西サハラ友の会通信 No. 23
前回の3月4日から1月半が経ってしまいました。今回の重要ニュースは、スペイン・サンチェス政権がモロッコの西サハラ自治案を支持すると発表したことです。この突然の方針転換はモロッコの言い分を認めたも同然で、内外から批判が沸きおこりました。アルジェリアによる報復措置で、スペイン・アルジェリア関係は危機的な状況です。
ブージュドゥールの女性活動家スルターナ・ハイヤさんに対する酷い弾圧は続いています。ロシアのウクライナ侵攻はアフリカ諸国にさまざまな影を落としています。ニュージーランド労組のリン鉱石輸入反対のアクションは注目すべきものでしょう。
No. 23 目次
【活動】
・国連安保理への要請文に賛同
・非植民地化特別委員会への要請文に賛同
【メディア】
・デモクラシー・ナウ!:米平和運動家がスルターナ・ハイヤさんに面会
・新ドキュメンタリー2本、ロンドンで6月公開
【西サハラ/占領地】
・アミナートゥ・ハイダーさんの携帯、ペガサスの標的に
・ブージュドゥールの女性活動家、襲撃される
・西サハラ南部の鉱物資源探索の入札終了
【西サハラ/解放区】
・サハラーウィ人民解放軍の攻撃続く
【[重要]スペインの自治案支持とその波紋】
・スペイン、モロッコの自治案支持へ方針転換
・イスラエル外相が、スペインを支持
・ポリサリオ戦線、スペイン政府を批判
・第二副首相、サンチェス首相を「憲法違反」
・スペイン国会でも反対の声
・マドリードで大規模デモ
・アルジェリアはスペインに報復措置
・アルバレス外相、ボレルEU外務・安全保障政策上級代表に仲介を要請
・スペイン・アルジェリア関係の悪化
・カルロス・ミゲル教授の批判
・国連事務総長特使の反応は?
【モロッコ】
・なぜモロッコはロシア非難決議を棄権したか
・イスラエルのビジネス派遣団に王室は距離
【国際】
・西サハラに眠る鉱物資源(古い記事)
・ニュージーランド労組、西サハラのリン鉱石輸入に抗議
・英アラブ紙、シャーマン米国務副長官のモロッコ訪問を批判
・MINURSO代表のスキャンダル
・アルジェリアと中国、西サハラ等で共同コミュニケ
・アルジェリア大統領、イタリアを5月に訪問
・ロシアの肥料会社、大幅後退
・ブリンケン国務長官、アルジェリアを訪問
・チュニジアの報道:モロッコは米国に不満?
・安保理、西サハラを非公開で討議
・米国務省人権報告書2021年版「モロッコ」
【活動】
国連安保理への要請文に賛同
「西サハラ独立のためのニューヨーク・グループ」という国連を主たる対象として活動を行うNGOのネットワーク組織が4月13日、国連安保理でMINURSOが議論される(4月20日)のに先立ち、住民投票の実施というMINURSOの目的が完遂されるよう要請する手紙を安保理に送った。手紙は308団体が名を連ねている。西サハラ友の会もその内の一つ。(Sahara Press Service, 16 Apr. 2022)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/04/16/39269.html
非植民地化特別委員会への要請文に賛同
「西サハラ独立のためのニューヨーク・グループ」は4月21日、国連事務総長の西サハラに関する最新の報告書がリリースされたことに鑑み、西サハラの人権や人道的状況を考慮し、現地への新たな派遣団を検討するよう申し入れる手紙を非植民地化特別委員会宛に送った。賛同した308団体に西サハラ友の会も含まれている。(オリジナル資料、21 Apr. 2022)
【メディア】
デモクラシー・ナウ!:米平和運動家がスルターナ・ハイヤさんに面会
3月21日(月)、エイミー・グッドマン主宰のインターネットニュースメディア「デモクラシー・ナウ!」が、西サハラのブージュドゥールで自宅軟禁状態に置かれている人権活動家スルターナ・ハイヤさん宅を訪問し、インタビューすることに成功した米国の平和運動家エイドリエン・キネ氏(Adrienne Kinne)の録画映像に、西サハラ専門家のスティーブン・ズネス教授のインタビューを加えた番組を放送した。キネ氏は元米陸軍兵士で「平和のための帰還兵(Veterans for Peace」の代表。以下で見ることができる。(Democracy Now!, 21 Mar. 2022)
https://www.democracynow.org/2022/3/21/sahrawi_activist_sultana_khaya_house_arrest
新ドキュメンタリー2本、ロンドンで6月公開
