西サハラ友の会通信 No. 44(2025年9月14日発信)2024年8月分ニュース

今回の注目ニュースはマクロン大統領のモロッコ国王宛書簡(7月30日)の余波が続いたことです。書簡は、モロッコの西サハラへの主権を認めるという内容で、国王の戴冠25周年記念に合わせて送られたものでした。低迷していた仏モロッコ関係を修復する目的だったと言われていますが、2日後、モロッコはそのご褒美に高速鉄道建設(ケニトラ・マラケシュ間)を仏企業に受注させました。フランスはサルコジ大統領の時代、2007年にタンジェ・ケニトラ間の高速鉄道建設を受注しており、今回決まったのはその延伸部分でした。
 それにしても、押し寄せる移民を何とかしてほしいとモロッコに妥協し、西サハラの自治案をもちあげたスペインでしたが、移民の波はおさまりそうにありません。
 8月のTICAD準備会合(専門家会議や閣僚会合がある)でのモロッコ外交官による襲撃事件は関係者を驚かせました。日本の高官がスピーチしていた最中に起きた外交の場での暴挙で、日本政府も困惑したことでしょう。しかし、モロッコの報道では、西サハラ外交団のTICAD参加は日本の招待がない「違法」なものとされ、モロッコ外交官の襲撃は伝えられず、もっぱら彼を取り押さえたアルジェリア外交官の「暴挙」が伝えられています。モロッコ外交官は国益のために身を挺した英雄のように描かれています。
 2024年のTICAD準備会合での出来事については以下の報道をご覧下さい。決定的瞬間を捉えた動画も見れます。

<西サハラ>8月23日東京開催のTICAD9閣僚会合でモロッコ代表団の1人が暴力(by 岩崎有一)
https://iwachon.jp/2024/08/28/ticad9_2024/

目次 No. 44

【日本】
・TICAD準備会合でモロッコの外交官がサハラーウィ外交官を襲撃
・モロッコに海洋調査船を援助

【モロッコ】
・ロシアから小麦粉を輸入
・チャドと多角的協力を推進

【チャド】
・元大統領府官房長官が、チャドの西サハラ領事館開設を批判

【モーリタニア】
・ガズワニ大統領、再選
・マクロン書簡は寝耳に水

【EU】
・フランスの立場変更後もEUとしては変更なし

【フランス】
・仏企業、モロッコの高速鉄道を受注
・マクロン大統領、改めて西サハラへのモロッコの主権を確認
・アルジェリアメディア:仏の方針転換はイスラエルの圧力か?

【スペイン】
・スペイン企業、モロッコの高速鉄道受注を逃す
・300人がセウタの国境越えを試みる
・1500人がセウタに侵入
・近年の過激派はアルジェリアから
・モロッコへのガス輸出増加

【米国】
・中国リチウム電池部門のモロッコ進出に米国が譲歩

【インド】
・インド製薬会社のモロッコ進出

【日本】
TICAD準備会合でモロッコの外交官がサハラーウィ外交官を襲撃
 8月23日、東京で開催されていたTICAD準備会合の専門家会議中、モロッコの外交官が突然サハラーウィ外交官(ラミン・バーリアフリカ連合エチオピア大使)のデスク上の国名札を奪おうとそれに飛びかかり、出席者たちを驚かせた。モロッコの外交官はアルジェリアの外交官によって背負い投げされて取り押さえられ、会場からの退去を命じられた。ことの一部始終は出席者によって動画に撮られ、SNS上で拡散された。モロッコの報道では、アルジェリアの外交官がモロッコの外交官に襲いかかったという話になっている。翌24日の閣僚会合に、そのモロッコ人外交官も出席していたが、日本の警備員2人が彼の両側を固めていた。会議を妨害できないようにしていたと思われる。モロッコは国際会議から西サハラを除外するようあらゆる活動を行ってきたが、いずれも成功していない。(TSA-Algerie, 24 Aug. 2024; Saharawi Embassy to Ethiopia & Permanent Representation to the African Union, 24 Aug. 2024)
https://www.tsa-algerie.com/agression-dun-diplomate-sahraoui-a-tokyo-ce-que-le-maroc-a-appris-disrael/
https://www.sahrawi-emb-au.com/sahrawi-fa-minister-participates-in-the-ticad-meeting-moroccan-propaganda-exposed/

