西サハラ友の会通信 No. 25
7月のニュースを整理したものをお送りします。モロッコの攻勢とアルジェリアの対抗措置の狭間で、スペイン、ドイツ、EUがぐらぐらと揺れているのがわかります。ロシアのウクライナ侵攻によるヨーロッパの天然ガス不足が、アライアンス(同盟関係)の調整を引き起こしており、西サハラ問題の行方にも影響を与えそうです。
前号で6月に起きたメリリャに移民が押し寄せ、その鎮圧の過程で23人から37人の死者の出た事件について書いていませんでしたので、今号で書きました。
No. 25 目次
【西サハラ/占領地】
・グデイム・イジーク政治囚、国連作業部会に再び訴える
・シンポジウム「ムハンマド6世国王の思想と行動のアフリカ」
【モロッコ】
・ムハンマド6世、パリに長期滞在
・スペインの飛び地メリリャに多数の移民、死傷者多数
・モロッコ国家人権評議会が暫定的結論
・モロッコ人権NGO、警察の対応を批判
・南米アンデス諸国議員を西サハラに招待
・中国製ドローンをグレードアップ
・GMEから天然ガスを供給
・国王の弟の航空機部品会社、ボーイングへ納入
・ヒューマンライツウォッチ、モロッコ「弾圧のエコシステム」
・戴冠記念日、国王がアルジェリアに対話を呼びかけ
【アルジェリア】
・中国製ハルコン・ドローン4機を購入
・中国製対ドローン防衛システムを購入
・元スペイン大使をフランス大使に
・イタリアにガス供給追加、40億立方メートル
・スペインとの銀行業務再開、政府は否定
・アルジェリア、ナイジェリア、ニジェール、サハラガスパイプラインに合意
・テブン大統領、BRICsに意欲
【チュニジア】
・アルジェリアから新たなガス供給なし
【モーリタニア】
・アルジェリアへの道路建設を議会が了承
【国連】
・デ・ミストゥラ氏、西サハラを訪問せず
【アフリカ連合】
・AU理事会、TICAD8への西サハラの参加を決議
・AU政治平和安全保障委員、チンドゥーフ訪問
【NATO】
・NATOが「移民」と「ガス停止」からスペインを防衛?
【スペイン】
・アルメリア港、西サハラへの風車の輸送拠点
・EUのモロッコ産鶏・七面鳥への門戸開放は脅威
・3政党が西サハラ自決権支持を政府に要請
・主要政党は、サンチェス首相を支持
・モロッコ人がサハラーウィ女性にヘイトクライム
・サンチェス首相がモロッコに注ぎ込む金
【フランス】
・マクロン大統領とアルジェリア・テブン大統領の電話会談
【米国】
・米国防省、アフリカ軍事演習をモロッコ以外で
【ロシア】
・ロシア・アラブ会議をマラケシュからカイロに変更
【イスラエル】
・国防大臣、モロッコを訪問
【西サハラ/占領地】
グデイム・イジーク政治囚、国連作業部会に再び訴える
2010年から拘禁されている18人のグデイム・イジーク政治囚が、拷問や政治的弾圧について国連の恣意的拘禁に関する作業部会に申立を行った。ジュネーブに拠点をおく西サハラ人権擁護伸張支援グループがプレスリリースで発表した。モロッコ政府は拷問の訴えを調べようとしない、拷問で得られた自白は証拠能力がないにも関わらず、モロッコの控訴審は有罪判決を言い渡した等が申立の内容。(Europapress, 2 Jul. 2022)
https://www.europapress.es/internacional/noticia-18-presos-saharuis-gdeim-izik-denuncian-nuevo-onu-torturas-detencion-arbitraria-20220702174750.html
シンポジウム「ムハンマド6世国王の思想と行動のアフリカ」
7月18日(月)ラバトのムハンマド5世大学、ラユン・サキア・エル・ハムラ地区、外務省が合同でムハンマド6世のアフリカ外交、とくに人道、相互援助、宗教的・精神的分野における外交を分析するシンポジウムをエル=アイウンで開催した。モロッコのアフリカ諸国への関心を示し、大学交
流を通じてサブ・サハラ諸国との関係強化を図ること、エル=アイウンを南南協力研究の拠点にするの希望などが議論された。(MAP Express, 19 July 2022)
http://www.mapexpress.ma/actualite/societe-et-regions/lafrique-pensee-laction-sm-roi-mohammed-vi-theme-dun-colloque-national-laayoune/
【モロッコ】
ムハンマド6世、パリに長期滞在
モロッコの国王ムハンマド6世は6月1日から7月9日までパリに滞在した。7月10日、宮殿で羊を屠殺して犠牲祭(Aid el-Adha)を行い、3日後に閣議を行って、その日のうちにパリに向かった。国王の旅程を知る筋からの情報だ。戴冠記念祭が行われる7月30日までには戻るだろう。59才、王位について23年になる。2020年6月14日には、2度目の不整脈の手術を受けた。コロナ渦のため手術は滞在先の(パリ郊外の)城で行われた。1回目の手術はパリのアンブロワーズ・パレ医院で2018年2月に行われている。
ムハンマド6世の母親、ラッラ・ラティーファ夫人(77)は病気でパリの病院に入院していた。夫人は、ハサン2世の死後10年ほどして、国王のボディガードだったムハンマド・メディウリー氏(84)と再婚した。今は彼が夫人を看病している。ムハンマド6世は母の再婚を承諾せず、結婚式に出なかった。6月16日にはムハンマド6世はコロナに感染したと侍医から発表された。数日後にはヨルダン国王と面会したりしたが、マクロン大統領は連絡をとってこなかったと言われる。マクロン大統領は、例のペガサス・スパイウェア問題で怒っていたのかもしれない。大統領と14人の閣僚の電話番号が盗聴されている、と発表されたからだ。モロッコの諜報機関が盗聴していた。
ムハンマド6世は6月と7月はパリの北75kmにあるオアーズ県のベッツに家族がもつ城に滞在した。もちろん2020年7月に8000万ユーロで購入したエッフェル塔近くのマンションにも行った。
コロナ渦では国王はあまり外に出なかった。2021年の夏はフェズの宮殿で過ごした。しかし、今年に入ってまたモロッコを不在にすることが多くなった。2月末から4月1日にラマダン(断食月)が始まるまで、ガボンのポワン・ドニ(Pointe Denis)の別荘にいた。楽園のようなリゾートだ。3月18日にペドロ・サンチェス首相が国王宛に出した書簡を受けて、国王の声明を書いたのは、そこでだった。(Vantatis, 16 July 2022)