2005年からイギリスで活動を始めたサンドブラスト・アーツ(Sandblast Arts)という西サハラの人びとの声を世界に届けるための芸術人権グループが、サハラーウィの闘いを描いたドキュメンタリー2本を6月6日、ロンドンで初上映する。一つは「Sandtracks(砂漠の轍)」で22分、監督はカロリナ・グレイテロル(Carolina Graterol)、もう一つは「You can’t get there from here(ここからは行けないところ)」で90分、制作者はダニエル・ペトコフ(Daniel Petkoff)とピーター・シールズ(Peter Schields)。サンドブラスト・アートのホームページは次の通り。
http://www.sandblast-arts.org
【西サハラ/占領地】
アミナートゥ・ハイダーさんの携帯、ペガサスの標的に
アムネスティ・インターナショナルは3月、西サハラの人権活動家アミナートゥ・ハイダーさんのスマホがスパイウェアであるペガサスの標的となり感染させられていたと発表した。アップルから国家と関係する者によって攻撃されているとの警告を得たアミナートゥさんがライト・ライブリーフッド財団に連絡を取ると、財団はアムネスティのセキュリティ・ラボを紹介した。セキュリティ・ラボは彼女のスマホがペガサスに攻撃されていることを確認した。攻撃の痕跡は古いものだと2018年9月に遡るが、最近では2021年10月、11月のものがあった。(Amnesty International, March 2022)
https://www.amnesty.org/en/latest/news/2022/03/morocco-western-sahara-activist-nso-pegasus/
ブージュドゥールの女性活動家、襲撃される
ブージュドゥールのスルターナ・ハイヤさんはすでに知られた活動家で2020年11月から事実上の自宅軟禁状態に置かれ、繰り返し警察から性的暴行を受けていると訴えている。昨年12月には得体の知れない物質を注射されたという。
4月17日(日)には、スルターナ・ハイヤさんの解放を求めて活動していたムバーラカ・ムハンマド・アル=ハーフィズさんとファティーマ・ムハンマド・アル=ハーフィズさん姉妹が襲撃され、頭・顔・手足が膨れあがるほど激しく殴打された。ファティーマさんは家を出たあと2人の覆面の男に尾行され、突然灰色のベンツが目の前に現れた。車から3人の男が飛び出してきて、後ろの2人と一緒になって彼女を血が出るまで殴ったという。3月16日には米国の活動家がブージュドゥールに行き、世界がスルターナ・ハイヤさんに注目していることを示した。アル=ハーフィズ姉妹は米国の活動家が来て初めてスルターナ・ハイヤさんに会えたというが、今度は彼女たちが攻撃され始めたのである。17日、ムバーラカさんがスルターナ・ハイヤさん宅を訪ねようと家を出たら、そこにベンツが待っていて、そこから出てきた6人の男に襲撃された。彼らは「今度ハイヤに会おうとしたら殺す」と脅した。そして彼女を家の中に押し戻した。以来、家を出ようとすると殴られる。警察は彼女たちの夫にも圧力をかけており、彼女たちの活動をやめさせるか離婚しなければ給料をカットすると脅した。ファティーマさんの夫は妻を擁護しているが、ムバーラカさんの夫は離婚を決めた。(Middle East Eye, 21 Apr. 2022)
https://www.middleeasteye.net/news/western-sahara-female-activists-morocco-rape-divorce-house-arrest?utm_source=Twitter&utm_medium=Social&utm_campaign&utm_content=ap_jxxjy56i9m
西サハラ南部の鉱物資源探索の入札終了
モロッコの国営会社である炭化水素鉱物局(ONHYM)はブージュドゥールの東南区域で石油探査を目的とした掘削事業の入札を締め切った。事業は深さ3m、幅1m、長さ1.3kmの溝を掘り、4,000立方メートルの土壌を採るというもの。規模の小さい同様の掘削事業は昨年にも入札があり、モロッコ企業が落札した(2,400立方メートル)。ONHYMはカナダのMetalex社との合弁企業であり、西サハラの同様の地区で石油探索を行っている。ただ、今回の入札の地区がそこかどうかは確認できていない。国連法務局は2002年に西サハラでの鉱物資源採掘はサハラーウィ人民の承諾なくしては国際法違反だとの見解を述べており、2016年以降、EU裁判所も5つの判決を通じてEUモロッコ間の協定は西サハラを含まないとの判断を示している。(Western Sahara Resource Watch, 21 Apr. 2022)
