西サハラ友の会通信 No. 24

 

 4月末頃にNo. 23をお送りしましたので、3ヶ月が経ってしまいました。大変遅くなり,申し訳ありません。その間ニュースが貯まっていましたので今号では6月末までのニュースをお届けします。7月分はNo. 25で送ります。
 今回の大きなニュースは次のものです。
 ・アルジェリアのスペインとの友好協定停止、貿易麻痺。
 ・スペイン情報局極秘報告書、モロッコの対スペイン情報作戦を暴露。
 ・メリリャに移民400人押し寄せ、死者多数。
 ・イスラエルがついにモロッコの西サハラに対する主権を承認。
 8月27・28日にはチュニジアで、日本政府主導のTICAD8(アフリカ開発会議)が開催される予定です。西サハラの代表団が何らかの形で参加できるかどうかが注目されます。
 とにかくスペインのサンチェス大統領のモロッコ自治案支持発表(3月)の波紋が大きく、アルジェリアとの関係悪化、国内での非難続出で、スペイン内政が混乱しています。
 ブージュドゥールで自宅軟禁状態におかれ警察のハラスメントを受け続けいてた人権活動家スルターナ・ハイヤさんが西サハラを出て、カナリア諸島に到着することができました。アメリカの活動家たちが同行して成功させました!


No. 24 目次

【活動】
・TICAD8についての要望書を提出

【西サハラ/占領地】
・米国人権グループ、拘束される
・西サハラの南部にリチウム鉱発見

【西サハラ/難民キャンプ】
・難民キャンプの食糧危機

【モロッコ・ナイジェリアガスパイプライン構想】
・OPEC基金が、ナイジェリア・モロッコガスパイプラインに資金提供
・サハラーウィ石油鉱物庁、ウォーリー社に警告

【モロッコ】
・モロッコ、国連大陸棚境界線委員会に法律家を推薦
・OCP、ブラジルに肥料工場建設か?
・ムハンマド6世、パリで休暇、コロナ陽性
・モロッコ、原発に乗り出す

【スペイン・アルジェリア関係】
・アルジェリア、モロッコへのガス転売に釘を刺す
・【重要】アルジェリア、スペインとの友好条約を停止
・アルジェリア側の発表
・ボレルEU上級代表のリアクション
・アルジェリア、スペイン産品の輸入を制限
・輸出業者、悲鳴をあげる
・アルジェリアとの貿易「事実上完全麻痺」
・ドイツとイタリアはアルジェリアを支持か?
・アルジェリアはスペインの政権交代を待つ
・アルジェリア、スペインとの関係停止を旅行業者に指示
・スペインの石油大手、アルジェリアの事業を断念か?

【スペイン・モロッコ関係】
・スペイン大統領夫人の利益?
・ベゴニャ・ゴメス夫人の密かな辞任
・スペイン政府高官のスマホにスパイウェア
・ラヤ元外相、無罪判決
・国民党党首、モロッコ首相と会談
・【重要】国家情報センター報告書(1):セウタ事件はスペインに圧力をかけるため
・【重要】国家情報センターの報告書(2)モロッコ情報局の協力者たち
・ガーリー氏、CNI報告書を請求
・検察は報告書開示に反対
・裁判所、ガーリー氏の請求を退ける
・カナリア諸島経由の移民はアルジェリアの3倍
・スペイン国旗は逆さまだった!
・西サハラ沖合のモンテ・トロピック:レアアースの宝庫
・イグナシオ・センブレロ氏:スペインは何も得ていない
・モロッコ、イグナシオ・センブレロ氏を訴える
・EU、スペイン経由でモロッコの国境監視強化支援
・カナリア諸島裁判所、サハラーウィを拒否
・モロッコ情報局長、スペインを訪問
・モロッコのスイカは値段が半分
・【重要】400人の移民がメリリャに押し寄せる
・スペイン、モロッコに天然ガス供給開始

【アルジェリア】
・米、アルジェリアにロシア航空機禁止を要請
・アルジェリア・イタリア間防衛協力強化

【イスラエル】
・イスラエル、アフリカ進出をパリで宣伝
・モロッコに浸透するイスラエル
・【重要】イスラエル、モロッコの西サハラに対する主権を承認

【ドイツ】
・ドイツも自治案承認に向かうか
・ドイツ政府の解釈「西サハラは国連憲章の非自治地域ではない」

【フランス】
・ビザ戦争?モロッコへのビザ制限か?
・農民連合、西サハラの農産品輸入を拒否

【米国】
・クリストファー・ロス氏の質問にブリンケン国務長官答えず
・合同軍事訓練「アフリカのライオン」開始

【国連】
・非植民地化特別委員会公聴会開催される


【活動】
TICAD8についての要望書を提出
 7月20日(水)、西サハラ友の会が賛同団体・個人とともにTICAD8に関する日本政府への要望書を外務省に直接提出しました。賛同団体2、賛同個人67人でした。詳しくは友の会ホームページのニュースをご覧下さい。

【西サハラ/占領地】
米国人権グループ、拘束される
 5月23日、米国の人権グループ「西サハラ正義訪問団(JustVisitWestern Sahara)」の女性活動家らがエル・アイウンでモロッコの治安当局に拘束され、強制送還された。彼女らは、Adrienne Kinne(平和のための帰還兵たち、という団体の代表)、Wynd Kaufmyn(コミュニティカレッジ教授)、Laksana Peters(退職教員)の3人。彼女らは、3月15日からブージュドゥールの女性活動家スルターナ・ハイヤさん宅にいる米国市民のチームのTim PlutaとRuth McDonoughに面会する予定になっていた。5月15日にはスルターナ・ハイヤさん宅にトラックが3度突っ込み建物の一部に損害を与えるという事件がおきていた。その後、6月1日、スルターナ・ハイヤさん、Tim Pluta、Ruth McDonoughの3人はカナリア諸島に出国することができた。デモクラシー!ナウがこれを報道した。(Nonviolence International: Khaya Siege Updates)
https://www.nonviolenceinternational.net/khaya_siege_updates

西サハラの南部にリチウム鉱発見
 西サハラのモーリタニアとの国境付近にリチウム鉱が大量に埋蔵されていることが発見された。モロッコは「モロッコとモーリタニアの国境近く」と言っている。リチウム・イオン電池の開発に多大な貢献をしたモロッコ人科学者ラシード・ヤザミー氏(Rachid Yazami)は、電気自動車の急速な成長によりリチウムやコバルトへの国際的需要が高まっている現在、これはモロッコ主導のエネルギー移行を力強く促進することになると述べた。また彼自身、採掘の可能性を探ることについてサウジアラビアから誘われていると述べた。(Infomaroc, 18 May 2022)
https://www.infomaroc.net/frontiere-maroc-mauritanie-decouverte-dun-gisement-de-lithium

【西サハラ/難民キャンプ】
難民キャンプの食糧危機
 世界食糧計画(WFP)によると、世界的な食糧危機によって、チンドゥーフやサヘル地方(モーリタニア南部)にあるサハラーウィの難民キャンプの食料は50%減る可能性がある。6月3日、スペインのメディアが報道した。(La Vanguardia, 3 June 2022)
https://www.lavanguardia.com/vida/20220603/8315604/sabado-4-junio-2022.html

【モロッコ・ナイジェリアガスパイプライン構想】
OPEC基金が、ナイジェリア・モロッコガスパイプラインに資金提供
 OPEC基金がナイジェリア・モロッコガスパイプラインの事前調査に1,430万ドルの資金提供を行うことを決定した。背景にはナイジェリア人で現OPEC事務局長ムハンマド・バルキンド氏の尽力があった。(バルキンド氏は今年7月6日63才で死去。)事前調査はウォーリー社(Worley)が行う。このパイプライン構想は、一方でアルジェリアが進めているナイジェリア・アルジェリアガスパイプライン(サブ・サハラガスパイプライン)構想と競合関係にある。モロッコは、それまで近い関係にあったアルジェリアとナイジェリアの外交関係にくさびを打ち込み、ナイジェリアを西サハラ支援から離脱させるために、このパイプライン構想を2016年にもちかけた。モロッコは同時にナイジェリアでのモロッコリン鉱石公社による肥料工場の開設を提案した。アルジェリアのパイプライン計画は構想から20年になるが、実質的には進んでいない。いずれにせよ問題はニジェールデルタの不安定な政治情勢にあり、安定的なガス提供が可能かどうかが鍵となる。(Africa Intelligence, 9 May 2022)
https://www.africaintelligence.fr/petrole-et-gaz_strategies-etat/2022/05/09/le-patron-de-l-opep-barkindo-fait-un-cadeau-inespere-au-gazoduc-nigeria-maroc,109782959-art

