西サハラ友の会通信2号

ハヤットさん。スペインの海岸にて

【活動】

  1. 自転車ツアーは延期
     4月に稚内からスタートする予定だった西サハラキャンペーンのための自転車ツアーは、新型コロナウィルス対応のため、延期となりました。また決まり次第お知らせします。その間にも、ツアーを支援して下さる方がいらっしゃればご連絡をお待ちしています。
  2. 『抵抗の轍』書評、著者・新郷さんインタビュー
     1月10日の出版記念トーク以降、新郷さんのインタビューや本の書評がいくつか出ました。京都新聞、信濃毎日新聞、雑誌『情況』にも短い書評が出ました。
     ・時事通信社(2月27日)【インタビュー】新郷啓子氏に聞く 「西サハラは必ず解放される」—45年続くモロッコの占領と弾圧
     ・「週刊金曜日」(2月28日)伊高浩昭、きんようぶんか(書評)欧州や日本が目を背けるモロッコの植民地、「西サハラ問題」

【現地情勢】

  1. 民族解放軍、大麻を押収
     サハラーウィ人民解放軍は725kgの大麻・ハシシを西サハラ占領地内のオーセルド(Auserd)に近い砂の壁付近で押収したと発表した。昨年7月には1,500kgの大麻が解放区内で発見され、数日前には100kgの大麻を運んでいた5人を捕まえたばかりだった。民族解放軍は、モロッコは意図的に大麻を西サハラに持ち込んでいると主張している。(SPS, 3 March 2020)
  2. Faraji Dadaさん、禁固20年の判決
     サハラーウィの政治囚、Faraji Boujemaa Dadaさんは2019年12月25日にスマラで逮捕され(24日の説もあり)、裁判にかけられた。その判決が3月4日に言い渡され、それは20年の禁固刑だった。容疑は、モロッコ警察の車を燃やした、警察に石を投げた、公務員を侮辱したというもので、彼は容疑を完全に否定していた。(League for Protection of Saharawi Prisoders in the Moroccan Prisons, 4 March 2020)
    https://noteolvidesdelsaharaoccidental.org/aminatou-haidar-el-tribunal-del-ocupante-marroqui-en-el-aaiun-pronuncio-esta-manana-una-durisima-sentencia-de-20-anos-firme-contra-el-activista-saharaui-jatri-dadda
  3. スペインの弁護士、追放される
     Faraji Dada さん(Farajii Daddaの綴りもあり)の裁判を傍聴しようと2月25日、エル=アイウンに到着したスペインの弁護士、アナ・セバスティアン・ガスコンさんが追放された。彼女の追放はこれで2度目である。(ちなみに、昨年モロッコは43人の外国人を西サハラから追放した。)
    https://contramutis.wordpress.com/2020/02/26/marruecos-expulsa-a-una-abogada-espanola-y-se-niega-a-hablar-con-el-consulado-de-espana/
    https://www.yabiladi.com/articles/details/89729/laayoune-autorites-marocaines-expulsent-avocate.html

