西サハラ友の会通信3号

スマラ中心部

 新型コロナウィルスは西サハラにも忍び寄っています。WHOの公式ホームページのアップデート(3月26日18:00 CET)によれば、感染者数はモロッコで225、アルジェリアで264、モーリタニアで2です。西サハラは灰色に塗られていて計算から除外されているように見えますが、モロッコの数に含まれているのかいないのか、わかりません。(いずれにしても、感染者数が少ないのは検査が追いついていないだけとも考えられます。)
 随分早く入国制限をしたイスラエルですら今では2,369、パレスチナ占領地は84となっています。WHOのCOVID-19 Situation dashbordを参照。
https://www.who.int/

【活動】

  1. 国連人権高等弁務官事務所と国際赤十字への要請文送付
     3月24日、西サハラ友の会として、国連人権高等弁務官事務所と国際赤十字に、政治囚の置かれている状況に関心を払うよう要請文を送りました。政治囚たちは拷問や劣悪な環境のために弱っていて、誰よりも先に罹患しやすいため、生命の危険にさらされている、そもそも不当な弾圧によって投獄されていると述べ、釈放に向けて働きかけて欲しいと要請したものです。人権高等弁務官事務所からは要請文受理の返事が来ました。
     3月25日、ミシェル・バシェレ国連人権高等弁務官は、混み合っていて不衛生な拘禁施設が多い中、COVID-19の蔓延は深刻な問題だとして、各国政府が囚人の釈放等の措置で対応するよう求めた。
    https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25745&LangID=E
  2. 国連への要請に賛同
     3月26日、西サハラ友の会は、スペインにあるサハラーウィの団体Por un Sahara Libreが国連難民高等弁務官事務所、国連人権高等弁務官事務所、安保理メンバー国にあてた手紙に団体賛同しました。手紙は、新型コロナウィルスは占領地、監獄の政治囚、難民キャンプにいるサハラーウィすべてに影響を及ぼしているとして、緊急の配慮を訴えています。占領地では、サハラーウィはとくに医療へのアクセスが悪く、軍・警察が増員されていて、逆にモロッコからの移民たちはで脱出しているそうです。西サハラでは新型コロナウィルスの検査はひとつも行われていません。モロッコ内の監獄にいる政治囚たちは脆弱な状態におかれています。難民キャンプのサハラーウィはすでに45年、栄養も不足し、慢性病をかかえる人が多い中で、新型コロナウィルスに抵抗できないでしょう。国連機関の支援を求めています。
    https://porunsaharalibre.org/en/2020/03/23/carta-a-los-miembros-de-la-onu-para-advertir-sobre-las-consecuencias-de-covid-19-sobre-toda-la-poblacion-saharaui/#more-18521

3.『抵抗の轍』著者・ 新郷さんインタビュー
 新郷啓子さんのインタビューがご自身の出身地の新聞・西日本新聞(3月19日、Web版)に掲載されました。また、大分新聞にも書評が出ました。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/593011/

【本】
『国連:自決権の友人か敵か』(英文:The United Nations: Friend or Foe of Self-Determination)の1章が西サハラとパレスチナになっています。著者はMoara Crevelenteというコインブラ大学経済学部国際関係紛争解決専攻の博士課程学生。章のタイトルは、Self-Determination as Resistance: Sahrawi and Palestinian Struggle for the UN.(2020年3月刊。この本は無料でダウンロードできる国際関係のOnline出版の一つ。)
https://www.e-ir.info/2020/03/19/self-determination-as-resistance-sahrawi-and-palestinian-struggle-for-the-un/

