西サハラ友の会通信 No. 20

 9月19日に出した通信 No. 19から2ヶ月以上が経ちました。重要ニュースはたくさんありますが、以下の2つについてはそれぞれ速報でお知らせしました。
 ・EU裁判所判決。ポリサリオ戦線側の勝訴で、EUは控訴する見通しです。
 ・アルジェリアの民間トラック、モロッコ軍の砲撃で3人死亡。
 他にも、アルジェリアの欧州向けモロッコ経由ガスパイプライン使用停止、中国の西サハラ産リン鉱石購入からの撤退は大きなニュースです。
 西サハラ占領地の人権侵害はひどく、軟禁1年になるスルターナ・ハイヤさんに注目が集まっています。政治囚はハンガーストライキを行っています。スマラでは街頭で抗議行動がありました。また、イスラエルとモロッコの関係強化は西サハラにも影響を及ぼし始めました。イスラエル製ドローンの使用やイスラエルによる西サハラ沖合の海底油田探索です。
 国連安保理はMINURSOの任期を1年延長しました。しかし、人権監視の任務は付加されず、やる気の見えない相変わらずの決議でした。国連事務総長の新特使が決まり、交渉が動き出すか注目されるところです。

No. 20 目次

【西サハラ/占領地】
・スマラで占領に抗議するデモ
・エル=アイウンの空にドローン
・スルターナ・ハイヤさん、性的暴行の訴え
・政治囚イェフディーフ・ハリーヘンナ・サービーのハンガーストライキ
・政治囚ブテンギーザさんのハンガーストライキ

【西サハラ/難民キャンプ/ディアスポラ】
・チンドゥーフ難民キャンプへのツアー
・ポリサリオ戦線、新司令官を指名
・モロッコ軍、西サハラ解放区内走行中のアルジェリアの民間トラックを砲撃、3人死亡(詳しくは11月3日付[速報]をご覧下さい。)
・ドローンで7人死亡

【スペイン】
・スペイン政府、サハラーウィ活動家をモロッコに送還
・マドリッド協定の日、マドリッドで西サハラ連帯行動

【資源略奪】
・EU裁判所(一般裁判所)がポリサリオ戦線の主張を認める(詳しくは9月29日発[速報]をご覧下さい。)
・ボレルEU外務・外交安全保障政策上級代表とブリタ外相の共同声明
・ポリサリオ戦線、EUに交渉を提案
・EU裁判所判決の影響
・EU、控訴の可能性大
・中国の会社、西サハラ産リン鉱石輸入を停止
・イスラエル、西サハラの油田開発に乗り出す

【農産品問題】
・EU、西サハラ産トマトを調査せず
・スペインの農家、抗議のデモ
・イギリスはモロッコの西サハラに対する主権を認めるか?

【再生可能エネルギー】
・イギリスがモロッコから電力を購入
・西サハラ資源ウォッチ、再生可能エネルギー報告書
・モロッコ新首相、風力発電に進出

【国際社会】
・国連事務総長特使がデ・ミストゥラ氏に決定
・イスラエル、モロッコ大使を任命
・国連非植民地化特別委員会、公聴会を開催
・米議会、米ダーフラ領事館開設予算をブロック
・アフリカ連合、イスラエルの参加決定を延期
・安保理、MINURSOの任期延長
・ユネスコの執行委員会にモロッコ落選
・東ティモールの連帯活動

【アルジェリア】
・アルジェリアがモロッコ経由ガスパイプラインを停止
・モロッコの航空機の禁止

【モロッコ】
・ギニアの軍クーデターのモロッコへの影響
・モロッコ王国軍司令官の交代
・モロッコが軍事的手段を強化
・地雷からドローンへ:モロッコ南部国境防衛政策の転換
・モロッコ・ナイジェリア間のガスパイプライン構想


【西サハラ/占領地】
スマラで占領に抗議するデモ
 10月9日(火)、スマラでスルターナ・ハイヤさんやグデイム・イジーク政治囚に連帯し、モロッコの抑圧的な政策に抗議するデモが行われた。デモ参加者は西サハラの旗や横断幕を掲げ、自決権と独立を主張した。動画も撮影されており、若者たちが夜集まって手を叩きながらスローガンを連呼する様子が映っている。(Por un Sahara Libre, 10 Nov. 2021)
https://porunsaharalibre.org/2021/11/10/manifestacion-en-la-ciudad-ocupada-de-smara-contra-la-politica-represiva-de-marruecos-en-el-sahara-occidental/

エル=アイウンの空にドローン
 11月10日(木)、エル=アイウンの上空をトルコのバイカル社が製造したドローン、バイラクタル TB2(Bayraktar TB2)が飛んでいるのが目撃された。エル=アイウンの空軍基地に配置されたと思われる。モロッコがこのドローン13機と4つの地上管制システム、さらにはそれに搭載するトルコのロケスタン社製スマート爆弾、MAM-LとMAM-Cを購入したことは4月に報道されており、9月には最初のドローンが到着していた。ソーシャルメディアに投稿された写真によれば、ドローンはMAM-Lを搭載していた。これは15kmの射程をもち重さ22kg、慣性誘導とレーザー誘導装置によって標的に向かうスマート爆弾である。(Defensa, 11 Nov. 2021)
https://www.defensa.com/africa-asia-pacifico/avistamiento-uavs-armados-bayraktar-tb2-sahara-marroqui

