西サハラ友の会通信 No. 19

 今回の焦点は、アルジェリア新政権の誕生、アルジェリア・モロッコの断交、モロッコ議会選そして政権交代といったマグレブ情勢の動向にあります。ムハンマド6世国王は「決裂外交」と評される攻撃的な外交戦術をとっており、ドイツ、スペイン、フランス、EU等との軋轢を生み、アルジェリアによる断交を招きましたが、意に介していないようです。議会選で王党派が勝利し、国王の支配体制はますます盤石となりました。一方、アメリカはトランプ政権の主権承認をひっくり返さないのですが、国連の仲介努力に復帰し、国際社会は新しい西サハラ特使の任命をモロッコに受け入れさせました。結局、モロッコも振りかざした剣を納めざるをえなかったということなのでしょう。ただ、事態は振り出しに戻ったにすぎません。今後、国際社会は一致した態度でモロッコに迫れるのでしょうか。10月の安保理でのMINURSO延長の議論が注目されるところです。

No. 19 目次

【資源略奪】
・フランボ・ロジック号、門司港にリン鉱石を運んだのか?
・IVS Hayatakaがリン鉱石を積むか?
・一般裁判所の判決は9月29日の予定
・欧州議会農業村落開発委員会で、EUのやり方を非難

【西サハラ/占領地】
・元政治囚ムバレク・ダウディの死を悼む
・活動家スルターナ・ハイヤに対する殺害の脅迫
・シエラレオネ、ダーフラに領事館
・ダーフラ港の工事進む
・モロッコの「サーフィン外交」

【国際】
・国連事務総長、新MINURSO団長を任命
・国連の西サハラ問題特使、決まる
・ペルー国際法学会理事会の声明
・アフリカ連合、西サハラでの選挙監視要請を拒否
・ペガサス、オランダ議会でも質問
・ボリビア、RASDと外交関係再開

【アルジェリア・モロッコ断交】
・アルジェリア、モロッコと断交
・アルジェリア・モロッコを通るガスパイプライン

【モロッコ】
・モロッコ南部ゲルミンでサハラーウィ逮捕
・モロッコの下院選挙、政権交代
・モロッコ、RNIから首相誕生
・モロッコとドイツ、連絡は維持
・モロッコ、「アフリカとのコンパクト」会議に不参加
・モロッコ、イスラエル製機器装備の偵察機を購入
・モロッコ・イスラエル、正式外交関係樹立
・モロッコ、トルコから軍用ヘリを購入

 

【スペイン】
・スペインの農家、モロッコ産野菜果物の流入に悲鳴
・スペインとEUモロッコ漁業協定
・スペイン、西サハラと「セウタ、メリジャ」を取引か?

【資源略奪】
フランボ・ロジック号、門司港にリン鉱石を運んだのか?
 フランボ・ロジック(Franbo Logic)号は7月13日にエル=アイウン港を出発し、8月17日に門司港に到着した。西サハラのリン鉱石を積んでいたと思われる。西サハラ資源ウォッチは伊藤忠にこのリン鉱石の輸入者かどうかを確認するメールを送ったが返事はないとのことである。(西サハラ資源ウォッチからの連絡)

IVS Hayatakaがリン鉱石を積むか?
 9月10日にベルギーのアントワープからエル=アイウンに到着したばら積運搬船があり、名前はIVS Hayatakaで船籍はパナマであると、サハラ通信社が伝えた。日本海運集会所のホームページによると、船主は住所が伊藤忠東京本社内におかれているIndigo Marine Shipping SAである。この船もおそらくリン鉱石を積むものと予想される。現在、港の沖合でうろうろしており、着岸できるのを待っているようである。(Sahara Press Service, 6 Sep. 2021; 日本海運集会所)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/09/06/35103.html
https://www.jseinc.org/newship/detail.html?ID=985

