西サハラ友の会通信 No. 11

 モロッコでは1月28日に国王を最初にワクチン接種が始まりました。中国製ワクチン(Sinopharm)とアストラゼネカ社製ワクチンを使っています。モロッコ占領下の西サハラでも同日に医療関係者からワクチン接種が始まっています。

【最近出た記事】

  1. 長沢美沙子「西サハラとパレスチナの間ー西サハラ政治囚への連帯メッセージー」『詩人会議』2021年2月号(No. 701)、52−61頁。(友の会HPに掲載済み)
  2. しんぶん赤旗「朝の風 西サハラ政治囚への連帯」2021年2月10日。
  3. 松野明久「<世界の潮>西サハラの主権問題ートランプ外交の負の遺産」『世界』2021年3月号、27-30頁。

【停戦危機関連】

  1. マクロン大統領、テブン大統領とムハンマド6世に電話
     1月23日夜のポリサリオ戦線によるゲルゲラート付近での4発のロケット弾発射はエリゼー宮をパニックに陥れ、24日朝マクロン大統領はアルジェリアのテブン大統領とモロッコのムハンマド6世国王に電話をかけ、事態をエスカレートさせないよう要請した。24日のインタビューで、マクロン大統領は西サハラ自治案に対する支持を表明した。一方、テブン大統領との電話会談内容は明らかにされていないが、おそらくポリサリオ戦線に自制するよう促すことを要請したものと思われる。(Africa Intelligence, 27 Jan. 2021)
    https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/01/27/apres-tebboune-macron-telephone-en-toute-urgence-a-mohammed-vi,109638084-ar1
  2. サハラーウィ国民解放軍の攻撃
     西サハラ国防省の戦争報告第89号によると、2月8日(月)、サハラーウィ国民解放軍が、モロッコ南部のワルクズィーズ(Ouarkziz)にあったモロッコ王国軍第9師団第2大隊の偵察ポストを攻撃し、武器、個人文書等を押収した。サハラ通信社(SPS)が報じた。攻撃で、モロッコ側の警備司令官(下士官)アル・ナカ(Al-Naka)を含む3人の警備兵が死亡した。押収した武器は自動銃(番号1-592)、カラシニコフ(番号MH0819とNG8528)。(SPS, 8 Feb. 2021)
    https://www.spsrasd.info/news/es/articles/2021/02/08/31010.html

【主権承認問題】

  1. 新しいパレスチナ政策
     イスラエルの報道によれば、1月26日(火)国連安保理で話をした米国は、パレスチナ政策について、パレスチナへの援助を復活させ、ワシントンのPLO事務所を再開させ、エルサレムの米領事館も復活させると述べた。そして、イスラエルによる併合、入植地建設、家屋破壊、そしてパレスチナによるテロリストの扇動と資金提供に反対するとした。これらの政策のキーパーソンの一人は、イスラエル・パレスチナ担当副国務次官補となったハディ・アミール(Hady Amir)で、国家安全保障会議のイスラエル・パレスチナ担当ディレクターとなったジュリー・ソーヤー(Julie Sawyer)も彼の仲間である。(Axios, 28 Jan. 2021)
    https://www.axios.com/biden-administration-israel-palestine-hady-amr-c35064c3-c9f7-4692-be37-af75cc25a1c2.html
  2. アブラハム合意について
     モロッコのメディアによれば、1月27日、ブリンケン国務長官は、一連のアブラハム合意について記者達を前に「われわれはアブラハム合意を強く支持する」と語った。一方で、それらの合意が結ばれた状況については精査するとも述べた。例えば、アラブ首長国連邦にトランプ政権が約束した武器売却、F-35の問題、モロッコの西サハラへの主権承認について、「こうした約束をまずはっきりと理解したいと思う。新政権発足に際してすべての政策を再検討するというのはよくあること」と述べた。(ledesk, 27 Jan. 2021)
    http://ledesk.ma/encontinu/blinken-annonce-que-les-accords-dabraham-seront-examines-et-esquive-le-cas-du-maroc/
  3. モロッコとイスラエル、2月に相互訪問か
     モロッコのナセル・ブリタ外相とイスラエルのベン・シャバト国家安全保障顧問は電話会談し、関係正常化に向けた作業部会の設置に合意した。作業部会は当分オンラインで開かれるが、2月には両国の代表団が相互に訪問する予定だ。2月には連絡事務所の開設も予定されている。(Yabiladi, 29 Jan. 2021)
    https://www.yabiladi.com/articles/details/105129/accord-maroc-usa-israel-tel-aviv-veut-rassurer.html
  4. ブリンケン・ファキ会談
     1月29日(金)に行われたブリンケン国務長官とファキアフリカ連合委員長の電話会談では、西サハラは議題に上がらなかった。ムーサ・ファキ・マハマト委員長はこの2月に委員長に再選されている。(Yabiladi, 30 Jan. 2021)
    https://www.yabiladi.com/articles/details/105157/sahara-absent-discussions-entre-blinken.html
  5. 上院議員27名がバイデン大統領に書簡
     2月17日、ジム・インホフ議員(共和党)とパトリック・リーヒ議員(民主党)が、25名の上院議員とともにバイデン大統領に書簡を出し、西サハラに対するモロッコの主権を認めたトランプ前大統領の決定を覆し、自決権を行使する住民投票の実施に向けて動くよう求めた。(インホフ氏は上院軍事委員会委員長でもともとはトランプ派で西サハラの長年の支持者。リーヒ氏はトランプ弾劾裁判の裁判長を務めた。)
    https://www.inhofe.senate.gov/newsroom/press-releases/inhofe-leahy-lead-25-colleagues-to-urge-biden-to-reverse-misguided-western-sahara-decision