https://wsrw.org/en/news/occupier-concluded-tender-for-entrenching-occupation
【西サハラ/解放区】
サハラーウィ人民解放軍の攻撃続く
サハラーウィ人民解放軍(SPLA)は、3月12日(土)、13日(日)、14日(月)、15日(火)、19日(土)、20日(日)、22日(火)、25日(金)、26日(土)、27日(日)、28日(月)、29日(火)、さらに4月に入って4月4日(日)、5日(火)、6日(水)、8日(金)、12日(火)、15日(金)、16日(土)、18日(月)、20日(水)、24日(日)にモロッコ軍の陣地に攻撃を行ったと発表した。そのうちのいくつかでは人的被害も出したと主張している。モロッコ側からの反応はない。(Sahara Press Service, March-April 2022)
【[重要]スペインの自治案支持とその波紋】
スペイン、モロッコの自治案支持へ方針転換
スペイン政府は、西サハラ問題に関してモロッコとの「新しい段階」に入るという表現で方針転換を行った。3月18日(金)遅くの記者会見で、スペインのアルバレス外相はモロッコの西サハラに対する自治案を「最も真剣で、現実的で、見込みのある基礎」と表現した。(New York Times, 19 Mar. 2022)
これを受けてモロッコは、昨年来本国に召還されていたカリーマ・ベンヤイーシュ(Karima Benyaich)スペイン大使をマドリッドに復帰させた。(Europa Press, 30 Mar. 2022)
4月7日、スペインのペドロ・サンチェス首相はモロッコを訪問し、ムハンマド6世に直接スペインの方針転換を知らせた。とはいえ、首相と外相は、スペインは自治案を支持するが、国連が支援する住民投票を通じての問題解決を支持していると述べたと伝えられる。(Euronews, 7 Apr. 2022)
https://www.nytimes.com/2022/03/19/world/europe/spain-morocco-western-sahara.html
https://www.europapress.es/nacional/noticia-embajadora-marruecos-regresa-madrid-retirada-espana-ano-pasado-20220320142216.html
https://www.euronews.com/2022/04/07/spain-s-pedro-sanchez-visits-morocco-in-bid-for-improved-diplomatic-relations
イスラエル外相が、スペインを支持
イスラエルのヤイル・ラピド外相は3月28日(月)、イスラエルを訪問中のナセル・ブリタモロッコ外相との会談の後、スペインの方針転換を「有望(prometedor)」だとして支持を表明した。「われわれが構築しようとしているのは、バーレーンとアラブ首長国連邦に対する攻撃、イスラエルに対するテロ攻撃、そしてモロッコの主権と領土的保全を弱めようとする試みに対抗する、平和、繁栄、安定のための共同戦線である」と述べた。(El Correo, 28 Mar. 2022)
https://www.elcorreo.com/politica/argelia-revisara-acuerdos-20220328215540-ntrc.html
ポリサリオ戦線、スペイン政府を批判
スペイン政府が自治案支援に方針転換したことで、サハラーウィ共和国政府は19日「危険な漂流(dangerous drift)」だと強く批判し、「スペインとフランスはどの国にもまして認められた国境とモロッコの拡大に対する闘いを擁護する法的・政治的責任を有しており、その責任はサハラーウィ人民がその不可分の自決と独立の権利を行使できるようになるまで終了しない」と述べた。(Sahara Press Service, 19 Mar. 2022)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/03/19/38688.html
第二副首相、サンチェス首相を「憲法違反」
3月26日、スペインのヨランダ・ディアス第二副首相(ポデモス党)は、あるラジオ番組に出演中、サンチェス首相の方針転換は、モロッコの占領体制を喜ばせるために、憲法に違反し、国際法にも違反したものだと批判した。(Sahara Press Service, 26 Mar. 2022)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/03/26/38885.html
