西サハラ友の会通信 No. 30

今回の大きなニュースはモロッコゲートです。モロッコによる欧州議会議員の収賄事件は欧州の民主主義の根幹を揺るがす問題へと発展しています。そして収賄事件の核心部分に西サハラ問題があります。
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目次 No. 30

【モロッコゲート】
・欧州議会スキャンダル、モロッコに波及
・ベルギー当局、パンゼリ元議員の引き渡し要求
・フランチェスコ・ジオルジの告白
・アブドゥッラヒーム・アトゥムーンとは何者?
・モロッコゲートに仏議員も関与か?
・モロッコゲートの陰の責任者

【ポリサリオ戦線】
・バシールEU代表、辞表を提出

【モロッコ】
・強化されるドローン装備
・アラブ中国サミットで、自治案提示に失敗
・リフ地方とサハラーウィの間に憎悪の種をまく

【スペイン】
・スペイン領海でモロッコ軍が船を排除
・サラゴサ裁判所、ガーリー書記長の息子に証言を命令
・サンチェス首相書簡、モロッコ人が書いた?
・国会外交委員会、セウタ・メリリャ決議を否決

【国際社会】
・団体、英モロッコ貿易協定訴訟で敗訴
・イスラエル、西サハラでのガス開発をモロッコと契約
・モーリタニアでモロッコのドローンによる死亡事件への非難高まる
・スロベニア、アルジェリアのガスをハンガリーに?
・子どもへの暴力に関する国連事務総長代表、西サハラを訪問
・極貧と人権に関する特別報告者、モロッコ訪問を延期

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西サハラ友の会通信 No. 30 2022年12月分(2023年4月25日)

【モロッコゲート】
欧州議会スキャンダル、モロッコに波及
ドイツの週刊誌シュピーゲル誌によると、カタールゲートという欧州議会議員の収賄事件の捜査が進展する中で、ピエール・アントニオ・パンゼリ元議員(イタリア選出)はカタールだけではなくモロッコからも賄賂を受け取っていたことが明らかになった。ベルギーの捜査当局によると、賄賂はある東ヨーロッパ駐在のモロッコの大使からパンゼリの家族2人が受け取り、運んだという。カタールゲートの中心にいたエヴァ・カイリ欧州議会副議長(ギリシャ選出)は議員資格を剥奪された。彼女は15万ユーロをもらい、カタールの擁護をした。パンゼリは先週カイリと一緒に逮捕された。カイリの夫はかつてパンゼリの秘書を務めたことがある。パンゼリは欧州議会の人権小委員会の委員であり、マグレブ地方に関する議会内グループのメンバーであった。また彼はFight Impunityという人権団体の代表も務めていた。(La Razón, 20minutos/EFE, 13 Dec. 2022)
https://www.larazon.es/internacional/20221214/s3q4s4j43rcjlds6en6rqkkoye.html
https://www.20minutos.es/noticia/5084391/0/escandalo-parlamento-europeo-implica-tambien-marruecos-spiegel/

ベルギー当局、パンゼリ元議員の引き渡し要求
カタールゲートから飛び火したモロッコゲートは次第に事実が明らかになりつつある。ベルギー捜査当局はイタリアにパンゼリ元議員の引き渡しを要求した。Politico紙が入手した引き渡し要請書によると、容疑は、カタールとモロッコの両方から賄賂をもらい、その2国の利益になる活動を行ったというもの。彼の家族は彼の活動をよく知っていた。妻のマリア・ドローレス・コレオニ(Maria Dolores Colleoni)と娘のシルヴィア・パンゼリ(Silvia Panzeri)は賄賂の運搬役だった。モロッコのポーランド大使アブドゥルラッヒーム・アトゥムーン(Abderrahim Atmoun)は賄賂の渡し役だが、引き渡し要請書は彼についてあまり書いていない。
また、Telegraph紙は、パンゼリ元議員(67)の逮捕状が、彼と妻コレオニ(68)が「巨人(The Giant)」と呼ばれる何者かが支払うクレジットカードを持ち歩いていた、そしてあるクリスマス休暇に10万ユーロ(約1,400万円)を使っていたことに言及している、と伝えている。妻は12月9日にイタリア警察に逮捕され、娘も逮捕された。
12月12日(月)夜、ベルギー警察は欧州議会の事務所に対して二度目の捜査を行った。同日、ギリシャでは、資金洗浄を摘発する当局がカイリ元欧州議会副議長の財産及び金融資産を凍結した。彼女はワールドカップが始まろうとしていた11月21日、欧州議会での演説で「カタールは労働者の権利で最前線を走っている」などと語っていた。12日夜、ストラスブール(にある議事堂)でロベルタ・メツォラ(Roberta Metsola)欧州議会議長は「欧州議会、欧州の民主主義が攻撃にさらされている。民主主義の敵は、この議会の存在そのものを脅威とみなし、手段を選ばない」と演説した。予定されていたEUカタール間のビザ自由化についての採決は見送られた。(Politico, 13 Dec. 2022; Telegraph, 12 Dec. 2022)
https://www.politico.eu/article/qatargate-giant-moroccan-envoy-alleged-scandal-corruption-eu-parliament-antonio-panzeri/
https://www.telegraph.co.uk/world-news/2022/12/12/italian-mep-took-bribes-morocco-qatargate-scandal-investigators/

