西サハラ友の会通信 No. 31

西サハラ友の会通信 No. 31(2023年1月分)

昨年末から引き続きモロッコゲートが欧州のメディアを賑わせています。捜査が進展し、捜査情報がメディアに流されているようです。また、モロッコのドローン攻撃によるアルジェリアやモーリタニアの死者が増えています。

西サハラ友の会通信 No. 31 目次

【モロッコゲート】
・スパイ、金、豪華ホテル
・ルカ・ヴィセンティニ、ITUC書記長を解任
・独シュピーゲル報道:逮捕劇はこう始まった
・ブラッセルズ・モーニング誌報道:社会党系議員たちの汚職ネットワーク
・パンゼリ、捜査協力で禁固は1年に
・モロッコの欧州議会への新たなロビー活動
・欧州議会、モロッコについて決議採択
・モロッコ国会、欧州議会決議に反発
・欧州議会、モロッコとカタールへの訪問を中止・延期

【西サハラ/難民キャンプ】
・ポリサリオ戦線大会、ガーリー書記長を再選

【モーリタニア】
・モロッコ軍の攻撃で、民間人2人死亡

【アルジェリア】
・民間人トラックがドローンに襲われる
・イタリアへのガス輸出、目標達成できず

【スペイン】
・ムハンマド6世国王関連の企業に2,100万ユーロの支援
・モロッコ人男性、教会を襲撃

【イスラエル】
・モロッコの西サハラへの主権を承認するか?
・モロッコとの交渉者は元諜報部員

【国際社会】
・ボレル欧州委員会副委員長兼EU外務・安全保障政策上級代表のモロッコ訪問

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【モロッコゲート】
スパイ、金、豪華ホテル
モロッコゲートについてのフィナンシャルタイムズ紙の新年の記事(日付不明、おそらく1月12日頃)が新情報を伝えている。それによると、モロッコゲート渦中のイタリア選出の元欧州議会議員パンゼリはしばしばマラケシュの超豪華ホテル「ラ・マムーニア(https://mamounia.com/en/)」に宿泊していたという。そしてこの新年もモロッコ政府のお金でそのホテルに1週間泊まる予定であった。携帯電話の記録からそれが判明している。欧州議会の議事録を見れば、パンゼリが2010年にはモロッコびいきの発言をしていることが伺える。彼はモロッコにもっと資金を提供すべきだと主張し、EUモロッコ貿易協定、漁業協定に賛成している。また、2012年9月1日、イタリア民主党のイベントで、贈賄側の重要人物として疑われているモロッコのポーランド大使、アブドゥルラッヒーム・アトゥムーンが出席する中で、モロッコの民主化を称賛している。
ベルギー情報局は2021年にはモロッコEU関係の捜査を始めていた。捜査の中心は、モロッコが西サハラに対するモロッコの主権承認と引き換えにEU側に漁業権を与えるという取引をロビーしていた件であった。2021年、EU裁判所は貿易協定・漁業協定は西サハラ人民との協議を経ない限り西サハラには適用できないとの判断を示した。2022年7月、ベルギー情報局はパンゼリの自宅に70万ユーロの現金を発見したため、彼の家に盗聴カメラを仕掛けた。盗聴カメラから明らかになったことの一つに、彼がイタリアの労働組合活動家ルカ・ヴィセンティニ(Luca Visentini)にサンタクロースの模様をつけた封筒で5万ユーロを手渡したというのがあった。ヴィセンティニは国際労働組合総連合(ITUC:旧国際自由労連)の書記長再選を狙っている時期だった。彼はITCUのキャンペーン用に寄付を現金で受け取ったことを認めたが、何も悪いことはしていないと主張している。また、パンゼリグループが、2018年と2021年にモロッコ人がサハロフ人権賞(欧州議会が授与する人権賞)の候補になった際、それに反対票を投じるよう動いた。欧州の社会主義グループは最左派グループが提案したモロッコ人候補ではなく、最右派が提案したボリビアの候補に投票した。
イギリス選出の元議員チャールズ・タノック(Charles Tannock)氏は、2013年にモロッコの人権侵害について報告書を執筆する担当だったが、モロッコの贈賄疑惑はまったく知らなかったものの、いつもパンゼリがモロッコ批判を和らげようとしていたと語っている。(Financial Times, date unknown, Jan. 2023)
https://www.ft.com/content/203bbd3e-174a-456e-a187-8b4746010129

ルカ・ヴィセンティニ、ITUC書記長を解任
ルカ・ヴィセンティニは2022年11月に書記長に再選されたが、12月14日に職務停止を命じられた。パンゼリからの「寄付」をめぐって内部調査が行われるからだった。それが2023年3月11日、書記長を解任された。ヴィセンティニは一度逮捕されたが、釈放されており、本人は「寄付」は書記長再選レースにかかった経費の一部補填に使ったと釈明した。カタールに対する自分の立場に影響を与えるものではなかったと述べ、寄付は受けたが、影響はまったく受けていないと無罪を主張。ITUCの決定に不満を表明した。(ちなみに2022年11月以来ITUC会長は元UAゼンセンの郷野晶子氏。)(Guardian, 12 Mar. 2023)
https://www.theguardian.com/world/2023/mar/12/luca-visentini-ituc-trade-union-body-sacked-investigation