【西サハラ占領地】

  1. 独立運動家スルターナ・ハイヤさんの闘い
     2月になって占領地での活動への迫害がエスカレートしている。現地活動家たちは「ヒステリックなエスカレーションだ」と表現している。
     スルターナ・ハイヤ(Sultana KhayaまたはKhayya)さんはマラケシュ大学での学生時代からサハラーウィの自決権を主張していた活動家で、2007年に警官に頭を打たれて右目を失明した(眼球が乖離)。昨年11月13日以降、一家もろともブージュドゥールで自宅軟禁の状態に置かれている。2021年2月13日、自宅の屋上で大きな旗を振っていたのを見つけた警官が彼女に石を投げ、頭を殴打した。(今回狙われたのは頭の左側、左目が狙われた可能性もある。)暴力を振るわれている場面がビデオや写真に撮られ、けがをした彼女の写真がネットに出回った。翌日、数十人の女性が連帯の印として家を訪問したところ、警察に追い払われた。スルターナさんの友人であるファティーメトゥ・バービー(Fatimeto Babi)さんとマイムーナ・ハミヤーさん(Fatimeto Babi)も暴力を振るわれた。スルターナさんが抗議すると、同じ警官が彼女の首の後ろを警棒で叩き、彼女は再び気絶した。家族は彼女のけがを心配している。モロッコの病院はサハラーウィ活動家には安全ではなく、警察は自宅に医師を呼ぶことを許さない。(Democracy Now! 16. Feb. 2021, Contramutis, 13 Feb. 2021)
     2月16日、スルターナさん自身、モロッコ国家人権評議会が彼女の健康状態を見るために訪問したと発表しているがまったく嘘であるとの声明を発表した。
     2月17日にはエル=アイウンでもスルターナさんに連帯するデモがあった。(SPS, 17 Feb. 2021)
     以下では彼女が頭を怪我した様子を映像で見ることができる。(スペイン語)
    https://www.abc.es/internacional/abci-agentes-marroquies-agreden-activista-saharaui-sultana-khaya-202102141106_video.html
  2. ムハンマド・サーレム・ファヒームさん殺害
     行方不明になっていた活動家ムハンマド・サーレム・ファヒームさんの遺体が、エル=アイウンの病院の壊れた冷蔵設備付きの遺体安置室で見つかった。それについて一昨年結成されたISACOM(モロッコの占領に反対するサハラーウィ組織)が赤十字国際委員会に調査を要請した。(Por un Sahara Libre, 8 Feb. 2021)
    https://porunsaharalibre.org/2021/02/08/murder-of-mohamed-salem-fahim-isacom-calls-for-an-international-investigation/?lang=en
  3. 活動家ガーリー・ブハッラーさん行方不明
     ガーリー・ブハッラー(Ghali Bouhalla)さんは2月11日午後、モスクで仕事をしていたところをモロッコの特別コマンド部隊に連行された。20分から30分後、25人ほどの兵士・警官が彼の自宅へ彼を連れてやってきて、令状も示さず、ドアを壊して中に入ってきた。家には母と妹しかいなかった。妹のマリヤム・ハマーディさんも人権活動家。兵士・警察は家で西サハラの国旗を見つけるとそれでブハラさんの頭を多い窒息寸前まで首を絞めた。それからまた彼を連れ去って行った。その後行方はわからない。ブハラさんは2011年に旗をもっていたことで逮捕され、2014年に釈放された元政治囚。2月15日(月)に突然裁判に引きずり出されて、生存が確認された。(Por un Sahara Libre, 12 Feb. 2021, SPS, 17 Feb. 2021)
    https://porunsaharalibre.org/2021/02/12/abduction-and-torture-of-mr-bouhalla-saharawi-human-rights/?lang=en
  4. ムハンマド・ナーファア・ブタスフラさん、行方不明
     ムハンマド・ナーファア・ブタスフラ(Mohamed Nafaa Boutasoufra)さんは、エル=アイウンの自宅から誘拐された。現在まで行方がわからない。(Contramutis, 13 Feb. 2021)
  5. ハンガーストライキ、28日に達する
     グデイム・イジークグループ政治囚でティフレト第2刑務所(Tiflet2)にいるムハンマド・ルアミーン・ハッディ(Mohamed Lamin Haddi)さんは1月13日から、家族に近いところの刑務所への移送を要求してハンガーストライキを始め、2月9日の時点で28日目を迎えた。昨日彼を訪れた刑務所付き看護師は、血圧も体重も計らず、ハンストをやめないとカチョ(Kacho)と呼ばれる独房に入れると脅した。ハッディさんは2017年からすでに独房に入れられているが、カチョというのは箱のような小さな独房で換気扇もなく、政治囚に恐れられているものだ。(Por un Sahara Libre, 9 Feb. 2021)
    https://porunsaharalibre.org/2021/02/09/haddi-saharawi-political-prisoner-reaches-28-days-of-hunger-strike/?lang=en