フランチェスコ・ジオルジの告白
カタールゲートの中心的人物、エヴァ・カイリ元欧州議会副議長のパートナーであるフランチェスコ・ジオルジ(Francesco Giorgi)は、12月9日(金)に始まった一連の逮捕劇で最初に逮捕された容疑者であるが、彼の陳述をLe Soir紙とLa Republica紙が入手した。警察とミシェル・クレーズ判事の前で、彼は、モロッコとカタールが欧州の政治に介入する目的をもって使ったある組織に属していることを認め、その組織のリーダーはピエール・アントニオ・パンゼリ元欧州議会議員であると述べた。ジオルジは、彼の組織での役割は現金の取り扱いだったと語っている。彼はさらに2名の欧州議会議員の名前を賄賂と受け取った疑いがあるとしてあげた。アンドレア・コッゾリーノ(Andrea Cozzolino: イタリア)議員とマルク・タラベラ(Marc Tarabella: ベルギー)議員である。ただ、タラベラ氏の弁護士は、彼は誰からも一銭も受け取っていないと語った。コッゾリーノ氏はわれわれのメールでの質問に回答していない。ジオルジの容疑に関する文書によると、モロッコのポーランド大使以外にも2人、モロッコ人諜報部員の名前が挙がっている。(Le Soir, 15 Dec. 2022)
https://www.lesoir.be/483160/article/2022-12-15/corruption-au-parlement-europeen-les-aveux-dun-inculpe

アブドゥッラヒーム・アトゥムーンとは何者?
モロッコゲートの中心に位置する人物、モロッコのポーランド大使、アブドゥッラヒーム・アトゥムーン(66)はもともとキャリア外交官ではなく、政治家であり実業家である。ポーランド大使となる前は、2010年に設立されたモロッコEU合同議会委員会のモロッコ政府任命による共同議長として2011年から2019年まで「ロビースト」の役割を果たしていた。彼はこのポジションで欧州議会の議員たちとの関係を容易につくることができた。
彼がいかに外交で「成功」を収めたかはモロッコのメディアを探れば容易に見いだすことができる。例えば、欧州議会と当該委員会は、腐敗したモロッコ王国の人権状況が「進歩している」と称賛したりしている。また、モロッコの西サハラの扱いについて欧州議会がこの数年沈黙を保っているのもそうしたことの結果だろう。彼はパリ統計学院で学んだことがあり、フランスでホテル業を営んで成功を収めていた。
1984年、彼は「立憲連合(UC)」という中道リベラルの政党に入ったが、その後国王の政党と言われる「正統近代党(PAM)」に入った。モロッコの新聞は彼を「関係・圧力グループのエキスパート」と評しており、あらゆる政治的傾向の欧州議会議員にアクセスできる、欧州の右派勢力と関係をもつサークルに数百人の友人がいる、などと書いている。
一方、EU側からの共同議長はスペインの社会労働党のイネス・アヤラ・センデル氏(Inés Ayala Sender, 65)だった。アヤラ・センデル氏は2004年から2019年まで15年間そのポジションにいて、西サハラ支援団体から厳しく批判されていた。彼女はあからさまにモロッコ寄りの発言を行い、サハラーウィの利益に真っ向から対立した。例えば、西サハラを「南部諸州」と読んだりしていた。(Canarias-Semanal, 19 Dec. 2022)
https://canarias-semanal.org/art/33689/nuevo-escandalo-en-la-ue-alto-cargo-marroqui-untaba-a-los-eurodiputados-para-que-votaran-en-contra-de-la-causa-saharaui