https://www.vanitatis.elconfidencial.com/casas-reales/2022-07-16/mohamed-vi-vacaciones-viaje-paris-medico_3462166/
(注:この記事を書いたIgancio Cembrero記者は、西サハラやモロッコ王室の暴露記事をよく書いています。ペガサスの標的にもなっていたそうです。モロッコは彼を黙らせるためにスペインの裁判に彼を訴えています。)
スペインの飛び地メリリャに多数の移民、死傷者多数
6月23日(木)400人以上の移民がメリリャのフェンスを襲撃した。スペイン当局によれば、サブ・サハラの人びとからなる完璧に組織化され、暴力的な大集団が、チャイナタウンの国境検問所のドアを破壊し、その屋根を伝ってメリリャに入ったという。(Swissinfo, 24 June 2022)
後に判明したところでは、襲撃に参加していた人の数は2,000人、メリリャに入ったのは130人(さらにのちに133人と判明)。5人の移民が死亡、49人のスペイン側警備員、140人のモロッコ側警備員、そして50人の移民が負傷した。モロッコの当局によると、ほとんどはスーダン人で近くの森に数日潜んで襲撃の機会をうかがっていたらしい。(20 Minutos, 24 June 2022)
さらに、プブリコ紙によると、モロッコの憲兵隊と軍の補助部隊がスペイン領側に入り込み、すでにスペイン領にいる移民たちに暴力的な対応をしていたことが判明。モロッコ側で活動していたNGO(モロッコ人権協会[AMDH]とスペインのCaminando Fronteras)によると、死者は37人だったという。同紙が入手した写真やビデオでは、モロッコの補助部隊がスペインの警備隊と警察と完全に協力して、あたかもそこがモロッコの領域であるかのように、500人の群衆の襲撃を食い止めようとしていた。モロッコの当局は死者を23人と発表しており、しかもその原因はモロッコ側の鉄条網の前にある斜面がなだれで崩れてその下敷きになったせいだと言う。窒息や押しつぶされて死亡したとのこと。現場で写真を撮影したジャーナリストのハビエル・ベルナルド氏によれば、フェンスを越えた人びとは警察や警備隊に囲まれ、モロッコ側に押し戻されていた、何人かはそれを逃れてメリリャの奥まで入っていったという。また、彼はモロッコの部隊がスペイン側に入り込み、モロッコ警察が移民を拘束し、襲撃し、連れ戻していたと語る。専門家たちは、これは違法な方法であるとコメントしている。サンチェス首相は、移民たちの行動は組織的・暴力的な襲撃であり、連携は必要だったとして正当化している。(Publico, 25 June 2022)
その後、モロッコの国家人権評議会(CNDH)は、スペイン当局が移民に暴力をふるったり、負傷者を援助しなかったりした可能性があるとの暫定報告を発表した。
https://www.swissinfo.ch/spa/m%C3%A1s-de-400-migrantes-intentan-entrar-en-el-enclave-espa%C3%B1ol-de-melilla-desde-marruecos/47700140
https://www.20minutos.es/noticia/5021018/0/el-gobierno-minimiza-el-primer-salto-masivo-a-la-valla-tras-el-cambio-de-posicion-en-el-sahara-marruecos-tambien-sufre-presion-migratoria/
https://www.publico.es/sociedad/agentes-marroquies-cruzaron-valla-melilla-golpearon-migrantes-suelo-espanol-devolverlos-caliente.html
モロッコ国家人権評議会が暫定的結論
モロッコ人権評議会(CNDH)は23人(NGOによれば37人)の死者を出した移民のメリリャ襲撃事件についての暫定的結論を発表した。アミーナ・ブアィヤーシュ委員長は、被害者に適切な援助を差し伸べなかったスペイン当局が悪いと述べた。国境のドア(回転ドア)はメリリャ側で常に閉じられていて、それを開ける責任はスペイン側にあるにもかかわらず、閉じられていたために死者が増えた、と述べた。また、警備隊や警察は暴力を用い、フェンスを跳び越えたり、落ちたりした人を助けなかった、とも述べた。
しかし、スペイン側治安当局の話はまったく異なる。当局はスペイン側では負傷者は出たが、死者は出なかったと反論した。したがって、犠牲者を助ける責任があるのはモロッコ側だと述べた。また、コロナ渦の前の手続きでは、フェンスの上に重篤な人がいた場合、彼らはスペイン側に来てメリリャ病院に搬送されることが可能だ。もし、モロッコ側で助けが得られないのであれば、この手続きを再開させるべきだと、当局は言う。スペインの検察は大量死の真相を捜査し始めた。
サンチェス首相はモロッコ側の対応を非難するどころか、スペインとモロッコの両方の警備隊はよくやったとほめている。決してモロッコの警察を非難しようとしない。(The Objective, 16 July 2022)
https://theobjective.com/espana/2022-07-16/guardia-civil-marruecos/
モロッコ人権NGO、警察の対応を批判