【モロッコ】

  1. 石炭はロシアに依存
     モロッコは石炭の輸入の87%をロシアに依存している、との報道がモロッコでなされている。ロシアはアルジェリア支持、西サハラ問題ではトランプ大統領を批判していたので、警戒心があるものと思われる。2019年は57%だったのが急に増えたもようだ。かつて2012年にはモロッコは石炭の80%を米国から輸入しており、当時ロシア産は15%に過ぎなかった。それが今では首位の座をロシアに譲ってしまった。(Yabiladi, 27 Jan. 2021)
    https://www.yabiladi.com/articles/details/105002/maroc-importe-quasi-totalite-charbon-russie.html
  2. セックス、嘘、ビデオテープ
     フアード・アブドゥムームニー(Fouad Abdelmoumni)氏はマイクロクレジットの専門家で、トランスペアランシー・モロッコの評議員の一人だが、王室の批判者としても知られている。彼によれば2019年から反体制派の人びとに対する中傷キャンペーンを行っており、3人のジャーナリストが性的犯罪で起訴された。メディアはそれらをモロッコ版#MeToo運動の成果として賞賛している。フアード氏の場合、最近、パートナーとのセックスシーンを記録(録画?)され、それを彼の親族宛メールに貼り付けて送られたという。最近こうした手法で当局が体制批判者を貶めている。それだけではなく、体制支持者たちは大政翼賛的な情報を組織的にリツイートするなど、インターネット操作に攻勢をかけている。
     2016年、エル=ジャディーダの女性警官が上司のセクハラを訴えたところ、彼女の給与が支払われなくなってしまった。上司の義兄弟、アブドゥッラティーフ・ハンムーシー氏は国家公安局長(公安のトップ)だったのだ。
     一方、2016年、フランスでレイプで訴えられたモロッコ人歌手、サアド・ラムジャッレド(Saad Lamjarred)の弁護士費用を国王は支払っていた。BBCによると、彼は2010年ニューヨークにてレイプ容疑で逮捕され、保釈中に逃亡・帰国、その後和解。2016年、パリでフランス人女性をレイプしたとして訴えられたが2017年4月に電子タグ付き保釈。モロッコではアルジェリアが仕掛けた罠にはめられたと信じられている。その2年前にもカサブランカで仏系モロッコ人女性がレイプされたと名乗り出た。彼女によると警察に訴えたが家族の圧力で引き下げたという。2018年もフランスでレイプで訴えられ、現在控訴棄却。彼の最大のヒット曲「ボス(LM3ALLEM)」はYouTubeで8億9,000万回以上視聴されている。
    https://www.economist.com/middle-east-and-africa/2021/01/30/moroccos-regime-is-accused-of-blackmailing-critics
    https://www.bbc.com/news/world-europe-45319394
  3. 在外モロッコ人の批判
     在ニューヨークの反体制活動家、カマール・エル=ファフシー(Kamal El Fahssi)氏はアルジェリアラジオ放送のインタビューで、モロッコのイスラエルとの関係正常化を批判した。彼は「モロッコの現体制は長年、植民地主義的・シオニスト運動の手先となり、地域での帝国主義的利益の擁護者となってきた」と批判。また、「無防備なサハラーウィの領土を侵犯し、スペインによる植民地化を引き継いでいる」「国連は西サハラを管轄する委員会をもっており、国際法遵守は放棄できないものだ」と述べた。彼によれば、モロッコは戦闘による敗北については報道管制を敷いているとのこと。(APS, 29 Jan. 2021)
    https://www.aps.dz/monde/116726-le-regime-marocain-sbire-du-mouvement-colonialo-sioniste-dans-la-region
  4. モロッコの汚職認識指数86位に低下
     トランスペアレンシー・インターナショナルが毎年発表する汚職認識指数(Corruption Perception Index)の2020年版が1月28日に発表された。モロッコは180ヶ国中前年の80位から86位に落ちた。同じ86位にはインド、トルコ、東ティモールなどがいる。ちなみにアルジェリアは104位、エジプトは117位、チュニジアは69位。日本は19位、1位はニュージーランドとデンマーク。
    https://www.transparency.org/en/cpi/2020/index/mar
  5. ダーフラ・ゲルゲラートラリーの開催
     モロッコクラシックカー連盟会長ハーリド・カッバージュ(Khalid Kabbaj)は、西サハラに対するモロッコの主権を支持し、米国によるモロッコ主権の承認を祝うため、西サハラの港町ダーフラからゲルゲラートまでを往復するカー・ラリーを、1月29日と30日に実施した。(Africa Intelligence, 1 Feb. 2021)
    https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/02/01/diplomatie-business-et-belles-calandres–le-rallye-petaradant-de-la-fmva-au-sahara,109638983-ar1
  6. イスラエルからの連絡事務所担当者到着
     1月26日、ラバトに置かれるイスラエルの連絡事務所の担当者となるダヴィド・ゴヴリン(David Govrin)が到着した。しかし、モロッコ側はエルサレムに置く連絡事務所の担当者をまだ決めていない。5名候補が挙がっているそうだが、それは機密事項となっている。(Africa Intelligence, 29 Jan. 2021)
    https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord_diplomatie/2021/01/29/mohammed-vi-toujours-sans-chef-de-bureau-a-tel-aviv,109638277-bre