スペイン国会でも反対の声
国会議員の中からもサンチェス首相の一方的な方針変更に対する反対の声があがった。ウニダス・ポデモス、バスク民族主義党だけではなく、国民党や社会労働党(首相の党)からも批判が出ている。(Sahara Press Service, 23 Mar. 2022)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/03/23/38812.html
マドリードで大規模デモ
3月26日(土)、マドリードの外務省前でスペイン政府の方針転換に抗議する数千人のデモが行われた。デモ隊は「No en mi nombre (Not in my name)」をスローガンに、サンチェス政権の方針転換を「サハラーウィ人民への裏切り」と非難した。統一左翼、ウニダス・ポデモス、マス・マドリードの議員たちの他、ポデモスの創設者の一人フアン・カルロス・モネデロも参加した。(El País, 26 Mar. 2022)
https://elpais.com/espana/2022-03-26/cientos-de-personas-protestan-en-madrid-contra-el-giro-de-sanchez-sobre-el-sahara-occidental.html
アルジェリアはスペインに報復措置
スペイン・サンチェス政権の方針転換にアルジェリアは具体的な措置で対抗した。まず19日、アルジェリア政府はスペインの「突然の反転」に驚いたと表明し、自国のスペイン大使を召還した。(Algérie Presse Service, 19 Mar. 2022)
さらに、スペインからのアルジェリア人不法移民の送還を受け入れないと表明した。コロナが始まって以来、アルジェリア航空のマドリッド・アルジェ間の航空便は停止していたが、今回アルジェリアはイベリア航空の乗り入れを禁止し、1970年代以来初めて両国首都間の便が途絶えた。こうなるとスペインがアルジェ・バルセロナ間のアルジェリア航空の運航を禁止する可能性もできていた。アルジェリアからは昨年11,335人がスペインに渡ったとのこと。とはいえ、飛行機が飛ばなくても両国の間にはまだ船がある。
ところで、スペインは航空便停止となる直前に、アルジェリアからの亡命軍人をアルジェリアに送還した。それはアルジェリアに機嫌を直してもらうためだったが、ムハンマド・ベンフリーマ(Mohamed Benhlima)伍長は帰国するなり、家族等に迷惑をかけたことを謝罪し、自分は反体制派指導者に利用されたと述べ、大統領に恩赦を乞うた。
さらにアルジェリアの外務次官は旅先のイタリアでスペインとのすべての協定を見直すと発言した。真っ先に念頭に浮かぶのはスペインへの天然ガス供給である。アルジェリアはモロッコを経由するパイプラインでスペインにヨーロッパ向け天然ガスを送っていたが、それはモロッコとの断交によって昨年8月以来ストップしている。そのため、もう一つのパイプラインでスペインに供給中だ。2021年のスペインの天然ガス輸入の45%はアルジェリアからのものだった。アルジェリアはヨーロッパへの天然ガス供給をイタリア経由で送ることを検討中だという。(El Correo, 28 Mar., El Confidencial, 30 Mar. 2022)
https://www.aps.dz/algerie/137333-revirement-de-la-position-espagnole-sur-le-sahara-occidental-l-algerie-rappelle-son-ambassadeur
https://www.elcorreo.com/politica/argelia-revisara-acuerdos-20220328215540-ntrc.html
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-03-30/argelia-suspende-repatriaciones-irregulare-espana-vuelos-iberia_3400096/
アルバレス外相、ボレルEU外務・安全保障政策上級代表に仲介を要請