モロッコゲートに仏議員も関与か?
2009年から2019年まで仏選出欧州議会議員であった社会党北部連合(fédération PS du Nord)の元第一書記、ジル・パルニョー(Gilles Pargneaux)氏はブリュッセルで非公式のEUモロッコ友好グループの代表を務めていたが、ポルトガルの元欧州議会議員アナ・ゴメス氏が彼を「モロッコのロビースト」だと非難している。パルニョー氏は元エレム・リール(Hellemes-Lille)市長で、モロッコが贈答品や旅行代金を払ったとしてBFMテレビとJDD (Journal du Dimanche) の取材対象となっている。彼は上記グループの代表として何度もモロッコを訪れており、果たしてモロッコが旅費を払っていたのではないのかとBMFテレビは問う。そして訪問中彼は贈答品を受け取っており、自身のFacebookの写真から明らかだ。2011年に採択された欧州議会の倫理規程によると、議員は150ユーロ以上の物質的・非物質的贈与を受けてはならないとされる。それ以上の贈与は事務局が一時的に保管することになっている。
モロッコのニュースサイト「Le Desk」は彼のことをモロッコへの「l’engagement total」(=total commitment)、つまりモロッコに完全に忠実なロビーストとして描いている。例えば2017年5月には、「サハラ、モロッコEU関係、AU、人権、グデイム・イジーク。。。どれひとつととして、彼が大声で明確にモロッコの主張を熱心に擁護しない問題はない」と書いているのだ。また彼は、10年前モロッコの上院議長から「ウィサム勲章」をもらったことがあり、西サハラに関連してダーフラからもメダルをもらっている。
個人生活においても、パルニョー氏はモロッコ人女性と結婚し、モロッコの子どもを養子にしている。彼と政治活動を長年ともにしていた社会党の上院議員パトリック・カネル(Patrick Kanner)氏は、パルニョー氏はモロッコやモロッコ国王、モロッコ政府が好きだということを常に公に口にしていたと言う。カネル氏は、パルニョー氏がマクロン大統領の政党「共和国前進」に移ってからは疎遠になったという。
欧州議会内「リニュー・ヨーロッパ」会派(共和国前進もこれに入る)に属する元ヴァレンシエンヌ市長のドミニク・リケ(Dominique Riquet)氏は、EUモロッコ友好グループでしばしばパルニョー氏と一緒で、7、8年前モロッコ訪問に参加したが「私は、直接的にも間接的にも、一度も、汚職につながるような動きは見なかった」と言う。しかし、その時の航空運賃はモロッコが払ったか議員が払ったかという質問については「覚えていない」と答えた。
パルニョー氏のモロッコ称賛は数多い。ある時など「モロッコは南ヨーロッパで最も完成された民主国家だ」とまで言っている。また、モロッコメディアのインタビューでは「モロッコは欧州議会でもっとプレゼンスを増やしてもよかった」と語っている。
もちろん、現時点で彼の汚職が証明されたわけではない。ただ疑いがあり、疑問が解けないだけだ。2019年に欧州議会を去った後、彼は「かつて彼にメダルを授与した人とともに」EuroMedaという団体を立ち上げた。(france3, 18 Dec. 2022)
https://france3-regions.francetvinfo.fr/hauts-de-france/nord-0/l-ancien-depute-europeen-et-maire-d-hellemmes-gilles-pargneaux-mis-en-cause-pour-ses-liens-avec-le-maroc-2677972.html