一般裁判所の判決は9月29日の予定
 ポリサリオ戦線がEU評議会を相手におこした訴訟の一般裁判所の判決が9月29日に言い渡される予定である。欧州司法裁判所は、EUモロッコ農水産品協定とEUモロッコ漁業協定がいずれも西サハラを含むことはできないとの判決を下したが、EUはそれに反発し、西サハラを明確に含む新協定を作った。国際法及び欧州司法裁判所の判決に従えば、西サハラの資源開発には西サハラ人民の承諾が必要だが、EUは市民や業者との協議を行った等と主張し、新協定締結を推し進めた。ポリサリオ戦線は協議が必要な条件を満たしていないとして、新協定の無効を訴えた。その判決が言い渡される。(Sahara Press Service, 8 Sep. 2021)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/09/08/35124.html

欧州議会農業村落開発委員会で、EUのやり方を非難
 9月1日(水)に開かれた欧州議会農業村落開発委員会で、何人かの議員がEUによるモロッコ占領下の西サハラの資源略奪問題を取り上げ、非難した。また、モロッコによる激しい水資源収奪で西サハラの地下水の水位が毎年2メートルも低下しているという問題も取り上げた。(Sahara Press Service, 2 Sep. 2021)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/09/02/35040.html

【西サハラ/占領地】
元政治囚ムバーラク・ダーウーディの死を悼む
 元政治囚ムバーラク・ダーウーディ(Mbarek Daoudi)が亡くなった。彼は2013年に彼の子ども5人と一緒に逮捕され、2019年3月28日に釈放された。彼は1970年代と1980年代の虐殺についていくつかの大量埋葬地を知っていた。当局は彼がそうした情報を広めることを恐れ、彼を逮捕したのだ。妻は一人家に残され、絶え間ないハラスメントを受けた。拘禁中の拷問や医療的措置の無視によって健康を害していた。(Por un Sahara Libre, 9 Sep. 2021)
https://porunsaharalibre.org/2021/09/09/fallece-el-expreso-politico-saharaui-mbarek-daoudi/

活動家スルターナ・ハイヤに対する殺害の脅迫
 サハラーウィ人権委員会は、8月22日(日)にサハラーウィ活動家スルターナ・ハイヤ(Sultana Khayya)と家族に対してモロッコ治安当局が行った弾圧を非難し、赤十字国際委員会の介入を要請した。スルターナ・ハイヤは現在自宅軟禁状態におかれており、今回の弾圧について、「モロッコの治安当局は、私がもし政治的立場を表明し続け、占領された都市におけるサハラーウィの問題を隠そうとする占領当局の試みに挑戦し続ければ、殺害も辞さないとはっきり脅した」と語った。(All Africa, 23 Aug. 2021)
https://allafrica.com/stories/202108240215.html

シエラレオネ、ダーフラに領事館
 8月25日(木)シエラレオネはラバトに大使館を開設し、8月30日(月)にダーフラに領事館を開設した。就任したシエラレオネの総領事はザイナブ・カンディ氏(Zainab Candy)。これで西サハラに開設された領事館は25となった。(Agence Afrique, 30 Aug. 2021)
http://www.agenceafrique.com/30117-maroc-sahara-la-sierra-leone-a-ouvert-officiellement-ce-lundi-son-consulat-general-dakhla.html

ダーフラ港の工事進む
 新しいダーフラ港「ダーフラ・アトランティーク(Dahla Atlantique)」建設事業がモロッコの企業、SGTM-Somagecに与えられた。総額120億ディルハム(11億ユーロ)の事業だ。一方、エル=アイウンの港の拡張工事もANPによって行われている。また、ANPは西サハラの南、ゲルゲラートに近いラムヒーリーズ(Lamhiriz)の小規模の漁港の浚渫工事も行っている。これは戦略的に重要な事業で、ポリサリオ戦線側が道路を封鎖したゲルゲラートを経由することなく、モーリタニアの水域で獲れた魚を水揚げすることができる。ゲルゲラートの封鎖はモロッコ国軍・警察が排除したが、ANPは浚渫作業を進めている。問題はまだその港へのアクセスルートが確保されていないこと。ただ、36ヘクタールの工業団地が姿を現しつつある。(Africa Intelligence, 31 Aug. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_business/2021/08/31/dakhla-laayoune-lamhiriz–rabat-investit-dans-la-facade-portuaire-saharaouie,109687477-art