スルターナ・ハイヤさん、性的暴行の訴え
 ブージュドゥール在住の人権活動家スルターナ・ハイヤさん(Sultana Khayya)が11月15日、ツイッターでモロッコ警察が自宅に乱入し、彼女自身が性的暴行を受けたことを訴えた。その日、自宅軟禁状態におかれて365日目になった。マスクをつけた男達が入ってきて夜中居座り、彼女の姉妹や母親にセクハラ行為を行った。1分39秒のメッセージの最後に、モロッコ占領が続こうと自分たちは抵抗をやめないと述べた。
 これに先立つ10月2日の報道では、彼女は、西サハラを訪問した米大使館スタッフが彼女と会おうとしたところ、モロッコ当局の妨害にあって面会を諦めたと述べたという。(APS, 2 Oct. 2021)
https://twitter.com/Sultanakhayya1/status/1460257019563282438
https://www.aps.dz/en/world/41052-moroccan-occupation-authorities-prevent-us-delegation-from-visiting-human-rights-activist-sultana-khaya

政治囚イェフディーフ・サービーさんのハンガーストライキ
 モロッコ刑務所のサハラーウィ政治囚保護連盟によると、ゲルゲラートメディアネットワークの代表をしていたイェフディーフ・ハリーヘンナ・サービー(Yehdih Jalihenna Sabi)さんがハンガーストライキ8日目に入ったと発表した。彼は7月29日、拷問による自白を基に1年の禁固刑と1万ディルハムの罰金を言い渡された。ハンガーストライキはそれに対する抗議である。(Sahara Press Service, 19 Oct. 2019)
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/10/19/35854.html

政治囚ブテンギーザさん、ハンガーストライキ
 モロッコ北部のケニトラ刑務所にいる政治囚スィド・アル=バシール・アラーリー・ブテンギーザさん(Sid-Albachir Alali Butenguiza)は体調が悪化したのに医療的措置を受けられないことに抗議して、10月11日、24時間のハンガーストライキに入った。(Sahara Press Service, 12 Oct. 2021)
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/10/12/35744.html

【西サハラ/難民キャンプ/ディアスポラ】
チンドゥーフ難民キャンプへのツアー
 フランス、ベルギーの西サハラ支援団体の呼びかけで、ヨーロッパを中心とした支援者のチンドゥーフ難民キャンプへのツアーが10月10日から17日にかけて行われた。大規模な難民キャンプへのツアーは2010年以来となった。(Africa Intelligence, 20 Sep. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/09/20/le-polisario-reactive-ses-relais-a-paris,109692100-bre

ポリサリオ戦線、新司令官を指名
 安保理によるMINURSOの任期延長決議から数日後、ポリサリオ戦線はムハンマド・ワーリー・アケイク(Mohamed Wali Akeik)をサハラーウィ民族解放軍の参謀総長に任命した。アケイクは1970年代から頭角を現し、スペイン、モーリタニア、モロッコとの戦争に従事した経験をもつ。2018年には首相となり、最近は占領地・ディアスポラ大臣を務めていた。戦闘派とみられている。(Bloomberg, 2 Nov. 2021)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-11-02/upping-conflict-with-morocco-polisario-names-new-war-chief

モロッコ軍、西サハラ解放区内走行中のアルジェリアの民間トラックを砲撃、3人死亡(詳しくは11月3日付[速報]をご覧下さい。)
 11月1日、アルジェリアの民間トラック2台が砲撃を受け、トラックが大破。乗っていた3人のアルジェリア人が死亡した。場所は、モーリタニア領内のアイン・ベンチーリー(Aïn Ben Tili)と西サハラ解放区内のビル・ラフルー(Bir Lahlou)の間で、西サハラ解放区内を走行中であったとされる。トラックはモーリタニアのヌアクショットを出発し、アルジェリアのワルグラ(Ouargla)に向かっていた。ドローンを使ったかのような正確な標的攻撃であり、実際、大砲による砲撃にしてはモロッコ軍陣地と距離がありすぎるし、上空にドローンがいたという証言もあるが、ドローンかどうかは不明。モロッコ軍は声明を発表していない。アルジェリアはモロッコ軍を非難。(MENA Defense, 3 Nov. 2021)
https://www.menadefense.net/algerie/comprendre-lattaque-marocaine-contre-les-civils-algeriens/

