TICAD8についての日本政府への要望
サハラ・アラブ民主共和国代表の招待を!
ビジネスと人権に関する指導原則を議題に!

この賛同募集は710日をもって締め切らせていただきました。2団体・67個人よりご賛同いただきました。賛同していただいた方、また賛同集めにご協力いただいたみなさまに感謝申し上げます。要望書は7月20日に外務省の担当者に直接届けることができました。(西サハラ友の会)

 

 

 

TICAD8についての日本政府への要望書

2022年7月20日

日本政府はTICAD8にサハラ・アラブ民主共和国の代表を招待して下さい。
そして、ビジネスと人権に関する指導原則を議題として下さい。

 


総理大臣 岸田文雄 殿
外務大臣 林 芳正 殿

今年8月27・28日、日本政府がリードし、国際連合、国際連合開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)が共催する第8回アフリカ開発東京会議(TICAD8)のチュニジアでの開催が予定されています。
私たちは、アフリカの開発とビジネスの促進を目的として開催されるこの重要な会議に、サハラ・アラブ民主共和国(西サハラ)が招待されることを要望します。日本はサハラ・アラブ民主共和国(RASD)を承認していませんが、日本は西サハラにおける経済活動に深く関与しており、アフリカ連合(AU)設立以来の加盟国である同国の代表団を、開発とビジネス促進を議論する会議から排除する理由はないと考えるからです。
また、私たちはビジネスの促進を目的として掲げるTICADが、「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、ビジネスと人権を主要な議題のひとつとすることを望みます。

日本と西サハラの経済関係
1975年以来モロッコの占領下にある西サハラでは、モロッコの政府・企業及び外国企業が開発やビジネスを行っています。西サハラをモロッコ領と認めていない日本は、財務省貿易統計において西サハラ(国名符号503)とモロッコ(国名符号501)を区別しています。モロッコが関税上の優遇措置である一般特恵関税(GSP)の適用国である一方、西サハラは対象国となっていません。
日本はモロッコ国営リン鉱石公社(OCP)が西サハラで不法に採掘しているリン鉱石を輸入しています。2019年に10,300トン、2020年に6,600トンを輸入しました。西サハラ産リン鉱石の貿易は倫理的に問題であるとして海外企業が撤退する中、日本は今なお輸入を続けている6ヶ国の一つです。
また、日本は西サハラ産のタコを「モロッコ産」として大量に輸入しています。モロッコからのタコ輸入はタコ全輸入量の約31%(2020年)を占めています。しかし実際には「モロッコ産」のタコは西サハラ産に他なりません。なぜなら、タコはモロッコの沿岸では獲れず、もっぱら西サハラ以南の沿岸でしか獲れないからです。しかも西サハラでタコ漁に従事しているのはモロッコの漁業会社とモロッコからの移住者です。西サハラの港に水揚げされたタコは「モロッコ産」と書かれた箱に詰められ、トラックでモロッコへ運ばれ、そこから輸出されているのです。原産地を偽って輸出されたタコを日本は輸入していることになります。
次に、日本のマグロ延縄漁船は、モロッコ日本漁業協定(1985年)に基づく両国政府の漁業協議での合意を経て、モロッコの沿岸でマグロ漁を行っています。2019年には15隻の日本漁船が操業を許可され、モロッコ政府に払うライセンス料は29,500ディルハム(約57万円)/隻/年、入漁料は2,000米ドル/隻/年でした。2020年も同じ内容が合意されています。問題はモロッコの沿岸といいながら、実態としてそれに西サハラの水域が含まれていることです。2020年10月12日、ポリサリオ戦線は3隻の日本漁船が西サハラの排他的経済水域で操業していることを漁船名とともに明らかにしました。日本は西サハラをモロッコとは認めていません。また、モロッコ日本漁業協定は国際法の遵守を謳っており、国連海洋法条約(UNCLOS)の付属の決議IIIは、西サハラのような非自治地域の人民の利益は尊重されなければならず、そのためには関係者の協議が必要だと述べています。日本政府はこうした西サハラ水域の問題性を理解しつつ、これを放置してきました。
さらに、日本企業はモロッコ政府が進める再生可能エネルギー事業(風力発電)にも参加しています。そこで生産される電力はモロッコが進める不法な天然資源採掘に使われます。
以上のことから、日本が西サハラにおける経済活動と深い関係を有していることは明らかです。EU裁判所のいくつかの判決が示したように、天然資源に対する恒久的主権の原則に照らし、西サハラでの資源開発は西サハラ人民のためでなければならず、西サハラ人民を代表する組織の承認がなければなりません。したがって、西サハラをTICADから排除する理由はなく、むしろ西サハラをそのステークホルダーとして認めるのが正しいと言えます。

ビジネスと人権
TICADはその目的にビジネスの促進を掲げています。TICADは国連及び国連諸機関を共催にして開催されており、したがって国連が推進する「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011年)が国際原則として尊重されることは当然と言えます。日本政府も、ビジネスと人権をESG(環境・社会・ガバナンス)投資の中で重要な取組と位置づけており、SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献の観点からも重要であることを認識しています。そのため、2020年には関係府省庁連絡会議が「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)を策定しました。行動計画によれば、日本政府はこれまで、人権を尊重する企業の責任を促すため、国内外のサプライチェーンにおける取組及び「指導原則」に基づく人権デュー・ディリジェンスの促進に取り組んでいます。私たちは、特にアフリカとのビジネス促進を掲げるTICADにおいて、この行動計画に掲げられた原則が十分に議論され、取組がさらに強化されることを望みます。

アフリカ連合の原則の尊重
2020年3月にブリュッセルで行われたEUアフリカ連合サミットでは、EUのどの国もサハラ・アラブ民主共和国を国家として承認していないにもかかわらず、ガーリー大統領を始めとする同共和国の代表団は会議に招かれました。それはアフリカ連合がそれとして会議に出る場合にはすべてのメンバー国が招待されることを原則としているからです。EUはアフリカ連合の原則を尊重し、西サハラを排除しませんでした。日本政府は「誰一人取り残さない」という精神を掲げ、SDGsを積極的に推進する立場をとっています。しかしTICADにおいては、西サハラを排除し続けています。EUにできることが、なぜ日本にはできないのでしょうか。西サハラ代表団のTICAD参加については、過去、何度も問題となってきました。アフリカ連合もそのメンバー国である55ヶ国が揃って参加できることを要求してきました。日本政府は今こそパートナーであるアフリカ連合の原則を尊重する姿勢を明確に示すべきです。

(終)