モロッコの「サーフィン外交」
 「サーフィン外交(Surf Diplomacy)」というのは、ダーフラの海岸をカイトサーフィンのメッカとして売り出し、海外資本を誘致することで西サハラへ占領の既成事実化を進めようという、モロッコ外交の一手法を指す。それに乗ったのがイギリスの億万長者でヴァージングループ総裁のリチャード・ブランソン(Richard Branson)である。マラケシュに「カスバ・タマドット(Kasbah Tamadot)」というリゾートホテルを所有し、そこで過ごした後、初めてダーフラを訪れ、ムハンマド6世国王の従姉妹であるヌフィーサ・エル=ヤアコービー王女所有のホテル、ヴァガボンド・オーシャン(Vagabond Ocean)に宿泊し、カイトサーフィンを楽しんだ。ヌフィーサ王女こそ「サーフィン外交」の主人であり、リチャード・ブランソンは大のカイト愛好者なのである。ブランソンはヴァージン・カイトサーフ世界選手権を主宰していたが、2015年ムレー・エル=ハサンのカイトボーディング世界選手権のスポンサーを務めた。今やヴァージンの選手権はなくなったが、後者は王室のバックアップを受けて継続している。今年、ドイツのグローバル・カイトスポーツ協会(GKA)は10月27日から31日にかけてダーフラでカイトボーディング世界選手権を行うことを決定している。(Africa Intelligence, 7 Sep. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_business/2021/09/07/entre-kitesurf-et-famille-royale-richard-branson-revient-sur-terre-a-dakhla,109689000-art

【国際】
国連事務総長、新MINURSO団長を任命
 8月27日、アントニオ・グテーレス国連事務総長はロシア人のアレクサンドル・イヴァンコ(Alexander Ivanko)氏を新MINURSO団長に任命した。カナダの外交官だったコリン・スチュワート氏と交代する。 イヴァンコ氏は2009年からMINURSOの事務長(Chief of Staff)を務めているので、西サハラはよく知っている。イヴァンコ氏はロシアの大学でジャーナリズムを学んだ後、ロシアの新聞記者としてアフガニスタンや米国に駐在した。その後、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける国連報道官(1994-1998年)、欧州安全保障協力機構(OSCE)の報道の自由代表のシニアアドバイザー(1998-2005年)を経て、国連コソボ暫定行政ミッション(2006-2009年)の広報部長を務めた。(UN, 27 Aug. 2021, SG/A/2060)
https://www.un.org/press/en/2021/sga2060.doc.htm

国連の西サハラ問題特使、決まる
 国連の西サハラ問題特使として候補にあがっていたスタファン・デ・ミストゥラ氏(Staffan de Mistura)をモロッコが受け入れた。国連の発表はまだだが、モロッコの通信社が報道した。ミストゥラ氏はスウェーデンとイタリアの2つの国籍をもち、イタリアで外交官を務め、国連シリア特使を務めた。現在74才。ポリサリオ戦線は2021年4月の段階で了承していたが、モロッコが返事を渋っていた。(Sahara Press Service, 16 Sep. 2021)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/09/16/35230.html