4月23日、アルジェリアとの関係悪化を受けて、アルバレス外相はジョセップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表に支援を要請した。ボレル氏は元スペイン外相で、西サハラに対するスペイン政府の立場を熟知している(外相時代、かなりモロッコ寄りだったとされる)。アルバレス外相の要請を受けて、ボレル氏は3月26日、ドーハでアルジェリアのラムタネ外相と非公式に会談した。ラムタネ外相は、問題はスペインとであってEUとではないと言いつつ、会談に応じた。ボレル氏はEUの立場は国連の仲介を支援するということで不変である、スペイン政府の方針転換は国連決議には反していないと、スペインを擁護した。
スペインのメディアは、政府筋の情報として、デ・ミストゥラ特使もスペイン政府の方針転換を「これでスペイン政府の立場はがぜん明確になったと称賛した」と報じた。しかし、アルジェリアのアマル・ベラニ西サハラ大使は、デ・ミストゥラ氏もスペインの方針転換には驚いた様子であり、メディアの情報は操作されている可能性があると述べた。実際、国連事務総長報道官は、4月21日、「特使がスペインの立場を私的に称賛した(applaud)との記事があるが、彼自身または私のオフィス(事務総長室)以外からの情報は事実を歪めている可能性がある」と指摘し、実際にはデ・ミストゥラ氏は拍手などしていないし、「単に承知しただけ(has only taken good note)」だと述べた。(El Confidencial, 23 Apr. 2022)
https://www.elconfidencial.com/espana/2022-04-23/albares-ayuda-borrell-superar-crisis-espana-argelia_3413069/
スペイン・アルジェリア関係の悪化
スペインの方針転換に対してアルジェリアは批判の声を強めている。4月23日、アルジェリアのテブン大統領は「道徳的、歴史的に受け入れられない」、「われわれはスペイン国家と非常に強い関係をもっているが、政府の長がすべてを台無しにした」と改めて強い言葉で批判した。それに対し25日、スペインのアルバレス外相は「不毛な論議(sterile controversy)」だと言い返した。テブン大統領は、どのような状況になってもアルジェリアはスペインに約束した天然ガス供給を続けると語っていた。そのためアルバレス外相も「ガス供給は国際的契約であり保証されている」とたかをくくって皮肉を述べたのである。
アルジェリア側も黙ってはおらず、アルジェリアの西サハラ大使アンマール・ベッラーニー氏はアルバレス外相の発言を「嘆かわしいもので、まったくもって受け入れられない」と評した。(Le Figaro, 24 Apr.; TSA, 25 Apr.; Europa Press, 25 Apr. 2022)
https://www.lefigaro.fr/international/sahara-occidental-le-revirement-espagnol-inacceptable-moralement-et-historiquement-20220424
https://www.tsa-algerie.dz/algerie-espagne-madrid-repond-aux-critiques-de-tebboune/
https://www.tsa-algerie.dz/reponse-du-mae-espagnol-a-tebboune-lalgerie-reagit/
カルロス・ミゲル教授の批判
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学のカルロス・ミゲル教授(法学)は、西サハラ研究センターを主宰し、西サハラの自決権を支持する論客である。彼はサンチェス首相がムハンマド6世に送った手紙を分析し、実は従来の立場と違うことは書いてない、ただサンチェス首相は、戦闘が再燃した今、紛争当事者の一方、この場合、外国を侵略し占領している側に立つことを選択したと述べた。一方でロシアのウクライナ侵攻を非難しながら、と付け加えた。そして、モロッコはこれまでさまざまな約束を反故にしてきたのであり、まさに西サハラとの国境を侵害したモロッコが、サンチェスが方針転換をしたからといって、スペインの国境線を保証することにはならないと結論した。(Faes Fundación, 21 Mar. 2021)
https://fundacionfaes.org/texto-contexto-y-glosas-delirantes-de-la-repeticion-del-error-de-1975/
国連事務総長特使の反応は?