モロッコの人権NGOであるモロッコ人権協会(AMDH)は、メリリャで多数の死者が出た件で、モロッコの治安当局を厳しく批判する報告を発表した。報告書によると、数千人の人びとが国境に押し寄せているというのに、フェンスの前でモロッコ側はまったく制止しようとしなかった。つまり、スペイン治安当局の目の前で、自分たちがいかに暴力的に移民を制止できるか見せようとしたのではないか、と疑われる。この報告書は、先日モロッコ人権評議会(政府の団体)が発表したものとは真逆の内容だ。数百人の移民に対して催涙ガスが使われた。もし、そういう時間があるなら、救急車を呼んで移民たちを病院に搬送することもできたはずだと報告書は言う。しかし、モロッコ警察は弾圧することしか考えていなかった。他方スペインの警察についても、報告書は、まだモロッコ側にいた移民たちに催涙ガスやゴム弾を使ったと批判した。つまり、AMDH報告書は、事件はモロッコとスペインの「連携」プレーで行われたものであり、それが窒息した犠牲者を増やしたと述べている。「中にはもう生きていないのに、モロッコ警察によって殴られたり蹴られたりした人もいる」と書いている。(El Confidencial, 20 July 2022)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-07-20/amdh-autoridades-marroquies-tragedia-melilla_3464197/
南米アンデス諸国議員を西サハラに招待
モロッコは7月1日から9日までアンデス共同体議会のメンバーをモロッコに招待し、西サハラのエル=アイウンで総会を開催すると発表した。招待されるのはチリ、ペルー、コロンビア、ボリビア、エクアドルの議員たちである。(MAP, 29 June 2022)
アルジェリアの報道によると、チリの社会党上院議員であるフィデル・エスピノザ・サンドヴァル氏は相当にモロッコ寄りである。彼は5月と6月、2度に渡って、モロッコの西サハラ自治案を支持する動議を議会に提出した。いずれも失敗に終わった。彼はアンデス共同体議会のメンバーとしてモロッコに招待され、モロッコが達成したことを称賛した。(Algerie Patriotique, 30 June 2022)
https://www.algeriepatriotique.com/2022/06/30/le-touriste-espinoza-ou-les-manoeuvres-du-regime-de-rabat-en-amerique-latine/
中国製ドローンをグレードアップ
2020年にモロッコはアラブ首長国連邦から4機の中国製ドローン、Wing Loon 1を譲り受けた。それは、ゲルゲラート危機の際に使われ、2021年4月6日(火)、ポリサリオ戦線のアッダーフ・エル=ベンディール憲兵隊長(al-Dah el Bendir、65才)を殺害した攻撃に用いられた。今回、Wing Loon 2を購入する。モロッコはこれまでトルコのバイラクタルTB2というドローンを36機注文し、すでに25機は到着している。つまり、モロッコは兵器の多角化を進めたいということだ。Wing Loon 2は12個の爆弾を搭載でき、20時間、時速370kmで飛ぶ。1,500km先まで到達できる。(Defensa, 7 July 2022)
https://www.defensa.com/africa-asia-pacifico/marruecos-quiere-comprar-uavs-armados-chinos-wing-loong-2
GMEから天然ガスを供給
アルジェリアから天然ガスの供給をストップされていたモロッコは、スペインとモロッコを繋ぐマグレブ・ヨーロッパ・ガスパイプライン(GME)を通じて天然ガスの供給を受け始めた。6月28日に始まった。モロッコが国際市場で買い付けたガスを送ってもらう。(Le Monde de l’Energie/AFP, 6 July 2022)
https://www.lemondedelenergie.com/maroc-redemarre-centrales-gaz-grace-espagne/2022/07/06/
国王の弟の航空機部品会社、ボーイングへ納入
ムハンマド6世の弟、ムーレイ・ラーシド王子が2018年に設立したTDMアエロスペース社は、カサブランカ空港の近くの工業団地に工場をもつ。設立数ヶ月でボーイング社にチタンのパイプとダクトを納入した。そして7月18日に、Nadcap証書(National Aerospace and Defense Contractors Accredition Program)を手に入れた。これはアメリカの航空・防衛産業では格別な納入業者に与えられるもので、エアバスを始め名だたる航空機関連企業がそれを認めている。IAI(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)も相手にできるだろう。同社はイスラエルの元国防相アミル・ペレツ氏が会長を務め、彼はモロッコ出身である。3月にはすでにモロッコで旅客機の輸送機への転換事業を行うと発表している。また、Nadcap証書の獲得によって、将来的には武器を購入する際のオフセット契約(見返りに何かを買ってもらう)も可能となるだろう。モロッコは、オフセット契約とライセンス生産を軸とした、自国での防衛産業育成も戦略としてスタートさせたところである。(Africa Intelligence, 25 July 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2022/07/25/son-contrat-avec-boeing-en-poche-moulay-rachid-cible-airbus-et-le-marche-militaire,109800992-art
ヒューマンライツウォッチ、モロッコ「弾圧のエコシステム」
7月28日、米国の人権団体ヒューマンライツウォッチ(HRW)は、モロッコの人権侵害に関する新たなレポートを出し、それをワシントン・ポスト紙が記事で紹介した。レポートのタイトルは「”They’ll Get You No Matter What”: Morocco’s Playbook to Crush Dissent」(何が何でもお前を捕まえる:反体制派を叩き潰すためのモロッコのプレイブック[作戦ノート])。レポートの中でHRWは、モロコが批判を封じ込めるため、政府系メディアを使っての誹謗作戦、路上での襲撃、親戚への攻撃などを行う他、反体制派の自宅に盗撮カメラをしかけたり、車による尾行、ペガサスによる携帯電話への侵入を行っている。表現の自由の活動家でもある歴史家のマアティ・モンジブ氏は、「以前はモロッコの反体制派は明確な政治裁判で裁かれた。それは彼らを英雄にし、国民の支持を集めることになった。最近では、レイプ、窃盗、裏切りなどで訴追される」と言う。こうした訴追自由の場合、政治的だとすぐには言えないが、外交サークルにはすぐに広まる。まさにそれが当局の目的である。(Washington Post, 28 July 2022)