ペルー国際法学会理事会の声明
 ペルー政府は9月8日にサハラ・アラブ民主共和国の承認(正確には再承認)を行った。それについて、ペルー国際法学会(SPDI)理事会は、9月12日、国際法学会としての見解を発表した。政権交代によってRASDを承認したり、承認を取り消したりといった国が相次ぐ中、国際法学者の見解として注目に値する。ちなみに、同学会長だったオスカー・マウルトゥア氏(Oscar Maurtua)はこの8月20日にペルーの外務大臣に就任している。
 学会の見解によると、まず事実としては、1984年8月16日にフェルナンド・ベラウンデ・テリー政権がサハラ・アラブ民主共和国を承認し、1987年5月5日にアラン・ガルシア政権が外交関係を樹立した。その後1996年9月フジモリ政権がサハラ・アラブ民主共和国との関係を停止すると発表し、この度、ペドロ・カスティジョ政権になって、9月8日、両国は外交関係を再び樹立すると合意した。本理事会の見解は、西サハラの自決権は1975年の国際司法裁判所の勧告的意見で示されており、サハラ・アラブ民主共和国が国際法の主体として存在していることは証明済みであるというものである。そもそも、国家承認は宣言的な性格のものであり、国家の成立要件ではない。また、同共和国を認めない国もポリサリオ戦線の存在は認めている。国連は西サハラを非自治地域と認定し、住民投票を行うべくMINURSOを展開し、スペインはモロッコによる併合を認めていない。ペルー政府がいかなる決定を行おうと、事態が併合であるという事実は変わらないのである。(Con Nuestro Perú, 12 Sep. 2021)
https://www.connuestroperu.com/actualidad/pronunciamientos/73366-spdi-realiza-precisiones-sobre-relaciones-con-la-republica-arabe-saharaui-democratica

アフリカ連合、西サハラでの選挙監視要請を拒否
 モロッコは9月8日に議会選挙を行った。それに先立ち、西サハラでも選挙を行うのでアフリカ連合に西サハラへの選挙監視団の派遣を要請していたが、アフリカ連合は9月4日にそれを拒否した。(Sahara Press Service, 4 Sep. 2021)
http://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/09/04/35067.html

ペガサス、オランダ議会でも質問
 オランダ議会でもイスラエル製のスパイウェア「ペガサス」について議員が質問した。ヤスペル・ファン・デイク議員は内相にモロッコとの関係を再考するように求めた。(Por un Sahara Libre, 5 Aug. 2021)
https://porunsaharalibre.org/2021/08/05/netherlands-parliamentary-questions-about-pegasus-and-morocco/?lang=en

ボリビア、RASDと外交関係再開
 9月16日、ボリビア政府は2020年1月2日に取り下げられたサハラ・アラブ民主共和国に対する承認を復活させると発表した。RASDのサーレム・ウルド・サーレク外相のボリビア訪問を機になされたもので、かつて取り下げた判断を「軽率」なものだったと評した。(Sahara Ocidental Informação, 16 Sep. 2021)
http://aapsocidental.blogspot.com/2021/09/a-bolivia-restabelece-relacoes.html?m=1

【アルジェリア・モロッコ断交】
アルジェリア、モロッコと断交
 8月24日(火)、アルジェリアはモロッコと外交関係を断つと発表した。このニュースは地域の重大ニュースであるので、日本でも報道されている。ラムタン・ラマムラ新外相は記者会見で、モロッコがペガサススパイウェアを使ってアルジェリア当局者をスパイしていたこと、モロッコがアルジェリア内の分離運動を支援していること、そして西サハラ問題等を理由にあげた。(Reuters, 25 Aug. 2021)
 発端のひとつは8月9日のアルジェリア北部カビール地方の山火事である。熱波を背景に起きた山火事で90人が死亡。その内33人は軍兵士。アルジェリアの公安部(DGSN)はパリを拠点とするカビール自決権運動(MAK)が山火事に関係しているとみている。また、ロンドンに拠点をおくイスラム保守運動「ラシャド運動」も関係しているとみている。この2つの団体はアルジェリアではテロ組織に指定されている。
 7月には、モロッコの国連代表部がカビール自決権運動を支援する文書を非同盟諸国加盟国に配布したことにアルジェリアが反発し、在モロッコアルジェリア大使を引き揚げるというできごとがあった。(France24, 18 Aug. 2021)
https://www.reuters.com/world/algeria-says-cutting-diplomatic-ties-with-morocco-2021-08-24/
https://www.france24.com/en/live-news/20210818-algeria-to-review-morocco-relations-after-hostile-acts