モロッコゲートの陰の責任者
2019年の時点でモロッコゲートを監督していたモロッコの諜報機関DGED(研究・資料総局)の諜報員はムハンマド・ベラフレシュ(Mohamed Belahrech)という人物だ。スペインの国家情報センター(CNI)やフランスでスパイ対策を行う公安総局(DGSI)には馴染みの人物で、バルセロナとオルリー空港に勤務した経験をもつ。モロッコのメディア「Le Desk」は彼を情報界の「大物」と評している。
ベルギーで進行中の捜査は検察庁ではなくて、国家保安局(=諜報部)が行っているようで、ポーランド、ギリシャ、フランス、スペインの当局と連携している。ベラフレシュについてはスペインから警告が行われたのではないかとミラノの経済紙が報じている。DGEDは、国王に直接報告を行う唯一のモロッコの情報機関で、2005年にムハンマド6世国王の幼馴染みであるヤーシーン・マンスーリー(60)が始めた。それまで彼は内務省の局長や通信社(MAP: Maghreb Arabe Presse)の長を務めていた。
マンスーリーはそれまでアブドゥルラフマン・アトゥムーンが行っていた汚職事業を2019年に引き継ぎ、2021年のパンゼリ元議員や彼の後継としてマグレブ小委員会の委員長となったアンドレア・コッゾリーノ議員のラバト訪問をアレンジした。彼はラバトで二人と面会している。
2013年、ベラフレシュの妻ナイーマ・ラムアルミー(Naima Lamalmi)はバルセロナのマタロというところにアヤ・トラベル(Aya Travel)という旅行代理店を、アティーカ・ブーフリア(Atiqa Bouhouria)とナズィーハ・エル=ムンタセル(Naziha El Montaser)と一緒に設立した。アティーカの夫ヌールッディーン・ズィヤーニー(Noureddin Ziani)は2013年に国家情報センター(CNI)によってスペインから国外退去処分を受けた人物であり、ナズィーハの夫アブドゥッラー・ブースーフ(Abdallah Boussouf)はモロッコ海外在住者協議会の事務局長を務める。3人の夫たちもまた、ラバトにエリゼー・トラベルという旅行代理店を設立している。
ズィヤーニーは退去処分を受けた時、カタロニア・イスラム文化センター長も務めていた。彼の退去後、センターの運営を引き継いだミームーン・ジャリッーシュ(Mimon Jalich)はバルセロナのイグアラダ裁判所にセンターの不正を訴え出たことがあり、エル・ムンド紙の報道はそれに基づいている。センターはカタロニアの独立運動と関係を構築し、アルトゥル・マス(Artur Mas)率いるヌ・カタラン財団(Fondació Nous Catalans)の本部に事務所を置いたりするまでに至っていた。ミモン・ヤリッヒは、センターの会計に不正らしきものを発見し、旅行代理店が資金の転用あるいはオーナーによる着服のカバーになっていたのではないかと疑った。しかし、2、3ヶ月後、彼はラバトに行ってベラフレシュに面会した際、スペインの情報局のために働いていると非難されたようで、その後訴訟を取り下げている。
ベラフレシュはフランスでも汚職に関与している。オルリー空港で警備会社を運営するあるフランス系モロッコ人を通じて国境警備を預かるフランス人警官を買収した。警官はイスラム過激派との関係を疑われる人物200名と彼らの家族・友人の情報をベラフレシュに渡した。その見返りに、警官とその妻はモロッコとアンゴラでのバケーションをプレゼントされ、17,000ユーロを口座で受け取ったのである。彼らは2016年に逮捕され、収賄及び職務上の守秘義務違反で裁かれた。フランス司法当局はベラフレシュに対する逮捕状も出したが、捕まえることができないでいる。そういう状態にあって、ベラフレシュはスパイ活動をずっと続けているのだ。(El Confidencial, 18 Dec. 2022)
https://www.elconfidencial.com/mundo/2022-12-18/espia-marroqui-corrupcion-eurocamara-cataluna_3542030/

【ポリサリオ戦線】
バシールEU代表、辞表を提出
ポリサリオ戦線のEU代表を務め、将来の有力な指導者とみられていたウッビー・ブシャラーヤー・アル=バシール氏が、ブラーヒーム・ガーリー書記長との意見の不一致から辞表を提出した。西サハラ問題の専門家、カルロス・ルイス・ミゲル教授は、ポリサリオ戦線の規則第111条では事務総長のポジションの候補となる者は戦争の経験をもち40才以上でなければならないとされており、必然的に経験豊かであるかも知れないが高齢な者を選ぶことになる、と述べる。「歴史の逆説だが、若者の運動として始まったポリサリオ戦線も高齢者に大きな責任を預ける伝統的なモデルに陥ってしまうかも知れない」とも。(El Independiente, 16 Dec. 2022)
https://www.elindependiente.com/internacional/2022/12/16/el-delegado-del-polisario-ante-la-ue-dimite-por-profundas-discrepancias-con-brahim-ghali/

