失となったコンテナについて補償しようと考えているが、事業家たちは、それは公正でないし、損失額やニーズに合わないと言う。(El Independiente, 15 Feb. 2023)

https://www.elindependiente.com/espana/2023/02/15/empresas-espanolas-en-argelia-preparan-una-reclamacion-patrimonial-contra-el-estado-por-los-danos-del-giro-en-el-sahara/

スペインビジネス界「政府は何もしてくれない」

アルジェリアでビジネスを行っているスペイン企業は、政府は(アルジェリアとの関係修復について)何もしてくれないと嘆いている。2022年6月からするとスペイン・アルジェリア間のビジネスは92%減少した。1月10日、そうしたスペイン企業十数社が産業省の代表者と協議を持った。席上、産業省の代表者は、結果がそうなるところまでは読んでいなかったと告白した。かといって、方針転換を取り消せばモロッコとの関係を悪化させるとして、変更を否定した。ビジネスマンは政府から「アルジェリアのことは忘れ、他の道を探すよう」促された。協議に参加したアルジェリアで土木工作機械の製造事業に携わる実業家、フリオ・レブレロ氏は、「中小企業が国際市場を開拓するのにどれほどの時間と労力がかかるか、政府はまったくもって無知だった。今は20年前にアルジェリアに進出するのに要した決断、勇気とは比べものにならないのだ。アルジェリアは自分たちを甘やかしてくれた。それが1日にしてすべてが失われた。政府は、われわれがビジネスを閉じて人員を解雇しなければならないという事情を知らない。今回の問題はわれわれ事業家が創り出した問題ではない、政府がやったことでわれわれの労苦が水の泡になるのは不公平だ。政府はわれわれが被った損失に向き合うべきだ」と述べた。(La Razón, 19 Feb. 2023)

https://www.larazon.es/espana/factura-magreb-cambio-politica-sahara_2023021963f175bab5cd32000139ffa6.html

カナリア諸島の「モロッコ友の会」

「カナリア諸島モロッコ友の会」は元カナリア諸島知事のヘロニモ・サアヴェドラ氏の支援をえてモロッコにおけるカナリア諸島の企業の存在を高めたいと考える専門職や実業家の集まりで、2月16日(木)に誕生した。会長のフアナ・ゴンサレル氏は、モロッコはカナリア諸島で2,670万ユーロの販売を行っているが、カナリア諸島からモロッコに輸出されるのは1,010万ユーロに過ぎない。それはカナリア諸島の輸出の15.34%しか占めていない。(Europa Press, 16 Feb. 2023)

https://www.europapress.es/islas-canarias/noticia-nace-asociacion-canaria-amigos-marruecos-reformular-presencia-empresas-norte-africano-20230216144541.html

【フランス】

ペガサス問題:モロッコの主張、すべて却下

2021年7月にペガサス問題が発覚した際、モロッコは名誉毀損だとしてフランスで15件の訴訟を起こした。しかし、一審ですべて敗訴。モロッコは控訴した。国家は名誉毀損で報道機関を訴えることはできないとした報道の自由法が適用されて訴えは却下された。モロッコ側の弁護士、オリビエ・バラテリ氏は「補償を求めているのはモロッコの国家それ自身ではなくて、ペガサスを使ったと言われたモロッコの諜報機関を弁護するものとしてのモロッコの国家であって、国はその機関の代わりに訴訟を起こしているのである」として、報道の自由法を適用しないよう求めた。彼によると、モロッコはペガサスを購入、入手、使用したことはない、という。調査によれば、30個のiPhoneにおけるペガサス使用の痕跡とは別に、2つのアドレスは明らかにモロッコのもので、メールアドレスに使われたサーバーはモロッコの国内のものだった。控訴審判決は4月15日になるもよう。(RFI, 18 Feb. 2023)

https://www.rfi.fr/fr/afrique/20230218-affaire-pegasus-débouté-des-plaintes-déposées-en-france-le-maroc-fait-appel