アルジェリア・モロッコを通るガスパイプライン
 アルジェリアからヨーロッパに天然ガスを運ぶパイプラインはモロッコを通っている。それはデュラン・ファレル(Durand Farrel)パイプラインと呼ばれ、アルジェリア内の520km、モロッコ内の540kmを走っている。モロッコの炭化水素・鉱山事務所(ONHYM)は、このパイプラインの契約期限が10月31日にやってくるが、その更新に賛成であると述べた。スペインはアルジェリアのベニ・サフとスペインのアルメリアを結ぶメドガス(Medgaz)と呼ばれる別なパイプラインからも天然ガスの供給を受けている。モロッコとアルジェリアの関係が史上最悪のレベルとなる中、ヨーロッパへのガス供給は確保されたかたちだ。(Swissinfo/EFE, 20 Aug. 2021)
https://www.swissinfo.ch/spa/marruecos-gasoducto_marruecos-a-favor-de-mantener-el-gasoducto-argelino-que-suministra-a-espa%C3%B1a/46883170

【モロッコ】
モロッコ南部ゲルミンでサハラーウィ逮捕
 「モロッコ刑務所のサハラーウィ囚人の保護連盟」によると、9月14日、モロッコ南部の都市ゲルミンで、3人のサハラーウィ活動家が逮捕された。ゲルミンではサハラーウィによる抗議デモがあり、それとの関連で逮捕されたと思われるが、家族は彼らはデモに参加していなかったと言っている。3人とは、ジャラールアブドゥッラー・バシール・ブーシャアブ(Jalal Abdullah Bashir Bouchaab)、ハムザ・ブーフリーガ(Hamza Aayad Bouhriga)、ジャマール・イブラーヒーム・ハサン・アハルーシュ(Jamal Ibrahim Hassan Aharouch)。16日に拘禁が延長された。(LPSPMP, 16 Sep. 2021)

モロッコの下院選挙、政権交代
 9月8日、モロッコの下院選挙が行われ、暫定結果が発表された。それによると、それまで第一党で首相を出していたイスラーム主義の「公正開発党(PJD)」が大幅に議席を減らし、王党派の独立国民連合(RNI)と民族主義保守派のイスティクラール党(PI)が躍進した。同じく王党派の真正近代党(PAM)は議席は減らしたが2位であり、政権に参加する可能性が高い。注目株は、PAMの党首でムハンマド6世のアドバイザーであるフアド・アリ・エル=ヒマ(Fouad Ali el-Himma)である。このところの西サハラ問題をめぐるモロッコの強硬な外交姿勢を率いているのは彼である。モロッコ外交はドイツ、スペイン、フランス、EU、国連に対して「決裂」を仕掛けて、揺さぶりをかけている。アメリカが西サハラへのモロッコの主権を認めたことを振りかざし、他もそれに続くよう脅しているのである。(中東調査会・中東かわら版 No. 59 モロッコ:下院選挙の暫定結果; Africa Intelligence, 7 June 2021)
https://www.meij.or.jp/kawara/2021_059.html
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_politique/2021/06/07/du-sahara-aux-medias-le-conseiller-royal-el-himma-seul-maitre-a-bord-au-palais,109670458-ge0

モロッコ、RNIから首相誕生
 9月10日、国王は先の選挙で議会第一党となった独立国民連合(RNI)の党首、アジーズ・アハンヌーシュ氏(Aziz Akhannouch)を首相に任命した。これから連立政権の構築に取りかかる。アハンヌーシュ氏は推定20億ドルの資産をもつとされるモロッコでも屈指の大富豪で(ちなみに国王の資産は57億ドルと推定)、2007年から2021年まで農相を務めた。2016年から同党の党首を務めている。アハンヌーシュ氏の妻、サルワ・イドリッシ夫人(Salwa Idrissi)も有名な実業家で、フェンディ、グッチ、ラルフローレン、ザラ、ギャップなど名だたるファッションブランドのモロッコでの展開を手がけている。(中東調査会・中東かわら版 No. 61 モロッコ:ムハンマド6世国王が新首相を任命; Forbes, 13 Sep. 2021)
https://www.forbes.com/sites/daviddawkins/2021/09/13/who-is-aziz-akhannouch-the-billionaire-tapped-to-become-moroccos-next-prime-minister/?sh=67f97ec4552a