モロッコに海洋調査船を援助
 日本はODA(借款)でモロッコの海洋調査船「ハサン・マラクシー号(Hassan Marrakchi)」を建造を支援し、調査船はモロッコ国立漁業研究所(INRH)に配置された。建造を受注したのは豊田通商で、三井造船が岡山の玉野事業所で建造した。最新の機器を装備し、海底の地形や底質、漁業関連情報を分析する。投じられた資金は4億8,000万ユーロ。この海洋調査船はカナリア諸島の南にある熱帯山の深さ等を測定することができるが、そこにはテルルやコバルトが眠っていると考えられている。そこはスペインとの領海線があいまいなところだ。豊田通商はモロッコで錫の採掘に関わっている。(Vox Populi, 28 Aug. 2024)
https://www.vozpopuli.com/espana/japon-paga-buque-oceanografico-marruecos.html

【モロッコ】
ロシアから小麦粉を輸入
 2023-2024年、小麦の収量が前年比43%減となったモロッコは、2024年ロシアからの輸入を拡大させた。小麦の収量減は降雨量の減少によるもので、そのためモロッコは大量の小麦を輸入せざるをえなくなり、2024年は1,000万トンの輸入を見込んでいる。第一四半期、モロッコがロシアから輸入した小麦は91,000トンで、総輸入量の5%を占めた。モロッコへの小麦供給国としてロシアは今年トップ3に仲間入りしそうだ。(Africa Intelligence, 1 Aug. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/08/01/une-alliance-rabat-moscou-en-vue-pour-pallier-les-besoins-en-ble-du-royaume%2C110273697-art

チャドと多角的協力を推進
 8月14日、モロッコのブリタ外相とチャドのアベラマン・クラマラ外相は、(西サハラ占領地内の)ダーフラで会談し、すべての分野での二国間協力を進めていくことに合意し、いくつもの協定に調印した。そして2025年にもダーフラで両国の会議を開催することにした。チャド外相はダーフラでの領事館開設のために訪問していた。共同コミュニケでチャドは「モロッコの領土保全とサハラ地域を含む全領土に対する主権を支持する」という立場を確認し、「モロッコの自治案を支持するとともに、恒久的解決に向けた国連の努力を歓迎する」と述べている。(Le tchadanthropus-tribun, 14 Aug. 2024)
https://www.letchadanthropus-tribune.com/tchad-maroc-le-maroc-et-le-tchad-conviennent-de-renforcer-davantage-leur-partenariat-bilateral-dans-tous-les-domaines/

【チャド】
元大統領府官房長官が、チャドの西サハラ領事館開設を批判
 元大統領府官房長官ウスマーン・アブドゥラマーン・ジュグル氏はChad Oneという雑誌に、チャドが西サハラのダーフラに領事館を開設したことを批判した。これによってチャドは50年間維持してきた中立を破り、西サハラに対するモロッコの主権を認めてしまったと。アルジェリアとの関係悪化を招き、アフリカ連合の決議にも違反すると。
 西サハラにチャド人はほどんといない。チャドにはモロッコ企業が進出しているが、両国の間に交流はほとんどない。例えば、CIMAFというチャドでセメントを生産する会社はモロッコからセメントの原材料、例えばクリンカー(石炭が燃えた後の不純物)を輸入する隠れ蓑になっている。これによってセメントを輸入するチャドの会社は不公正な競争を強いられている。
 これに対してアルジェリアはトランス・サハラルート(RTS)構想によって地中海に面した港へのアクセスをチャドなど海をもたない内陸国に与えようとしている。光ファイバー回線もアルジェリアが提供し、ヨーロッパの光回線と接続させる計画である。そして、アルジェリアはナイジェリアの天然ガスをヨーロッパに繋ぐパイプライン建設を計画しており、チャドもこれに参加できる。(Africa Intelligence, 20 Aug. 2024)
https://www.algeriepatriotique.com/2024/08/20/un-responsable-tchadien-pourquoi-un-consulat-a-dakhla-est-dangereux/
https://x.com/TchadOne/status/1825540469717168163

【モーリタニア】
ガズワニ大統領、再選
 モハメド・ウルド・シェイク・エル・ガズワニ(Ghazouani)大統領が再選され、就任式にモロッコのアハヌーシュ首相らが出席することになった。アルジェリアからは大統領は出席せず、ブラーヒーム・ブガーリ国会議長が出席する予定。ガズワニ大統領はアフリカ連合の議長を務めているが、モロッコとアルジェリアの対立においては中立を保とうとしている。(Africa Intelligence, 31 Jul. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/07/31/les-leaders-de-la-region-attendus-a-l-investiture-de-mohamed-ould-ghazouani%2C110273902-art

マクロン書簡は寝耳に水
 マクロン大統領がムハンマド6世に送った、モロッコの西サハラの主権を認める7月30日の書簡について、モーリタニアは事前に知らされていなかった。モーリタニアの大統領の周辺は、マクロン大統領の政策転換を快く思わない雰囲気が強い。(Africa Intelligence, 26 Aug. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/08/26/sahara-occidental–nouakchott-pris-de-court-par-la-decision-de-paris%2C110278603-art

