西サハラ友の会通信 No. 8

モロッコ占領地の最大都市、エル・アイウン

 大変お待たせしました。7号から1月以上間があいてしまいました。
 さて、モロッコの新型コロナ感染状況は7月後半から、感染確認者数、死者数ともぐっと増え始め、その勢いは衰えていません。9月22日時点で、感染確認者101,743人、死者1,830人となっており、アフリカでは南アフリカに次いで多い国となっています。Johns Hopkins大学によると、西サハラは感染確認者10人、死者1人となっています。
 本日昼の12時30分より、神戸元町映画館でのイスラーム映画祭で西サハラドキュメンタリー「銃か、落書きか」が上映され、ジャーナリストの岩崎有一さんによるトークセッションがあります。もっと早くお知らせすればよかったのですが、申し訳ありません!

【占領地情勢】

  1. アミーナトゥ・ハイダル氏代表の人権団体CODESA解散
     9月2日、2008年以来、アミーナトゥ・ハイダル氏が代表として率いていた人権団体「サハラーウィ人権擁護者の会(CODESA: El Colectivo de Defensores Saharauis de Derechos Humanos)が解散した。解散を発表したリリースによると、11名の運営委員の過半数が、過去2年間運営委員会が開催されない、海外への派遣者に運営委員の意志が反映されない等、会の恣意的な運営に不満をもっており、半数以上が運営委員の辞意表明を行っていることから、解散を決定したと説明されている。(Communique sur la Dissolution du CODESA, 2 Sep. 2020)
  2. 「モロッコの占領に反対するサハラーウィ組織」発足!
     9月20日、占領地のエル=アイウンで「モロッコの占領に反対するサハラーウィ組織(英語:Saharawi Organ Against the Moroccan Occupation)」の設立会議が行われた。「占領に抗するための、団結、継続、闘争」をスローガンに、「殉教者ムハンマド・アブデルアジーズ会議」と題されて行われた。ムハンマド・アブデルアジーズはサハラアラブ民主共和国の大統領を務め、2016年に亡くなった独立運動指導者。活動家ムハンマド・サラーマ・ハミーヤ(Mohamed Salama Hamiya)が会議の議長を務め、開会挨拶を行った。会議は、組織の代表に人権活動家のアミーナトゥ・ハイダル氏を、ムハンマド・サラーマ・ハミーヤ氏を名誉議長に選出し、規約と方針を採択し、総会メンバーとして33名を決定した。また、サハラーウィ人民の自由、独立、尊厳に関する権利を正統な非暴力的手段で擁護すること、サハラーウィ人民の自決に関する不可分の権利を保障しないモロッコ等のあいまいな提案を拒否することを述べ、膠着状態を非難し、国連派遣団(MINURSO)が占領を擁護する場になるべきではないと主張した。そして、国連、アフリカ連合に対して、モロッコ政府、多国籍企業等が行っている西サハラの不法な資源搾取をやめさせるため介入するよう、またサハラーウィ難民への人道支援を継続するよう呼びかけた。(Sahara Press Service:SPS, 20 Sep. 2020)
    https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2020/09/20/27453.html
  3. 政治犯への仕送りを横領か
     モロッコのムール・エル=バルギー/サフィ刑務所の職員が政治囚サーレク・アル=アシーリーへの家族からの仕送りを横領したとの訴えがあった。家族は、3月12日に送金したとのことだが、3月18日に刑務所職員が引きだそうとしたところ、すでに800ディルハム(約9000円)と1000ディルハム(約11300円)が引き出されていた。郵便局は引き出した人の名前を明らかにすることを拒否している。(LPPS, 8 Sep. 2020)
  4. イスラームの祭の食事で政治囚へのいじめ
     モロッコの刑務所内で西サハラの政治囚に対するいじめが横行している。ティフレット(Tiflet 2)刑務所では、8月3日(月)、職員が、グデイム・イジーク政治囚グループのムハンマド・ハッサンナ・アフメド・サーレム・ブーリヤールさん(Mohamed Hassanna Ahmed Salem Burial)に親戚が差し入れとしてもってきた祭日(イード・アル=アドハー:食べ物を分かち合う日)の食事をだいなしにするという意地悪を行った。しかも家族の目の前でなされた。
     また、ブーリヤールさんは8月5日に刑務所職員が房に入ってきて本を押収された。これに抗議してブリアルさんは8月7日、24時間のハンガーストライキを行った。(LPPS, 4 & 7 Aug. 2020)
  5. 西サハラに3番目の太陽光発電施設
     モロッコの再生エネルギー企業マゼン(MASEN)はダーフラでの最初の太陽光発電施設を稼働させる。マゼンはブージュドゥール(20 MW)とエル=アイウン(85 MW)に2機の太陽光発電施設を有しており、これで3機目となる。(Africa Intelligence, 5 Mar. 2020)
    https://www.africaintelligence.com/north-africa_business/2020/03/05/masen-to-open-solar-farm-in-dakhla,108396780-brc