ドローンで7人死亡
 ポリサリオ戦線によると、11月14日(日)砂の壁の東側のミイェク(Miyek)というところで金を探していた民間人7人が乗車していた車がドローンで攻撃されたという。車は2台あり、1台がドローン攻撃を受けたのであわてて別な車で逃走しようとしたところ、それもまた標的となったということらしい。全員死亡とみられている。(El Pais, 17 Nov. 2021)
https://elpais.com/internacional/2021-11-17/el-frente-polisario-denuncia-la-muerte-de-11-civiles-en-el-sahara-occidental.html

【スペイン】
スペイン政府、サハラーウィ活動家をモロッコに送還
 スペイン政府はスペインに在留資格をもっていたファイサル・バフルール(Faysal Bahloul)をモロッコに強制送還してしまった。ファイサルさんはモロッコ政府に捕らえられ、拷問され、投獄されるのは必至であり、スペインはモロッコの人権状況を知っていたこれを行った。(Por un Sahara Libre, 11 Nov. 2021)
https://porunsaharalibre.org/2021/11/17/espana-deporta-a-marruecos-al-activista-saharaui-faysal-bahloul/

マドリッド協定の日、マドリッドで西サハラ連帯行動
 11月13日はスペイン・モロッコ・モーリタニアの3国によるいわゆる「マドリッド協定」締結の日に当たり、2021年は46回目の記念日となった。その日、マドリッドではサハラーウィや連帯グループのメンバー数千人が集まって大規模な街頭行動が行われた。(CNN, 14 Nov. 2021)
https://edition.cnn.com/2010/WORLD/europe/11/14/spain.morocco.protests/index.html

【資源略奪】
EU裁判所(一般裁判所)がポリサリオ戦線の主張を認める(詳しくは9月29日付[速報]をご覧下さい。)
 9月29日(水)、EU裁判所の一審裁判所である一般裁判所(General Court)で、ポリサリオ戦線が2019年、EU理事会の決定の無効化を求めて起こした訴訟において、ポリサリオ戦線側の言い分がほとんど認められる判決が出された。訴訟(ケース番号 Case T-279/19)は、EUモロッコ農水産品協定とEUモロッコ漁業連携協定を承認したEU理事会の2つの決定を違法と訴えたもので、判決は、ポリサリオ戦線に原告資格を認め、それを西サハラ人民の代表と認定し、西サハラはモロッコとは明らかに異なる地域であるとした上で、EU側は西サハラを対象地域に含むと明確に記したモロッコとの協定締結において、協定の影響を受ける第三者である西サハラ人民の承諾が必要であるにもかかわらず、その要件を尊重しなかったと述べた。EUは、西サハラ住民諸団体の承認を得たと主張したが、EUが取った措置は西サハラ人民の承諾を得たものとは解釈できないと述べた。

ボレルEU外務・外交安全保障政策上級代表とブリタ外相の共同声明
 9月29日のEU裁判所の判決について、ボレルEU外務・外交安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長とナッセール・ブリタモロッコ外相は共同声明を出し、「われわれはEUモロッコ貿易の継続と安定性を保証する法的枠組を確実なものとするために必要な措置をとる」と述べた。
 つまり、EUは西サハラを含ませるかたちでのモロッコとの貿易継続を可能とするような何らかの新たな法的枠組を模索する、あるいは作るということを述べていると推察される。(Déclaration conjointe, 29 Sep. 2021)
https://eeas.europa.eu/headquarters/headquarters-homepage/104807/node/104807_fr

ポリサリオ戦線、EUに交渉を提案
 ポリサリオ戦線のヨーロッパ代表ウビー・ブシュラーヤー・バシール氏は、9月29日のEU裁判所の判決によって影響を受けるヨーロッパの漁船が今後もし西サハラ海域で操業を続けたければ、EUはポリサリオ戦線と協議しなければならないと述べた。訴訟でポリサリオ戦線の弁護を務めたマニュエル・デヴェール氏(Manuel Devers)は、ポリサリオ戦線は過去の損害に対する賠償請求を検討しているところであり、過去2年間で請求金額は20億ユーロと計算していると述べた。バシル氏は、現状はヨーロッパとスペインがモロッコを「甘やかしてきた」結果であり、マグレブ諸国はモロッコが地域の他の国々の利益を損ねるかたちで特権を維持していることに辟易していると述べた。(Publico, 1 Oct. 2021)
https://www.publico.es/sociedad/frente-polisario-ofrece-ue-negociar-pesca-aguas-sahara-occidental.html

EU裁判所判決の影響
 西サハラ海域で操業しているEUの漁船128隻の内91隻はスペインの漁船である。EU裁判所の判決に従えば、西サハラ海域での操業をやめなければならない。裁判所は2ヶ月の猶予を与えた。控訴すればそれは1年ほど延びるだろう。しかし、多くの法律家の意見は裁判所は一審を維持するだろうというものだ。EU内での圧力も高まる可能性がある。スウェーデン外相はEUが結ぶ協定は国際法に沿ったものでなければならないというツイートを流した。ドイツ、スウェーデン、デンマーク、アイルランドは2019年のEUモロッコ漁業協定の締結を最も嫌がっていた国々だ。一方、モロッコは沈黙している。ドイツ、スペイン、フランス、アルジェリアとの外交関係を悪くした今、さらなる攻勢はかけにくいのだろう。ポリサリオ戦線はさらなる攻勢をしかけてくるだろう。例えば、2016年に最初のEU裁判所判決が出て以後これまで同協定で被った損害をEUに請求するということ。また、モロッコが同協定で受け取った資金についても、法的には難しいが、要求する可能性がある。(El Confidencial, 30 Sep. 2021)
https://www.elconfidencial.com/mundo/2021-09-30/justicia-union-europea-aguas-sahara-occidental-marruecos_3298988/

