EU裁判所(一般裁判所)でポリサリオ戦線が勝訴 EUモロッコ農水産品協定・漁業連携協定裁判

2021年9月29日

 本日、EU裁判所の一審裁判所である一般裁判所(General Court)で、ポリサリオ戦線が2019年、EU理事会の決定の無効化を求めて起こした訴訟において、ポリサリオ戦線側の言い分がほとんど認められる画期的な判決が出された。
 訴訟(ケース番号 Case T-279/19)は、EUモロッコ農水産品協定とEUモロッコ漁業連携協定を承認したEU理事会の2つの決定を違法と訴えたものである。
 判決は、ポリサリオ戦線に原告資格を認め、それを西サハラ人民の代表と認定し、西サハラはモロッコとは明らかに異なる地域であるとした上で、EU側は西サハラを対象地域に含むと明確に記したモロッコとの協定締結において、協定の影響を受ける第三者である西サハラ人民の承諾が必要であるにもかかわらず、その要件を尊重しなかったと述べた。EUは、西サハラ住民諸団体の承認を得たと主張したが、EUが取った措置は西サハラ人民の承諾を得たものとは解釈できないと述べた。1)
 ロイターによると、判決を受けて、EUとモロッコは双方はこれからも貿易を続けるという声明を発表した。モロッコ外交筋によると、EU側が控訴することを期待しているという。2)
 ベルギーの拠点を置くNGO「西サハラ資源ウォッチ」は、判決はこれまでのEU裁判所の過去の判例から、予想できたと述べている。3)
 今回の判決で、EUの司法的立場は一段と明確になった。それは、西サハラはモロッコではなく、モロッコとの協定に西サハラを含む場合は、西サハラ人民の代表と協議しなければならない、そして自決権に関して西サハラ人民を代表するのはポリサリオ戦線である、というものである。

1) General Court of the European Union, Press Release No. 166/21, 29 September 2021.
https://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2021-09/cp210166en.pdf

2) Reuters, “EU court annuls EU-Morocco trade deals over Western Sahara consent, September 29, 2021.
https://www.reuters.com/world/europe/eu-court-annuls-eu-morocco-trade-deals-over-western-sahara-consent-2021-09-29/

3) Western Sahara Resource Watch, “BREAKING: Court annuls EU deals in occupied Western Sahara”, 29 September 2019
https://wsrw.org/en/news/court-orders-halt-to-eu-deals-in-occupied-ws

以上。

松野明久