【解放区/難民キャンプ】

  1. 地雷撤去事業が進む
     解放区で地雷撤去を行う組織、SMACO (Sahrawi Mine Action Coordination Office) は2013年、サハラ・アラブ民主共和国大統領令で設置され、砂の壁の東側解放区の地雷撤去を進め、MINURSOの停戦監視事業が遂行できるようにしてきた。2020年3月の時点までに7,870個の地雷の他、不発弾の処理、3,321人のMINURSOスタッフ、73,343人の遊牧民を含む住民への説明、48人の生存被害者への支援事業を行た。(SMACO Factsheet, March 2020)
    http://smaco-ws.com/

【モロッコ】

  1. モロッコ、イスラエルとの国交正常化を米国に提示
     モロッコは西サハラ占領の承認と引き替えにイスラエルと国交を正常化することを米国に提示した。イスラエルはハッサン2世に西サハラでの戦争の仕方についてアドバイスをしたことがあった。(ECSahara, 21 Sep. 2020)
    https://www.ecsaharaui.com/2020/09/marruecos-se-ofrecio-eeuu-en-el-acuerdo.html

【国際情勢】

  1. フランスの活動家、ジュネーブまで連帯の自転車ツアー
     フランスの活動家で博士課程学生のメリアム・ナイリ(Meriam Naili)さんは、8月17日、西サハラのためにフランスからジュネーブに向けて自転車ツアーを開始した。オンラインでの要請文も受け付けており、1000人を目標にしている。(みなさんもぜひ。もう少しで目標達成です。)
    https://www.ipetitions.com/petition/the-united-nations-must-stop-deserting-the
  2. 国連人権高等弁務官、西サハラに派遣団を送りたい
     9月14日、国連人権高等弁務官のミチェル・バチェレ氏は、西サハラに新たなテクニカル・ミッションを送るべく枠組を各方面と議論したいと、第45回人権理事会開会の挨拶で述べた。西サハラへのテクニカル・ミッションは5年前にも行われている。(SPS, 14 Sep. 2020)
    https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2020/09/14/27364.html
  3. オンライン会議:西サハラジュネーブサポートグループ
     9月17日、ジュネーブ西サハラ支援グループ(GSSG)は西サハラの自決権に関するオンライン会議を開催した。「国連決議1514から60年:西サハラにおけるその実施」と題された会議では、RASDのブラーヒーム・ガーリー大統領、ナミビアのNandi-Ndaitwah副大臣、東ティモールのXavier Reis Magno外務大臣、南アのMxakato-Disekoジュネーブ大使がパネルで話をした。元MINURSO代表(国連事務総長代表)で現在欧州議会議員のPernando Barrena Arza氏も参加した。(SPS, 17 Sep. 2020)
    https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2020/09/17/27402.html
  4. ZOOMシンポ「軍事主義、暴力、紛争:占領下・脆弱な地域に暮らす女性はどう対応してきたか」に参加
     9月18日ナミビアで開かれた「世界女性マーチアフリカ大陸調整会議」が開催したバーチャルシンポジウムに西サハラからマリアム・ハマディさんが参加し、西サハラの人権状況について発表を行った。(SPS, 19 Sep. 2020)
    https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2020/09/19/27428.html