EU、控訴の可能性大
 11月10日(水)に開かれたEUの常任代表委員会は、EU裁判所の判決に対して控訴することを決定した。まったく討議はなされなかった。最終決定はEU理事会が行うが、控訴する可能性が高い。控訴期限は12月9日である。(La Vanguardia, 12 Nov. 2021)
https://www.lavanguardia.com/internacional/20211112/7857972/ue-recurrira-sentencia-tumbo-acuerdos-bilaterales-marruecos.html

中国の会社、西サハラ産リン鉱石輸入を停止
 中国のリン鉱石会社China Molybdenum社は、そのブラジルの子会社であるCopebras社から西サハラ産リン鉱石を輸入していたが、10月にその輸入を停止したとNGO「西サハラ資源ウォッチ」に連絡してきた。投資者からの圧力があったと考えられる。投資会社の一つはノルウェーのKLP Asset Managementである。(WSRW, 14 Oct. 2021)
https://wsrw.org/en/news/importer-in-brazil-stops-conflict-rock-purchases

イスラエル、西サハラの油田開発に乗り出す
 イスラエルのメディアEnergia Newsによると、イスラエルのレイシオ・ペトロリウム社(Ratio Petroleum)は9月、アトランティック・ダーフラ鉱区の探査権をモロッコ政府より獲得した。探査する面積は129,000km2で、3,000mの深さまで探査することが許されたという。(Morocco World News, 18 Oct. 2021)
https://www.moroccoworldnews.com/2021/10/345031/israels-ratio-petroleum-secures-exploration-rights-at-moroccos-dakhla-atlantic

【農産品問題】
EU、西サハラ産トマトを調査せず
 スペインのトマト農家が西サハラ産トマトがモロッコ産としてヨーロッパに輸入されている(産地偽装)ことで損害を被っていると訴えている問題で、欧州議会のヨルディ・カニャス(Jordi Cañas)議員が欧州委員会に質問したところ、ヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業委員(Janusz Wojciechowski、大臣相当)の回答は、協定を結んでいる国の農産物のチェックは輸出国側で行うことになっており、そのチェック体制についてモロッコは十分な保証を行っている、したがって大量の違反行為が発覚した場合はその国をそうした体制から除外することもありうるが、今回のNGOが提出した報告書から調査をすべきだという結論は導かれない、と回答した。また、同農業委員は、西サハラ産の農産物にも特恵関税は適用されると説明し、欧州委員会は規則に反するかたちで協定が適用されているとは思っていない、と述べた。これに対し、スペイン農業団体コアグ(COAG)アルメリア州事務長のアンドレス・ゴンゴラは、農業委員は不正について何も回答していないと反論した。西サハラ産トマトは陸路モロッコに持ち込まれ、モロッコ産トマトと混ぜ合わせてヨーロッパに輸出されている、消費者が区別するのは不可能だと述べた。(Diario de Almeira, 27 Sep. 2021)
https://www.diariodealmeria.es/finanzasyagricultura/UE-descarta-investigar-supuesto-etiquetado-tomate-sahara-occidental-marruecos_0_1613840078.html

参考過去記事:
・西サハラ友の会通信 No. 16(2021/07/23)「国王の「トマト・メガポリス」」、「モロッコ産トマト、EUトマト栽培に打撃」
・西サハラ友の会通信 No. 19(2021/09/19)「スペイン農家、モロッコ産野菜果物の流入に悲鳴」

スペインの農家、抗議のデモ
 10月8日(金)、スペイン・アルメリア州の農家や青果会社の代表者など約200人が、アルメリアの港周辺で抗議のデモを行った。西サハラのトマトがモロッコ産として輸入され、スペインのトマト栽培農家に打撃を与えたと訴えている。また、モロッコ産なのにアンダルシア産と偽装するものもあるらしい。(La Voz de Almeria, 8 Oct. 2021)
https://www.lavozdealmeria.com/noticia/12/almeria/223317/los-agricultores-almerienses-contra-marruecos