国連事務総長報道官は、21日の記者会見で、アルバレス・スペイン外相はデ・ミストゥラ特使と3月21日(月)にブリュッセルで会談し、関係する安保理決議に沿った相互に受け入れ可能な解決に向けた国連の仲介努力を支援すると伝えたと述べた。(UN, 22 Mar. 2022)
https://www.un.org/press/en/2022/db220322.doc.htm
【モロッコ】
なぜモロッコはロシア非難決議に棄権したか
3月4日のロシア非難の国連総会決議にモロッコは棄権した。ロシアはモロッコの敵対国アルジェリアの後ろ盾であり、米国、フランスこそモロッコの同盟国であるとすれば、モロッコの投票は不思議に思われる。しかし近年、モロッコは外交関係の多様化を図っており、そのためイスラエル、中国、トルコ、カタールといった国々との関係構築に向かっている。また、ロシアは近年アフリカでのプレゼンスを増しており、リビアやブルキナファソでは民間軍事会社ワグネルが活動している。2月26日のモロッコ外務省の表現では「力によらない国家間の紛争解決」と「国連加盟国の領土的一体性、主権及び国民的統一への尊重」を支持するとなっている。モロッコのバランスの取れた行動を「賢明」と評する論者もいれば、西サハラ問題で米国が中立となったらどうなるのか考えてみるべきだという論者もいる。(NIUS, 7 March 2022)
https://www.niusdiario.es/internacional/africa/dilemas-marruecos-rusia-guerra-ucrania_18_3294120128.html
イスラエルのビジネス派遣団に王室は距離
3月18日、モロッコ経営者協会(CGEM)の招待で81人のモロッコの企業家がカサブランカ・テルアビブ間に就航した便の初フライトに搭乗した。しかし、その中に王室の持株会社アル・マダ及びその子会社は含まれていなかった。背景には、王室とCGEMの関係が冷えているという事情がある。2020年初頭、CGEMの会長選挙で選ばれたのはシャキーブ・アルジュ(Chakib Alj)で、王室はそのことでCGEMがアジーズ・アハンヌーシュ首相の党(RNI)に近づきすぎたと感じている。(Africa Intelligence, 17 Mar. 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_business/2022/03/17/al-mada-providence-les-business-royaux-boudent-la-premiere-mission-patronale-a-tel-aviv,109760906-art
イスラエルがモロッコで民間航空機整備基地を構想
3月22日、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)の一団がモロッコを訪問した。率いていたのは取締役会の議長で元国防相のアミル・ペレツ氏(モロッコのベジャード出身)とCEOのボアズ・レヴィー氏。同社とリヤド・メズール工業貿易相が交わした覚書は3Dプリンティング、部品製造、研究開発(R&D)センターに関するものだが、IAIは民間航空機の貨物輸送機への改造、メンテナンス、エンジンサービスを行う後方基地をモロッコに建設することに関心を抱いている。そのためヌアスールの下請け業者たちやカサブランカの航空メンテナンス研究所を訪問した。IAIは世界に冠たる航空機改造企業であり、イスラエルと中国に工場をもっている。コロナで貨物機の需要は爆発的に増大したため、現在イタリアにボーイング737の、アラブ首長国連邦にボーイング777の改造工場を建設予定だ。モロッコ側はIAIの構想を歓迎している。(Africa Intelligence, 1 Apr. 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_business/2022/04/01/apres-les-contrats-militaires-l-israelien-iai-voit-encore-plus-grand-dans-l-aeronautique-civile,109764382-art
【国際】
西サハラに眠る鉱物資源(古い記事)
2010年の古い記事だが、モーリタニアのヌアクショットで開催された鉱業関係の会議で、フランスの地質学・鉱山研究所(BRGM)が発表したモーリタニアの鉱物資源地図は、西サハラに眠っている資源の一部を示しているというので紹介したい。それによると、西サハラと国境を接するモーリタニア北部にはウランや銅があり、その北の西サハラ領内にはTichlaという町がある。また、西サハラのTifaritiの南側には鉛、亜鉛、銅、鉄がある。会議にはモロッコの国営リン鉱石公社(OCN)の研究者たちもいて、彼らはこれに興味をもった。(Africa Intelligence, )
https://www.africaintelligence.com/north-africa_politics/2010/11/18/western-sahara-s-hidden-treasures,86280713-art
ニュージーランド労組、西サハラのリン鉱石輸入に抗議