https://www.washingtonpost.com/world/2022/07/28/morocco-repression-journalists-opposition-human-rights-watch-report/
https://www.hrw.org/news/2022/07/29/moroccos-hidden-repression
(このサイトの6分の英語ビデオが本人証言を含め簡単に状況を説明しています。)
戴冠記念日、国王がアルジェリアに対話を呼びかけ
7月30日の国王の戴冠記念日の演説において、国王はアルジェリア大統領に正常な関係へと復帰するために「手と手を取り合って働く」ことを呼びかけた。これに対し、アルジェリアのメディアは、外交を動かすのであれば事前のやりとりなどがあるはずだが今回そうしたこともない、モロッコは現実にはアルジェリアに対して敵対行為を行い続けている、モロッコは被害者が対話を求めるという美談を仕立てようとしている、と批判した。(TSA, 31 July 2022)
https://www.tsa-algerie.com/rahabi-ce-qui-se-cache-derriere-la-main-tendue-de-mohamed-vi-a-lalgerie/
【アルジェリア】
中国製ハルコン・ドローン4機を購入
アルジェリアは中国航天科工集団有限公司(Casic)からハルコン(Halcón)ドローン4機を購入した。従来のWing Loonドローンと違い、ミサイルを搭載し、100km先の標的を攻撃することができる。高度12,000mを時速700kmで飛ぶ。(Infodefensa, 2 July 2022)
https://www.infodefensa.com/texto-diario/mostrar/3810747/halcones-defenderan-argelia-marruecos-podran-lanzar-misiles
中国製対ドローン防衛システムを購入
モロッコがイスラエルからカミカゼ・ドローンを購入したことを受け、アルジェリアは対ドローン防衛システムを中国から購入した。600km先の敵兵器のレーダーや電波を感知でき、レーダーの周波数を混乱させることで味方のレーダーや対空システムを防衛できる。(Infodron, 7 Jan. 2022)
https://www.infodron.es/texto-diario/mostrar/3528841/argelia-adquiere-sistema-detectar-drones-marroquies
元スペイン大使をフランス大使に
3月19日に召喚されていたスペイン大使、サイード・ムーシー(Said Moussi)氏が新しいフランス大使に任命された。ムーシー氏は2019年から21年まで在パリアルジェリア総領事を務めていた。(Swissinfo/EFE, 12 July 2022)
https://www.swissinfo.ch/spa/argelia-espa%C3%B1a_embajador-argelino-en-espa%C3%B1a-retirado-por-la-crisis-es-nombrado-para-francia/47747466
イタリアにガス供給追加、40億立方メートル
7月15日付のアルジェリアのメディアによると、アルジェリアはイタリアへの天然ガス供給を40億立法メートル追加することを決定した。今年すでに139億立方メートルを供給してきた。年末までにさらに60億立方メートルを追加する計画もある。来週から供給が始まる。(Algérie Presse Service, 15 July 2022)
https://www.aps.dz/economie/142871-l-algerie-augmente-de-4-milliards-de-m3-ses-livraisons-de-gaz-a-l-italie
スペインとの銀行業務再開、政府は否定
アルジェリアの銀行金融機関協会(ABEF)はスペインとの銀行業務を停止していたが、50日経った7月28日(木)、それを再開すると発表した。EUはアルジェリアにこうした措置はEUアルジェリア連携協定に違反する可能性があると警告していた。(Actualidad, 29 July 2022)
しかし、この発表を受けてただちに政府が業務再開を否定した。政府は、こうした経済政策の決定は国が行うものであり、銀行協会が行うことではないと釘を刺した。(Europass, 31 July 2022)
https://actualidad.rt.com/actualidad/436964-argelia-desbloquear-operaciones-bancarias-espana
https://www.europapress.es/internacional/noticia-argelia-desautoriza-banca-niega-haber-retomado-relacion-comercial-espana-20220731053500.html
アルジェリア、ナイジェリア、ニジェール、サハラガスパイプラインに合意
アルジェリア、ナイジェリア、ニジェールの3ヶ国は7月28日(木)、トランスサハラ・ガスパイプライン(TSGP)の建設に合意した。3国のガスをヨーロッパに繋ぐ計画である。完成すればナイジェリアのワッリ(Warri)からアルジェリアのハッシ・ルメル(Hassi R’Mel)まで4,000kmのパイプラインで300億立方メートルのガスをヨーロッパに送ることができる。建設コストは127億5500万ユーロ。このパイプライン計画は2009年に暫定合意がなされたが、その後棚上げされていた。それがウクライナ情勢によるガス需要の高まりを受けて、再開されることになった。(Europress, 29 July 2022)
https://www.europapress.es/internacional/noticia-argelia-nigeria-niger-acuerdan-construccion-gasoducto-traves-sahara-20220729050058.html