イギリスはモロッコの西サハラに対する主権を認めるか?
 スペインのメディア「アタラヤル(Atalayar)」(9月2日)によると、イギリス政府はモロッコの西サハラに対する主権を認める可能性が高くなっている。Brexitの後、イギリスはモロッコと貿易、政治、軍事関係の協定を結んだ。イギリスは西サハラでもビジネスを行っているし、2019年には西サハラの産物(魚、農産品、リン鉱石)をイギリスに輸出できることが合意されている。また、イギリスではBBCと統計局が西サハラを区別する境界線を削除し、すべてモロッコ領としている。(Atalayar, 2 Sep. 2021)
https://atalayar.com/en/content/uk-goes-step-further-recognising-moroccan-sovereignty-over-western-sahara

【再生可能エネルギー】
イギリスがモロッコから電力を購入
 9月末、イギリスの電力会社XlinksのCEOシモン・モリシュは、モロッコでの発電所に投資すると発表した。グルミーン・ワド・ヌーン(Guelmim-Oued Noun)州の1,500km2の土地に太陽光・風力発電で10.5GWの発電能力をもつ施設を2025年から建設するとのことである。電気は3,800kmの海底ケーブルを使ってイングランド、ウェールズに届けられる。(記事からはっきりしないのは、これが西サハラで発電される電力かどうかということ。グルミーン・ワド・ヌーン州は西サハラを一部わざと含ませたモロッコの州になっていて、発電所の立地次第で西サハラの可能性もある。)(El Español, 4 Oct. 2021; Xlinks website)
https://www.elespanol.com/mundo/africa/20211004/marruecos-reino-unido-electricidad-reconocimiento-sahara-occidental/616938344_0.html
https://xlinks.co/morocco-uk-power-project/

西サハラ資源ウォッチ、再生可能エネルギー報告書
 10月6日、ベルギーに拠点を置くNGO「西サハラ資源ウォッチ」は、西サハラでの再生可能エネルギー産業が占領を固定化し、自決権行使を難しくしているという報告書を発表した。それによると、西サハラの風力発電はモロッコ全体の風力発電の47.20%を生産しており、太陽光についてはモロッコ全体の32.64%を西サハラで生産していると見積もられる。これに深く関与しているのがイタリアのエネル社とスペインのシーメンス・ガメサ社である。再生可能エネルギーは西サハラから何も収奪していないように思われるかも知れないが、これらの電力を使って西サハラの資源(リン鉱石)は不法に略奪されている。報告書は以下で入手可能。(Western Sahara Resource Watch, 6 Oct. 2021)
https://wsrw.org/en/news/report-morocco-uses-green-energy-to-embellish-its-occupation

モロッコ新首相、風力発電に進出
 モロッコ新首相となったアジーズ・アハンヌーシュ氏は首相就任直前からダーフラの風力発電事業への投資を始めていた。彼と銀行家オスマーン・ベンジェッルーン氏(Othman Benjelloun)が共同保有するグリーン・オブ・アフリカ社(Green of Africa)はベルギー企業である ウィンドビジョン(Windvision)社との調整に乗り出していた。アハンヌーシュ氏が自身の株所有会社アクワ(Akwa)ホールディングスの経営から首相就任とともに身をひくとしても、当分の間彼の家族及びワクリム家(Wakrim)はその株主に留まることになる。施設はダーフラから遠くない海岸に200KWの能力をもつ風力発電所を建設するというもの。グリーン・オブ・アフリカ社は2015年に作られたばかりで、ナレバ社(ムハンマド6世の株保有会社アル・マダが保有するエネルギー会社)のCEOであるアフメド・ナックーシュ(Ahmed Nakkouch)を2019年に雇ったものの、さしたる事業展開を見せていなかった。それが2021年初頭、モロッコがすでに選挙キャンペーン期に入っていた頃に、動き始めたのだ。
 当時、ベルギーに拠点を置くウィンドビジョン社の子会社、エネルギーモロッコ社(Campagnie Marocaine des Energies: CME)が進めていたマレケシュ近くのサフィ(Safi)に200MWの風力発電所を建設する事業(CME Windfarm Safi社)が、期限までの資金調達に失敗し、暗礁に乗り上げていた。そこにグリーン・オブ・アフリカ社はCME Windfarm Safi社の70%の株を買い、社名をグリーン・オブ・アフリカ・ダーフラと変更し、サフィと同じ200MWの風力発電事業に取りかかったというわけだ。
 事業許可は譲渡できないという法律の裏をかくような方法であるため、アフリカ・インテリジェンス(メディア)は質問を送ったが、モロッコのエネルギー省もグリーン・オブ・アフリカ社も回答していない。CMEのCEOであるハサン・ナディール氏は、事業許可は同じ会社が保有しており、モロッコ政府は場所の変更を考慮に入れて期限を2023年まで延期してくれた、と語っている。(Africa Intelligence, 12 Oct. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_business/2021/10/12/a-dakhla-les-si-discretes-eoliennes-d-akhannouch-benjelloun-et-windvision,109697541-eve