ニュージーランドの鉄道海運労組(RMTU)は、西サハラのリン鉱石を積んで3月10日にナピエ港に到着するストーニー・ストリーム号(Stony Stream)の船長に抗議の手紙を渡す予定である。船をチャーターしたのは肥料会社レイブンスダウン社(Ravensdown)である。RMTUの組織者、ダシャ・ファン・シルフホウト氏(Dasha van Silfhout)はオーストラリアの港湾労働者が行っている行動に倣い、西サハラ人民を支援する国際的キャンペーンに参加すると述べ、オーストラリア組合評議会(CTU)が2019年の決議でモロッコによる違法な西サハラ占領を非難し、ニュージーランド政府にそこからのリン鉱石輸入を停止するよう呼びかけたことを挙げた。(Scoop, 9 Mar. 2022)
https://www.scoop.co.nz/stories/PO2203/S00083/port-workers-protest-against-blood-phosphate-ship.htm
英アラブ紙、シャーマン米国務副長官のモロッコ訪問を批判
ロンドンに拠点をおく中東北アフリカ専門のニュー・アラブ紙は、シャーマン米国務副長官がモロッコを訪問し、ロシアのウクライナ侵攻を正当な理由がない、正当化されない戦争だと批判するかたわら、モロッコの西サハラ支配を認め、モロッコの自治案を「まじめで、見込みのある」解決策だと述べたことを、ダブルスタンダード(二重基準)だと批判した。3月3日(木)、11人の民主党下院議員がバイデン大統領に書簡を出し、モロッコとのいかなる重要な武器取引にも応じないよう要請した。というのもモロッコ政府は米国製武器を西サハラで使わないという約束をしていないからである。トランプ大統領は2020年末、10億ドルのモロッコへの武器売却を発表した。この取引はバイデン政権が引き継いだが、モロッコはまだ武器を受け取っていない。また、シャーマン国務副長官はモロッコの報道の自由について何も言わないことも批判された。訪問の1週間前にはジャーナリストのオマル・ラーディ氏がスパイ容疑とレイプ容疑で6年の刑を言い渡されていたにもかかわらずだ。アムネスティ・インターナショナルは彼の裁判を不当な裁判だとしている。(The New Arab, 9 Mar. 2022)
https://english.alaraby.co.uk/news/us-envoy-under-fire-double-standards-western-sahara
MINURSO代表のスキャンダル
Inner City Pressというメディアが元MINURSOの代表であるコリン・スチュワート氏が受けているセクハラの訴えを継続的に追っている。昨年8月にMINURSOの代表は交代し、新たにアレキサンダー・イヴァンコ氏(ロシア)が就任した。同メディアによると、コリン・スチュワート氏が雇用したモロッコ人女性と、今度はイヴァンコ氏が関係をもち、イヴァンコ氏は彼女と結婚するつもりで、結納として彼女に74,000ユーロの別荘を買ったという。そして国連での仕事を約束したとも。Inner City Pressは国連の報道官に問い合わせているが、まったく返事はない。(Inner City Press, 11 Mar. 2022)
http://www.innercitypress.com/wsahara268sgreporticpgut031122.htm
アルジェリアと中国、西サハラ等で共同コミュニケ
中国を訪問したアルジェリアのラムタン・ラマムラ外相は王毅外相とともに共同コミュニケを発表し、西サハラ問題が国際法、とりわけ国連決議に沿ったかたちでの永続的かつ公正な解決を行う努力を支持することを確認した。コミュニケはまた、パレスチナ人民が1967年の国境線をもとに東エルサレムを首都として独立国家形成を果たす権利について述べ、ウクライナ戦争については、国家主権と領土保全に関する国連憲章の目的及び原則を擁護しつつ、関係国の安全保障に関するニーズを考慮に入れるべきだと述べている。(Notimerica/Europapress, 30 Mar. 2022)
https://www.notimerica.com/politica/noticia-sahara-china-argelia-abogan-solucion-sahara-occidental-acorde-resoluciones-onu-20220320134105.html
アルジェリア大統領、イタリアを5月に訪問
アルジェリアのテブン大統領は5月26日にイタリアを公式訪問する。議題は天然ガスである。イタリアは天然ガスのロシア依存を減らすため、アルジェリアからの輸入を増やしたい意向。アルジェリアもそれに応じるつもりだ。また、7月18・19日には、アルジェでアルジェリア・イタリア政府間サミットが開催され、イタリアの企業も多数参加することになっている。(Africa Intelligence, 22 Apr. 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2022/04/22/tebboune-a-rome-le-26-mai-pour-parler-gaz-et-securite,109779574-bre
ロシアの肥料会社、大幅後退