サハラーウィ石油鉱物庁、ウォーリー社に警告
 サハラ・アラブ民主共和国政府の石油鉱物庁は、ナイジェリア・モロッコ・ガスパイプライン構想のエンジニアリング・デザインの業務契約を獲得したウォーリー社に警告を発した。同パイプラインは西サハラの海域を通過する計画になっている。本件はまだ事前調査中ではあるが、モロッコはサウジアラビアのイスラム銀行に対し調査経費の提供を申請している。(Sahara Press Service, 28 Apr. 2022)
https://spsrasd.info/news/en/articles/2022/04/28/39411.html

【モロッコ】
モロッコ、国連大陸棚境界線委員会に法律家を推薦
 ベルギーに拠点を置くNGO「西サハラ資源ウォッチ」は、モロッコが国連の大陸棚境界線に関する委員会の委員としてモロッコ人法律家ミールード・ルーキーリー教授(Miloud Loukili)を候補に挙げ、各国に支持を呼びかけている。国連海洋法条約第2条によれば、委員会の21人の委員は地学、地球物理学、水路学のいずれかの専門家でなければならない。しかし、ミルド・ルキリ教授は海洋法の専門家であり、委員の要件とされる3分野のいずれの専門教育も受けていない。一方で、ルキリ教授はモロッコの西サハラに対する主権を断固として弁護する立場の人である。(Western Sahara Resourc Watch, 2 May 2022)
https://wsrw.org/en/news/morocco-proposes-jurist-for-non-jurist-un-body

OCP、ブラジルに肥料工場建設か?
 モロッコリン鉱石公社CEOのムスタファー・トゥッラーブ氏(Mostafa Terrab)は、ブラジル訪問中、マルコス・モンテス農相と面会し、ブラジルにリン酸加工工場を建設する意向を伝えた。OCPはブラジルへのリン酸の最大の供給者であり、世界のリン鉱石埋蔵量の7割を有し、国際市場の3割を占めている。ブラジルでは2010年以来事業を展開し、7つの事業所をもっている。さらにモロッコは世界第二のリン肥料生産高を誇り、全世界の生産量の17%を占めている。2021年、ブラジルはモロッコから16億ドルの肥料を輸入した。(Safras, 13 May 2022)
https://safras.com.br/empresa-estatal-produtora-de-fosfato-do-marrocos-quer-ampliar-investimentos-no-brasil/

ムハンマド6世、パリで休暇、コロナ陽性
 モロッコの国王ムハンマド6世の侍医ラフセン・ベルヤマニー(Lahcen Belyamani)教授は6月16日、国王が自覚症状のないコロナ感染の状態にあると発表した。数日の急用が必要だそうだ。国王の健康は難しい状況にあり、過去2度、2018年2月と2020年6月に不整脈を除去する手術を受けている。国王は今年6月1日以来パリで私的な滞在を行っている。入院中の母(77才)を見舞う目的もあったようだ。ただし、マクロン大統領との面会はないようで、マクロン大統領はペガサス問題で憤慨していると考えられる。滞在先はエッフェル塔近くに8,000万ユーロで購入したマンションと、パリの北西75kmにあるモロッコ王家所有のシャトーになっている。(El Confidencial, 16 June 2022)
https://www.elconfidencial.com/mundo/2022-06-16/el-amargo-viaje-de-mohamed-vi-a-paris-macron-no-le-recibe-y-contrae-el-covid_3443506/

モロッコ、原発に乗り出す
 6月初め、上院で答弁したレイラ・ベンアリーエネルギー移行相は「モロッコはこれまで太陽光と風力に投資してきたが、これからは未来の電力需要に応じるため原子力に投資することを考えている」と述べた。実際、モロッコは2015年には原子力に関する報告書を出しており、2009年には小さな実験用原子炉を米国の了解をえて稼働させている。今年の5月14日には、サウジアラビアとの覚書に調印し、両国で原子力を発展させると発表した。国際原子力機関(AEIA)のラファエル・グロッシー事務局長は6月20日にモロッコを訪問し、ベナリエネルギー移行相と会談した。そして「モロッコの核科学における経験は同国の発展の価値ある資産である」などと述べた。王室に近いe360というインターネットメディアによると、最初の原発はアガディールの100km北のスィディ・ブールブラ(Sidi Boulbra)の近くに建設される。モロッコは、イランのように、原子力を核爆弾製造に使うことはなさそうだ。問題は隣のアルジェリアも競って核開発を行うようになるということで、実際、アルジェリアも過去数回原子力発電所建設の可能性を示唆してきた。1991年、アルジェリアが中国の支援を受けて原爆製造をしたがっているという疑いがあったとき、米国の働きかけでアルジェリアは核の軍事利用はしないと言明した。中国の支援とは、アルジェの250km南に位置するビリーン(Birine)に1993年に建設された実験用核施設だった。もし、モロッコが原発を作り、アルジェリアがそれを追うと、1983年以来原発を停止しているスペインのすぐ隣で核開発が展開することになる。(El Confidencial, 23 June 2022)
https://www.elconfidencial.com/mundo/2022-06-23/carrera-atomica-magreb-marruecos-se-lanza-energia-nuclear_3446744/

【スペイン・アルジェリア関係】
アルジェリア、モロッコへのガス転売に釘を刺す
 4月27日(水)、アルジェリアのムハンマド・アルカーブエネルギー鉱業相は、スペインにパイプラインを通じて送っている天然ガスは契約に書かれている国以外のところに送ることは契約違反になるとして、モロッコに天然ガスを逆送付しようとしているスペインに警告した。(APS: Algèrie Presse Service, 27 Avril 2022)
https://www.aps.dz/economie/139087-acheminer-le-gaz-algerien-par-l-espagne-vers-une-destination-tierce-pourrait-aboutir-a-la-rupture-du-contrat

【重要】アルジェリア、スペインとの友好条約を停止
 6月8日(水)、スペインのサンチェス大統領が議会で西サハラ政策の変更を再確認し、モロッコとの1991年条約に代わる新たな条約の締結を行うと説明したことを受け、アルジェリアはスペインと2002年に締結した「友好善隣協力条約」をただちに停止すると発表した。スペイン政府によれば、アルジェリアは天然ガスの売買契約は維持するそうだ。一方、アルジェリアは、スペインがアルジェリアから購入している天然ガスをモロッコに転送するようなことがあれば、契約を破棄すると言っている。サンチェス大統領がモロッコの西サハラ自治案を支持すると発表して以来、対アルジェリア関係は悪化の一途を辿った。まず、大使の召還、天然ガスの制限、スペイン製品の輸入抑制、そして友好条約の停止である。スペインにとってアルジェリアは最大の天然ガス供給国。2021年にスペインが輸入した天然ガスの42.7%はアルジェリアからのものだった。アルジェリアの憤慨は当然予想されたので、スペイン政府はカタールやナイジェリアといった別なガス産出国との関係を強化してきた。そして、この2国とエネルギー協力を行うという共同宣言の発出にこぎつけた。(El Mundo, 8 June 2022)
https://www.elmundo.es/espana/2022/06/08/62a0c59ffc6c83e0478b45ef.html

アルジェリア側の発表
 アルジェリア大統領府は、6月8日、スペインとの友好善隣協力条約を停止すると発表した。アルジェリアは、条約停止の理由として、スペイン政府が「西サハラの施政国としての法的、道徳的、政治的責務に違反」する政策転換を行った、「植民地的既成事実を進める占領国の不法で正統でない自治案を支持する」ものであり、「国連の努力に反する」ものだと説明した。(TSA, 8 June 2022)
https://www.aps.dz/algerie/140873-l-algerie-suspend-le-traite-d-amitie-de-bon-voisinage-et-de-cooperation-avec-l-espagne
https://www.tsa-algerie.com/lalgerie-suspend-le-traite-damitie-avec-lespagne/

