MINURSOの任期更新

2018年5月3日; 国連は西サハラ問題に関して、毎年4月末に安保理事会を開いていますが、今年4月の決議案では、MINURSO(西サハラ住民投票のための国連派遣団)の任期更新が今までの一年から半年に変わりました。

これは以下の記事にもあるように、当事者間に協議を再開させることを目的とした決定です。

国連事務総長の個人特使ホルスト・ケーラー氏は就任早々から協議再開のための根回しを行っており、ポリサリオ戦線は全面的に同意していますが、モロッコが直接協議を免れるための工作を続けています。

モロッコは、西サハラ解放区のティファーリーティーとビィル・ラフルーでポリサリオ戦線による停戦の抵触行為があったと事務総長に通告したり(MINURSOはこれを否定)、アルジェリアを当事者として協議に参加させるよう要請するなど、時間稼ぎ工作はこれまでと変わりありません。

先日報じられたモロッコのイラン国交断絶については、モロッコは「イランがヒズボッラー(レバノンのシーア派イスラム政党)を介してポリサリオ戦線に武器を供与している」という理由を上げていますが、イランとヒズボッラーは否定し、ポリサリオ戦線も事実無根と否定してモロッコに証拠提示を求めています。

さらに現地に駐屯するMINURSOもそのような事実は確認されたことがないと伝えています。

モロッコは最近サウジアラビアとの関係が冷却化しており(先月リヤドで開催されたアラブ首脳会議にモロッコ国王は欠席)、一つにはイランを敵視しているサウジアラビアとの関係回復が狙いです。

もう一つは、やはりイランを敵視する米国大統領に対する点稼ぎです。

というのもムハンマド国王は、トランプ大統領に会うために訪問移動を三度試みたのですが、どれも空振りに終わっています。一度目は国連で、二度目はパリで、三度目は大統領のバカンス先フロリダで。

トランプ大統領がムハンマド国王を避けるのは、国王がヒラリー・クリントンに莫大な寄付をして、選挙資金を貢いだからです。

しかし西サハラ問題に関し、モロッコはトランプ政権の支持確認を取り付けたいのでしょう。

モロッコにとって、フランスからの後ろ盾は相変わらずあるようですが、今回の安保理事会では意外なことにクウェートがポリサリオ戦線寄りの演説をするなど、国際外交上の形勢はあまりよくありません。

10月のMINURSO任期切れまでに、ケーラー特使が直接協議を再開できるかどうかが注目されます。

MINURSO任期の更新期限の短縮は、モロッコを直接協議につかせる圧力

2018年4月29日 EFE通信(スペイン)

国連の安保理事会が西サハラ問題について採択した決議では、MINURSOの更新任期期限が6か月に短縮された。これはモロッコにとって、ポリサリオ戦線との協議再開を迫る圧力になる。

安保理事会決議2414号は、4月28日、賛成12票、棄権3票(ロシア、中国、エチオピア)で採択された。

従来の決議案が「公正で持続性があり、双方が受け入れることのできる」政治的解決を求めてきたことに対し、2414号は「現実的で実現可能、そして持続性ある」政治的解決へ向かうことを当事者双方に求めている。

今回の決議案に挿入された新しい言句はモロッコにとって都合がよい、という見方が一般的だ。

また、国連がポリサリオ戦線に対し、西サハラのゲルゲラート地域からの「即時」撤去を促した点も、同様に受け止められている。

さらには、ポリサリオ戦線が計画していた西サハラ北東部のビィル・ラフルーに行政府機関を移す案に対して、安保理は懸念を示し、「不安定化を招く行為」として計画の取り止めを求めている。

しかしながら、MINURSOの任期更新が短縮されたことは、この紛争の停滞した「現状」を打開するために、安保理が当事者双方に協議を求めている意図の現われといえる。

モロッコの政治評論家ザフラーウィ氏は、MINURSOの任期短縮は、安保理事会が抱える案件の中で、この紛争が二次的問題から一次的問題に上げられたことを示しているとし、「国連事務総長の新しい個人特使ホルスト・ケラー氏は、この決議をうまく利用して、当事者双方を再び協議の座に着かせるでしょう。この際、プレッシャーを受けるのはモロッコの方です。」と評している。

MINURSOの任期が短縮されるのは、今回が初めてではない。1998年から2001年にかけて採択された決議案(1215、1263、1324、1380号)では2か月から5カ月の任期を選択している。

西サハラ問題のモロッコ人研究者ベルガザル氏は「当時の決議案は、国連が当事者双方に国連決議内容を早めに実行するように圧力をかけていたことの現われでした」と本通信に語った。

これと同じ意図が、今回の決議案に再度伺われる。それは当事者間の姿勢が、遠ざかる一方にあることが原因だ。モロッコにとっては、自国の主権下における自治が唯一の解決策であるのに対し、ポリサリオ戦線は選択肢に独立が入る住民投票にすがっている。

さらには、モロッコは西サハラ難民キャンプを受け入れ支援しているアルジェリアに責任があるとし、国連に対しアルジェリアを協議の席に着かせるよう求めている。

前回の協議は2008年にニューヨーク郊外で行われ、既に長い年月を経ているだけに、今回は当事者双方が協議の座に着くか否かが注目されている。

一方モロッコの駐国連ヒラール大使は、今回のMINURSOの任期短縮について、米国が国連PKO経費の削減を検討していることの現われでしかないと過小評価した。

「西サハラ-抵抗の轍」より転載