【モロッコ】
強化されるドローン装備
モロッコはイスラエル、米国、トルコの3国からドローンを購入している。まずはトルコからの購入でドローンの威力を実感したようだ。バイラクタル(Byraktar)を13機、6億2,600万ディルハム(5,900万ユーロ)で購入した。モーリタニアとの国境近く、西サハラで使用しているのは主にイスラエル製のハラップ(Harap)だ。加えて偵察用に、イスラエルのブルーバード社(BlueBird)からサンダーB(ThunderB)とワンダーB(WanderB)合計150機を購入した。ただ、イスラエル製で最大のものはエルビット社(Elbit System)のヘルメス900(Hermes 900)で、350kg搭載でき、高度3万フィート(9,150m)を30時間飛行できる。モロッコはこれを3機所有する。米国からはプレデターBの発展型であるMQ-9B SeaGuardianを購入し、それは5,670kg搭載可能、高度12,000mで、40時間飛行できる。(Info Defensa, 9 Dec. 2022)
https://www.infodefensa.com/texto-diario/mostrar/4098056/marruecos

アラブ中国サミットで、自治案提示に失敗
サウジアラビアで行われたアラブ中国サミットは12月9日で終了する。モロッコはそこで西サハラの自治案を提示しようとしたが、モロッコの議題提案は無視された。サミット後発表された声明は、テロを非難し、核不拡散条約を支持し、パレスチナ問題の正義ある解決を求めた。また、最終日(12月9日)になって南スーダンの代表者たちが西サハラ占領を理由にモロッコのアフリカ連合からの追放を要求した。(El Pais, 9 Dec. 2022)
https://www.elpais.cr/2022/12/09/ignoran-en-riad-propuesta-de-marruecos-sobre-el-sahara-occidental/

リフ地方とサハラーウィの間に憎悪の種をまく
漏洩したモロッコ政府の文書から、モロッコ諜報部が3,000個のFacebookの偽アカウントを作り、ポリサリオ戦線を攻撃することで、北モロッコのリフ地方の人びととサハラーウィの間にある連帯の感情を引き裂こうとしていることが明らかとなった。文書は2016年10月15日の日付があり、偽アカウントはリフ地方の人びとの名前で作られたという。(Algérie Presse Service, 12 Dec. 2022)
https://www.aps.dz/monde/148682-la-fuite-d-un-document-officiel-revele-les-pratiques-du-makhzen-pour-semer-la-discorde-entre-les-peuples-sahraoui-et-marocain#.Y5dUhW-JMr4.telegram

【スペイン】
スペイン領海でモロッコ軍が船を排除
ヴァレンシア州の進歩的政党連合コンプロミス(Compromís)の上院議員であるカルレス・ムレット氏は、セウタを含むジブラルタル海峡のスペイン領海で昨年モロッコ軍の監視艇がスペイン船に嫌がらせをした件について政府に質問した。しかし、政府の回答はただモロッコとの新しいパートナーシップに触れているだけで、まともに答えていない。El Confidencial紙が昨年7月末に報じたのは、タリファ(Tarifa)の沿岸1マイル以内で釣りを楽しんでいたプレジャーボートに、モロッコ海軍が近づいてきてモロッコの主権領海から出ていくよう指示したという出来事だ。しかも一度ならず繰り返されている。ムレット議員は「これが国際法に反しサハラーウィ人民を裏切ってまでやろうとしている新たな善隣外交なのか?」と批判した。(El Faro de Ceuta, 4 Dec. 2022)
https://elfarodeceuta.es/compromis-militares-marroquies-hostigan-aguas-espanolas/

サラゴサ裁判所、ガーリー書記長の息子に証言を命令
ポリサリオ戦線のガーリー書記長の入国時のパスポート問題を調べているサラゴサ裁判所のラファエル・ラサラ判事は、ガーリー書記長の息子、ルワーリー・ブラーヒーム・スィード・エル=ムスタファー(Luali Brahim Sidi El Mustafa)に書面による証言を求めることにした。アルジェリア政府に出した問い合わせの回答を待つ6ヶ月の間審理を延長することにしたからだ。ガーリー氏は入国時に偽名のパスポートを使ったされ、それをどこが発行したかが問題となっている。エル=ムスタファー氏は父親が2021年4月18日にコロナ治療のためスペインに入国した際同行していたので、事情を知っている可能性がある。(Heraldo, 8 Dec. 2022)
https://www.heraldo.es/noticias/aragon/2022/12/08/juez-caso-gali-instruccion-zaragoza-1617181.html

