西サハラ友の会通信1号

【重要!活動】
 スウェーデン等の活動家4人が、西サハラ問題を訴えるため、日本を出発点とする4万キロ、30ヶ国の自転車ツアーを計画している。出発は4月6日稚内で、2年をかけてサハラーウィの難民キャンプがあるアルジェリアのチンドゥーフ(Tindouf)まで走る。日本は約2ヶ月半かけて稚内から札幌、仙台、東京、名古屋、京都、大阪、広島等を経て福岡到着が6月16日。そこから船で韓国に渡って旅を続ける。呼びかけたのはベンジャミン・ラドラアさん。友の会では各地で宿泊のお世話・食事の提供、マスコミへの連絡、集会の開催等の支援を行うべく、支援者を募集している。
 宿泊・食事・集会等、何でも結構です。ご支援いただけそうな方はご連絡下さい。詳しくは添付の書類(3点)をご覧下さい。北海道が少しと、山北(神奈川)、京都、広島、下関からすでに手が上がっています(4人いるのでまだ十分ではありません)。あとはまだこれからです。

【重要!企画】
 3月から5月にかけて、東京、名古屋、神戸で行われる「イスラーム映画祭」で、西サハラについてのドキュメンタリー「銃か、落書きか(Rifles or Graffiti)」が上映される。ジョジュディ・オリオラ・フォルク監督作品(2016年)で、メディアチームを結成し、西サハラの実態を世界に発信するサハラーウィの命がけの抵抗運動を描いている。トークセッションあり。渋谷の東京ユーロスペースでは、3月14日(土)19:00、17日(火)19:00、19日(木)13:30に上映される。

【現地情勢】

  1. 政治囚マッフダ・バンバ・レフキル(Mahfouda Bamba Lefkir)さん、健康状態悪化
     2019年11月15日に、自決権を訴え、グデイム・イジーク抵抗キャンプ・コレクティフのメンバーでもある、マッフダ・バンバ・レフキルさんが逮捕された。2月6日、彼女の健康状態が急激に悪化したとのアピールが国際人権連盟のHPに掲載された。さらに「モロッコ刑務所収監サハラーウィ囚人保護連盟」というサハラーウィの人権団体が2月15日に発信した情報によると、彼女は鼻に腫瘍があり、手術をしないとガンになる可能性があるとのこと。しかし治療が受けられず何度も貧血で倒れたという。(fidh,6 Feb. 2020)
  2. バスク議会メンバーを入国拒否
     2019年12月1日(日)、モロッコはカナリア諸島から西サハラに入ろうとしたバスクの議員一行の入国を拒否し、折り返し便に乗せてカナリア諸島に退去させた。一行は4人からなり、人権状況を確認するため活動家や団体に会う予定だった。(SPS, 2 Dec. 2019
  3. 西サハラで記者、逮捕時に警察からぼこぼこに殴られる(録画あり)
     2019年6月7日、スマラにおいて、記者のワリド・エル・バタル(M. Walid El Batal)さんが警察によって車から暴力的に引きずり出され、警棒などでぼこぼこになぐられるシーンが撮影され、動画がアップされた。国連の人権擁護者に関する特別報告者、表現の自由に関する特別報告者、恣意的拘禁の作業部会が合同で、エル・バタルさんの状況について憂慮する問合せを行った(モロッコ政府の代表部に対してだと思われるが、宛名はない)。(動画
  4. 南アとモーリシャスが、西サハラでのフットサル大会から辞退
     アフリカサッカー連盟(CAF)は2020年フットサル・アフリカ杯の大会を、西サハラのエル・アイウンで開催した。しかし、1月29日、南アフリカとモーリシャスが西サハラへの連帯の表明として、大会参加を辞退した。南アフリカは、モロッコの領土としてちゃんと認められた場所、例えばラバト、カサブランカ、マラケシュなどで行うよう求めていたが、CAFは変更しなかった。大会はモロッコが優勝した。CAFは、辞退した南アフリカに今後2年間の出場停止と罰金75,000ドルを科した。南アはこれを無効として、CAFの異議申立手続きに入る。(Thomas Kwenaite 29,Jan.2020 / 8,Feb.2020