ボレルEU上級代表のリアクション
 6月10日(金)、ジョセップ・ボレルEU外務安全保障上級代表兼欧州委員会副委員長とバルディス・ドムブロウスキス欧州委員会上級副委員長兼貿易担当欧州委員の2人が、「EUはEU加盟国に対するいかなる強制的措置にも反対する」と述べ、アルジェリアに警告を発した。これに対しアルジェリアはすぐに反応し、「欧州委員会がアルジェリア政府に確認も相談もせずに反応したこと」を非難した。アルジェリアは「EUアルジェリア連携協定が課す責務に対し直接的にも間接的にも影響を及ぼすものではない」と述べ、スペインへのガス供給を続けることを言明した。(TSA, 10 June 2022)
https://www.tsa-algerie.dz/crise-algerie-espagne-alger-repond-a-bruxelles/

アルジェリア、スペイン産品の輸入を制限
 アルジェリアは表向き認めていないが、輸入許可に制限を加えることで、スペイン産品の輸入をボイコットしている。アルジェリアの輸入業者は政府からの輸入許可が、例えば牛肉について、得にくくなっているという。彼らは別な取引先を探すよう政府から促されている。アルジェリアのボイコットは、EU加盟国のうちスペインを差別的に扱うものなので、EUアルジェリア連携協定に違反することになるが、スペインがそう主張するためにはアルジェリア政府が積極的にスペインを差別していることを証明しなければならず、それは簡単ではない。(El Confidencial, 8 June 2022)
https://www.elnacional.cat/es/politica/argelia-boicotea-los-productos-espanoles-la-represalia-por-el-sahara_769602_102.html

輸出業者、悲鳴をあげる
 アルジェリアは友好条約停止に加え、銀行業務の凍結を言っている。これに対し、化学製品の販売を行っているPMS社のフィリペ・アリッティ社長は「状況は完全封鎖といえるもの。港には出発できないコンテナが山積みになっている」と不満を述べた。各社はスペイン以外の国の港からスペイン以外の会社を通じてアルジェリアに輸出する道を模索している。同社はアルジェリアの炭化水素工業と連携している。アルジェリアに輸出しているのは石油抽出に必要な化学製品であり、これが滞ると、アルジェリアの石油部門自体が困ってしまう。マドリード・コンプルテンセ大学のラファエル・ブストス教授(国際関係論)は、「アルジェリアは慌てず賢明に行動している。条約停止は、スペイン政府の政策転換が確実なものだと確認された後に発表した。(つまり)アルジェリアの措置は予測できた。この種の条約の停止は不満表明の合法的な道具として多くの国が使ってものことだ」と述べた。(El Periodico, 10 June 2022)
https://www.elperiodico.com/es/internacional/20220610/bloqueo-exportaciones-espana-argelia-marruecos-13825675

アルジェリアとの貿易「事実上完全麻痺」
 スペイン政府はアルジェリアとの貿易が「事実上完全に」麻痺していることを認めた。エネルギー部門以外、輸出入が止まっている状態だ。6月29日(水)ヒアナ・メンデス商業担当副大臣が国会で答弁した。加えて、アルジェリアの措置はEUアルジェリア連携協定に違反している可能性があると指摘した。(El Independiente, 29 June 2022)
https://www.elindependiente.com/economia/2022/06/29/el-gobierno-reconoce-ya-la-paralizacion-practicamente-total-del-comercio-con-argelia/

ドイツとイタリアはアルジェリアを支持か?
 ドイツのカチャ・キュル(Katja Keul)外務副大臣(同盟90/緑の党)はアルジェリアを訪問し、「アルジェリアは北・西アフリカの地域紛争の解決にとって重要なアクターであり、アルジェリアとの政治対話を促進することは重要だ」と述べた。これはスペイン外務省に対する警告とも読める。イタリアは、来月開催されるイタリア・アルジェリア両国の首脳会談に関する準備として共同発表を行った。最近、アルジェリアとイタリアは天然ガス供給を50%増加させる協定に調印した。これによってアルジェリアはイタリアへの最大の天然ガス供給国となる。(El Independiente, 13 June 2022)
https://www.elindependiente.com/internacional/2022/06/13/alemania-e-italia-escenifican-su-apoyo-a-argelia-en-plena-crisis-con-espana/

アルジェリアはスペインの政権交代を待つ
 6月16日、スペインのメディアVozpopuliは、アルジェリア外務省の西サハラ問題担当大使であるベラニ氏が、El Confidencial紙との電話インタビューで、スペインの現政権の下での問題解決はありえない、と語ったことを報じた。とくにスペイン側が、アルジェリアのスペインに対する強硬姿勢をロシアが指示したものであるかのように発言したことが、アルジェリアの怒りを買っている。(Vozpopuli, 16 June 2022)
https://www.vozpopuli.com/espana/argelia-espera-cambio-gobierno-espana-resolver-crisis.html

アルジェリア、スペインとの関係停止を旅行業者に指示
 6月19日(日)アルジェリア政府は旅行代理店に対してスペインと業務を行うことを禁止した。理由は、スペインとの友好協定が停止されたことに伴い、スペインとのすべての業務提携を停止するというもの。アルジェリア人にも影響は大きい。今後旅行代理店を通じてのチケットやホテルの手配ができなくなるが、往復チケットやホテル予約がシェンゲンビザ取得の条件となっているからだ。昨年は62,788人のアルジェリア人がスペインに旅行した。コロナ前は10万人を越えていた。今後空路も停止される可能性がある。アルジェリア外務省西サハラ担当大使のアンマール・ベラーニー氏は「西サハラのダーフラで計画されているスペイン・モロッコビジネスフォーラムがスペインとの関係を悪化させている」と述べた。
 モロッコ・ビジネスフォーラムは6月21日・22日(火水)にダーフラで行われることになっており、100人ほどのスペインのビジネスマンが参加する。これほどのスペイン人の参加をえて西サハラで会議が行われるのは初めてのこと。ただし、スペイン政府関係者はアルジェリアとの関係悪化を恐れて出席しない。スペイン外務省法務部と検察は、アルジェリアの措置がEUアルジェリア連携協定に違反しないかどうか、検討に入った。EU加盟国に対して差別的扱いはできないという条項があるからだ。(El Confidencial, 20 June 2022)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-06-20/argelia-sahara-espana-agencia-viajes_3446655/

スペインの石油大手、アルジェリアの事業を断念か?
 スペインの石油大手テクニカス・レウニダス(Técnicas Reunidas)はスペイン・アルジェリア関係悪化の最初の犠牲者となりそうだ。同社はアルジェリアのソナトラック(Sonatrach)と2020年1月に巨大精製設備建設の契約を交わしたが、ソナトラックは大統領の意向を受けてこの事業を中止することを内々に決定したようだ。事業費は37億ドルに及ぶ。この事業はアルジェリアにとっても重要で、石油製品の輸入を抑制し、中部・南部に石油を供給することができるようになるはずだった。ソナトラックは今回の事業の撤回で2億ドルの損失を被るだろう。加えてテクニカス・レウニダスが損害賠償を求めるかもしれない。(Africa Intelligence, 21 June 2022)
https://www.africaintelligence.fr/petrole-et-gaz_strategies-etat/2022/06/21/la-rupture-alger-madrid-menace-la-raffinerie-a-37-milliards-de-dollars-de-tecnicas-reunidas,109792677-eve

【スペイン・モロッコ関係】
スペイン大統領夫人の利益?
 ペドロ・サンチェス大統領の妻であるベゴニャ・ゴメス夫人率いるIEビジネススクール財団はモロッコのAPDモロッコ財団と数百万ドルに及ぶ協力関係があり、スペインはその利益のためにサハラーウィ人民を裏切った、とアルジェリアの新聞「ラ・パトリエ・ニュース(La Patrie News)が報じた。報道によると、IEビジネススクールはモロッコの政府高官の訓練を引き受けており、多額の利益を得ているという。同ビジネススクールはマドリードにあるヨーロッパ有数の学校で、一方APDモロッコはリーダーシップ養成を目的とする民間団体で、モロッコの名だたる企業がその訓練に参加している。この関係によってサンチェス大統領は、西サハラを裏切ったことで自分は一銭も利益を得ないとしても、彼の一家は莫大な利益を得ることになる。(Canarias-semanal, 2 May 2022)
https://canarias-semanal.org/art/32651/prensa-argelina-la-esposa-de-pedro-sanchez-se-ha-beneficiado-de-un-suculento-trato-a-cambio-de-la-traicion-al-pueblo-saharaui