独シュピーゲル報道:逮捕劇はこう始まった
独週刊誌シュピーゲル(英語版1月20日、ドイツ語版1月21日号)は1,300個の捜査資料を見ることができ、そこから12月の逮捕劇を再構成した。それによると、12月9日朝、エヴァ・カイリ元欧州議会副議長(44才)は、夫のフランチェスコ・ジョルジが逮捕されたと聞いた時、交通事故でも起こしたのかと思ったらしい。しかし、報道を見たとき、夫の元上司、ピエール・アントニオ・パンゼリの名前が目にとまり、夫がアパートに置いていた現金の山と関係あるのではないかと疑った。彼女の父親はたまたまブリュッセルに来ていて、娘(22ヶ月)を連れて散歩に出ていた。彼女は現金の詰まったスーツケースを取り出し、赤ちゃん用のボトルやおむつの下に現金を隠し、これをもってどっかへ行って!と父親に頼んだ。しかし、父親はほどなくブリュッセルの高級ホテル、ソフィテルで警察に拘束された。カイリも逮捕され、4日後には欧州議会副議長を解任された。彼女とパンゼリ、ジョルジは公判前拘禁の状態に置かれている。
以上が逮捕劇の始まりだが、実はメゾ(半分)作戦(Operation Mezzo)と名付けられたこの捜査は数ヶ月前に始まっていて、欧州5ヶ国の秘密警察が協力していた。1,300個の内部文書は、カタールとモロッコの高官が関与していることを示しているから、この間公表された情報は氷山の一角に過ぎないと言える。パンゼリは刑を軽くすることと引き換えに証言を行うつもりのようだ。ベルギー当局筋によると、贈賄側の人物の名前も言う用意があるらしい。
贈賄によって欧州議会に影響を及ぼそうとしたのがカタールとモロッコだけだとは、多くの人は信じていない。パンゼリのグループはモーリタニアからも賄賂を受け取っており、可能性はさらにサウジアラビアにまで及ぶ。また、パンゼリ以外にも同種のグループがあったと考えられる。緑の党のヴィオラ・フォン・クラモン議員は、カザフスタン、アゼルバイジャン、ロシアを挙げる。
当初、スキャンダルの中心にカタールがいた。というのも、カタール人が現場を押さえられたからだ。しかし、当局は以前からモロッコに目を付けていた。捜査は同盟国からベルギーの情報部に欧州議会議員を通じてモロッコが自国の利益を伸張しようとしているとの「たれ込み」があって始まったようだ。ベルギー情報局(VSSE)は本件が「国の公安及び民主的、憲政的秩序に対する脅威」であると判断し、そういう場合例外的な手法として被疑者の家庭を密かに監視することができるようになっている。捜査官はパンゼリの自宅を密かに調べ、50ユーロ札で38万50ユーロの札束をベッドの下のスーツケースに発見し、金庫に32万ユーロを発見した。そしてすべてのものを元通りにして、パンゼリに捜査したことを気付かれないようにした。
捜査の初期にレーダーにかかったのはモロッコの海外諜報機関DGEDの長、ヤーシーン・マンスーリーだった。マンスーリーは欧州議会議員でパンゼリのネットワークの一員であると考えられるアンドレア・コゾリーノ、そしてパンゼリ自身と会っている。DGEDの関与は政治的にセンシティブな問題であり、もしそれが立証されるとモロッコの国家のトップレベルの関与が明らかになる。ベルギー当局の捜査ファイルに現れるモロッコ人としてはマンスーリーが最も地位の高い人物で、その下にポーランド大使アブドゥッラヒーム・アトゥムーンがいる。パンゼリ・グループを実際にハンドルしていたのは彼だと捜査当局は見ている。
ジョルジの調書によると、アトゥムーンはパリに行くときブリュッセルによく立ち寄り、その都度数2、3万ユーロの現金をもってきたという。関係者はそれが違法行為だと知っていたようだ。なぜなら、彼らはそれを「スーツやネクタイを受け取る」などと暗号で呼んでいたからだ。(Der Spiegel, 20 Jan. 2023)
https://www.spiegel.de/international/europe/a-secret-meeting-in-suite-412-inside-the-european-parliament-corruption-scandal-a-af0228b9-3557-47ca-8184-7e355ad151c3