【ヨーロッパ】

欧州議会イタリア選出議員、逮捕される

2月10日(金)朝、ベルギー捜査当局はマルク・タラベラ議員(ベルギー)を逮捕した。次にイタリアの議員アンドレア・コッゾリーニを逮捕しようとしたが、ブリュッセルの自宅にはおらず、ナポリで入院していたが、退院と同時に逮捕することができた。容疑はモロッコから賄賂を受け取り、議会での議論をモロッコに有利になるよう誘導したというもの。(Ansa, 10 Feb. 2023)

https://www.ansa.it/sito/notizie/mondo/europa/2023/02/10/svolta-nel-qatargate-arrestato-a-napoli-leuroparlamentare-cozzolino_a0599112-2836-4a7a-82fd-4494e37f0aa8.html

ポリサリオ戦線はテロ組織と無関係

フランス選出欧州議会議員ブリス・オルトフュー(共和党出身でキリスト教民主会派)が、昨年12月5日、ポリサリオ戦線とサヘル・サハラ地域のテロ組織の関係が疑われるが、欧州委員会は難民キャンプへの資金援助の会計監査をしているのか、ポリサリオ戦線がテロ組織と関係するのを防止するいかなる策をとっているか、と質問した。これに対し2月17日、欧州委員会は次のように回答した。委員会の資金援助はUNHCRと国際的NGOを通じて行われており、定期的に会計検査を行っている。過去5年で6回行った。これまで資金の不正使用は見つかっていない。また、欧州委員会はポリサリオ戦線とテロ組織が関係しているという情報はもっていない。(Europan Parliament, 5 Dec. 2022, 17 Feb. 2023)

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/E-9-2022-003923_FR.html

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/E-9-2022-003923-ASW_FR.html

モロッコの政府系ファンド、EUでロビー

モロッコの政府系ファンドであるイスマール・キャピタル(Ithmar Capital)社は、2022年12月に欧州諸機関に利害をもつ団体として登録された。それはちょうどモロッコゲートが世を賑わせていた時期だ。EUの政策や意志決定に影響を及ぼそうとする「利益代表」(組織、協会、グループ、フリーランスワーカーなど)は「透明性登録簿」に登録しなければならない。つまり、ロビーを行う団体だということ。そこでEUを担当するのはサフィア・ムーリン(Safia Mouline)で、かつてメリル・リンチ、ソシエテ・ジェネラル、ロスチャイルドなどに仕えたベテラン投資家だ。仕事はヨーロピアン・グリーンパクト(2050年までに気候問題の悪化を食い止めるための諸政策)でのモロッコの立場を擁護することだ。モロッコは10月に欧州とグリーンパクトを締結したばかり。2050年までに環境にやさしい水素を生産・輸出する国になるつもりだ。(Africa Intelligence, 20 Feb. 2023)

https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2023/02/20/le-discret-lobbying-du-fonds-ithmar-capital-aupres-de-l-union-europeenne,109914349-art

モロッコ(西サハラ)産トマト、欧州市場を席巻

2022年、モロッコは欧州トマト市場におけるスペインの地位(2位)を奪った。スペインのトマト生産量はオランダのレベルまで減少した。過去10年、オランダのEU市場向けトマト販売量は25.22%減り、スペインは28.42%減った。代わってモロッコは71.33%増やした。これまでEUのトマト市場ではオランダが1位、スペインが2位だった。モロッコは今やスペインを蹴り落とし、オランダの販売量に近づいている。

オランダは販売量を減らしてるとはいえ、2022年は6億4,401万キロを販売した。モロッコは2位に浮上し、5億5,827万キロを売った。スペインの販売量は5億1,384万キロだった。とはいえ、単価が上がっているため総売上高は増えている。4位はフランスで、次はトルコだ。(Hortoinfo, 24 Feb. 2023)

https://hortoinfo.es/importacion-tomate-ue-2022-marruecos-supera-espana/

【オーストリア】

オーストリアの立場「西サハラには住民投票が必要だ」

オーストリアのカール・ネーハマー首相はモロッコに3日滞在し、不法移民に対処し、貿易を拡大する協定を締結した。オーストラリアで難民申請したモロッコ人は8,471人に上った。