ベゴニャ・ゴメス夫人の密かな辞任
 6月初旬、サンチェス大統領の妻であるベゴニャ・ゴメス夫人はIEアフリカセンターを密かに辞任した。それはサンチェス大統領が西サハラ問題での態度転換を擁護する発言を行った週だった。分析家でインフルエンサーでもあるアルビセ・ペレス氏(Alvise Pérez)は、サンチェス大統領等に対するペガサスを使った盗聴作戦はムハンマド6世国王自身とその王子、弟が直接に指揮したもので、しかもモロッコの情報局が入手したのではなく、米国国家安全保障局(NSA)が盗聴したものを回してもらったのではないかという。彼は、3月最終週のブリンケン国務長官の訪問や数週間前の検察官たちの訪問の際に、手渡しでこうした情報が国王に渡されたのではないかと疑っている。そうして手に入れたサンチェス大統領夫人のビジネスをネタにモロッコ側はサンチェス大統領を脅迫したのではないかと推測している。(Periodista Digital, 29 June 2022)
https://www.periodistadigital.com/politica/20220629/plena-cumbre-otan-filtran-dimision-begona-gomez-chantaje-mohamed-vi-sanchez-noticia-689404710001/

スペイン政府高官のスマホにスパイウェア
 スペインの暗号研究所(CCN)が昨年春、政府高官のスマートフォンを調べたところ、サンチェス大統領、ロブレス国防相、ラヤ外相らのものがスパイウェアに侵入されていたことがわかった。ただ政府は訴追には持ち込んでいない。しかし、その1年後CCNは大統領と国防相の2人のスマートフォンがスパイウェア・ペガサスに侵されていることを発見した。そして政府は月曜日、訴訟を起こした。2021年5月から6月にかけてサンチェス大統領のスマホからは2.7ギガバイトの情報が盗み取られたという。(セウタに大量に移民が入ってきた時期にあたる。)ロブレス国防相のものからは9メガバイトだけだった。ラヤ外相の場合、昨年春に一度ラムフォン(Lamphone)システムを用いての盗聴が試みられていた。ラムフォン・シムテムとは、ある部屋にぶら下がっている電球(例えばシャンデリアなど)がその部屋で行われている会話が起こす空気振動によって微妙に揺れるのを遠くから感知し、分析し、アルゴリズムによって会話を再構成するという仕組みである。つまり、建物の外から部屋の中の電球を特殊な望遠鏡で見て、そのセンサーに振動を感知させ、コンピューターで分析して会話の内容を把握できるというもの。ラヤ外相に対するこうした盗聴が上手く機能したかどうかは定かでない。ただ2020年8月にもラヤ外相と法相に対してハッキングが試みられた形跡がある。
 スペイン政府はポリサリオ戦線のガーリー書記長がスペインの病院に入院した後、政府高官の携帯電話の検査を開始した。入院の4日後、4月18日、ガーリー書記長を「分離主義者」と呼ぶスペイン語のそれまで知られていなかったメディアが彼の入院をすっぱ抜き、続いてLe 360というモロッコ王室と非常に近いメディアがそれを報じ、Jeune Afriqueというモロッコをいつもほめるフランス語の週刊誌がそれに続いた。おそらくこれらのメディアに情報を提供したのはモロッコの情報局(DGED)だろうが、以前はポリサリオ戦線やアルジェリア高官のスマートフォンが盗聴されたのだろうと考えられていた。しかし今やスペイン高官のスマホが盗聴された可能性も否定できなくなった。
 昨年7月、Forbidden StoriesというNGOがペガサススパイウェアを暴露する発表を行った際、盗聴された可能性のある端末がアルジェリアに6000、フランスに1000あると述べていた。しかし、奇妙なことにスペインにはジャーナリストのもの1個だけしかない、ということだった。(El Conficencial, 3 May 2022)
 それにしても不思議なのは、スペイン政府が、NSO社のペガサスの輸出を規制しないイスラエル政府への抗議も、スペイン高官のスマホにペガサスをしかけたに違いないモロッコに対する抗議も、行っていないという事実である。ペガサスの件でイスラエルに説明を求め、新たな協定を結ぶことにしたフランスのマクロン大統領とは対照的だ。イスラエルは今後同国の企業がスパイウェアを海外で販売する場合、フランスの電話番号を盗聴させないことを約束した。同様の約束は米国、イギリスに対しても行われている。(El Confidencial, 16 May 2022)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-05-03/moncloa-moviles-infectados-gonzalez-laya_3417964/
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-05-16/israel-autorizo-exportacion-ciberarma-pegasus_3424080/

ラヤ元外相、無罪判決
 5月26日(木)、サラゴサ州裁判所はポリサリオ戦線のガーリー書記長を不法に入国させたとして訴追されていたゴンザレス・ラヤ元外相に無罪判決を言い渡した。(El Periodico, 26 May 2022)
https://www.elperiodico.com/es/politica/20220526/audiencia-provincial-zaragoza-cierra-caso-ghali-13715496

国民党党首、モロッコ首相と会談
 保守系国民党(Partido Popular)のアルベルト・ヌーニェス・フェイホー党首は5月31日(火)、オランダで全欧州の国民党系政党会議に参加した際、ロッテルダムでモロッコのアジズ・アハヌーシュ首相と会談を行った。彼は西サハラに対する立場を決めていないというが、サンチェス大統領が行ったような裏取引で決められるような問題ではないという。ただ、「モロッコが心地よく感じる」解決策であることが必要だと考えているという。(Publico, 31 May 2022)
https://www.publico.es/politica/feijoo-prioriza-relacion-marruecos-oculta-postura-sahara.html

【重要】国家情報センター報告書(1):セウタ事件はスペインに圧力をかけるため
(スペインのエル・パイス紙は、昨年のセウタ事件の直後に作成された国家情報センターの2つの秘密報告書を入手した。5月18日の報告書はセウタ事件関連、6月24日の報告書はガーリー氏入院関連のものである。とくに2つめの報告書は、モロッコの情報局が、スペイン政府の西サハラ問題に関する態度を変えさせることを目的として、裁判やメディアを通じた作戦及びそれに関係した人物についての詳細を明らかにしている。政府関係者は報告書が機密事項であることからコメントを控え、また名指しされた関係者もモロッコの情報局との関係をすべて否定している。しかし、この内部報告書が暴露していることはモロッコの情報局がシステマティックに作戦を展開し、スペイン政府に圧力をかけたということ、そしてスペイン政府は昨年5月の時点でそれを知っていた、ということだ。以下、要点のみを記す。)
 スペインの国家情報センター(CNI)が昨年5月のセウタ事件に関するモロッコの戦略についてまとめた報告書を、本紙(エル・パイス)は入手した。セウタ事件とは、アフリカ北海岸にあるスペインの飛び地セウタに1万人近い移民が突然押し寄せた事件で、モロッコの国境警備が意図的に国境の門を開け移民を流し入れたものだと考えられている。報告書は、西サハラ問題でスペインに圧力をかけるのが作戦の目的だったと結論した。セウタ事件後、サンチェス大統領、国防相、外相らのスマートフォンがペガサス・スパイウェアに侵入された。報告書によれば、モロッコはガーリーポリサリオ戦線書記長のスペインでの入院を圧力をかける絶好の機会と捉え、ムハンマド6世国王を含むモロッコのトップ指導部がその戦略に関わった。とくに国王のアドバイザーであるフアード・アリー・エル=ヒンマ氏(2016年と2021年選挙で2位となった伝統近代党の設立者)が戦略の立案者であり、まずは国王が主催する4月のラマダン明けの晩餐会にサンチェス大統領とエル=ヒンマ氏が同席し、外交的対立の解消を画策した。ナセル・ブリタ外相、対外諜報局のヤーシーン・マンスーリー氏、テロ監視局のアブドゥッラティーフ・ハンムーシー氏も同席した。モロッコの戦略は、棚上げされていたスペインでの訴訟を復活させること、スペイン国会で議論を活発化させること、そしてヨーロッパ議会でフランスの議員を通じて議論を盛り上げることだった。これらによる圧力は5月10日まで続き、ガーリー氏がスペインを出国した後、モロッコは戦略を変え、不法移民を使うことにしたのである。ラマダンが終わる頃にかけて、サブ・サハラの移民希望者の間にモロッコの治安当局が北海岸の監視を緩めるという噂を広め、それによって大量の移民の波を生みだした。モロッコ警察は政府から海岸線の警備を緩めるようにとの指示を受け、地域の自治体もタクシー運転手にサブ・サハラからの移民たちをセウタの外にまで乗せて行ってよいとの指示を与えた。そして移民たちのボートがスペイン側海岸に向かって行くのを許し、警察は国境警備から突然いなくなり、1万人もの人びとがセウタに流れ込むことになったのである。(El Pais, 6 June 2022)
https://elpais.com/espana/2022-06-06/el-cni-atribuyo-la-crisis-de-ceuta-al-discurso-agresivo-del-rabat-sobre-el-sahara-occidental.html