【国際社会】

  1. ストアブランド、欧州企業からの投資引き上げ
     ノルウェーで最大の民間投資会社ストアブランド(Storebrand)は、2020年第4四半期の投資先除外リストを発表し、西サハラで操業するシーメンス・エネルギー社、シーメンス・ガメサ社、エネル社(Enel)への投資を引き上げたことを明らかにした。総額9,210億クローネ(893億ポンド)になる。全部で215社がリストされており、環境、汚職、人権・国際法、タバコ、問題となる武器、石炭、気候関係ロビー、油砂、非持続的パームオイル、大麻といった理由別に分類されている。主にはパレスチナ占領にからむイスラエル企業を多く挙げている。(西サハラとは関係ないが、環境を理由に東京電力、石炭を理由に中国電力、関西電力、九州電力、三井物産が除外されている。)リストは以下のリンクで。
    https://www.storebrand.no/en/asset-management/sustainable-investments/exclusions/conduct-based-exclusions/_/attachment/inline/c00185a1-c1b0-4b0c-a534-29d554b952d1:a45ad3f6a95f85d394775a74fb38d806ea8ba427/45359A%20Q4%20Liste%20over%20Storebrands%20utelukkelser_ENG.pdf
    ニュース自体は以下で。
    https://www.responsible-investor.com/articles/storebrand-axes-siemens-and-enel-over-western-sahara-links-amid-ceasefire-breach
  2. EUの長距離バス協定
     EUと圏外を結ぶ長距離バスに関する協定(InterBus Agreement)がモロッコとの間で結ばれるが、その協定がカバーする領域から西サハラが除外されることになった。かつて、EUはモロッコとの自由貿易協定、漁業協定を結び、そこに西サハラを含むよう新たな交渉を行ったが、今回はそうした過去の政策とは異なり、西サハラを含むための交渉はしないという方針転換を行ったもの。昨年11月、EU司法裁判所がEUモロッコ航空協定に西サハラは含まれないとの裁定を下したことを受け、EUが西サハラを含むよう新たな交渉をモロッコと行わないと決めたことに続くものだ。(WSRW, 26 Jan. 2021)
    https://wsrw.org/en/news/eu-explicitly-excludes-western-sahara-from-bus-deal-with-morocco
  3. 英、モロッコとの友好協定に西サハラ含まず
     EU離脱後の英・モロッコ友好協定に、西サハラは含まれない。キム・ジョンソン議員(労働党)の質問書に対して、ジェームズ・クレヴァリー英外務省中東北アフリカ局長が1月26日付けで回答した。また、回答書では西サハラ産の産品については、英国が西サハラの地位を「未決定(undetermined)」とみなしているので、そのような扱いになるともしている。
    https://www.theyworkforyou.com/wrans/?id=2021-01-18.139167.h
  4. NGO、アイルランドのサン・レオン・エネルギー社を訴える
     グローバル・リーガルアクションネットワーク(Glan)は2018年10月に、西サハラで操業しダブリンに本社をもつサン・レオン・エネルギー社(San Leon Energe)を、OECDのガイドラインに違反しているとOECDアイルランド代表部に訴えた。それについて代表部は、本件を取り上げる相当の理由があるとし審議に入った。もし仲介を希望すればそれも可能で、それができない場合は代表部が勧告を含む報告書を作成する。サン・レオン・エネルギー社側は、現時点では同地域で操業はしていない、以前は選挙で選ばれたサハラーウィ及び非サハラーウィを含む現地全住民の代表者と協議を行ったと述べている。(Irish Times, 29 Jan. 2021)