西サハラについて、オーストリアはオランダと同様モロッコの自治案に傾いているが、国連が調整するプロセスがなければならず、最後には住民投票が行われなければならないと主張している。オーストリア・モロッコ共同宣言には「オーストリアはモロッコの2007年の自治案を国連の政治プロセスに対する真剣で、可能性のある貢献とみなす」と述べる。(Die Presse, 28 Feb. 2023)

https://www.diepresse.com/6257224/die-afrika-strategie-karl-nehammers-beginnt-in-marokko

【米国】

シャーマン国務副長官、アルジェリアに感謝

2月1日、ラムタネ・ラマムラアルジェリア外相と会談した米国のシャーマン国務副長官は、「西サハラ問題の永続的かつ尊厳ある解決を進める国連の努力に対する支持を含む、アルジェリアの地域紛争の解決への貢献に感謝する」と述べた。(US State Department, 1 Feb. 2023)

https://www.state.gov/deputy-secretary-shermans-call-with-algerian-foreign-minister-lamamra/

モロッコへの兵器供与を拡大

米国は2025年初頭、F-16 Viper戦闘機やAH64Eアパラッチヘリコプターなどの新しい兵器をモロッコに供与する。モロッコの軍事力強化を狙う理由は2つ。北アフリカにおけるジハーディストの拡大阻止とマグレブにおけるロシアの影響拡大防止だ。また、同時に空軍基地拡大もはかる。北西部にあるシディ・スリマネ基地とジュリバ基地だ。当然、乗員の訓練も行われる。モロッコにとって、これは最も野心的な経済プロジェクトであると同時に、地域で軍事力とくに空軍力のリーダーシップを握ることが狙える。シンクタンクの安全保障文化研究所が出した「モロッコ、ジブラルタル海峡、そしてスペインにとっての軍事的脅威」という報告書では、モロッコが2017年に発表した軍備五カ年計画に沿い220億ドルを費やして地域における軍事的優位を獲得するのではないかと書いている。米国とロシアの新たな代理戦争のシナリオを描く分析も少なくない。(Voz Populi, 13 Feb. 2023)

https://www.vozpopuli.com/internacional/marruecos-rearme-aereo-cazas-helicopteros-eeuu.html?amp=1

【ロシア】

ラブロフ外相、西サハラ問題の解決を呼びかける

外交関係樹立後ロシアの外相として初めてモーリタニアを訪問したロシアのラブロフ外相は、西サハラ問題の「デッドロックを解消し」、国連安保理決議に基づく解決を促すよう述べた。また、「西サハラ友好国グループ(Group of Friends of Western Sahara)」(西仏露英米)が「休止」状態になっていることに遺憾の意を表明した。(EFE/Swissinfo, 8 Feb. 2023)

https://www.swissinfo.ch/spa/sahara-occidental_lavrov-pide–sacar-de-punto-muerto–el-di%C3%A1logo-sobre-el-s%C3%A1hara-occidental/48269556

【アフリカ連合】

アフリカ連合サミット、イスラエルを締め出す

イスラエルのi24NEWSによると、2月18日、アジスアベバで開かれていた第36回AUサミットは、イスラエルを会議から締め出した。イスラエルはAUのオブザーバー・ステータスを与えられており、イスラエル外務省アフリカ局次長シャロン・バル・リーが率いる政府代表団は会議への参加バッジをもっていた。しかし、南アとアルジェリアの圧力で追い出されてしまった。開会の式典中、警備員が彼らに近づき、退場を促したという。(i24NEWS, 18 Feb. 2023)

https://www.i24news.tv/fr/actu/israel/diplomatie-defense/1676718413-une-deleguee-israelienne-expulsee-du-sommet-des-chefs-d-etat-de-l-union-africaine