【重要】国家情報センターの報告書(2)モロッコ情報局の協力者たち
 6月24日に作成された報告書は、ガーリー氏のスペインでの入院を知ったモロッコが取った戦略が「裁判とメディア」だったことを明らかにしている。裁判ではガーリー氏に対する過去の訴訟を復活させ、新たな訴訟も起こした。それはガーリー氏の自由な移動を難しくするためだった。また、報告書は関係した人物の一覧を付録につけている。「サハラーウィ人権擁護協会(ASADEDH)」はモロッコの情報局(DGED)がその代表のラマダーン・メサウード・ラルビー(Ramdan Mesaud Larbi)を通じて指示を出している団体である。報告書は「カナリアにおけるテロリズムの犠牲者の会(Acavite)」の代表ルシア・ヒメネス(Lucia Jiménez)はポリサリオ戦線を非難するのにモロッコに金銭を請求した、とも書いている。両者ともこれを否定しているが。また、ガーリー氏に対するレイプで告訴していたハディージャトゥ・マフムード・ムハンマド(Jadeyetu Mohamud Mohamed)も2021年に裁判の再開を要請した。いずれも棄却されている。モロッコの情報局は弁護士を雇い、その滞在・支援・マスコミへの情報拡散の費用を出した。ラシャード・アンダルシー(Rachad Andaloussi)はモロッコにルーツをもつスペイン市民だが、バレンシア州選出の国民党議員のフアン・ビセンテ・ペレス(Juan Vicente Pérez)と一緒にガーリー氏に対する裁判の公判でガーリー氏を非難した。実はアンダルシにはスペインの別な裁判所で被告となっている事案があるが、モロッコの情報局が彼の保釈のために必要だった6,000ドルを払っている。報告書は、モロッコ人弁護士でモロッコ弁護士クラブの会長であるムラード・エル=アジューティー(Mourad Elajouti)が2021年5月に起こした訴訟の背後にもモロッコ情報局がいる、と指摘した。裁判所は提出された証拠が受け入れられないとして不受理としている。エラユティは彼の団体は「独立した」団体であり、モロッコの情報当局との関係はないと述べた。極右的な疑似労働組合であるマノス・リンピアスの書記長であり、弁護士で極右政治家であるミゲル・ベルナルド(Miguel Bernard)も、少なくとも2015年からモロッコ情報局の協力者である。ベルナルド氏はモロッコ政府とは一切関係がないとしている。「平和のためのサハラーウィ運動」は元ポリサリオ戦線のハッジュ・アフマド(Hach Ahmed)が設立したものであるが、スペイン国家情報センターはこれをモロッコ情報局の「隠れ蓑」に過ぎないとしている。そのメンバーであるファーデル・ブレイカ(Fadel Breica)はチンドゥーフで拷問されたと訴えている。ただし、彼の唯一の収入源はモロッコ情報局である。ブレイカはモロッコ情報局との関係を否定している。報告書はマラガ在住のペドロ・アルタミラノ(Pedro Altamirano)や弁護士のアントニオ・ウルディアレス(Antonio Urdiales)もモロッコ情報局の協力者であるとしている。いずれもモロッコ情報局との関係を否定している。
 結局、モロッコ政府の裁判とメディアを使った二重戦略は期待された結果を生まなかった。ただ、報告書は、メディアを経由して政府に圧力をかけるため、裁判という手法はこれからも使われるだろう、と予想している。
 大統領府(及び国会関係、民主的記憶の)大臣であるフェリックス・ボラニョス、国防相マルガリタ・ロブレス、内相フェルナンド・グランデ・マルラスカの3人は、報告書の内容へのコメントを避けている。ボラニョス氏とロブレス氏は国家情報センターの報告書は機密事項でありコメントできないと述べ、グランデ・マルラスカ氏はモロッコとの関係は極めて重要な戦略的忠誠、信頼、友愛関係であると述べた。(El Pais, 7 June 2022)
https://elpais.com/espana/2022-06-07/marruecos-alento-una-ofensiva-judicial-y-mediatica-contra-el-lider-del-polisario-segun-el-cni.html

ガーリー氏、CNI報告書を請求
 ガーリーポリサリオ戦線書記長は、スペインの裁判所のサンティアゴ・ペドラス判事に、ガーリー氏を虐めることで西サハラについてスペイン政府に圧力をかけるというモロッコの戦略が書かれているスペイン国家情報センター(CNI)の昨年5月と6月の2つの報告書を入手するよう要請した。ガーリー氏の弁護士によれば、スペイン国籍のサハラーウィであるファデル・ブレイカ氏が起こした訴訟に関連するものである。ブレイカ氏は2019年にチンドゥーフで不当に拘束され拷問されたと訴えている。(Europa Press, 10 June 2022)
https://www.europapress.es/la-rioja/noticia-ghali-pide-an-reclame-informes-cni-reflejarian-plan-marruecos-presionar-espana-20220610181321.html

検察は報告書開示に反対
 スペインの検察は国家情報センター(CNI)が2本の報告書をガーリー氏の求めに応じて開示するのに反対である。あとは裁判所がどう判断するかにかかっている。(La Razon, 22 June 2022)
https://www.larazon.es/espana/20220622/cjyxdtspsjb73ozyw5u5gl3prm.html

裁判所、ガーリー氏の請求を退ける
 スペインの高等裁判所サンティアゴ・ペドラス判事は、ガーリー氏が国家情報センターの2つの報告書の開示を求めた請求を、訴訟事案とは関係がないとして退けた。(Europa Press, 27 June 2022)
https://www.europapress.es/nacional/noticia-juez-rechaza-peticion-ghali-recabar-informes-mostrarian-plan-marruecos-presionar-espana-20220627122913.html

カナリア諸島経由の移民はアルジェリアの3倍
 内務省の統計によると、2022年1月から5月末までの期間、2021年の同期と比較して、カナリア諸島経由(いわゆるモロッコルート)の移民は50%増の8,268人(船181隻)だった。これは「アルジェリアルート」の3倍で、こちらは35%減の2,824人(274隻)。
 3月にスペインがモロッコの西サハラ自治案を支持する考えを伝えた後も、カナリア諸島に到着する移民は増えている。3月は431人、4月は697人、5月は1,644人。警察によると、移民が増える要因はいろいろあるが、一つはカナリア諸島経由が1人2,000ユーロとアルジェリアルートのほぼ半額で済むということがある。(Europa Press, 12 June 2022)
https://www.europapress.es/nacional/noticia-ruta-migratoria-marruecos-sigue-canalizando-triple-llegadas-argelina-pese-giro-sahara-20220612121643.html