ブラッセルズ・モーニング誌報道:社会党系議員たちの汚職ネットワーク
月刊誌ブラッセルズ・モーニングは、アラブ・ムスリム世界のニュースに特化したOrientxxi.infoの解説記事を取り上げ、いかにフランスとスペインの社会党系議員ネットワークが金銭と引き換えにモロッコの弁護をしてきたかを描いている。
2021年秋、欧州議会の外交開発委員会の90名の委員たちはサハロフ人権賞の候補選びをしていた。第1段階ではスペインの極右政党Vox党が提案した元ボリビア大統領ヘアニネ・アニェス(Jeanine Añes)と緑の党と左派グループが提案した西サハラの活動家スルターナ・ハイヤが選ばれた。委員会としてはこの内1人を選び、3人の最終候補の1人とすることになっていた。そこで元クロアチアの社会党系大臣トニノ・ピツラ(Tonino Picula)が彼のグループの議員たちにメールを送り、ヘアニネ・アニェスを支持するよう求めたのだ。それは彼個人のイニシャティブではなかった。彼は、ポルトガル選出議員で社会党系グループの副代表をしていたペドロ・マルケス(Pedro Marqués)の代理で行ったと言っている。おそらくマルケスは同グループの代表であるスペイン選出イラチェ・ガルシア(Iratxe García)の意を受けて指示したものと思われる。第2段階ではヘアニネ・アニェスが選ばれた。(注記:最終的に2021年のサハロフ人権賞はロシアの反体制政治家アレクセイ・ナヴァルニ氏に与えられた。)
欧州議会の社会党系議員たちは、他の国については人権侵害で厳しい決議を出すのに、モロッコだけはそうした決議の対象にしない。決議を出すのは移民問題ぐらいだ。2021年5月17・18日にセウタで起きた1万人の移民乱入事件(20%が子どもだった)で欧州議会はモロッコがスペインに圧力をかけるのに子どもを利用したとして非難決議をあげた。しかもそれは社会党系あるいは保守系の提案ではなく、リニュー・ヨーロッパ(リベラル系)のスペイン選出議員ホルディ・カニャス(Jordi Cañas)の提案だった。彼女の決議は397票を獲得したが、85票の反対票があり、例外的に多い196票の棄権票があった。反対・棄権した中に多くのフランス選出議員が含まれていた。
2014年末、モロッコ外交当局者らのメールが大量に漏洩し、Chris Colemanという不明の人物のツイッターアカウントで公開されるという事件があった。それにはモロッコの海外を舞台とする諜報機関DGEDの機密文書も含まれていた。この不明の人物がDGSE(フランスの情報機関)と関係していることを、われわれは知っている。フランスはモロッコの情報当局が彼らに行ったハラスメント、例えば王室に近い新聞「Le 360」を通じた暴露記事等に対して報復をしたかったのだ。ここで関係するのは、モロッコの外交電信が、パンゼリを「欧州におけるモロッコの敵の活発化する活動に対して闘う盟友」として描いているということだ。パンゼリはマグレブ諸国に対する欧州議会議員団の団長であり、人権小委員会の議長だった。パンゼリは妻・娘を巻き込み、副議長のカイリとそのパートナーで元彼の秘書だったジョルジを誘った。
ベルギー司法当局は他にも2人社会党系議員の免責特権剥奪を求めている。ベルギー選出のマルク・タラベラとイタリア選出のアンドレア・コゾリーノだ。コゾリーノは2つの組織でパンゼリの後継となっている。彼は、カイリと同様、議会のペガサス調査委員会で(否定的な意味で)いたく熱心だったという。ペガサス問題についての報告書を書いたオランダ選出のソフィー・イン・ヘット・フェルトは「カイリはペガサスの調査をねじ曲げようとしていた」と言っている。
2019年に政治家だったアブドゥッラヒーム・アトゥムーンは諜報部(DGED)エージェント、ムハンマド・ベラーレーヒーに取って代わられる。DGEDを率いるのはヤーシーン・マンスーリー(コードネームM118)で、パンゼリとコゾリーニは別々にラバトに行き、マンスーリーに面会した。
捜査に協力したフランスの情報部は、2018年にモロッコのDGEDがカウサル・ファール(Kaoutar Fal)(注記:モロッコ情報局のエージェントだとして2018年7月にブリュッセルで逮捕されたが、釈放され、帰国した)を通じて欧州議会に潜入作戦を図っていることを嗅ぎつけていた。欧州議会側で窓口となっていたのはフランス選出議員のジル・パルニョー(Gilles Pargneaux)で、西サハラの経済開発について会議を組織したのは彼だった。ファルは2018年7月に追放されたとされる。(注記:本人は自主的に帰国したと主張。)2022年1月には、モーレンベーク(ブリュッセル)で説教をしていたイマームのムハンマド・トーゥジャーニー(Mohamed Toujgani)がDGEDのエージェントとしてベルギーのムスリムコミュニティに近づいたとされる。
ここで疑問が生じる。もしアトゥムーン管理下のパンゼリ・ネットワークがうまく機能していたとしたら、なぜ4年前(2019年)にベラーレーヒーに交代させる必要があったのだろうか。欧州側情報部をより警戒させるリスクがあったのに。エクサン・プロヴァンスにあるアメリカン大学のビジネス・国際関係学部の学部長を務めるモロッコ出身のアブーバクル・ジャーマイー(Aboubakr Jamai)氏は、「モロッコの諜報部は強化されている。。。。ディープ・ステート、つまり王室(Makhzen)は、その最も単純な表現、つまり安全保障的表現に縮小されてしまったが、外交となると戦術を欠いている」と述べる。ブリタ外相は欧州議会のスキャンダルについて、モロッコは「モロッコがリーダーシップを発揮していることで困る人びとや機関からハラスメントやメディア攻撃」を受けていると言った。しかも、EU委員会副委員長のジョセプ・ボレル氏との1月5日の共同記者会見の場でそう言うのだ。さすがにボレル氏はそうした言い方に賛成しなかったが。(Brussles Morning, 19 Jan. 2023)
https://brusselsmorning.com/orient-analysis-european-parliament-qatargate-no-moroccogate/29696/