【EU】
フランスの立場変更後もEUとしては変更なし
 7月31日(水)、EUの外交部報道官は「各国がそれぞれの立場に立って行動するのは自由だが、EUとしての立場は不変だ」と述べた。7月30日(火)マクロン大統領が、モロッコが提案する西サハラ自治案を支持する、国連安保理の決議にしたがった交渉による恒久的解決を目標とすると述べたことに触れたものだ。今年初め、モロッコはフランスに対してスペインのサンチェス首相をみならって一歩踏み込んだ立場をとるよう申し入れていた。(EuropaPress, 31 Jul. 2024)
https://www.europapress.es/internacional/noticia-ue-reitera-posicion-sahara-no-cambiado-reconocer-francia-soberania-marroqui-20240731161831.html
https://archive.is/BR7uD

【フランス】
仏企業、モロッコの高速鉄道を受注
 仏企業Egis Railは、フランスのSystraとモロッコのNovecとともに、モロッコのケニトラとマラケシュを結ぶ450kmの高速鉄道をリニューアルする14億ディルハム(1億4020万ドル)のプロジェクトを受注した。2030年のワールドカップ(スペイン・ポルトガル・モロッコ3国開催)までの完成をめざす。(Infobae/EFE, 1 Aug. 2024)
https://www.infobae.com/america/agencias/2024/08/01/francesa-egis-gana-contrato-de-asistencia-para-extender-tren-alta-velocidad-en-marruecos/

マクロン大統領、改めて西サハラへのモロッコの主権を確認
 モロッコ国王即位記念式典(26周年)に参列したマクロン大統領は、アハヌーシュ首相に対して、西サハラへのモロッコの主権を改めて確認した。(Europress, 15 Aug. 2024)
https://www.europapress.es/internacional/noticia-macron-reitera-compromiso-rabat-reconocimiento-soberania-marroqui-sahara-20240815200433.html
https://archive.is/6uemD

アルジェリアメディア:仏の方針転換はイスラエルの圧力か?
 フランスの国際関係・戦略問題研究モニター研究所(IVERIS)の所長であるレスリー・ヴァレンヌ氏が2024年8月3日にアルジャジーラ放送で語ったことは、本紙(アルジェリアのメディア、AL24News、8月1日)が掲載した記事を裏付けるものだ。それはマクロンのモロッコによる西サハラ自治案支持は、フランス国内の危機的状況を反映したものだということ。ヴァレンヌ氏は「今回のフランス政府の決定はフランス政治が最悪の状態にあるとき(政治的不安定な時期)になされた。大統領は国にとって有害な決断をし続けている」と述べ、「この決定の背後には関係正常化という題目の下、自己利益を追求するイスラエルによる圧力がある」などと述べた。
 レスリー・ヴァレンヌ氏と同様、ジャーナリストのケンチン・ミュラー氏は雑誌『マリアンヌ』で、フランスの影響力はサヘルでがた落ちとなり、モロッコでさらに悪化したと指摘した。フランスのメディアはサヘルの動向の背後にいるロシアばかりに気を取られて、モロッコが新たな影響力のあるアクターとして浮上しているのを見過ごしていた。そこでモロッコはフランスの弱点を利用したのだ。
 モロッコの作戦はペガサス(スパイウェア)事件で明らかだ。モロッコがマクロン大統領のスマホを盗聴していたのはイスラエルのためだった。今やフランスは国連安保理決議を放棄し、深刻な健康状態にあるムハンマド6世が亡くなった後モロッコをどうするか、イスラエルと交渉することにした。
 要するに、「アフリカ・インテリジェンス」はモロッコ国王のアドバイザー、タレブ・ファッシ・フィフリ(Taleb Fassi-Fihri)氏の外交的成功をほめそやすことで真実を煙に巻いてきたのだ。また、「アフリカ・インテリジェンス」はモロッコとフランスの両方に影響力をもつアンドレ・アズレー氏の邪悪な役割も隠してきた。アズレー氏は昨年イスラエルの大統領からイスラエルへの貢献によって勲章を授与された。(AL24News, )
https://al24news.com/fr/les-dessous-du-changement-de-cap-de-paris-sur-le-sahara-occidental/
https://archive.is/MwhjE

【スペイン】
スペイン企業、モロッコの高速鉄道受注を逃す
 仏企業Egis Railがケニトラ・マラケシュ間の高速鉄道リニューアル事業を受注したのは、マクロン大統領の西サハラ問題での立場変更の2日後だった。それまで、スペインのInecoが受注すると予想されていたが、モロッコの鉄道当局はマクロン大統領の書簡後、フランスにプロジェクトを与えた。(Huffingtonpost, 6 Aug. 2024)
https://www.huffingtonpost.es/global/marruecos-suelta-mano-espana-alta-velocidadbr.html