モロッコとドイツ、連絡は維持
 モロッコの対ドイツ強硬路線が続いている。在ラバトドイツ大使は7月に帰国してしまったが、両国政府は連絡を維持している。ドイツは新たにThomas Peter Zahneisenを大使として申請しているが、モロッコはまだ承認していない。6月にベルリンで行われたリビア問題の会議への出席を、モロッコ代表団は現地到着後、会議の1時間前に取り止めた。しかし、両国外相は電話で話し、協力事業を再開することで合意した。まずは水道事業関連で120億ユーロがモロッコに渡ることになる。(Africa Intelligence, 26 July 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/07/26/berlin-n-a-plus-d-ambassadeur-a-rabat-mais-les-contacts-reprennent-en-coulisses,109681713-art

モロッコ、「アフリカとのコンパクト」会議に不参加
 悪化するモロッコ・ドイツ関係を背景に、モロッコは8月27日にベルリンで開催された「アフリカとのコンパクト(Compact with Africa)」会議に参加しなかった。この会議はG20議長国たるドイツのイニシャティブで2017年に始まり、今回が3回目となる。アフリカの十数カ国が参加し、モロッコは初回からのメンバーであるが、今回の欠席はモロッコの強硬路線が継続していることを意味している。(Africa Intelligence, 3 Sep. 2021)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/09/03/mohammed-vi-boude-le-dernier-compact-with-africa-de-merkel,109688503-art

モロッコ、イスラエル製機器装備の偵察機を購入
 2019年1月、モロッコは米国ガルフストリーム社からG550のISR/EW型(偵察機)を購入する協定を結んだ。搭載される偵察装備は明らかにされていないが、業界筋によると、イスラエル・エアロスペース社(IAI)とその子会社ELTAが提供するものであるとされる。同社のG550偵察機を最初に購入したのはシンガポールだった。購入金額は明らかではないが、資金はサウジアラビアによって提供されるとみられている。トランプ政権がモロッコ・サウジ・イスラエルを巻き込んでまとめたもようである。モロッコとイスラエルは相互交流を発展させており、7月にはイスラエル航空とイスレアー航空がテルアビブ・マラケシュ間に、8月にはモロッコ航空がテルアビブ・カサブランカ間に定期便を就航させる。(Defensa, 4 August 2021)
https://www.defensa.com/africa-asia-pacifico/comienza-fase-equipamiento-primer-avion-g550-espia-marruecos

モロッコ・イスラエル、正式外交関係樹立
 ヤイル・ラピドイスラエル外相は両国の連絡事務所オープンに伴う8月12日の記者会見で、モロッコとイスラエルは連絡事務所を2ヶ月以内に大使館に格上げする計画だと語った。(Reuters, 12 Aug. 2021)
 同時に、両国はサイバーセキュリティ分野での協力を促進することを約束している。これに関する協力協定は7月に署名が済んでいる。また、両国は農業技術分野でも協力を進める。イスラエルの砂漠での栽培技術、まぐろ、藻類養殖技術が注目される。イスラエルの実業家たちによると、モロッコ側はアボガド、いわし、トマト等何でもイスラエルに売りたいようだ。(Haaretz, 12 Aug. 2021)
https://www.reuters.com/world/middle-east/israel-morocco-upgrade-ties-open-embassies-israeli-fm-quoted-saying-2021-08-12/
https://www.haaretz.com/israel-news/tech-news/.premium-not-just-nso-israel-morocco-working-together-on-cybersecurity-1.10111595