パンゼリ、捜査協力で禁固は1年に
アントニオ・パンゼリ元議員の弁護士、ローレント・ケネス氏は、1月17日、パンゼリ氏が刑期を1年以下にしてもらう代わりに捜査に協力すると誓ったことを明らかにした。罰は禁固、罰金、そして不当に得られた資産の没収となり、不当な資産は100万ユーロ相当あるという。
L’Echo紙によると、パンゼリはベルギー選出欧州議会議員マルク・タラベラに12万ユーロを現金で渡し、カタールの援助をしてもらったという。1月16日(月)、欧州議会議長はカタール贈収賄関連でタラベラとアンドレア・コゾリーノの2名の議員不逮捕特権をはずすよう要請していると述べた。タラベラはカタールから贈り物をもらったことを否定している。(AFP/Le Soir, 17 Jan. 2023)
https://www.lesoir.be/489399/article/2023-01-17/pier-antonio-panzeri-repenti-laccord-signe-prevoit-une-peine-dun-de-prison

モロッコの欧州議会への新たなロビー活動
モロッコの人権侵害を議論していた欧州議会に対して、最近モロッコはかつてないほどのロビー攻勢をかけている。カタールゲートがモロッコに飛び火している時に、それをまったく気にかけていないかのようだ。欧州議会はモロッコのジャーナリストで禁固6年の判決を受けたオマル・ラーディの状況についての決議を1月19日(木)に採決する予定でいる。モロッコのロビーはまず1月14日(土)、欧州議会が本会議で今週緊急討議を行うと決定した直後に始まった。EUモロッコ合同委員会の共同委員長ラフセン・ハッダード(Lahcen Haddad)が署名するメールが回り、添付の手紙は「なぜ、欧州議会議員はレイプされたと主張する同僚をレイプした罪を問われている男性ジャーナリストを擁護するような決議に賛成してはいけないのか」と題されていた。15日(日)朝、モロッコの外交アドバイザーが再び議員たちにアプローチをかけ、ストラルブールの議会本部で17日(火)か18日(水)に直接面会して話ができないかともちかけてきた。社会主義・民主主義会派のオーストリア選出議員アンドレアス・シャイダー氏は17日、モロッコ政府の代表が最近議事堂にいるとして批判した。しかし、彼の会派はモロッコ政府関係者の立入りを禁ずる同義には反対した。通った決議は、カタール人に捜査が続いている間だけ立ち入りを禁じるというものだった。しかも、これだってまだ実行されていなかった。
モロッコの議員たちはまた「リニュー・ヨーロッパ」会派(リベラル派)が提出した決議案にコメントを付して再考を促そうとした。決議は、モロッコでの表現の自由が過去10年間後退しているという内容だが、コメントは「それは正しくない。表現の自由、報道の自由はモロッコでは相当に拡大している」というものだった。ミゲル・ウルバン議員(反資本主義派)は「最もおかしいのは、モロッコがまだ議員にも公表されていない文書をもっていたということだ」と言う。さらにモロッコ国会の社会主義者(社会党系議員のこと)は欧州議会の同僚たちを通じてモロッコの表現の自由が前進していることやラーディ氏の件でロビーをしていた。彼らは「なぜ内縁関係事案(a matter of common law)に関する裁判所の決定を問題にするような決議を出そうというのか、モロッコの世論は理解できないだろうし、EUとモロッコの現在の協力関係を損なうことになるだろう」と述べている。
仏メディアのメディアパート(Mediapart)が報じたオマル・ラーディ氏の両親の欧州議会議員に向けた手紙によると、モロッコ議員の2人、ラフビーブ・エル=マルキー(Lahbib Elmalki)とドリース・ラシュガル(Driss Lachgar)は「大衆諸勢力社会主義連合(Socialist Union of Popular Forces)」に属し、ラバトでの土地売買で利益を得た公務員だとオマル・ラーディ氏が記事で書いたという。彼らは相場が3,000ユーロの土地を35ユーロで手に入れたのだという。
こうしたモロッコのロビー攻勢にもかかわらず、欧州議会ではモロッコに批判的な意見表明が次々となされた。(El Diario, 18 Jan. 2023)
https://www.eldiario.es/internacional/mensajes-marruecos-presionar-eurodiputados-frenar-criticas-pleno-escandalo-qatargate_1_9875167.html