【現地情勢】

  1. モロッコ警察の横暴を映した動画
     米国の人権団体ヒューマンライツウォッチ(HRW)は、3月12日、西サハラのスマラで2人の男性に警察が暴行をはたらいているシーンを撮った動画を確かなものだと発表した。HRWは、その出来事が2019年6月7日に起きたことであり、被害者の一人は、スマラ・ニュースという西サハラ問題に関するウェブサイトの活動家であるワリード・エル=バタル(Walid El Batal)であることを確認した。彼はその後2018年の別な事件を理由に逮捕され、2年の禁固刑を言い渡されている。また、彼が乗っていたピックアップトラックの運転手、サーレク・ハンマード(Salek Hammad)も別件で5年の禁固刑を言い渡された。11月8日、国連の専門家2名と恣意的拘禁に関する作業部会が合同でモロッコ政府に手紙を出し、El Batalの件と彼が受けた暴力について問い合わせた。2月4日、モロッコのジュネーブ国連代表部はそれに回答し、問題の車は警察のバリケードに突っ込んできて、警察車両を壊し、警官に怪我を負わせた、El Batalはナイフを振りかざして警察を脅した、と述べた。HRWとしては、被疑者の反論は見ていないとしながらも、国連の法執行官による武力・火器使用基本原則に反する可能性があると指摘する。暴力については、モロッコはEl Batalは裁判中そのことを訴えなかったと答えたが、実際には判決文がEl Batalが何度かそれに触れていることを述べている。HRWは2月19日、モロッコの省庁間人権代表団に動画の件で質問をした。2月25日、代表団は、検察庁が捜査中だと回答した。HRWはモロッコは捜査結果を公表し、暴力を振るった警官を処罰するよう求めている。
    https://www.hrw.org/news/2020/03/12/morocco/western-sahara-video-captured-police-violence
  2. 政治囚Abdallah Abbahahへの「医療的報復」
     アブダッラー・アッバッハーフさんはグデイム・イジーク(2010年抗議キャンプ)政治囚の一人で、Tilfet 2刑務所に収監されている。健康状態がかなり悪い。彼の弁護士オルファ・ウレド氏(Olfa Ouled)が2月初旬、国連拷問禁止委員会の「報復に関する報告者(Rapporteur on Reprisals)」に、彼に対する医療的報復について通告した直後、彼は尋問に呼び出された。その際、弁護士への通知はなかった。ウレド氏は、当局が彼の生命救済のために何もしない、4ヶ月前の血液検査の結果も知らせない、刑務所長が彼がお金を払えば医師に会わせるなどと言っていると、訴えた。アッバッハーフさんは自分の選んだ医師との面会を希望しているが、許可されていない。弁護士が国連に訴えた後、彼に対する報復が続いている。拷問禁止委員会は弁護士の訴えを聞いた後、ただちにモロッコ政府に連絡したが、モロッコ政府は応答しない。(Por un Sahara Libre, 16 March 2020)
    https://porunsaharalibre.org/en/2020/03/16/abdallah-abbahah-preso-politico-saharaui-bajo-investigacion/#more-18495
  3. 女性活動家Toumana Deida Yazid保釈
     トゥマーナ・デイダ・ヤズィードさんは、3月13日朝9時、占領軍によってエル・アイウンの自宅前で連れ去られた。翌日2,000ディルハム(約22,000円)で保釈されたが、4月4日に裁判が始まる。起訴理由は、公衆の面前で西サハラの国旗を広げ、モロッコ国籍を拒否したAli Saadoniさんの仲間だということだ。ヤズィードさんは7人の子どもの母。アブダッラー・アッバハーさんのいとこで、2018年に亡くなった有名な活動家、デイダ・ウルド・エッシード(Deida Uld Esid)さんの娘。(Por un Sahara Libre, 14 March 2020)
    https://porunsaharalibre.org/en/2020/03/14/la-activista-saharauis-toumana-deida-yazid-en-libertad-condicional/#more-18485
  4. 緩衝地帯での拘束
     3月12日、モロッコ軍はモーリタニアとの国境にある緩衝地帯でバーベイト・エル=ハッタート(Balbeit Elkhatat)さんを拘束し、連れ去った。体中殴られた(写真あり)。エル=ハッタートさんはモロッコにも西サハラにも住んでおらず、ゲルガラットにモロッコのトラックが入ることに抗議した。これは停戦協定違反であり、MINURSOの監視の対象のはずだが、MINURSOはまだ立場を表明していない。通常国連はモロッコの停戦協定違反についは沈黙する。(Por un Sahara Libre, 14 March 2020)
    https://porunsaharalibre.org/en/2020/03/14/marruecos-secuestra-a-saharaui-en-la-zona-de-amortiguamiento-violando-el-acuerdo-de-alto-el-fuego-y-sin-mandato-en-la-zona/#more-18480

【国際情勢】

  1. ポルトガル西サハラ友好協会、グテレス事務総長に手紙
     ポルトガル西サハラ友好協会(Portugal-Western Sahara Friendship Association)は3月17日、63名の著名人賛同者の名前を添えて、アントニオ・グテレス国連事務総長に請願書を送った。請願書は、2020年が国連の第3回植民地廃絶の10年の最後の年であり、西サハラの住民はその不可分の自決権を行使する機会を待ち望んでいる、国連のそれに対する責任は明確であると述べている。エリトリア、南スーダン、東ティモールの例は人々に決定させることが原則であることを確認していると述べ、とくにグテレス事務総長は東ティモールの自決権行使に重要な役割を果たしたのであり、今一度、交渉仲介の努力をして欲しいと述べている。そして、新しい西サハラ問題担当特使の任命と国連西サハラ派遣団に人権監視のマンデートを含めることの重要性を訴えている。(英仏葡語があり、以下は英語のファイル。グテレス氏は東ティモール住民投票時のポルトガル首相。)
    https://www.cidac.pt/aapso/ONU/CartaAberta_SGONU-Mar2020-en.pdf
  2. カサブランカ(モロッコ)で大規模抗議行進
     モロッコにおけるアラブの春といえる「2月20日運動」(2011年)を記念して、2月25日、観光地で有名なモロッコのカサブランカで数千人規模の抗議行動があった。失業問題、社会的不平等、物価高、行政サービスの崩壊について訴え、政治囚の釈放も求めた。行進は「モロッコ社会戦線」という4つの左派系野党、民主労働連盟(CDT)という労働組合、モロッコ人権協会(AMDH)といった人権団体が組織した。この場合の政治囚とは、北部リフ地方の人たちを含む。
    https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2020/02/24/24731.html

以上。
松野明久