過去5年間、ロシアのオリガルヒたちが投資する3つの肥料会社、PhosAgro、Uralchem、Eurochemはアフリカ大陸に進出し、モロッコの国営リン鉱石会社に挑戦をし続けてきたが、経済制裁によって後退を余儀なくされている。アンドレイ・グリエフ・ジュニアはPhosAgro、ドミトリー・マゼピンはUralchem、アンドレイ・メルニチェンコはEurochemの大株主だ。3月4日、ロシア政府はこれらの肥料会社に輸出をしないよう呼びかけた。実際には輸入は続いている。しかし、アフリカへの輸出分はこれから減るだろう。肥料の価格はすでに上昇している。今後ロシアはアフリカへの輸出を減らし、その代わり中国への輸出を増やすだろう。なぜなら、アフリカの企業はヨーロッパの銀行に金を借りているからだ。ただ、南アは例外でPhosAgroはケープタウンに2020年に事務所を開設した。(Africa Intelligence, 21 Mar. 2022)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-ouest-et-centrale_business/2022/03/21/phosagro-uralchem-eurochem–les-geants-russes-des-engrais-face-aux-sanctions,109761500-art
ブリンケン国務長官、アルジェリアを訪問
3月30日、アルジェリアを訪問しテブン大統領と会談したブリンケン米国務長官は会談後の記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻と比べ、パレスチナや西サハラについて米国は公正な態度をとっていなのではないかと質問され、次のように回答した(要約)。「バイデン政権は発足時、外交分野においては、パートナー(国際機関等)と協調することと、外交を主軸に進めるということの2つを約束した。外交ルールが破られ、国際システムが侵害された場合は、他国と一緒にそれに立ち向かうということだ。パレスチナ問題についていえば、二国家解決の枠組へと引き戻す外交努力をする一方で、パレスチナ人の生活向上の支援をしている。UNRWAの支援も再開した。またネゲブ・サミットでは多くの国の参加を求めているが、それは二国家解決にとってかわるものではない。同様に、西サハラについては外交と国連特使の努力を通じた外交による解決に力を注いでいる。モロッコ、西サハラについては国連の努力を支援しており、それについてのわれわれの立場に変化はない。」(U.S. Embassy Algiers., 30 Mar. 2022)
https://www.state.gov/secretary-antony-j-blinken-at-a-press-availability-17/
チュニジアの報道:モロッコは米国に不満?
チュニジアのマスメディアが次のように報じた。ブリンケン国務長官が3月にモロッコを訪問したときの会談から、モロッコはすっかり自治案を了承されたと思っていたが、4月20日にマドリッドの米国大使館筋が「(一方で)国連を支持し、関係国とともに、永続的で尊厳ある解決策を目指す国連主導の政治的プロセスを強化するため、フルに外交的に関与していく」と述べたことは、米国がモロッコを手放しで支持しているわけではないことを意味している。それどころか、方向転換とすら言える。3月のアルジェリアのテブン大統領との会見の結果を反映してのことなのか。いずれにせよ、明らかに米国の立場は変わった。しかもそれを、スペインが自治案支持を打ち出したタイミングで知らしめたということには意味がある。(Tunisia Numerique, 21 Apr. 2022)
https://www.tunisienumerique.com/sahara-occidental-rabat-naimera-pas-le-revirement-des-usa-annonce-a-madrid/
安保理、西サハラを非公開で討議
4月20日(水)、国連安保理は西サハラについて非公開の会合を開催し、デ・ミストゥラ国連事務総長特使とイヴァンコMINURSO代表の説明を受けた。特使は前日、ポリサリオ戦線の国連代表兼MINURSO調整担当者シディ・オマル氏と会談した。安保理会合の内容は明らかではないが、その後のポリサリオ戦線の声明を読むと、何ヶ国かが西サハラの自決権を擁護する強い発言を行った一方で、現状を肯定し「あいまいな解決策」(おそらく自治案)を進めようとする国々があったようである。(Sahara Press Service, 22 Apr. 2022)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2022/04/22/39332.html
米国務省人権報告書2021年版「モロッコ」
米国務省が2021年版の人権報告書を発表した。モロッコについて、「モロッコは西サハラの領有を主張しており、そこを支配下におき、行政を行っている」などと書いている。またポリサリオ戦線がそれと闘っていること、国連が仲介していることについて書いているが、米国がモロッコの西サハラへの主権を認めたことは書いてない。人権については、拷問、政治囚の存在、表現・報道の自由の重大な制限、集会結社の自由の大幅な制限、政治活動家の監視・迫害、汚職、性的マイノリティの迫害といった問題があることを指摘している。(U.S. State Dpt., 2021 Country Reports on Human Rights Practices: Morocco)
https://www.state.gov/reports/2021-country-reports-on-human-rights-practices/morocco
以上。