【国際情勢】

  1. ポリサリオ戦線、ニュージーランド年金基金を高等法院に提訴
     3月5日、ポリサリオ戦線は、ニュージーランドの年金基金(New Zealand Superannuation Fund)が西サハラからの不法なリン鉱石の輸入に投資しているとして、基金をニュージーランドの高等法院に提訴したと発表した。同基金は445億ドルの資産をもち、ニュージーランドの評判を落とすような投資を避ける義務を有する。しかし、同基金は西サハラのリン鉱石を輸入しているBallance Agri-Nutrients社に投資している。ニュージーランドにはもう一つ、西サハラのリン鉱石を輸入しているRavensdown社がある。すでにオーストラリア、カナダ、米国の企業は西サハラのリン鉱石輸入を停止し、ニュージーランドの会社だけが残っている。(SPS, 5 March 2020
  2. 西サハラ活動家、オーストリアでアピール
     3月初め、西サハラの活動家、ハヤット・ハイムダ(Hayat Haimuda)さんは、オーストリアサハラーウィ連帯協会(Austrian Association of Solidarity with the Saharawi People)の招きでウィーンを訪問し、議員(欧州議会議員、国会議員)、市長、副市長、政党指導者、人道団体、対話仲介機関と面会した。彼女自身14才の時、デモに参加して6ヶ月間投獄された経験をもつ。「私たちは檻の中に生きている」と訴えた。(SPS, 5 March 2020
  3. EU・モロッコ漁業協定に関する欧州理事会法律顧問の意見
     欧州議会は2019年2月12日、西サハラ領海を含む「EU・モロッコ持続可能な漁業パートナーシップ協定(Sustainable Fisheries Partnership Agreement between the European Union and the Kingdom of Morocco)」を賛成多数で可決した。これ以前の同種の協定が西サハラ領海を含むのは違法だとしてイギリスの市民団体(西サハラキャンペーン)がイギリスの裁判所に訴え、それを受けてEU司法裁判所が2018年2月、協定は西サハラ領海には適用されないとの判決を出していた。EUは、それでも協定を結びたいため、「西サハラ住民の合意が得られれば西サハラを含むことは可能」との論理を用い、モロッコ政府の息のかかった西サハラの団体の合意を得て、新しく協定を結んでしまった。ポリサリオ戦線は協議への参加を拒否した。
     この度、西サハラ資源ウィッチ(WSRW)は、欧州議会での投票前、2018年11月7日に欧州理事会法律顧問(Council’s Legal Service)が出した意見書を公開した。その意見書は、ドイツ、アイルランド、デンマークの求めによって作成された。顧問の結論は、EUがモロッコ政府の息のかかった西サハラの団体との協議の意義を認め、これによって西サハラ住民の合意は得られたとのというものだっだ。その後、スウェーデン政府はこの意見に反対を述べたが、ドイツ、アイルランド、デンマークがこの意見を受け入れた。
     WSRWは、3月5日、この意見書にコメントを発表。EU司法裁判所の判決を無視したものであり、EUが進めた西サハラ住民との協議に参加した「西サハラ住民」は、実際の西サハラ住民を代表したものではないと批判した。
  4. スペイン政府と西サハラ問題
     RASDの社会問題・女性の社会進出担当大臣スエルマ・ベイルークは2月21日、マドリッドでスペイン政府の社会的権利問題担当の閣外大臣ナチョ・アルバレス(ポデモス党)と会合を持った。直ちにモロッコのブーリータ外相がスペインのゴンサレス・ラヤ外相(社会党)に電話で苦言を呈した。ゴンサレス・ラヤ外相は「スペインはRASDを承認していない」「スペイン政府は、国連安保理事会の枠組内で西サハラ問題を政治的に解決しようと努める国連事務総長を支持する」と返答し、また当のアルバレス閣外大臣はこの会合に関するツイッター文を削除。しかしモロッコ側の立腹は収まらない。そこで社会党と連立政権を組む政党で、アルバレス閣外大臣の所属政党であるポデモス党の党首パブロ・イグレシアスは、テレビの対談番組で「会合はスペイン視覚障害者協会ONCEが執りもったものだった。西サハラ問題に関するスペイン政府の姿勢については、外務省が示しているとおり」と火消し役の発言。
     イグレシアス党首は在野の時はRASD承認を求めるなど親ポリサリオ戦線の姿勢を標榜していたが、今回は連立政権の座について変節が取りざたされている。
     1976年、難民キャンプを訪れて西サハラの解放を叫んだ当時の社会党党首ゴンサレスは、その後首相に就くとサハラーウィ離れをして、最終的に親モロッコ派の政治家となった経緯がある。SNS上では、今回のポデモス党首の身の振り方に、「イグレシアス、お前もか」と悲観視するサハラーウィは多い。(まとめ・新郷)
    https://www.elconfidencial.com/espana/2020-02-24/iglesias-exteriores-reunion-sahara-once_2467560/
  5. 西サハラジュネーブ支援グループのアピール
     西サハラジュネーブ支援グループ(Geneva Support Group for Western Sahara: GGSSO)は、13ヶ国政府代表に米国法律家協会、ポリサリオ戦線ジュネーブ代表部を加えた団体で、人権と人道問題に焦点を当てた活動を行ってきた。2017年9月12日には、人権理事会における国連総会決議71/103(2016年12月6日)の議論のサイドイベントを開催し、2019年6月27日には、西サハラにおける経済的・社会的・文化的権利に対するモロッコの攻撃に関する会合を開催した。今回の会議の焦点は、植民地独立付与宣言の履行に関する国連総会決議74/95(2019年12月13日)であった。13ヶ国とは、アルジェリア、アンゴラ、ボツワナ、キューバ、モザンビーク、ナミビア、南ア、タンザニア、東ティモール、ウガンダ、ベネズエラ、ジンバブエ)である。司会は東ティモールのジュネーブ大使が行った。
    https://www.spsrasd.info/news/en/articles/2020/03/02/24937.html

以上。
松野明久