欧州議会、モロッコについて決議採択
1月19日(木)、欧州議会は「モロッコのジャーナリストの状況、とりわけオマル・ラーディの件」と題する決議を採択した。決議は、モロッコの表現の自由の抑圧を非難し、ジャーナリストのオマル・ラーディ(Omar Radi)、タウフィーク・ブアシュリーン(Taoufik Bouachrine)、スライマーン・ライスーニー(Soulaimane Raissouni)、2018年サハロフ人権賞候補者のナーセル・ゼフザーフィー(Nasser Zefzafi)の釈放を求め、イグナシオ・カンベロやマアティ・モンジブに対する迫害をやめ、リフ地方の活動家の釈放を求めるといった内容だった。また決議はモロッコによるペガサス・スパイウェアの使用を非難し、欧州議会議員に対する贈賄を徹底調査する決意を述べた。(European Parliament, 19 Jan. 2023)
https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2023-0014_EN.html

モロッコ国会、欧州議会決議に反発
1月23日(月)、モロッコ国会の両院は合同で欧州議会の決議に反発する声明を採択した。声明は、決議をモロッコの司法の独立性に対する著しい侵害であると批判し、欧州議会との関係を再考すると豪語している。ただ1人、左翼連合のファティマ・アル・タンミ議員が声明に反対し、表現の自由に対する制限の撤廃や、ジャーナリストらの釈放を求めた。決議はとくにフランスに批判の矛先を向けている。「欧州議会は単なる道具であり、フランスの役割は明確だ」などと述べている。(El Confidencial, 24 Jan. 2023)https://www.elconfidencial.com/mundo/2023-01-24/respuesta-marruecos-a-la-denuncia-parlamento-europeo_3562274/

欧州議会、モロッコとカタールへの訪問を中止・延期
欧州議会は2023年上半期におけるモロッコとカタールへのすべての訪問を中止ないしは延期することを、1月25日(水)EFEに対して明らかにした。計画されていた訪問はモロッコへが3件、カタールへが2件。例えば、1月に予定されていたラバトでの地中海同盟議会会議(Parliamentary Assembly of the Union for the Mediterranean: PA-UfM)の執行部会議、2月のモロッコEU合同議会委員会、モロッコでの再生可能エネルギーを議論するエネルギー委員会が取り止めとなった。6月には市民的自由委員会の会議が予定されているが、こちらは議員たちの強い要請もあって日取りを延期するということになっている。欧州議会はロベルタ・メツォラ議長の下で2国への訪問をすべて再検討している。(Swissinfo/EFE, 25 Jan. 2023)
https://www.swissinfo.ch/spa/ue-corrupci%C3%B3n_la-euroc%C3%A1mara-cancela-o-pospone-viajes-a-marruecos-y-catar-durante-2023/48233118

【西サハラ/難民キャンプ】
ポリサリオ戦線大会、ガーリー書記長を再選
1月13日、ポリサリオ戦線の第16回大会がはダーフラ難民キャンプで始まった。2020年11月に停戦合意が破綻し以後、初めての大会だ。1月20日(金)には、ガーリー書記長・大統領(73才)を69%の支持票で再任した。ガーリー氏の再選にあたっては、190個もの質問がなされたり、ガーリー氏の運営に批判的な68才の元外相バシール・ムスタファ・サイード(Bachir Mustapha Sayed)が立候補するなど、若干の緊張も見られた。
取材に入った仏ル・モンド紙の記者サンドリヌ・モレル(Sandrine Morel)は、難民キャンプの様子を描いている。それによると、キャンプの人口は173,000人で、その3分の1が17才以下の子ども、半数が女性である。キャンプに水道はないが、5年前にアルジェリアが電気を通した。若者はスマホで日々を過ごす。キャンプはよく洪水や砂嵐にみまわれ、キャンプ住民の7.6%が深刻な低栄養状態にあり、28%が発育阻害である。女性・子どもの半数が貧血気味で、コロナとウクライナの戦争以後、国際援助は減っている。また、サハラーウィ赤新月社によると、世界的なインフレで食料供給も半分になった。難民は食料の90%を援助に依存しているにもかかわらずだ。
停戦破棄後の2年間の戦争でポリサリオ戦線は50人の死者を記録した。その半分は民間人で、モロッコのドローンで殺害された。モロッコ側は被害・損害についてはまったく発表しない。
ガーリー書記長は、かつて戦争をしていた時代のように闘うべきだという圧力が非常に強い、若者と軍がとくにそれを望んでいると語る。弁護士で今回の選挙で党書記局に立候補したが落選したムーレイ・バシール(Mouley Bachir、35)は「祖国への帰属意識や愛情は世代を超えて語り継がれており強い。占領地の同胞たちの拷問や強制の話はとても悲しい」と語る。国防省のシーディ・ウルド・ウカール(Sidi Ould Oukal)は「外国に住んでいた若者が戻ってきて志願している」と言い、人びとの闘う意志が強いことを強調する。ポリサリオ戦線の書記局員で軍人でもあるルワリー・ダーフ(Luali Dah)は「国際社会はわれわれを緩慢な死に追いやっている。われわれは死ぬのなら威厳をもって死にたい」と語る。彼は2020年11月にゲルゲラートで道路封鎖デモを行った60人の一人だ。デモ者の強制退去のためにモロッコ側は停戦協定違反をした。彼は「それがわれわれの目的だった。もはや1991年と同じ間違いはしない。もしモロッコが交渉を望むのであれば、われわれは片手にペンを、もう片手に銃をもって望むだろう」と述べる。教育省青少年局長のジャリーヘンナ・ムハンマド(Jalihenna Mohamed、34)は「われわれは武装闘争というカードを捨て去ることはできない。期待しすぎることはわれわれの(闘争)精神を殺し、われわれの願望を殺してしまう」と語る。
キューバで国際関係論を学んだアブドゥッラー・アラビー(Abdullah Arabi)は、ポリサリオ戦線のスペイン代表を務めるが、EU裁判所の判決を勝ち取るのも戦いの一つの方法だと語る。ダーフラキャンプ病院の薬剤師スアード・メフディ(Souadu Mehdi、29)は、色鮮やかなメルフファに身を包み、他の人と同じようにごく普通の生活に戻りたいと語る。「平和もなければ戦争もない、こういう状態が長く続きすぎた。戦争はもちろん怖い。しかし、私たちの未来、子どもたちの未来のためには必要だ。いつの日か自由が訪れ、エル=アイウンでみな一緒になれると信じている」と続ける。(Le Monde, 23 Jan. 2023)
https://www.lemonde.fr/afrique/article/2023/01/23/sahara-occidental-au-front-polisario-la-pression-monte-pour-intensifier-la-guerre-contre-le-maroc_6158994_3212.html