モロッコ、トルコから軍用ヘリを購入
 イタリアのアグスタ・ウェストランド社が開発しトルコ・エアロスペース工業(TAI)が改良した攻撃ヘリコプター、T129をモロッコがトルコから購入する交渉を進めている。トランプ政権時代にトルコへの制裁から一時交渉が中断していたが、バイデン政権下で制裁が解除された。フィリピンも同機の購入を計画している。モロッコはこれまでトルコのバイラカル社からTB2型ドローンを13機、6億2,600万ディルハムで購入しており、さらにヌロル・マキナ社のEjder Yalcin装甲車の購入を検討している。(Yabiladi, 30 July 2021)
https://www.yabiladi.com/articles/details/112903/apres-levee-veto-americain-maroc.html

【スペイン】
スペインの農家、モロッコ産野菜果物の流入に悲鳴
 スペイン南部沿岸のアルメリア地方の農家は、モロッコ産スイカ、メロン、トマト等の流入に抗議するキャンペーンを行った。アルメリア地方の農家は今年メロンとスイカ栽培で7,500ユーロの損失を被ったと主張する。2021年スペインはモロッコから1億6,500万ユーロ相当のスイカを輸入した。1キロ当たり0.91ユーロである。しかし、アルメリアのスイカは1キロ0.15ユーロでしか売れない。これで農家は意欲をなくしてしまった。
モロッコ産トマトは2019年に285トンが輸入され、2020年には500トンに倍加した。こうしたトマトの流入でアルメリア地方のトマト畑は2,300ヘクタールが消失した。トマトはアルメリアでは唐辛子とスイカに次いで3番目の作物だった。農民たちは、モロッコ政府が西サハラの土地を使って「汚い戦争」をしていることを政治家は理解すべきだと主張する。(El Espanol, 28 July 2021)
https://www.elespanol.com/reportajes/20210728/guerra-marruecos-espana-productores-sandia-pierden-euros/599691214_0.html

スペインとEUモロッコ漁業協定
 スペイン統治時代、スペインはカナリア諸島とアフリカ大陸の間の管轄海域で操業する外国の船にライセンスを与えていた。台湾、韓国、ソ連、日本の船がいた。2019年に発効した4年有効な新たなEUモロッコ漁業協定では、年当たり138隻のEUの船にライセンスが与えられ、その内スペイン船が92隻を占める。その見返りにモロッコが得る資金は4年間で2億800万ユーロである。それは1年分の水揚高に相当する。2019年、EUは4,810万ユーロを支払い、8万トンの水揚げを得た。2020年は5,040万ユーロで、9万トン。残りの2年については、5,510万ユーロを払い、10万トンを得ることができる。実際には、漁獲量の90%は西サハラの水域からのものだとされている。スペインの漁船といっても近くのカナリア諸島の漁船はそこには行かない。すぐにモロッコの偵察艇がやってきて説明もせず港に連れて行かれるからである。また、西サハラ水域のマグロはそのうち枯渇するとみられている。(Diario de Avisos, 4 August 2021)
https://diariodeavisos.elespanol.com/2021/08/espana-y-marruecos-la-historia-de-una-negligencia-que-se-convirtio-en-conflicto/

スペイン、西サハラと「セウタ、メリジャ」を取引か?
 スペインは7月12日に着任した新外相ホセ・アルバレスの下、モロッコとの関係修復のために秘密裏に交渉を行ってきた。その結果、スペインのメディアが外交筋から得た情報では、スペインとモロッコの関係は、ムハンマド6世が言うところの「前例のない段階」に進むことになりそうだ。スペインは今や西サハラについて「タブーも制約もない対話」を提案している。それはつまり、セウタとメリジャへの保証を得ることと引き換えに、モロッコの西サハラへの主権を認めるというものである。スペインとの関係改善と引き換えに、モロッコは在スペイン大使をマドリッドに戻し、セウタに留まっている子どもたちの帰還を受け入れる。(El Español, 23 Aug. 2021)
https://www.elespanol.com/espana/20210823/espana-ofrecera-marruecos-sin-sahara-ceuta-melilla/604189814_0.html

以上。