テブン大統領、BRICsに意欲
7月31日(日)、テブン大統領はアルジェリアのメディアに対してBRICsへの参加条件を十分に満たしているとして、参加に関心があることを認めた。BRICsの参加国はブラジル、ロシア、インド、中国、南アの5ヶ国。参加は両極化する世界で非同盟のパイオニアでもあるアルジェリアにとって安心をもたらすだろうと述べた。ただ、大統領自ら音頭をとることはないとも述べた。(Europa Press, 1 Aug. 2022)
https://www.europapress.es/internacional/noticia-argelia-reconoce-interes-unirse-grupo-brics-20220801013007.html
【チュニジア】
アルジェリアから新たなガス供給なし
チュニジアの電気は90%がガスで作られ、ガスの半分以上はアルジェリアから供給されている。しかし、アルジェリアはヨーロッパの供給減に対応するため、イタリアへのガス供給増の契約を今年4月に結んだ。そのためチュニジアには回してもらえない。供給量は増えないが値段は倍になった。そのためチュニジアはマグレブ投資貿易銀行から3,000万ドルの融資を受けることになった。アルジェリアはチュニジアのサイード大統領を支持し続けてきたが、最近はエジプトと近づいたり、イスラム政党エル=ナフダ(Ennahda)の指導者ラーシド・ガンヌーシーを批判していることにアルジェリアは用心深くなっている。ガンヌーシー氏はアルジェリアでは尊敬されているからだ。(Africa Intelligence, 8 July 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2022/07/08/a-alger-kais-saied-obtient-l-ouverture-des-frontieres-mais-pas-celle-des-vannes-de-gaz,109798033-art
【モーリタニア】
アルジェリアへの道路建設を議会が了承
モーリタニア国会は、7月12日(火)、アルジェリアに通じる陸路の建設に関する覚書を了承した。覚書自体は2021年12月28日に調印されている。完成すればモーリタニアとアルジェリア間の最初の道路となる。モーリタニアのゼウラットとアルジェリアのチンドゥーフを結ぶ。距離は800km。(Swissinfo/EFE, 12 July 2022)
https://www.swissinfo.ch/spa/mauritania-argelia_parlamento-mauritano-aprueba-construcci%C3%B3n-primer-paso-fronterizo-con-argelia/47747802
【国連】
デ・ミストゥラ氏、西サハラを訪問せず
7月4日、デ・ミストゥラ事務総長特使は、モロッコを訪問しながら、西サハラ行きを最終的にキャンセルした。理由は説明されず、国連事務総長報道官が、近い将来訪問できることを希望する、とだけ述べた。これに対し、ポリサリオ戦線の国連代表シディ・オマル氏は、モロッコが妨害したことを非難した。(Swissinfo, 4 July; Washingtonpost, 5 July, UN, 4 July 2022)
https://www.swissinfo.ch/spa/onu-s%C3%A1hara-occidental_el-enviado-de-la-onu-cancela-su-visita-al-s%C3%A1hara-occidental-sin-explicaciones/47725678
https://www.washingtonpost.com/world/morocco-accused-of-blocking-un-visit-to-western-sahara/2022/07/05/493df426-fcaa-11ec-b39d-71309168014b_story.html
https://www.un.org/sg/en/content/sg/note-correspondents/2022-07-04/note-correspondents-answers-questions-western-sahara
【アフリカ連合】
AU理事会、TICAD8への西サハラの参加を決議
7月14日(木)、ザンビアの首都ルサカで行われていたアフリカ連合の第41回閣僚執行理事会は、外相たちの長い議論の後、TICAD8にすべてのアフリカ連合加盟国が参加することを呼びかけるという決議を採択した。モロッコは「日本とアフリカ諸国のパートナーシップはアフリカ連合の枠組には入らないものだ」と主張したが、受け入れられなかった。理事会では、モロッコと近い国々ですら、モロッコの立場を支持する国はなかった。逆に多くの外相がサハラーウィ共和国を含むすべてのアフリカ諸国を招待するよう日本に求める必要があると認めていた。会議の最後、理事会の議長であるセネガルの外相が作成した決議文にこのことが含まれ、アフリカ連合委員会に対し、この問題に対するアフリカの共通の立場を伝えるよう指示した。(Algérie Presse Service)
https://www.aps.dz/monde/142857-l-ua-appelle-a-la-participation-du-sahara-occidental-au-prochain-sommet-de-la-ticad
AU政治平和安全保障委員、チンドゥーフ訪問
バンクレ・アデオイェAU政治平和安全保障委員は7月30日(土)、チンドゥーフを訪れ、ガーリーポリサリオ戦線議長・RASD大統領に出迎えられた後、「緊急の政治的行動」を呼びかけた。同委員は、訪問の意図をAUの紛争解決へのコミットメントを示すためだと説明した。(Swissinfo, 30 July 2022)
https://www.swissinfo.ch/spa/sahara-occidental_ua-pide-una–acci%C3%B3n-urgente–para-resolver-el-conflicto-del-s%C3%A1hara-occidental/47792750
【NATO】
NATOが「移民」と「ガス停止」からスペインを防衛?