    https://www.irishtimes.com/business/energy-and-resources/san-leon-energy-under-investigation-for-western-sahara-activity-1.4471091
  5. ワシントンのモロッコ・ロビースト
     ササ・ポスト(Sasapost)というアラブの春後に誕生したウェブサイトが「ワシントンへの巡礼(Pilgrimage [Hajj] to Washington)」と題するコーナーを設け、アラブ諸国の米国におけるロビーストについて詳細に紹介している。米法務省のFARA (Foreign Agents Registration Act) に基づく申告・報告でOnlineで入手可能なデータを基にしている。
     このうちモロッコのロビーストは複数おり、中でもラルフ・ナーンバーガー(Ralph Nurnberger)は重要だ。彼は、米議会用イスラエルロビー団体であるAIPAC (Amerian-Israel Public Affairs Committee) で8年間働き、今ではNurnberger & Associatesを設立している。そこがモロッコのロビーを引き受けている。ナーンバーガー氏はカンザス州選出共和党上院議員ジェームズ・ピアソン(James Pearson)の政治顧問を務め、上院外交委員会のスタッフを務めた。そしてAIPACで働いたときにラビン首相やシモンペレス外相らと知り合いになった。彼の会社がモロッコのために働いたのは2009年から2017年にかけて、オバマ政権の時代だ。その間、テネシー州選出民主党下院議員スティーブ・コーエン氏へのロビーが成功を収めた。コーエン氏は西サハラの紛争解決の「大失敗」をいい、ポリサリオ戦線とアルジェリアを批判し、モロッコの自治案を支持した。2013年、2014年とモロッコを訪問し、国王にも面会している。2016年国務省がモロッコに批判的な人権報告書を出した時、16人の下院議員がモロッコの人権への取り組みを賞賛する手紙を出した。ナーンバーガー氏の会社は2010年から2017年までの間に56万8,000ドルの支払いを受けた。2017年、トランプ政権の誕生とともに議会ロビー活動は終わった。(ということは、民主党政権になったので復活する可能性があるのか。)(Sasapost, 21 Jan. 2021)
    https://www.sasapost.com/ralph-nurnberger-and-morocco/
    https://www.elwatan.com/edition/international/un-rapport-demontre-linfluence-du-lobby-marocain-a-washington-31-01-2021
  6. アフリカ連合、モロッコの2巨大プロジェクトを不承認
     アフリカ連合閣僚執行理事会は2月4日(木)、西サハラ占領地を通って西アフリカ諸国に繋がる2つの巨大プロジェクトを拒否した。2つのプロジェクトとは、光ファイバーと電力配線網である。交通・インフラ・大陸間・地域間インフラ・エネルギー・観光に関する専門技術委員会(STC-TTIIET)において、西サハラのサーレク外相はモロッコの占領を合法化しようとする試みを批判。アルジェリアも2つのプロジェクトが国土を通るというのを知って驚いた。閣僚執行理事会はこれら4件のプロジェクトを専門技術委員会に差し戻した。(SPS, 5 Feb. 2021)
    https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2021/02/05/30871.html
  7. 西サハラで開催されたクランス・モンタナフォーラム
     モロッコ国王がスポンサーとなって占領地西サハラのダーフラで開催されるクランス・モンタナ・フォーラム(団体の拠点はスイス)というのがある。ダボス会議をまねた政財界指導者の会議だ。といって主要国の人びとは特別ゲストとして招待される以外は出てこず、もっぱらモロッコの支援者等が参加し、モロッコ(そして西サハラ)をハブとした西アフリカ開発の構想を打ち上げるという内容。2015年から毎年開催され、2020年は3月18日から21日にかけて開かれた。2021年度は計画されていない。ポリサリオ戦線がこれを批判してきた。わざわざダーフラで開催するなど、西サハラ占領の国際的承認を得るのが目的であることは明白だからだ。以下がそのサイト。