  5. アミーナトゥ・ハイダルさん、国連事務総長に手紙
     ライト・ライブリーフッド賞を2019年に受賞したアミーナトゥ・ハイダルさんは、21個人・団体受賞者とともに、アントニオ・グテーレス国連事務総長に9月18日付けで手紙を出した。手紙はMINURSOに人権監視を任務として入れること、新しい国連事務総長特使を任命すること、そしてサハラーウィの自決権行使となる住民投票を実施するよう要請した。署名したアジアの受賞者として、フィリピンのウォールデン・ベロ氏、マレーシアのアンワル・ファザル氏の2人がいる。(ECSaharaui, 19 Sep. 2020)
    https://www.ecsaharaui.com/2020/09/premios-nobel-alternativo-envian-carta.html
  6. パリで「国際平和の日」アピール街頭行動
     9月21日は国連が定めた国際平和デー(International Day of Peace)。フランス在住のサハラーウィはパリで19日に街頭アピール行動を行った。以下のニュースで街頭行動の動画を見ることができる。(ECSaharaui, 19 Sep. 2020)
    https://www.ecsaharaui.com/2020/09/con-motivo-del-dia-internacional-de-la.html
  7. アイルランド共和国で「占領地域法」の議論
     アイルランド共和国議会ではイスラエルの入植地の産品を輸入できなくする「2018年占領地法(Occupied Territories Bill 2018)」の議論が大詰めを迎えている。法律の正式名称は「経済活動管理法(Control of Economic Activity Bill)」。2018年に上院を通過し、下院も一度賛成78、反対45、棄権3で通過した。しかし、ルールによれば、再度下院での最終議決が必要となる。政府は、同法がEU法に違反するとして可決に反対している。シン・フェイン党は可決をめざしている。この法律が施行されれば相手はイスラエルだけではない、と考えられており、モロッコにも適用される可能性がある。どうなるか、関心が集まっている。(Irish Times, 21 Jul. 2020)

【歴史】

  1. CIAが公開した1979年の西サハラ情勢分析
     CIAは西サハラ情勢分析に関する公文書を公開した。それは1979年3月に作成された「The Western Sahara Conflict: Morocco’s Millstone(s)」という文書で、当時の情勢を分析し、解決オプションを考察したものだ。それによると、モロッコは当時ポリサリオ戦線に勝てそうになかった。ポリサリオ戦線の攻撃はモロッコを追い出すことはできなくてもモロッコ側を十分困惑させ、政治的解決へ追い込む可能性があり、モロッコは何らかの自決権行使を受け入れざるをえないのではないかと。また、同報告書は、現実的な解決策としてエル=アイウンとリン鉱石の採れるブクラーアをモロッコに与え、残りを西サハラの領土とする「分割案」を提示している。(ECSaharawi, 16 Aug. 2020)
     1975年モロッコの侵攻当時、スペインの皇太子フアン・カルロス・デ・ボルボンは、モロッコと戦争すれば、ポルトガル革命(1974年4月)のようになり、それは王室の存立に関わることだと考え、米国のモロッコとの仲介を要請した。キッシンジャー国務長官はスペインとモロッコの仲介を取り、それから数時間後にマドリッド協定が結ばれたのであった。(ECSaharawi, 16 Aug. 2020)
    https://www.ecsaharaui.com/2020/08/la-cia-descubre-el-papel-infame-de-juan.html

以上です。
松野