NATOの新しいハンドブックは、モロッコが移民を使って、アルジェリアがガス供給停止によって、スペインに圧力をかけるような「ハイブリッド脅威」を軍事侵攻と同等のものとみなすとしている。その場合、NATOは第5条(集団的自衛権)を発動する可能性がある。NATOはハイブリッド脅威について過去10年間言及はしてきたが、安全保障概念を構成してはいなかった。それが今回のハンドブックでは、「サイバー空間での悪意ある活動、虚偽の情報拡散、移民を使った操作、経済的脅迫を行う」「権威主義的アクター」から同盟国を守る必要があると書かれている。ただ、ハンドブックはロシアを明確に敵としており、中国を「challenging(挑戦的)」と評し、北アフリカの国々(モロッコとアルジェリア)を「われわれの安全保障に影響を及ぼす」と書いている。スペインは北アフリカをもっと強調して欲しかったようだ。ただ、それでもセウタ事件などの場合にはスペインはNATOを呼ぶことができそうだ。
ハンドブックの27番目のポイントは、「政治的、経済的、エネルギー、情報、その他のハイブリッド攻撃に対抗する」パワーに投資する、そして軍事攻撃のレベルに達した場合、第5条を発動する可能性もあるとなっている。アルバレス外相はセウタとメリリャはNATOの対象範囲外ではあるが、NATOはセウタやメリリャを保護するのは確実だと述べる。(El Mundo, 30 June 2022)
https://www.elmundo.es/espana/2022/06/30/62bc8a1d21efa0093b8b459b.html?emk=NELM2&s_kw=2T
【スペイン】
アルメリア港、西サハラへの風車の輸送拠点
スペイン南部のアルメリアの港は、西サハラで建設される風力発電施設のウィンドタービンなど重要なパーツの輸出入拠点となっている。パーツは中国の江陰市(Jiangying:こういん)からスエズ運河を通って運ばれてきて、一時ここに保管され、ドイツ、イギリス、オーストリア、ロードアイランド(米)に輸出される。そして、パーツはエル=アイウンにも運ばれる。(Europress, 4 July 2022)
https://www.europapress.es/andalucia/puertos-del-estado-01056/noticia-buque-carga-puerto-almeria-veintena-grandes-piezas-parque-eolico-sahara-20220704174259.html
EUのモロッコ産鶏・七面鳥への門戸開放は脅威
スペインの鶏肉生産は年間100万トンで、イギリスに次いで2位だ。EUはモロッコ産鶏肉・七面鳥肉に門戸を開放する。スペインの養鶏業者は戦時体制に突入する。彼らはモロッコの鶏肉が抗生物質の量やサルモネラ菌などの基準をクリアできるかどうか疑わしいとみている。最近はエネルギーコストが150%、飼料が35%上昇している。スペインの5,000軒の養鶏業者の倒産を防ぐためには政府はもっと国内の業者を支援しなければならない。(El Mundo, 8 July 2022)
https://www.elmundo.es/economia/2022/07/08/62c86cb9e4d4d85e6c8b458f.html
3政党が西サハラ自決権支持を政府に要請
ERC(カタルーニャ共和主義左翼)、Bildu(エウスカル・エリア・ビルドゥ)、BNG(ガリシア民族主義ブロック)の3政党は(いずれも野党少数政党)スペイン下院でサンチェス政権に、西サハラの自決権を支持し、モロッコとのあらゆる協定がサハラーウィ人民の権利尊重を条件とするよう要請した。そして、自治案承認を撤回する書簡をモロッコ国王に送り、ポリサリオ戦線に外交的地位を与え、国連等に「非植民地化を完遂する緊急の必要性」を訴えることを求めた。さらに、サハラーウィの人権尊重、サハラーウィ囚人の釈放をモロッコ政府に求めた。(Europa Press, 13 July 2022)
https://www.europapress.es/nacional/noticia-erc-bildu-bng-piden-revertir-giro-sanchez-sahara-apoyar-referendum-autodeterminacion-20220713201301.html
主要政党は、サンチェス首相を支持
国民党(PP)と社会労働党(PSOE)は、西サハラ問題で以前の立場に戻ることを呼びかけた、ERC、Bilduが提示し、ポデモス党が支持に回った動議に反対した。賛成は73票、反対は262票、棄権は11票であった。3人が投票しなかった。動議の内容は、自決権の支持、モロッコの人権尊重に対するコンディショナリティなど。(Contramutis, 15 July 2022)
https://contramutis.wordpress.com/2022/07/15/el-pp-voto-con-el-psoe-en-contra-de-volver-a-la-situacion-anterior-al-apoyo-de-sanchez-a-marruecos-sobre-el-sahara-occidental/
モロッコ人がサハラーウィ女性にヘイトクライム