【国際社会】
国連事務総長特使がデ・ミストゥラ氏に決定
 10月6日(水)グテーレス国連事務総長はスタファン・デ・ミストゥラ氏(Staffan de Mistura)が西サハラ問題担当特使にになったと発表した。これまで国連事務総長のシリア特使や、アフガニスタン及びイラン担当特別代表、レバノン担当特使等、国連事務総長の特使を務めてきた。また、ローマ国連広報センター長の他、ソマリア、スーダン、エチオピア、ベトナム、ラオスなどに勤務経験がある。イタリアとスウェーデンの国籍をもつ。(UN, 6 Oct. 2021)
https://www.un.org/sg/en/node/259928

イスラエル、モロッコ大使を任命
 10月10日、8月以来モロッコ代理大使を務めていたダビド・ゴブリン(David Govrin)(58才)が正式にモロッコ大使に任命された。そして、ラバトの連絡事務所は大使館に格上げされた。ゴブリン氏は2016年から4年間エジプト大使を務めた経験があり、アラビア語に堪能だ。(The Times of Israel, 10 Oct. 2021)
https://www.timesofisrael.com/israel-appoints-david-govrin-as-permanent-ambassador-to-morocco/

国連非植民地化特別委員会、公聴会を開催
 国連第四委員会(非植民地化)の非植民地化特別委員会は10月9日と13日に西サハラについての公聴会をニューヨーク国連本部で開催した。世界中から66名が参加し、それぞれ陳述を行った。(Sahara Press Service, 13 Oct. 2021)
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/10/13/35769.html

米議会、米ダーフラ領事館開設予算をブロック
 10月20日、米議会歳出委員会(Appropriations Committee)は、国務省がその予算で西サハラに領事館を開設することを禁止する決議を採択した。これは議会がトランプ政権時代のモロッコの西サハラへの主権を承認した行為を拒否したことを意味している。(Sahara Press Service, 20 Oct. 2021)
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/10/21/35883.html

アフリカ連合、イスラエルの参加決定を延期
 アフリカ連合AU委員会委員長のムーサ・ファキ・マハマト(Moussa Faki Mahamat)が7月にイスラエルをオブザーバーとして招待する決定をして以後、反対意見が相次いだ。そのため10月15日の運営評議会で議論となった。結果は、やはり反対が多く決定を2月の首脳会議まで持ち越すことになった。(Africa Intelligence, 21 Oct. 2021)
https://www.africaintelligence.com/central-and-west-africa_diplomacy/2021/10/21/leading-african-states-lambast-faki-over-israel-s-return-to-african-union,109700089-eve

参考過去記事:
・西サハラ友の会通信(2021.05.27)「イスラエルがアフリカ連合加盟のオブザーバーを狙う?」

安保理、MINURSOの任期延長
 10月29日(金)国連安保理は西サハラ住民投票派遣団(MINURSO)の1年間の任期延長を決議した。決議番号2620。ロシアとチュニジアが棄権、13ヶ国が賛成、反対なしで決まった。停戦合意破棄や米国のモロッコの主権承認、ドイツ、スペイン、EUとモロッコの軋轢増加といった状況の変化は考慮されず、かつての決議とあまり変わらないものとなった。そのためポリサリオ戦線は10月30日、安保理のやる気のなさを批判する声明を発表した。
 しかし、国連事務局のまとめによればまったく同じではないと言う。例えば、人権尊重については従来より少しだけ強い調子になった。ただ西サハラと難民キャンプの両方で人権尊重が必要だとの言い方である。決議採択に至るプロセスでは理事国間でもやりとりがあった。ロシアは「現実的な」という文言を、国際法に則っていないとして削除を提案したが、ドラフトを書いたアメリカがその提案を取り上げなかった。
 一方、モロッコのヒラレ国連大使がモロッコメディア(MAP Express)に決議をどう説明したかというと、「安保理は、政治的プロセスの最終目標は政治的、現実的、実践的、永続的で双方に受け入れ可能な妥協に基づく解決であることを決定した」(この表現はアメリカの国連副大使が決議後に述べているのとまったく同じで、多分それに合わせている)、「安保理は、モロッコの自治案が最終的解決になるだろうということを確認した」などと述べている。また、安保理はアルジェリアと「そのポリサリオ」が言いふらしている「ハリウッド」風の戦争についての嘘を暴露し、彼らの好戦的言辞を無視し、わが国の南部の州がまったくもって平穏で静かな日常生活を送っていることを明らかにした、とも述べている。さらに、モロッコは停戦を遵守しており、MINURSOとも協力することを国王が国連に伝えていると述べている。最後、ヒラレ大使は、安保理はモロッコがサハラ諸州において人権の伸張と擁護において行っている努力の成果を歓迎した、とも言っている。(UN Security Council Resolutions, 20 Oct. 2021; UN What’s in Blue, 29 Oct. 2021; Mapexpress, 29 Oct. 2021)
https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/N21/313/96/PDF/N2131396.pdf?OpenElement
https://www.securitycouncilreport.org/whatsinblue/2021/10/western-sahara-minurso-mandate-renewal.php

http://www.mapexpress.ma/actualite/opinions-et-debats/sahara-marocain-nouvelle-resolution-du-conseil-securite-confirme-continuum-du-processus-tables-rondes-m-hilale/