スペイン国旗は逆さまだった!
 サンチェス大統領が4月にモロッコ国王を訪問した際、ラマダン明けのディナーに招待されたが、その際大統領の背後に立てられたスペイン国旗が上下逆さまになっていたことが判明し、議会で質問されるなど、話題となっている。会場が宮殿のプライベートな空間だったため事前にスペイン側がレイアウトなどをチェックできなかったらしく、ディナーが終わった後モロッコ側が陳謝したとのことで、単純なミスだったらしい。ただ、軍の論理でいえば、敵旗を逆さまに掲げるというのはその地を「征服した」ことを意味するので、この場合サンチェス大統領がモロッコに屈したことを象徴しているかのようで、皮肉な解釈を生んでしまった。(The Objective, 13 June 2022)
https://theobjective.com/espana/2022-06-13/moncloa-bandera-marruecos/

西サハラ沖合のモンテ・トロピック:レアアースの宝庫
 西サハラのダーフラをまっすぐ西に500km以上いった沖合の海底火山、モンテ・トロピック(Monte Tropic)はテルル(テルリウム)、コバルト、リチウムなど携帯電話、電気自動車、太陽光パネルなどの蓄電池に欠かせないレアアースの宝庫とされる。ここをめぐってスペインとモロッコが権利を争っている。カナリア諸島のエル・ヒエロから250マイル(=402km)南に位置するモンテ・トロピックはスペイン領の大陸棚の外にあり、国際的に認められた排他的経済水域は200海里(=370.4km)なので、現状ではスペイン領に含まれない。そこでスペインは2014年に国連に大陸棚の350海里(648.2km)への延長を申請したが、まだ検討中だ。オーストラリアやアルゼンチンが350海里大陸棚を認められたという事例があるためだ。一方、モロッコは国内法で自国の海域を勝手に延長しており、これは国際法では認められない。(モロッコの主張する)モンテ・トロピックに繋がる大陸棚は西サハラの海岸線をベースラインとして捉えられているため、スペインが西サハラに対するモロッコの主権を認めると、モロッコがモンテ・トロピックに権利を要求する根拠を創りだしかねないという危惧がある、と国際法学者のルイス・コロメ氏は指摘する。上に述べたレアアースは海底1,000mから4,000mの部分に埋蔵されており、ロボットで採掘するより他方法はなく、ロボットはまだ開発中だ。専門家によると、モンテ・トロピックには鉄16,000トン、マンガン11,000トン、レアアースが209トン存在するという。ちなみに1台の電気自動車は1kgのレアアースを必要とする。(The Objective, 13 June 2022)
https://theobjective.com/espana/2022-06-13/espana-marruecos-pugna-monte-tropic/

イグナシオ・センブレロ氏:スペインは何も得ていない
 マグレブに詳しいスペインのジャーナリスト、イグナシオ・センブレロ氏がスペイン政府の外交をほとんど完全敗北だと酷評した。彼によると、マドリードの外交筋はサンチェス政権がマグレブで大失敗をおかしたと見ている。彼らはモロッコに静かな最後通牒を送るべきだと考えている。つまり、セウタ・メリリャの海域を認めさせ、裁判所の決定の有効性を受け入れさせ、チャファリナス諸島(モロッコからも近いスペイン領)に設置した養殖場を撤去させることだ。もし、モロッコがこれらを拒否するのであれば、スペインは西サハラ自治案への支持を取り下げ、アルジェリアとの関係を修復すべきだ。セウタ・メリリャの税関はまだ機能しておらず、モロッコはモンテ・トロピックに届く海域の設定を国内法でしてしまった。(El Confidencial, 14 June 2022)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-06-14/espana-avispero-magrebi-ultimatum-marruecos-cumplir-pactado_3441609/

モロッコ、イグナシオ・センブレロ氏を訴える
 モロッコはイグナシオ・センブレロ氏に対しマドリードの裁判所で訴訟を起こした。モロッコの請求は、センブレロ氏がモロッコが彼に対して行ったとされるペガサスによるスパイ行為の被害者ではないことを、裁判所に宣言してもらうというもの。訴えを起こしたのは4月27日。6月23日、裁判所はセンブレロ氏に72日間の猶予を与えた。その間に法廷で請求者の訴えに答えなければならない。ペガサスに侵入されたスペイン政府高官、ジャーナリストは多いが、センブレロ氏はフォロワーが2万いて、複数の言語で発信しているところから、モロッコが影響が大きいとみたことが背景にありそうだ。(El Independiente, 4 July 2022)
https://www.elindependiente.com/espana/2022/07/04/marruecos-demanda-al-periodista-ignacio-cembrero-por-apuntar-al-espionaje-con-pegasus/

EU、スペイン経由でモロッコの国境監視強化支援
 スペインの開発庁である「行政と公共政策のための国際及びイベロ・アメリカ基金」は、485万ユーロのEUの資金を得てモロッコに国境監視用カメラ98台を提供することになった。契約を受注したのは防衛装備会社エテル88(Etel 88)。カメラは射程の長い赤外線カメラで、国境を不法に越えようとする人を探知することができる。(Africa Intelligence, 14 June 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2022/06/14/surveillance-des-frontieres–bruxelles-equipe-le-royaume-via-madrid,109791335-art

カナリア諸島裁判所、サハラーウィを拒否
 ブラーヒーム(25才)とムハンマド(27才)(いずれも仮名)の2人の若いサハラーウィはチンドゥーフの難民キャンプの状況に耐えられず、スペインへの移住を決意し、モーリタニアのヌアクショットから飛行機に乗ってグランカナリアに到着した。彼らがもっていたパスポートはサハラ・アラブ民主共和国発行のもの。スペインは認めていない。グランカナリアの入管は彼らの入国を拒否し、難民申請も拒否(可能な申請枠は政治亡命、補助的保護、人道的理由のみ)。強制送還を待つ身となった。ブラーヒームは5月8日から24日、ムハンマドは5月31日から6月14日まで空港に留め置かれたが、彼らの弁護士(彼もサハラーウィ)が最終的手段として無国籍者として難民事務所に申し出た。なぜかというと、無国籍の場合、最終決定が出るまで送還できなくなるからだ。弁護士もまた同様の境遇を経てきていた。難民キャンプに生まれ、平和の休暇プログラムでスペインに滞在し、法律の壁との闘いがどのようなものか知っていた。8才から23年間スペインに暮らし、大学を出たあと弁護士として仕事をしてきたにも関わらず、スペインは彼に国籍を与えず、この1月13日にやっと法的闘争で国籍を勝ち得たのだ。ブラーヒームとムハンマドに無国籍が認められるかどうかはまだわからない。ただ、少なくとも当座、彼らは自由にスペインの中を移動し、マドリードやカナリア諸島の親戚を訪ねることができるようになった。(El Diario, 17 June 2022)
https://www.eldiario.es/canariasahora/tribunales/jueces-canarias-abren-grieta-rechazo-saharauis-aeropuertos-nacionales_1_9093532.html

モロッコ情報局長、スペインを訪問
 モロッコのアブドゥッラティーフ・ハンムーシー情報局長が6月16日と17日、ワシントンでFBI、CIA関係者と会談した後マドリードに寄り、スペイン国家情報センター長エスペランサ・カステレイロ氏と会談した。モロッコによるペガサス使用について説明を行ったのではないかと考えられる。(El Confidencial, 21 June 2022)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-06-21/hammouchi-artifice-espionaje-marroqui-pegasus-acudio-cni-dar-explicaciones_3446925/

モロッコのスイカは値段が半分
 スペインで消費されるスイカの3個に2個はモロッコ産かセネガル産だ。スペイン最大の市場メルカマドリードによれば、6月1日から種ありスイカはキロ当たり0.66ユーロ、種なしスイカは1.29ユーロになっている。昨年同月では種ありが0.41ユーロ、種なしが0.54ユーロだったから、それぞれ60%、139%の価格上昇だ。メルカマドリードに到着するスイカの3分の2はモロッコ産で、EUがスイカを非関税としクオータを廃止して以来、スペイン市場を席巻している。セネガル産は若干品質が劣り、コンテナの50%が売れなくても、利益は出る。ただ、セネガル産はみかけはいいが2日もすると質が落ちる、といわれる。(La Información, 21 June 2022)
https://www.lainformacion.com/economia-negocios-y-finanzas/sandiazo-marroqui-guerra-perdido-espana-ademas-paga-cara-sandia-marruecos/2869135/