【モーリタニア】
モロッコ軍の攻撃で、民間人2人死亡
西サハラとの国境付近で、モロッコ軍の攻撃がトラックを襲い、モーリタニア人の金採掘者が少なくとも2人死亡した。ザフラ・シャンキート紙によると、モロッコ空軍は最近モーリタニアの北の国境付近への攻撃を拡大しており、すでに数十人のモーリタニア人が死亡している。(Echoroukonline, 25 Jan. 2023)
https://www.echoroukonline.com/deux-orpailleurs-mauritaniens-tues-dans-un-raid-de-larmee-marocaine

【アルジェリア】
民間人トラックがドローンに襲われる
1月28日、おそらくモロッコのものと思われるドローンが、モーリタニア領内の古い植民地時代の道路であるチンドゥーフ・ズエレーテ線を走っていたアルジェリアの民間運搬会社に属するトラックを攻撃した。攻撃で2人が死亡した可能性があると、サハラ・アラブ民主共和国の治安筋が明らかにした。トラックは早朝にチンドゥーフを出発していた。別な筋は、ポリサリオ戦線のいう解放区で攻撃があったと示唆する。モーリタニアにとっては、今週モーリタニア人の金採掘者が攻撃されており、1週間で2度目のドローン攻撃となる。アルジェリアにとっては、ドローン攻撃でアルジェリア人が死亡した2度目の事件となる。最初は2021年11月1日におきている。(Mena Defense, 28 Jan. 2023)
https://www.menadefense.net/algerie/un-camion-civil-algerien-bombarde-par-un-drone/

イタリアへのガス輸出、目標達成できず
昨年7月、アルジェリアはイタリアへの天然ガス輸出を40億立方メートル追加すると約束した。しかし、アルジェリアの天然ガス輸出は昨年同時期と比べ20%落ちており、昨年12月からすると40%も落ちている。12月は一時的に30億立方メートル以上生産し、1月には減産に転じた。というのも、それによってアルジェリアの埋蔵分を危機に陥れかねなかったからである。欧州諸国は2023年の最初の3週間で16億立方メートルのガスをアルジェリアから受け取った。アルジェリアのガス輸出は2021年から2022年にかけて370億立方メートルから340億立方メートルに減った。同様にLNGの輸出も150億立方メートルから127億立方メートルへと15%減った。合わせると50億立方メートル近く減ったことになる。
アルジェリアの昨年のスペインへのガス輸出は90億立方メートルしかなかった。2021年にモロッコ経由でスペインに達するガスパイプラインをモロッコとの断交によって閉鎖して以後、スペインへのガス供給が必然的に減ったからである。昨年7月、アルジェリア・ソナテック社のタウフィーク・ハッカールCEOはイタリアENI社のクラウディオ・デスカルジCEOに40億立方メートルの追加輸出を約束していたが、実際には30億立方メートルしか達成できなかった。
1月23日のメロニ首相のアルジェリア訪問はまさにこのエネルギー問題を議論するためだったが、あまり成果はなかったようだ。2000年代初頭に始まり一時中断されていたグリーン水素を送るパイプラインの建設を再開することにはしたものの、短期的にはガス輸出の目標は達成できそうにない。
テブン大統領とメローニ首相は、イタリアへのガス輸出を90億立方メートルから180億立方メートルへと増やしたいと発表したが、両社のCEOたちはさらに30億立方メートルの追加を含ませると、2023年のイタリアへのガス輸出は280億立方メートルになると述べた(注記:この計算の根拠は不明、210億か?)。さらにテブン大統領はイタリアへのガス輸出を350億立方メートルまで増やしたいと考えている。しかし、そうするためには、他の国への輸出を減らさなければならない。ENIはアルジェリアにその能力があるか疑っている。それが、ENIがアルジェリアとのパイプラインの株の半分をその子会社Snamに3億8500万ユーロで売却した背景にあると思われる。ENIはアルジェリアのガスが思った以上に早く枯渇すると読んでいるのかもしれない。(Africa Intelligence, 27 Jan. 2023)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2023/01/27/rencontre-meloni-tebboune–les-promesses-en-pointilles-de-la-sonatrach,109906945-art