サンチェス首相書簡、モロッコ人が書いた?
アルジェリアのメディア(La Patrie News)は、西サハラ問題の専門家でサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学教授のカルロス・ルイス・ミゲル氏があるインタビューに答え、「あの書簡は確かにサンチェス首相が署名したものだが、アラビア語を使うフランス人によって、あるいはモロッコ人自身によって書かれたものだ」と述べたと報じた。まちがいが多くあり、スペイン外相の綴りも間違っているという。いずれにせよ、モロッコのブリタ外相は、サンチェス首相がモロッコ訪問中に暴露するという、外交上の礼儀を無視したやり方をとったわけで、そのためにサンチェス首相は慌てて帰国しなければならなかった。(La Patrie News, 9 Dec. 2022)
https://lapatrienews.dz/un-eminent-expert-espagnol-met-les-pieds-dans-le-plat-ce-nest-pas-pedro-sanchez-qui-a-ecrit-sa-lettre-de-trahison/

国会外交委員会、セウタ・メリリャ決議を否決
スペイン国会の下院外交委員会に極右政党ヴォックス(VOX)が提出したセウタとメリリャがスペイン領であることの認識をモロッコに求める決議案が否決された。否決の理由はさまざまだが、両都市がスペイン領であることを疑うスペイン国民はいないし、国際的にも認められていて争点になっていないので不要というのが大きい。(Ceuta TV, 19 Dec. 2022)
https://www.ceutatv.com/articulo/politica/comision-exteriores-rechaza-mocion-vox-exigir-marruecos-que-reconozca-espanolidad-ceuta-melilla/20221219184225137385.html

【国際社会】
英団体、英モロッコ貿易協定訴訟で敗訴
12月5日(月)、イギリス西サハラキャンペーン(WSCUK)が、イギリスのEU離脱後英政府が西サハラ産農産物をモロッコからのものと同じ特恵待遇で受け入れているのは違法だとして訴えていた裁判で、ロンドン高等法院は原告の主張を退けた。(Market Screener, 5 Dec. 2022)
https://www.marketscreener.com/news/latest/UK-group-loses-legal-challenge-over-Morocco-trade-agreement–42479599/

イスラエル、西サハラでのガス開発をモロッコと契約
12月6日(火)、イスラエルの石油会社、ニュー・メッド・エネルギー社(NewMed Energy)はモロッコのエネルギー鉱業省及びアダルコ・エネルギー社(Adarco Energy)と西サハラの沖合、ブージュドゥール・アトランティック鉱区での天然ガス開発の契約を結んだと発表した。ニュー・メッド社とアダルコ社がそれぞれライセンスパートナーシップの株の37.5%、モロッコエネルギー鉱業省が25%を保有する。ライセンスは向こう8年間与えられる。約2年半後に試掘を始める計画だという。
ブージュドゥール・アトランティック鉱区は以前、米国のコスモス・エネルギー社が55%、イギリスのケアン・エネルギー社の子会社カプリコーン社が20%、モロッコ政府の炭化水素・鉱業事務所(ONHYM)が25%の株を保有するかたちで探索が進められていた。ニュー・メッド社は今後カプリコーン社と統合する予定である。統合が完了すれば、ケアン・エネルギー社が4、5年のブランクをおいて西サハラに戻ってくることになる。
ニュー・メッド社はデレック・グループ(Delek Group)の子会社で、以前はデレック掘削社(Delek Drilling LP)と呼ばれていた。デレック・グループはテルアビブ証券取引所に上場しており、その株の3%はノルウェー政府年金基金が保有している。2016年、ノルウェー政府はケアン社及びカプリコーン社を投資先からはずした。当時、ノルウェー政府はケアン社の株の2.86%を保有していた。他にもコスモス社とケアン社を投資先からはずした国際的投資者がいくつかある。西サハラ資源ウォッチは、デレック社の投資者はただちにこの問題を同社と議論し、もし計画を変えないのであれば投資を引き揚げるべきだ、呼びかけている。
一方、アダルコ社についてはほとんど知られていない。同社はどうやら2022年5月にジブラルタル(英領)に会社登録され、所長は1984年生まれでモロッコ国籍をもつミカエル・エルバズ(Michael Elbaz)となっている。アダルコ社のCEOハリー・マーフィー(Harry Murphy)は「これは何年もエネルギー市場で活動してきたアダルコにとっては重要な一歩だ」とイスラエルのメディアに語った。
現在、西サハラで資源探索を行っているのは2社で、いずれもイスラエルの会社である。もう一つはレイシオ石油(Ratio Petroleum)といい、2021年10月にダーフラ・アトランティック鉱区を確保している。(Western Sahara Resource Watch, 6 Dec. 2022)
https://wsrw.org/en/news/israeli-company-to-explore-gas-in-occupied-western-sahara