    https://www.cmf.ch/index.php
  8. 西サハラ上空航空路は危険?
     モロッコの占領下にある西サハラ上空は、国際民間航空機関(ICAO)が割り振る飛行情報区(FIR: Flight Information Region)では、カナリア飛行情報区に属する。ただ、砂の壁より東部方面は(概ね)ダカール飛行情報区に属している。2月4日、カナリア飛行情報区は西サハラ上空の飛行を特別に注意するよう警告を発した。以前はこの2つの飛行情報区上にある3つの飛行ルートでFL200(フライトレベルで200フィート)以下、つまり60m以下の飛行をしないよう警告を発していただけだった。しかし、今回の警告はカナリア飛行情報区に入る西サハラ上空全域にわたって飛行を避けるよう警告を発するものだ。また、ダカール飛行情報区(つまり解放区側)の一部についてはFL245(つまり74m)以下、またある部分についてはFL660(つまり201m)以下の飛行を行わないよう勧告している。以上、飛行情報の公開を行っている民間の団体であるOPS Groupが明らかにした。(OPS Group, 8 Feb. 2021)
    https://ops.group/blog/new-airspace-warning-western-sahara/
  9. ドイツのコンチネンタル社、製品納入を停止
     ドイツのコンチネンタル社の子会社であるコンチテック社(ContiTech)は、モロッコ国営リン鉱石会社(OCP)にベルトコンベヤーを供給する契約を更新しなかった。2月10日付け「西サハラ資源ウォッチ」宛の手紙で明らかにした。
     このベルトコンベヤーはリン鉱石採掘地の西サハラのブークラーから100kmある港までを走っている。契約は2020年の6月の段階で切れており、交渉を行っていたが、今回後進しないとの発表に至った。
     2020年9月、ブークラーの採掘用ドリルを提供していたスウェーデンのエピロク社(Epiroc)が提供を停止したことを明らかにしたので、西サハラでのリン鉱石採掘に対する包囲網が狭まったかたちだ。(Western Sahara Resource Watch, 11 Feb. 2021)
    https://wsrw.org/en/news/continental-has-left-occupied-western-sahara
  10. シーメンス・ガメサ社、西サハラの人びととの協議なし
     シーメンス・エネルギー社が67%の株を保有するシーメンス・ガメサ社は、占領地の西サハラでモロッコが運用する風力発電機2機のタービンを提供している。さらに計画中のものが7機ある。2機の稼働中の風力発電機はブークラーの不法なリン鉱石採掘に用いられている。シーメンス・ガメサ社は、2月10日の株主総会で、「政府以外とは話し合いをしていない」ことを明らかにした。西サハラ資源ウォッチはこの「政府」がモロッコ政府かどうかを確認中だ(当然そうだと考えられるが)。
     非自治地域や外国占領下にある地域の資源活用はその地域の住民のためでなければ行うことができないという、資源に対する恒久的主権が国際原則としてある。本来であれば、サハラ・アラブ民主共和国政府と協議して許可を得るべきもので、そうでないとしても、現地住民の正統な代表と認められる代表組織との協議が必要であり、占領者のモロッコ政府としか協議していないというのは、欧州司法裁判所の裁定にも違反する。シーメンス・ガメサ社はノルウェーの投資会社ストアブランドから投資の対象としてはずされた。(Western Sahara Resource Watch, 18 Feb. 2021)
    https://wsrw.org/en/news/siemens-energy-only-relates-to-morocco-in-western-sahara

以上。