シンポジウム(オンライン開催・無料)「西サハラの自決権を考える — 47年の外国占領を問う」
このシンポジウムはすでに終了しました。以下にプログラムを記録として残しておきます。
シンポジウム(オンライン開催・無料)
「西サハラの自決権を考える — 47年の外国占領を問う」
日時:2022年2月19日(土)15:00-17:00
【開催趣旨】
北アフリカの旧スペイン領、西サハラはアフリカ最後の植民地と称される。1975年、独立過程で隣国モロッコの侵攻を受け、現在領土の大半がその占領下にある。西サハラは、国連が進める非植民地化の対象となる非自治地域(現在17地域)であり、国際司法裁判所もモロッコは西サハラに主権を有しないとの勧告的意見を出した。そのため安保理は、モロッコと独立派組織ポリサリオ戦線の和平交渉を仲介して停戦協定を導き、住民投票の実施を決めた。しかし、モロッコ占領下の西サハラでは、独立派は弾圧され、天然資源(リン鉱石)・水産資源の収奪、外国資本とモロッコからの移民による大規模農園開発・リゾート開発が進んで、サハラーウィ(西サハラの人びと)は周縁化されている。サハラーウィはアルジェリアの難民キャンプを拠点として独立運動を継続。国連はモロッコとポリサリオ戦線との交渉を仲介しているが、米国・ヨーロッパの戦略的利益・経済権益も絡み、事態打開の見通しは立っていない。
本シンポジウムでは、47年間も行使されない状況がつづく西サハラの自決権の問題を、その全体的構図の確認、自決権の現代的展開を踏まえた検討、そして近年EU裁判所で争われている西サハラの資源取引に関する議論を通じて、改めて考えてみたい。昨年末、西サハラ問題に関する新しい国連事務総長特使が任命され、今年和平に向けた交渉の再開が期待される。西サハラは地理的には遠いが、日本も決して無縁ではない。関心をもって見ていく必要があるだろう。
【プログラム】
趣旨説明
桐山孝信氏(大阪市立大学)「西サハラの自決権をめぐる構図ー植民地主義との関連も含めて」
山形英郎氏(名古屋大学)「自決権の国際法的射程と現代的展開」
孫占坤氏(明治学院大学)「天然資源に対する恒久主権と西サハラ問題」
討論、質疑応答
司会:松野明久(大阪大学)
【プロフィール】
桐山孝信(きりやま・たかのぶ)
大阪市立大学大学院法学研究科教授。専門は国際法、人権・自決権論。「自決権行使と領有権問題(1・2完)」(『法学論叢』117巻1号・3号、1985年)、『民主主義の国際法』(有斐閣、2001年)、「国際法学におけるマイノリティ研究の過去と現在」(孝忠延夫編『差異と共同』関西大学出版部、2011)などの著書・論文がある。
山形英郎(やまがた・ひでお)
名古屋大学大学院国際開発研究科教授。専門は国際法。「21世紀国際法における民族自決権論の意義」名古屋大学法政論集245号(2012年)、「『人道的干渉』から『住民保護責任』への転換?」国際開発研究フォーラム34号(2007年)など。
孫占坤(ソン・センコン)
明治学院大学国際学部教授。専門は国際法、東アジア地域の安全保障。「国際法における『自治』の概念とその機能」(『法政論集』202号、2004年)、「中国から見た日米安保」(『法律時報』増刊号、2010年6月)、「国際法における先住民族の自決権—サーミ条約の意味するもの」(『国際学研究』51号、2017年)、「国境を超える人びと」(『平和研究』53号、2019年)などの論文がある。
松野明久(まつの・あきひさ)
大阪大学大学院国際公共政策研究科教授。専門は国際政治、紛争研究。著書『東ティモール独立史』(2002年)の他、論文 “West Papua and the changing nature of self-determination” (In Peter King et al. eds. Comprehending West Papua, 2011)、記事「西サハラ独立問題の歴史と展望」(『世界』2019年9月)、「西サハラの主権問題」(同2021年3月)がある。
【主催事務局】大阪大学大学院国際公共政策研究科・松野研究室(本シンポジウムは科研基盤C[特設分野]「占領の法政治学:パレスチナと西サハラにおける法の政治的機能」の一環として開催されました。)
【協力】西サハラ友の会