解放区の開発

西サハラの領土は、モロッコが築いた長さ2700kmの壁が縦に走って、二つに分断されています。
西側はモロッコにより占領されている地域「占領地」、東側はポリサリオ戦線が治めている地域で「解放区」と呼ばれます。
そして1992年の停戦以来、国連 PKO の MINURSO(西サハラ住民投票のための国連派遣団)が両サイドに駐屯しています。

解放区の開発をめぐる計画は以前からありましたが、資金調達が困難であるほか、地雷の危険性や、さらにはモロッコの思惑を気遣うMINURSOがストップをかけてくるなどして、事は望むようには進みません。
しかしこの三番目の理由は、非常に理不尽です。
壁の西側ではモロッコが、停戦を最大限に利用して、モロッコ住民を入植させ、水産資源や地下資源の収奪と開発を行い続けているからです。
この違法行為に対して、ポリサリオ戦線や国際的NGOが抗議をしていますが、国連は指一本動かしたことがありません。

そんな中で解放区のいくつかの村には、家畜遊牧を営むサハラーウィのための病院など、建造物が見られるようになりました。
難民キャンプで生まれ育ち、外国で高等教育を修了したエンジニアたちの貢献で、太陽光を利用した地下水の汲み上げシステムもあります。
このシステムのおかげで灌漑による実験農場が営まれるなど、砂漠の風景にも変化が生まれています。
次の写真は、今年2月に解放区のムヒーリーズ村を視察したNGO「国境なき建築家たち・アンダルシア支部(スペイン)」が発表したレポートの中から拝借したものです。ムヒーリーズは西サハラの北東部、チーファーリーチーから西へ70kmほどのところにあります。

実験農場
太陽光を利用した地下水くみ上げ機の小屋
ムヒーリーズ村役場

先の西サハラ短信でお伝えしたように、8月22日に開催された夏季講座の開講演説の中で、ガーリー大統領は解放区のインフラ整備を進める方針を強調しました。
この政策への支援を表明したNGOや企業は、現在までに15団体(スペイン)あります。

こうしてサハラーウィが自分たちの国を築こうとする意志の表れは、およそ30年経っても約束事を成就できない国際社会へ向けた、強烈なメッセージではないでしょうか。