ユネスコの執行委員会にモロッコ落選
 11月17日(水)に行われた58ヶ国の政府代表で構成されるユネスコの執行委員会(Executive Board)の選挙でモロッコが落選したことは関係者に驚きでもって受け止められている。現ユネスコ事務局長オードレ・アズレ氏は父親がユダヤ系モロッコ人で国王にも近いアンドレ・アズレ氏である等、モロッコは重要なパートナーであった。加盟国193ヶ国のうち100票が必要であるが、クウェートが153票、ヨルダンが126票獲得したのに対し、モロッコは100票に満たなかった。理由としてはペガサス・スパイウェア問題でモロッコが各国の政治家や外交官をスパイしていたとの疑いを持たれ評判を落としたこと、モロッコのユネスコ代表部の重要なスタッフ2名が代表部を去って戦力喪失したこと、そして大使自身とオードレ・アズレ事務局長との関係が見えすぎていたこと、が考えられる。(Africa Intelligence, 19 Nov. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/11/19/allie-d-audrey-azoulay-le-maroc-perd-son-siege-au-conseil-executif-de-l-unesco,109706201-art

東ティモールの連帯活動
 東ティモール政府は西サハラの自決権支援を表明しており、サハラ・アラブ民主共和国の大使館をおいている。マライニン・アッバ氏(Malainin Abba)が駐在大使を務めている。10月6日、いくつかの政党と市民社会組織が一緒になってスルターナ・ハイヤさんへの連帯を表明する声明を発表した。10月18日(月)、東ティモール国会は「西サハラ自決権住民投票支援議会委員会」の設置を決議した。(Sahara Press Service, 8 Oct. 2021, 19 Oct. 2021)
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/10/06/35612.html
https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/10/19/35845.html

【アルジェリア】
アルジェリアがモロッコ経由ガスパイプラインを停止
 11月1日(月)、アルジェリアのテブン大統領は、スペインへの天然ガス送付に使っていたモロッコ国内を通るパイプラインの使用を停止するよう命令した。10月末でパイプラインの使用契約が切れるため更新するかどうかが注目されていたが、更新しないことにしたものだ。アルジェリアは8月24日にモロッコと断交すると発表していた。モロッコ側はパイプラインの契約更新を望んでいた。スペインはアルジェリアの天然ガスに大きく依存しているが(昨年はスペインが輸入した天然ガスの44.9%がアルジェリア産)、モロッコ経由とは別にメドガス(Medgaz)海底パイプラインを通じても輸入している。そちらは継続されるが容量が小さい。ガス価格の上昇が続くヨーロッパが冬を迎えるこの時期、スペインの懸念は高まっている。アルジェリアはタンカーによる輸送も提案している。(Bloomberg, 1 Nov. 2021; Africanews, 1 Nov. 2021)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-11-01/spain-s-algerian-gas-imports-via-morocco-stop-as-deal-expires
https://www.africanews.com/2021/11/01/algeria-to-halt-gas-exports-to-spain-via-morocco/

参考過去記事:
・西サハラ友の会通信 No. 19(2021.09.19)「アルジェリア、モロッコと断交」、「アルジェリア・モロッコを通るガスパイプライン」

モロッコの航空機の禁止
 アルジェリアは、9月22日(水)、モロッコの軍・民間航空機及びモロッコに登録している航空機に対してアルジェリアの空域の飛行を禁止すると発表した。コロナ禍にあってモロッコ・アルジェリア間の飛行機は飛んでおらず、影響を受けるのはモロッコ航空がチュニジアに飛ばしている15フライト分だけになりそうだ。モロッコはそれを地中海経由にルート変更する予定だ。(DW, 23 Sep. 2021)
https://www.dw.com/en/algeria-bans-morocco-from-its-airspace-amid-growing-tensions/a-59268563

【モロッコ】
ギニアの軍クーデターのモロッコへの影響
 9月5日に起きたギニアの軍事クーデターの首謀者、ママディ・ドゥンブヤ大佐が10月1日に軍事政権の暫定大統領に就任した。拘束されている前大統領アルファ・コンデはムハンマド6世モロッコ国王の重要な同盟者だったので、モロッコには経済的にも政治的にも影響があるかも知れない。ムハンマド6世の持株会社アルマダ(Al Mada)はマナジェム(Managem)というギニアの鉱山会社の最大の株主として1億7600万ドルを投資している。現在、様子見のため金の輸出は止まっている。またアルマダはセメント会社のラファルジュ・オルシム・ギニア(LafargeHolcim Guinea)の筆頭株主でもある。他にもモロッコのギニアへの投資は種々あり、ギニアはモロッコの食品の主な輸出先でもある。モロッコにとって心配なのはコンデ前大統領がモロッコの西サハラ支配の強力な擁護者だったことだ。ギニアは2020年にダーフラに最初の領事館を開いた国々の一つでもある。モロッコはアルジェリアがこのクーデターを利用してギニアに接近するのではないかと心配している。(Africa Intelligence, 22 Sep. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/09/22/managem-lafargeholcim-bcp–comment-rabat-tente-de-securiser-son-business-a-conakry,109692476-eve