カセレス県ナバルモラル・デ・ラ・マタという町で、警察は32才のモロッコ人男性をサハラーウィ女性に対するヘイトクライムの疑いで逮捕した。8才の息子と歩いていた彼女に、スペイン語とアラビア語で侮辱したという。6月24日、33才になるサハラーウィ女性が警察に訴え出た。例えば、「ポリサリオの連中はみなくそだ。今度見つけたら、殺すぞ。モロッコ人がポリサリオを殺したとなれば、王様は誇らしいだろうよ」などと言ったという。女性によれば、今回のことは初めてではなく同じ男性から数日前にも侮辱的なことを言われたという。事案は警察、裁判所、検察に送られ、男性は司法的措置を待っている。(Europa Press, 19 July 2022)
https://www.europapress.es/extremadura/noticia-detenido-hombre-navalmoral-mata-acusado-delito-odio-mujer-origen-saharaui-20220719125930.html
サンチェス首相がモロッコに注ぎ込む金
外務省が所管する国際・イベロアメリカ行政公共政策財団(International and Ibero-American Foundation for Administration and Public Policies: FIIAPP)は、その前身が1998年に設立された財団で、イベロ・アメリカと看板を掲げているものの、最大の受益者の一つはモロッコである。これまでトラック、SUV(スポーツ用多目的車)、4輪バイクなど数百台をモロッコに送っている。さらにはサベイランス機材や暗視装置も送った。財団の目的は、EUの資金で、公的機構を国際協力で支援することだ。財団の理事会長はナディア・カルビニョ(Nadia Calviño)氏(サンチェス内閣の第一副首相兼経済・デジタル変革大臣)。事務局長はアンナ・テロン(Anna Terrón)氏。
2019年以降だけでも18件の契約事業がメリリャのフェンスを覆う洗練された治安対策用素材を提供するものか、またはモロッコに通訳・顧問を提供するものであった。総額7,800万ユーロになる。こうしたモロッコへの集中的な資金提供はサンチェス氏が首相になってからのことだ。一方、アルジェリア向けは2つの事業しかなく、10万ユーロのみ。しかも、モロッコ、ニジェール、モーリタニア、チュニジア、マリと一緒の事業だ。10件の大きな事業のうち8件がモロッコで、契約先はETEL 88(治安関連素材)などの他、トヨタ・モロッコが含まれる。
この財団は18人の理事がおり、250人を雇用している。人件費だけでも1800万ユーロだ。過去2年、モロッコではMigraSafe Africaというプロジェクトで安全で秩序だった移住を支援し、CT JUSTというプロジェクトでテロリストネットワークの解体を支援し、モロッコにおける法の支配を強化し、北アフリカにおける安全な輸送、モロッコの高等教育を支援した。複数の国も対象となっているが、合計7000万ユーロに及ぶ。
2021年、モロッコの内務省はサンチェス政権の最大の援助受け取り機関となった。その額3,000万ユーロ。不法移民や移民トラフィッキング、人身取引などを取り締まる活動だ。それにもかかわらず、昨年12月の国会で政府は「2021年1月以降、内務省の国際的警察活動協力の予算からモロッコにはまったく援助は支出されていない」などと回答している。2019年には、モロッコ内務省への直接援助が3,240万ユーロだった。(La Informacion, 26 July 2022)
https://www.lainformacion.com/espana/subvenciones-millonarias-marruecos-sanchez-contratos-fundacion/2871255/
【フランス】
マクロン大統領とアルジェリア・テブン大統領の電話会談
マクロン大統領が再選され、両国大統領は電話会談を行った。スペインのメディアは、スペインがアルジェリアから大変な制裁を受けているときに、両国大統領がそれにはまったく触れず、これまでにない良好な関係であると語ったことを、不満げに報道している。コロナ仏外相がラマムラ外相と電話会談した際に、ヨーロッパの国々と地中海南岸地域の国々の関係が良好であることを欲する、スペインとアルジェリアは共通の課題に向き合うことができるはずだと述べただけだ。マクロン大統領は、フランスによる植民地化前にアルジェリア国民は存在していなかったなどと発言し、アルジェリアの「軍事政治的」体制を批判した。そのためアルジェリアはフランス大使を3ヶ月召還し、フランス航空機の飛来を禁止した。しかし、貿易は止めなかったので、そこがスペインと違っている。(El Mundo, 18 June 2022)
https://www.elmundo.es/espana/2022/06/18/62ae10e8fc6c83e7568b45d1.html
【米国】
米国防省、アフリカ軍事演習をモロッコ以外で