【スペイン】
ムハンマド6世国王関連の企業に2,100万ユーロの支援
スペイン政府はモロッコのムハンマド6世国王に近いジャイダ・S.Aという会社に2,100万ユーロに及ぶ資金供与を了承していた。内訳は100万ユーロの無償供与と2,000万ユーロの借款である。まず、10月11日、「開発促進基金」用としてジャイダ・S.A.に対する2,000万ユーロの借款が決まった。政府によると、これはラバトにあるモロッコの金融会社でマイクロクレジット提供を含む金融包摂(零細事業・貧困層に届く金融事業)を支援する上で重要な役割を果たすという。12月27日には、再び「開発促進基金」用としてジャイダ・S.A.に対し今度は無償で100万ドルの供与が決定された。無償供与についての政府の説明は、「モロッコの協同組合のエコシステムに資金を提供する製品の創出」と「ジャイダ・S.A.によるモロッコにおける社会的・連帯経済の金融支援に向けた活動の拡大」という2つの事業のためだというもの。これに対し複数会派の議員が集まるグループのパブロ・カンブロネロ議員がその理由を問う質問を行った。
ジャイダ・S.A.は、CDG Caisse des Dépôts et Gestion Groupに属する金融機関で、7月13日からハーリド・サフィール(Khalid Safir)氏が社長を務めている。サフィル氏はいくつもの重要ポストに就いたことがあり、それには経済財政省事務局長の他、財務省のいくつものポストが含まれる。CDGグループの社長を任せる前に、国王は彼をモロッコの様々な地域の首長ポストに任命したことがある。要するに、国王の最も強い信頼を勝ち得ている人物なのだ。
CDGを率いるのもカリド・サフィル氏であり、ジャイダ・S.A.の株の32%を所有する。フランスのCaisse des Depôts CDCはその18.3%を所有する。ジャイダ・S.A.の残りの株は、ドイツ開発銀行(KfW)が31.4%、フランス開発庁(AFD)が9.1%、バリッド・マグレブ銀行(モロッコ郵便)が9.1%をもつ。スペイン政府は、これらはすべて公的金融機関であると述べる。(Voz Populi, 3 Jan. 2023)
https://www.vozpopuli.com/espana/radiografia-jaida-empresa-afin-mohamed-vi-sanchez-riega-21-millones.html

モロッコ人男性、教会を襲撃
1月25日(水)、モロッコ人男性ヤーシーン・カンジャーア(Yassine Kanjaa、25)はスペイン・アンダルシア州のジブラルタル海峡の港町、アルヘシラス(Algeciras)の2つの教会で、神父を負傷させ、聖堂番を殺害した。まず、サン・イシドロ教会で74才の神父を山刀で傷つけ、次にヌエストラ・セノーラ・デ・パルマ教会で聖堂番を追いかけて山刀で殺害した。カンジャアは、イスラム教から改宗したモロッコ人を「異教徒」とみなし殺そうとした、と言っているという。ただ、組織的背景はないとされる。カンジャアは昨年6月に不法滞在でスペインからの退去命令を出されていたが、2つの教会の近くに住んでいた。スペイン政府は、カンジャアが精神的問題を抱えている可能性を否定できないとしている。(France 24, 30 Jan. 2023)
実は、カンジャーアのこの間の行動には不可解な点があった。2019年8月5日、カンジャーアは3人の大人と1人の子どもを連れ、水上オートバイに乗って英領ジブラルタルに到着した。水上オートバイは3回も転倒しており、かなり危険な運転だったことが伺える。到着と同時に彼は逮捕され、3日後にはモロッコに送還された。その後彼はスペインにやってきて、2022年6月になってモロッコへの帰国命令が出されたというわけだ。
本来であれば、彼はその時逮捕されて、外国人収容センターに送られ、60日後にモロッコに引き渡されるか、60日以内に引き渡しが行われなければ釈放されてその時を待つか、いずれかの道を歩むはずだった。しかし、いずれの方法もとられなかったと、エル・コンフィデンシアル紙は書いている。スペインとモロッコの協定によれば、モロッコは外交官を派遣して彼がモロッコ国民であることを確認し、彼に旅券を発行することもできた。これにはたいした時間はかからず、モロッコ次第だ。
彼はいうところのローン・ウォルフであり、神父を傷つけ、聖堂番を殺害した他、モロッコ人少年を殴打し、他にも2人の被害者を出した。捕まって警察署に移送された時、カメラが向けられると微笑んだ。(El Independiente, 26 Jan. 2023)
奇妙なことに、モロッコの王室に近いとされるメディア「Le 360」は、カンジャーアの退去命令についてモロッコの当局は何も受け取っていないと言っていると報じた。そしてこうした「噂」は、モロッコとスペインの良好な関係、とくに両国のトップ会談が予定されている時期に水を差すものだとコメントした。内務省によれば、カンジャーアは確かに2022年6月には退去者リストに上がっていたが、カンジャーアにそれが知らされたのは11月だという。そうすると、まだモロッコへの要請はなされていなかった可能性もあるだろう。(El Independiente, 31 Jan. 2023)
https://www.france24.com/en/live-news/20230130-spain-court-remands-church-attack-suspect-for-terrorism
https://www.elindependiente.com/espana/2023/01/26/por-que-yasine-fue-expulsado-de-gibraltar-en-3-dias-y-espana-no-pudo-devolverlo-a-marruecos/
https://www.elindependiente.com/espana/2023/01/31/la-prensa-marroqui-niega-que-espana-pidiese-expulsar-a-yassine-kanjaa-el-yihadista-detenido-en-algeciras/