【国際情勢】

  1. 欧州議会内に西サハラ議員グループが誕生
     2月13日(木)、欧州議会内に「Peace for Saharawi People(サハラーウィ人民の平和)」が誕生した。音頭を取ったのはドイツの社会民主党議員、ヨアヒム・シュスター(Joachim Schuster)氏。ポリサリオ戦線の新ヨーロッパ及びEU代表、ウビ・ブシャラヤ(Oubbi Bucharaya)氏が述べた。(SPS: Sahara Press Service, 15 Feb. 2020
  2. AU-UN平和・安全保障合同タスクフォース第18回会合の声明
     2月11日、アフリカ連合と国連の合同タスクフォース会議がアジスアベバで開催され、その共同コミュニケで、双方は「国際法的合法性への忠誠(attachment to international legality)」を確認したと述べた。近年、アメリカ、フランス、スペインによる西サハラの自決権行使に後ろ向きな動きが続いたため、この確認は重要と思われる。(UNOAU, 11,Feb. 2020 )
  3. スロヴァキア外相、次の西サハラ国連事務総長特使に任命か?
     AFPが2月13日に伝えたところによると、5月に元ドイツ大統領のホルスト・ケーラー氏が健康を理由に突然辞任して以後空白になっていた、西サハラ担当国連事務総長特使のポストに、スロヴァキアのミロスラフ・ラチャック(Miroslav Lajcak)氏が候補として上がっている。モロッコとポリサリオ戦線のいずれもが異議を唱えなければ決まる。(rfi,13,Feb.2020)
  4. イスラエル、トランプ政権にモロッコの西サハラ併合を承認するよう働きかけ
     2018年9月の国連総会開催中、ネタニヤフ首相はモロッコのナッセル・ブリタ外相と密かに会った。この面会は、ネタニヤフ首相の国家安全保障顧問であるメイル・ベン・シャバット(Meir Ben-Shabbat)がモロッコの大手小売業者であるヤリヴ・エルバズ(Yariv Elbaz)を介してセッティングしたものだった。エルバズはモロッコ出身のユダヤ人。エルバズは2019年5月にジャレド・クシュナー(トランプ大統領の娘婿)とモロッコで面会し、クシュナーとホワイトハウスの「和平チーム」をカサブランカのユダヤ墓地に案内した。この水面下の接触は、モサド長官ヨシ・コーヘンに知らされずに行われたため、コーヘンは激怒。しかし、ネヤニヤフはベン・シャバットに交渉の継続を指示した。ベン・シャバットはトランプ政権に、モロッコの西サハラでの主権を認めるよう働きかけ、この提案はモロッコ側にも伝えられた。ネタニヤフは2019年4月の選挙の前にこの提案を進めようとしたが、ベン・シャバットのモロッコ訪問がアラブ系メディアに漏れたため、思いとどまった。9月の選挙の前にも進めようとしたが、当時国家安全保障大統領顧問だったジョン・ボルトンが反対してできなかった。そして11月、ポンペオ国務長官のモロッコ訪問に際して同案が浮上した。しかし、ポンペオ国務長官がモロッコにいた間、何も起きなかった。(Jerusalem Postなど複数のメディアが2月3日から5日にかけて報道した。)
    (Axios Media, 3,Feb. 2020)
    (Middle East Eye, 4,Feb. 2020)
    (Jerusalem Post, 5,Feb. 2020)
  5. アメリカは、西サハラ併合を認めない
     ネタニヤフ首相の働きかけにもかかわらず、トランプ政権はモロッコによる西サハラ併合を承認しないことにしたもようだ。(The Medialine, 4 Feb. 2020)
  6. モロッコ、イスラエルから480万ドルで3機のドローンを購入
     仏メディアIntelligence Onlineは、モロッコがイスラエルから3機の偵察用ドローンを購入し、1月26日に到着したと報じた。ドローンは西サハラで使われるという。モロッコとイスラエルは正式な外交関係をもたないが、軍事・諜報活動において長年協力しあっている。モロッコにはイスラエルとの関係正常化に反対するグループがあり(Moroccan Observatory against Normalisation with Israel)、その代表者アフメド・ウェフメンは先頃逮捕されたばかりだ。(Middle East Monitor, 31 Jan. 2020)
  7. 国連人権理事会で、ナミビアと東ティモールがスペインに注文
     2020年1月20日、人権理事会でスペインの普遍的定期審査(Universal Periodic Review)が行われた。普遍的定期審査とは5年毎にその国の人権状況を包括的に検討し、改善点等を指摘する人権理事会のメカニズム。そこでナミビアと東ティモールの政府代表が、西サハラにおける資源の搾取に関与しないよう演説した。(WSRW, 22 Jan. 2020

以上。
松野明久