米国防省はアフリカでの軍事演習「アフリカのライオン」のホスト国をモロッコ以外で探し始めた。西サハラを支援するジェームズ・インホフ上院議員(オクラホマ・共和)がメディアに明らかにした。インホフ議員は、西サハラ問題が解決をみないため、この間国防省にモロッコをホストからはずすよう働きかけていた。2022年のNDAA(国防予算法)の承認の際、上院は、モロッコが「西サハラ問題における相互に受け入れ可能な政治的解決を模索」しない限り、モロッコがホストとなる軍事演習に参加することはできないという条件を付加した。2022年度の軍事演習はモロッコで行われたが、オースティン国防長官は除外措置を求めていた。2023年度予算にはそうした条項は付加されなかったが、代わりに「アフリカ諸国との多国間軍事演習の場所とホストは別なところを探す」ことが明記された。(Defense News, 25 July 2022)
https://www.defensenews.com/congress/2022/07/25/pentagon-reviews-removing-morocco-as-host-of-largest-military-exercise-in-africa/
【ロシア】
ロシア・アラブ会議をマラケシュからカイロに変更
当初2020年11月にマラケシュで開催予定だったロシア・アラブ協力フォーラムは延期のはてに結局カイロで開催されることになった。モロッコは国連総会でのロシア非難決議に棄権し、ロシアへの配慮を示したが、フォーラムの開催地変更はロシア・モロッコ関係に影響を及ぼさないではいないだろう。(Africa Intelligence, 6 July 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2022/07/06/plutot-qu-a-marrakech-moscou-envisage-d-organiser-son-sommet-russo-arabe-au-caire,109797351-bre
【イスラエル】
国防大臣、モロッコを訪問
7月18日(月)、アビブ・コハビ(Aviv Kohavi)国防相は3日間のモロッコ訪問を開始した。モロッコの国防相他、関係者と会談する。モロッコは第2次インティファーダの後2000年にイスラエルとの関係を断絶した。それが2020年に米国がモロッコの西サハラでの主権を認める代わりに、モロッコがイスラエルと関係正常化をはかることになった。昨年11月には当時のガンツ国防相がモロッコを訪問、安全保障協定を結んだ。6月にモロッコで行われた「アフリカのライオン」演習にイスラエル軍関係者もオブザーバーとして参加した。(France24/AFP, 19 July 2022)
https://www.france24.com/en/diplomacy/20220719-israeli-army-chief-lands-in-morocco-for-first-visit-as-ties-normalise
モロッコに売った武器
イスラエルとモロッコは安全保障分野・外交分野で長い協力関係がある。モサドはラバトに活動拠点をもっていた。六日戦争(第3次中東戦争)の後、イスラエルはフランスの余剰となっていた武器をモロッコに売った。主に戦車と砲類だった。イスラエルの軍事顧問がモロッコを訪れ、ポリサリオ戦線との戦争に助言した。近年イスラエルはモロッコに次のような武器を販売した。
ヘロン1(Heron-1):情報収集用ドローン。2014年、モロッコは3機のヘロンをIAI(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)から5,000万ドルで購入。3年前に運用が開始され、ポリサリオ戦線に対しても使われていると伝えられる。
ハロップス(Harops):攻撃用ドローン。Suicide Droneとも呼ばれる自爆型ドローンで標的に突入する。アゼルバイジャンが対アルメニア戦争で使ったことで有名。2021年11月、IAIがモロッコに売ったと報じられた。
バラックMXミサイル防衛システム(Barak MX missile defense system):ヘリコプターから、戦闘機、ドローン、ミサイルまで広範囲な脅威に対抗する統合防衛システム。2022年2月、IAIがモロッコに売ったと報じられた。数億ドルするとみられる。
F5戦闘機の改修:ベトナム戦争で用いられた米戦闘機で1970年代にモロッコに提供された。エンジンが老朽化したので改修されるプロジェクトをイスラエルが行う。
ペガサス:スマートフォンに入り込むスパイウェアで、相手の携帯の情報を盗むほか、遠隔操作で録音、撮影機能を動かす。
武器の他にも、さまざまな協力事業を行っている。2021年7月にはモロッコの特殊部隊がイスラエルに来て、米軍と合同の対テロ軍事演習に参加した。それより3年前、モロッコ警察がタボール(Tavor X95)を使っている動画がアップされていた。それまでモロッコはイスラエルから武器を購入しているのを否定していた。ウクライナがライセンス生産しているのを買ったとの報道もあったが、ウクライナはその型のタボールを生産してはいない。(Haaretz, 19 July 2022)
https://www.haaretz.com/israel-news/2022-07-19/ty-article-timeline/israel-morocco-arms-sales-pegasus-harop-kamikaze-drones-barak-missiles/00000182-10f9-d1ad-a1b7-1ffd14150000
以上。