【重要】400人の移民がメリリャに押し寄せる
 6月24日(金)、400人を超えるサブ・サハラからの移民がスペインの飛び地メリリャのフェンスを襲撃した。完璧に組織化され、暴力的な集団がチャイナタウンの国境管理事務所のドアを突き破った。(Swissinfo/AFP, 24 June 2022)
 しかし、サンチェス大統領はモロッコもまた移民の圧力に苦しんでいると述べ、スペインとモロッコの警察の両方をほめ讃えた。実際、モロッコ警察は2000人の移民を押しとどめ、フェンスを越えることができたのは130人に留まった。その過程で49人の警察官と50人の移民が負傷し、5人の移民が死亡した。モロッコ当局によると、逮捕された多くの移民はスーダン人だったという。(20minutos, 24 June 2022)
 その後、モロッコ当局は死者は18人になったと発表。(Swissinfo, 24 June 2022)
 別な報道は、モロッコ側が23人死亡したと発表したと伝え、また死者は少なくとも37人になったというNGOの数字も挙げている。モロッコ警察は、死者の多くはフェンスの手前の土手が崩れて群衆の下敷きになって窒息死したものと述べている。モロッコ警察は国境のフェンスを乗り越えて移民を追いかけ、捕まえて連れ戻した。この点、法的な問題があると専門家は指摘する。(Publico, 25 June 2022)
https://www.swissinfo.ch/spa/m%C3%A1s-de-400-migrantes-intentan-entrar-en-el-enclave-espa%C3%B1ol-de-melilla-desde-marruecos/47700140
https://www.20minutos.es/noticia/5021018/0/el-gobierno-minimiza-el-primer-salto-masivo-a-la-valla-tras-el-cambio-de-posicion-en-el-sahara-marruecos-tambien-sufre-presion-migratoria/
https://www.swissinfo.ch/spa/afp/mueren-18-migrantes-en-masivo-intento-de-entrar-al-enclave-espa%C3%B1ol-de-melilla/47700526
https://www.publico.es/sociedad/agentes-marroquies-cruzaron-valla-melilla-golpearon-migrantes-suelo-espanol-devolverlos-caliente.html

スペイン、モロッコに天然ガス供給開始
 6月28日(火)、スペインはモロッコへの天然ガス供給を開始した。スペイン政府によると、送られたガスは事前にモロッコが国際市場で購入し、スペインで再ガス化したものだ。(Algere 24h, 29 June 2022)
https://www.24hdz.com/lespagne-acheminer-gaz-maroc/

【アルジェリア】
米、アルジェリアにロシア航空機禁止を要請
 米国はアフリカの数カ国にロシア航空機の飛行禁止を要請した。ターゲットはロシアの軍事会社ワグナーが対テロ戦で飛ばしている飛行機だ。チャドとニジェールを説得し、次はアルジェリアとギニアだ。しかし、アルジェリアは米国の要請に答えず、ロシア航空機に飛行許可を与え続けており、ECOWAS(エコワス:西アフリカ経済共同体)メンバー国の不満を買っている。さらにアルジェリアはモロッコ国境でのロシア軍との合同演習を発表し、軍高官が相互に訪問し合っている。(Africa Intelligence, 3 May 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-ouest-et-centrale_diplomatie/2022/05/03/la-guerre-secrete-de-washington-contre-les-avions-de-wagner,109781384-eve

アルジェリア・イタリア間防衛協力強化
 最近、アルジェリアとイタリアが急速に接近している。理由はアルジェリアからモロッコ経由でスペインに通じていた天然ガスパイプラインをアルジェリアが止めたことで、ヨーロッパへの天然ガス供給路としてイタリア経由への依存が深まったからだ。加えて、アルジェリアから船で来るサルディニア島への不法移民が絶えないため、アルジェリアと連携して国境管理を強化する必要がある。ただ、協力はそれに留まらず、アルジェリアのセティフ(Sétif)にある空港でヘリコプターを組み立てるという国防省下の事業にも及んでいる。ヘリコプターは警察、憲兵隊、そして国防軍で使うためのものだ。(Africa Intelligence, 9 May 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2022/05/09/la-securite-discret-volet-du-rapprochement-entre-rome-et-alger,109783134-art

【イスラエル】
イスラエル、アフリカ進出をパリで宣伝
 5月31日、在パリイスラエル大使館とアメリカユダヤ人委員会はイスラエル政府のアフリカ政策に関する大きな会議をパリで開催する計画だ。欧州大陸に展開するイスラエル企業を引きつけたい考えだ。会議のタイトルは「イスラエル、アフリカに復帰か?(Israel, de retour en Afrique?)」というもの。ゲストにはパリ16区のフランシス・スピネール区長(Francis Szpiner)、赤道ギニアの弁護士でアフリカ諸国首脳の弁護士を務めてきたテオドロ・オビアン・ングエマ氏(Teodoro Obiang Nguema)、ジブチのイスマイル・オマル・ゲレ氏(Ismail Omar Guelleh)、サルコジ大統領時代の外務副大臣で現在米国のシンクタンク大西洋評議会アフリカセンター所長のラマ・ヤド氏(Rama Yade)が並び、セネガルやマリからの参加がある。会議はアフリカ連合がイスラエルの連合への参加をめぐって分裂をきたしている時期に行われる。アフリカ連合は、イスラエル寄りのカメルーン、ルワンダ、コンゴ民主共和国(DRC)、それに反対する南ア、アルジェリア、ナイジェリアなどが対立している。ネタニヤフ時代、スーダン、モロッコ、チャドがイスラエルと関係を正常化した。イスラエルとの関係をもたない国々としては、アルジェリア、チュニジア、マリ、ニジェール、ジブチ、コモロ連合がある。(Africa Intelligence, 11 May 2022)
https://www.africaintelligence.fr/le-continent/2022/05/11/israel-choisit-paris-pour-promouvoir-son-retour-en-afrique,109783259-eve

モロッコに浸透するイスラエル
 マラケシュに向かう電車の中で4人のモロッコ人女性がイスラエルについて語った。「(ユダヤ人は)人種差別で優越意識にかたまったフランス人よりはるかにいい」、「イスラエルは私たちをいつも弁護してくれた。国王はアラファトにすべてをあげたけど、アラファトは西サハラ問題でアルジェリアの味方について私たちを裏切った」など。イスラエルはシリアで手に入れた戦車をモロッコに売り、西サハラに砂の壁を作る手伝いもした。そうした密かな関係も今や公然たるものになっている。イスラエルの衛星放送i24はカサブランカとラバトに事務所を構えた。5月30日に大々的なお披露目イベントがラバトの中世の要塞の遺跡であるサラ・コロニア(Chellah)で開かれたが、そこには巨大なダヴィデの星の旗が掲げられ、占領地ゴラン高原産のワインが豪華なディナーに添えられた。週10便の定期便が開設され、イスラエルからの観光客も押し寄せている。モロッコは今年20万人がイスラエルから来ることを期待している。イスラエルには70万人のモロッコにルーツをもつユダヤ人がいる。彼らは単に遊びに来るだけでなく、600人のユダヤの聖人を祀った聖地を訪れたり、家族のルーツを再発見したりするだろう。ビジネスミッションも目白押しだ。公式には通商関係は年間1億3100万ドルと控えめだが、これには武器、サービス、デジタル・サイバー市場、第三国とのジョイントベンチャーは含まれていない。スペインに太陽・風力エネルギーを送るスペインの企業連合とのジョイントベンチャーは12億ドルの投資額になる。また、イスラエル企業はカサブランカでの海水の淡水化事業を含む大きな水関係事業に応札している。さらには漁業、大麻の栽培、ガスにも関心を抱いている。モロッコはつい先頃、イスラエルのスタートアップ企業のための3日間のイベントを開催した。中には天候・土壌に応じて灌漑を調整する会社スプラント社も含まれている。あるイスラエルの外交官は「とにかく関心が高い。クレージーなほどに」と語った。
 軍事関係の取引は他を圧倒している。最近成立した5つの取引は、それぞれ数億ドルに及ぶ。モロッコの政府関係者は、イスラエルのデジタル技術は西サハラをめぐるアルジェリアとの闘いでモロッコに優位性を与えると言う。イスラエル・アエロスペース工業はモロッコに2つの工場を建設する予定で、そこではドローンを作る。ミサイル防衛システムだって作るかも知れない。昨年イスラエルの国防相がモロッコを訪問した際、アルジェリアは「国境近くにモサドがやってきた」と警戒感を隠さなかった。しかし、モロッコはイスラエルと全面的に政治的関係を取り結ぼうとは思っていないだろう。テルアビブにまだモロッコ大使館は開かれず、イスラエルのモロッコ大使もまだ認証されていない。問題は西サハラだ。バイデン政権はトランプが認めたモロッコの主権承認から一歩後ろに引き下がっており、イスラエルも西サハラにおけるモロッコの主権承認を行っていない。(The Economicst, 2 June 2022)
https://www.economist.com/middle-east-and-africa/2022/06/02/israeli-firms-and-tourists-are-piling-into-morocco