【イスラエル】
モロッコの西サハラへの主権を承認するか?
テルアビブ在住のバラック・ラヴィッド記者はトランプ時代からイスラエル・モロッコ関係正常化の動向を取材してきたが、今年に入って、イスラエル政府がモロッコの攻勢に苦慮している様子を描く記事を書いている。その記事によると、モロッコはまだイスラエルに大使館を開いておらず、イスラエルのモロッコの事務所も大使館に昇格させていない、モロッコは、大使館開設の条件としてイスラエルによるモロッコの西サハラへの主権承認を要求している。これまでのことでいうと、昨年6月、内務大臣が西サハラに対するモロッコの主権を認める発言をした際、外務省は「モロッコの西サハラ自治案はポジティブな展開だ」と一歩引いた立場を表明した。また、法務大臣がモロッコを訪問し西サハラはモロッコの一部だと発言した際にも、外務省は微妙な言い方でそれを修正した。このようにこれまで西サハラ問題には深入りしないというのがイスラエル政府の立場だったが、ネタニヤフの新政権はモロッコの主権を認める考えであるらしい。(Axios, 4 Jan. 2023)
https://www.axios.com/2023/01/04/morocco-israel-western-sahara-sovereignty-embassy

モロッコとの交渉者は元諜報部員
1月27日(金)付モロッコの新聞Al-Ayyam 24は、ロネン・レヴィ(Ronen Levy)のイスラエル外務省の局長への抜擢でモロッコとの関係正常化問題が浮上したと報じた。レヴィはイスラエル総保安庁(シンベット)の元高官であり、アブラハム協定の立役者だ。同紙は「レヴィの任務はモロッコとの外交関係を格上げすることだけではなく、モロッコのその砂漠に対する主権の完全なる承認というモロッコ側の厳格な条件について交渉すること」だと書いている。レヴィはイスラエルがモロッコ及びアラブ諸国との関係において非常に頼りにする人物であり、それは彼がナセル・ブリタ外相やモロッコ国王のアドバイザーであるフアド・アリ・エル=ヒンマ(Fouad Ali El Himma)と強い繋がりを持っているからである。それでもレヴィの総保安庁でのキャリアは謎に包まれている。(Middle East Monitor, 28 Jan. 2023)
https://www.middleeastmonitor.com/20230128-israeli-intelligence-officer-negotiates-with-morocco-on-sahara-position/

【国際社会】
ボレル欧州委員会副委員長兼EU外務・安全保障政策上級代表のモロッコ訪問
1月5・6日、欧州委員会のボレル副委員長兼外務・安全保障政策上級代表がモロッコを訪問し、ブリタ外相及びアカヌーシュ首相と面会した。モロッコゲート(欧州議会の収賄問題)が大きく取り沙汰されている最中のことであり、その核心部分には西サハラ問題があったので、それらに関連する話をしたものと思われるが、詳細は明らかでない。ボレル氏は会談後のコミュニケで西サハラについて、「私はこれがモロッコにとってその存立に関わる問題であることを知っており、モロッコにとって極めて重要なトピックであることを理解している。私はここで、EUは、国連安保理決議にしたがって、公正で、現実的、実際的、永続的、そして双方に受け入れ可能で妥協に基礎を置く解決をめざした、国連のプロセスと西サハラに関する事務総長特使スタファン・デ・ミストゥラ氏のイニシャティブを支持していることを繰り返したい」とだけ述べた。(注記:近年、モロッコ寄りの政治家たちの発言では、解決策に対する形容の中に「西サハラ人民の自決をもたらすような[which will provide for the self-determination of the people of Western Sahara]」という文言が含まれなくなっており、ボレル氏の発言でもそれはない。これは毎回の安保理決議に含まれる表現であるが、わざと省略している。西サハラを支援する国々の発言では西サハラ人民の自決権に触れるのが一般的である。)(EU External Action, 5 Jan. 2023)
https://www.eeas.europa.eu/node/424299_en

以上。