モーリタニアでモロッコのドローンによる死亡事件への非難高まる
モロッコのドローン攻撃でモーリタニア人が死亡した事件について、外務大臣が出席していた国会財務委員会でムハンマド・ボイ・シェイク・ファーデル議員が、モロッコ大使を呼んで抗議すべきだと主張した。ファーデル議員は、このところモーリタニア人が続けて標的になっているにも関わらず、政府は弱腰だと批判した。同氏が属する野党の進歩派連合(l’Union des forces pour le progressistes)は12月6日(水)にモロッコ政府にこうした攻撃を辞めるよう呼びかける声明を発した。(Points Chauds Online, 6 Dec. 2022)
https://pointschauds.info/fr/mauritanie-des-voix-selevent-contre-contre-le-bombardement-des-mauritaniens-a-la-frontieres-nord-et-demandent-la-convocation-de-lambassadeur-du-maroc-par-les-autorites/

スロベニア、アルジェリアのガスをハンガリーに?
11月、スロベニアはアルジェリアとアルジェリアのガスをイタリア経由のパイプラインで輸入する契約を結んだ。年間3億立方メートルになる。それによって210万人の人口をもつスロベニアのロシア産ガスへの依存度が3分の1減る他、ハンガリーにも供給が可能になる。ハンガリーはヨーロッパ諸国とのパイプライン敷設に努めているが、それでもまだ85%はロシア産だ。ハンガリーはスロベニアからのガス輸入がこれまでなかった。ただ、それが始まるまでに2、3年を要する。スロベニアの政権は4月にハンガリー寄りの政権から親ヨーロッパ派の政権に交代した。(Financial Times, 6 Dec. 2022[正確な日付は不明])
https://www.ft.com/content/f57f7857-bf7e-4fc5-9cab-091a5aae2de0

子どもへの暴力に関する国連事務総長代表、西サハラを訪問
2019年5月30日にグテーレス事務総長によって子どもへの暴力に関する国連事務総長代表に任命されたモロッコ人のナジャート・マアッラー・マジード氏(Najat Maalla M’jid)は、自身のツィートで、西サハラ占領地のダーフラを訪問したと述べた。すぐに削除されたが、西サハラに関する国連事務総長特使が西サハラ入りを拒否されている一方で、なぜ彼が入れるのか。西サハラの人権擁護のためのジュネーブ・サポートグループは、11月30日(水)に彼女の辞任を求める声明を発表した。小児科医のマジード氏はカサブランカのハイ・ハッサニ母子病院の小児科長・理事であり、過去30年間子どもの権利擁護のために人生を捧げてきた。また、彼女はモロッコの人権評議会の委員で、ストリートチルドレン問題に取り組むBaytiというNGOの設立者でもある。2008年から2014年にかけて、彼女は子どもの安全・子どもの売春及びポルノに関する国連の特別報告者を務めた。(La Patrie News, 30 Nov. 2022)
https://lapatrienews.dz/scandale-une-marocaine-representante-du-sg-de-lonu-se-fait-pieger-par-un-tweet-dr-najat-maala-sommee-de-demissionner/
https://violenceagainstchildren.un.org/fr/content/repr%C3%A9sentante-sp%C3%A9ciale-du-secr%C3%A9taire-g%C3%A9n%C3%A9ral-charg%C3%A9e-de-la-question-de-la-violence-contre

極貧と人権に関する特別報告者、モロッコ訪問を延期
国連の極貧と人権に関する特別報告者であるオリヴァー・デ・シュッター氏(Oliver de Schutter)は12月8日(木)、「旅程をめぐって合意できない」という理由でモロッコ訪問を延期すると発表した。シュッター氏は合意できない理由を明らかにしていないが、報道によると西サハラのことだと思われる。(Algérie Presse Service, 8 Dec. 2022)
https://www.aps.dz/monde/148543-maroc-le-rapporteur-de-l-onu-sur-l-extreme-pauvrete-reporte-son-voyage-en-raison-d-un-desaccord-sur-l-itineraire

以上。