【重要】イスラエル、モロッコの西サハラに対する主権を承認
 イスラエルのアイェレット・シャケッド内相は、モロッコの首都ラバトでナセル・ブリタ外相と会談した後、イスラエルは西サハラに対するモロッコの主権を承認すると報道陣向けの声明で述べた。また、シャケッド内相はブリタ外相が近々イスラエルを訪問するとき、両国の連絡事務所を大使館に格上げするだろうとも述べた。パレスチナ問題についても議論されたが、両国の立場の溝は埋まらなかったという。(Infobae, 21 June 2022)
https://www.infobae.com/america/agencias/2022/06/21/israel-apoya-por-primera-vez-la-soberania-de-marruecos-en-sahara-occidental/

【ドイツ】
ドイツも自治案承認に向かうか
 ドイツ左翼党党首で外交委員会に所属するSevim Dagdelen氏の質問に対する政府の回答からすると、ドイツ政府もまた西サハラの自決権を犠牲にし、モロッコの自治案を事実上承認する方向に向かっている。外務省は年末に突然モロッコに関する基本情報を変更し、自治案を「西サハラ問題における前進に向けた重要な貢献」と記述した。また、ドイツ貿易・投資新興機関(GTAI)のホームページでは、対外貿易・国内マーケッティング協会がダーフラの新港を「モロッコの南部諸州の開発に向けた威信を賭けたプロジェクト」と形容している。ベアボック外相は「西サハラの国際法における最終的地位は明らかになっていない」と回答した。連邦政府は西サハラが「水素生産を含む再生可能エネルギーにとくに高い潜在力を有する」ことを認めている。どうやら、ドイツはグリーンな水素エネルギーのために国際法の原則とサハラーウィの自決権を安く売り払うつもりのようだ。(nd: Journalismus von Links, 1 June 2022)
https://www.nd-aktuell.de/artikel/1164222.westsahara-voelkerrechtsprinzipien-gegen-energie.html

ドイツ政府の解釈「西サハラは国連憲章の非自治地域ではない」
 ドイツ連邦政府は左翼党からの質問に、6月3日、書面で回答した。回答は「国際法における西サハラの地位は明らかではない」、「西サハラは国連憲章の第73条にいう非自治地域(大文字)ではない」、「国際法によって認められた施政国の実行支配下にない」、「西サハラに関する非自治地域(小文字)とモロッコの領土は別な国際法のルールに属するもので、したがって別々に考慮される」などとなっている。(Bundestag, Auswartiges/Antwort – 03.06.2022 hib (283/2022))
https://www.bundestag.de/presse/hib/kurzmeldungen-897846

【フランス】
ビザ戦争?モロッコへのビザ制限か?
 このところ、フランスはモロッコ人のビザを制限しているように思われる。数日前、モロッコリン鉱石公社の派遣団のメンバーがフランスのビザを申請したが拒否された。3週間前にはモロッコ国会議長のアドバイザーの一人もだ。彼はモロッコでいえば3番目に地位の高い人物である。モロッコ寄りだったフィガロ紙も「モロッコは伝統的な同盟国から明らかに離反し、新たな支援国を探している」と非難がましい。そしてモロッコは「同盟国すべてが米国の後を追うと想像しているのだ」と皮肉る。西サハラ問題で米国がモロッコの主権を承認したことを指している。フランスを怒らせたのは他でもない。西サハラ問題でムハンマド6世が、同盟国に対し西サハラ問題でより大胆な態度を取るよう要求したことだ。フランスがモロッコに圧力をかけているとすれば、モロッコの方はいたって冷静だ。モロッコにとってフランスは第一級の同盟国だが、「返礼の仕方を知らない国に贈り物をすることはもはやしない」と、あるモロッコの外交官はつぶやいた。フランスの元モロッコ大使は「君主国では時は世代をこえて計算される。選挙で与えられた委任の期間ではない。フランスはそのことをよく理解していないようだ」と述べている。(Mondafrique, 14 June 2022)
https://mondafrique.com/la-guerre-des-visas-entre-paris-et-rabat/

農民連合、西サハラの農産品輸入を拒否
 フランスで3番目に大きい農民組合であるフランス農民連合は、政府に対し、西サハラで生産された果物や野菜、とくにメロンやミニトマトの輸入を禁止するよう要請した。フランスの司法は西サハラ産農産品の輸入について判断を示していない。2020年10月以降、政府は6月9日にこの問題に関する手続きを停止している。2013年、農民連合は、西サハラで果物と野菜を生産しているフランスのイディル社(Idyl)を相手取って裁判を起こした。農民連合の行動は2021年9月のEU裁判所の裁定を受けてのもので、フランス政府はEU加盟国が輸入禁止措置、とくに本来の原産地が表示されていない食品の輸入禁止ができるかどうか、また西サハラ産品の地位はいかなるものかを見極めようとしている。政府は控訴審の判断が出るまでEUモロッコ協定は有効だとの立場をとっている。(Africa Intelligence, 17 June 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_business/2022/06/17/la-confederation-paysanne-francaise-veut-interdire-l-importation-de-produits-agricoles-sahraouis,109792791-art

【米国】
クリストファー・ロス氏の質問にブリンケン国務長官答えず
 6月4日、米国の外交評議会がブリンケン国務長官とのライブストリームのセッションを開いた際、元MINURSO代表(2009-2017)のクリストファー・ロス氏が西サハラについて「北アフリカに関して、米国が西サハラ問題で長年中立を保ってきたのは米国に利益にかなっていた。なぜトランプの(モロッコへの)傾斜を無効にしないのか」と質問したが、時間切れでブリンケン長官は答えなかった、という一幕があった。ロス氏自身がネットに流している。

合同軍事訓練「アフリカのライオン」開始
 6月6日(月)、米軍とモロッコ、ガーナ、セネガル、チュニジアのアフリカ4ヶ国の合同軍事訓練「アフリカのライオン」が始まった。米軍側には、ブラジル、チャド、フランス、オランダ、スペインの兵士も加わっている。陸海空軍から7,500人が参加し、7月1日まで行われる。国際的なテロ組織に対抗する連携強化が目的だ。訓練の一部は、6月20日(月)、アルジェリアとモロッコの国境線に近い西サハラ領内でも行われることになっている。(Agence Ecofin, 13 June 2022)
https://www.agenceecofin.com/actualites/1306-98637-l-armee-americaine-entame-un-exercice-militaire-conjoint-de-grande-envergure-en-afrique

【国連】
非植民地化特別委員会公聴会開催される
 6月13日(月)、ニューヨークの国連本部で非自治地域についての陳述を聞く非植民地化特別委員会が開催された。西サハラについては、モロッコ側に立って陳述を行ったのが、モロッコ政府系の西サハラ内の諸団体、チンドゥーフ難民キャンプでのポリサリオ戦線による「人権侵害」を訴える諸団体、自治案を支持するグレナダ、シエラレオネ、グアテマラ、ドミニカ共和国、セネガル、ヨルダン、ブルキナファソ、イエメンだった。一方、サハラーウィの自決権を支持する立場で陳述を行ったのが、サハラーウィの人権団体(Codesa)、国際NGO、米国の団体「平和のための帰還兵」で西サハラに行っていたアドリエンヌ・キネ氏、ベネズエラ、ニカラグア、東ティモール、イラン、ボツワナ、南アフリカ、ナミビア、アルジェリア、ジンバブエだった。(UN Press Release, GA/COL/3358, 13 june 2022)
https://press.un.org/en/2022/gacol3358rev1.doc.htm

以上。