モロッコ王国軍司令官の交代
 モロッコ王国軍の事実上のトップとなる監察長官(Inspector General)にベルヒール・エル=ファールーク(Belkhir El Farouk)中将(74才)が就任した(9月16日)。エル=ファールーク中将は40年以上も西サハラ方面軍の司令官を務め、ゲルゲラート封鎖解除作戦やドローンを使ったポリサリオ憲兵隊長殺害を指揮した人物である。前監察長官が健康上の理由で引退したのに伴い、国王に任命されたが、西サハラ方面司令官も継続して兼任する。王国軍の最高司令官兼参謀総長は国王自身なので、ナンバー2となる監察長官が軍人としてはトップになる。(Africa Intelligence, 24 Sep. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/09/24/commandement–avec-le-general-el-farouk-mohammed-vi-joue-la-continuite-au-sahara-et-avec-washington,109692898-art

モロッコが軍事的手段を強化
 ムハンマド6世はモロッコの南部地域(「西サハラ」の意味)の国境防衛のためには軍事的手段も辞さない考えだ。まず、国王は首都・王室警備の担当を王室憲兵隊から軍兵士にかえた。また、ベルヒール・エル=ファールーク中将の監察長官就任もアルジェリアに対する牽制と考えられる。モロッコの国防費は諸外国と比べてもGDPに対する割合が高い。ストックホルム平和研究所の2018年版報告によると、対GDP比でイスラエルが4.3%、米国が3.2%、トルコが2.5%で、モロッコは4.5%である。(Middleeast Eye, 30 Sep. 2021)
https://www.middleeasteye.net/fr/opinion-fr/algerie-maroc-guerre-sahara-occidental-crise-diplomatique-affrontement

地雷からドローンへ:モロッコ南部国境防衛政策の転換
 モロッコ軍が南部のアルジェリアとの国境の地雷除去に乗り出した。2,000-3,000万ドルで地雷除去プロジェクトが入札にかけられている。しかし、地雷を除去した後はドローンで一帯を監視するようだ。この間モロッコはイスラエル製ドローンを改良したフランス製ドローンとトルコ製ドローンを購入している。一方、北部のアルジェリアとの国境沿いにも多数の地雷が存在する。アルジェリア戦争の際フランスが敷設したものだ。アルジェリア軍はチュニジアとの国境沿いの地雷撤去を完了させたが、モロッコとの国境沿いのものはまだで、今でも時折農民が犠牲になっている。モロッコ側が2月にフィグイグ(Figuig)近くで地雷除去作業を行った際、アルジェリアはモロッコがこの地に農民を定着させようとしていると疑い、そこにいたモロッコ人農民を強制退去させた。実際、そこはアルジェリア領であるが、アルジェリアは長い間そこでモロッコ人がデーツを採取するのを許容していた。それが突然、強制退去させたのであった。(Africa Intelligence, 30 Sep. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_politique/2021/09/30/pour-verrouiller-sa-frontiere-avec-alger-rabat-fait-la-bascule-des-mines-aux-drones,109694929-eve

モロッコ・ナイジェリア間のガスパイプライン構想
 10月24日(日)モロッコの新聞が、ナイジェリア・モロッコ間のガスパイプライン建設構想のために会社が設立されそうだと報じた。それによると、ナイジェリアが産出する天然ガスをベニン、トーゴ、ガーナ、コートジボワール、リベリア、シエラレオネ、ギニア、ギニア・ビサウ、ガンビア、セネガル、モーリタニアを通してジブラルタル海峡のタンジェまで全長5,660kmに及ぶパイプラインを敷設するというプロジェクトで25年、250億ドルかかるという。タンジェからスペイン、さらにはヨーロッパへとガスを供給する計画だとのこと。アルジェリアがモロッコ経由でスペインにガスを送っていたパイプラインの使用を停止したことに対する対抗措置であるとともに、ロシアからのガス供給への依存を減らしたいヨーロッパの思惑もある。ナイジェリアはスペインにとってすでに3番目(米国、アルジェリアに次ぐ)のガス輸出国となっている。天然ガス開発は、イスラエルのRatio Petroleum社に委託されている。構想されたパイプラインは一部カナリア諸島付近で海を通るが、そこはスペインとモロッコが領海線を争っている部分である。(Pipeline Technology Journal, 26 Oct. 2021; La Provincia, 1 Nov. 2021)
https://www.pipeline-journal.net/news/morocco-process-setting-firm-nigeria-gas-pipeline-project
https://www.laprovincia.es/canarias/2021/11/01/nigeria-marruecos-uniran-megagasoducto-bordeara-59031733.html
https://www.eldia.es/canarias/2021/11/01/nigeria-marruecos-uniran-megagasoducto-bordeara-59031130.html

以上。