300人がセウタの国境越えを試みる
 8月11日から12日にかけての夜、セウタ(飛び地)の国境となっている防波堤に300人を超える数の人々が押し寄せたため、スペインの国境警備隊はパニックに陥った。セウタでは子どものための収容センターを5つも作っており、すでに400人がいる。セウタの市長は近隣の自治体に支援を呼びかけているが、アンダルシア州が子どもを30人受け入れてくれただけだ。(El Mundo, 12 Aug. 2024)
https://www.elmundo.es/espana/2024/08/12/66b9a611fdddffa6a08b459c.html
https://archive.is/IbkUm

1500人がセウタに侵入
 8月25日(日)午後、1500人余りがセウタめがけて泳いで押し寄せた。2021年5月以来の移民の波だ。西サハラ政策の転換で、スペイン・モロッコ関係はいいはずだ。なぜこんなに大勢が命の危険も顧みず海に飛び込んでやってくるのか。
 まず、18才から20才のモロッコの若者たちの55%は海外に行きたいという。2018年秋には10以上の海岸に数千人の若者たちが集まり、船がやってきてスペインにただで運んでくれると信じて待っていたという。それは噂にすぎなかった。2021年5月には1万人を超える人びとがセウタに押し寄せた。それはポリサリオ戦線の指導者、コロナにかかったブラーヒーム・ガーリー氏をスペインが密かに受け入れて入院させたことに対する報復だった。他にも、スペインのマルガリタ・ロブレス国防相がペニョン・デ・ベレス・デ・ラ・ゴメラ、アルフセマス、チャファリナス諸島などを訪問して植民地支配を見せつけたことに対するモロッコ政府の密かな報復だとの説もある。(El Confidencial, 28 Aug. 2024)
https://www.elconfidencial.com/espana/2024-08-27/enigmatica-entrada-ceuta-migrantes-marruecos_3949827/
https://archive.is/gtKmt

近年の過激派はアルジェリアから
 スペインの対テロ部門はこれまでモロッコ人ジハーディストをとくに注意して見てきたが、それは2004年3月11日、2017年8月のカタルーニャ州での事件に、いずれもモロッコ人が関与していたからだった。しかし、裁判所が6月5日に出した決定で明らかにされた情報によると、公安を担当する国家警察の一般情報委員会(CGI)は、アルジェリア人の著名な反体制派軍人、ムハンマド・ベンハリを国外退去措置とする許可を裁判所から得るにあたり、アルジェリアの活動家たちがアル・カイーダやISがいなくなった後の空白を埋めるべく、スペインとヨーロッパに細胞を作り始めているとの情報を提出していたという。ベンハリは2022年3月24日にアルジェリアに送還されていた。アルジェリアはベンハリの送還を2019年彼がスペインに入国して以来ずっと要求していたが、それがかなえられたのは、サンチェス首相がモロッコの西サハラに対する主権を認めるとの書簡を出してアルジェリアとの関係が危機に陥った5日後のことだった。その時、アルジェリアに送還されれば拷問の可能性があるとの指摘があったにも関わらず、スペインは送還の決定を下したのだった。
 国家公安事務局はベンハリを以後10年間入国禁止としたが、それだけではなく、彼を今や「軍事技術・戦術の訓練」と「武器の取扱い」の専門家としてテロリスト集団が利用する可能性があるとみなしている。それがスペインやヨーロッパ諸国での暴力的事件を引き起こすことになる可能性があると。CGIは、ベンハリだけが問題なのではなく、アルジェリア軍の脱走者たちはスペイン国内での活動をしやすくするためにスペインの公安活動の裏をかくようになっており、ベンハリたちは他のアルジェリアの反体制活動家らと連携を深めている。それが過激なテロリスト集団に共鳴する可能性があるとしている。(Heraldo他、17 Aug. 2024)
https://www.heraldo.es/noticias/nacional/2024/08/17/terrorismo-interior-alerta-de-que-argelia-es-origen-de-un-nuevo-yihadismo-que-amenaza-a-espana-1756287.html
モロッコへのガス輸出増加
 スペインは今年モロッコへのガス輸出を大幅に増やした。6月の時点で過去1年の合計の18.5%がモロッコに輸出されている。2022年6月の0.1%からすると劇的な増加だ。2021年10月にアルジェリアがモロッコへのガス供給を停止して以来、モロッコはスペインからのガス供給に頼っている。アルジェリアはスペインにアルジェリアからのガスがモロッコに行かないよう警告してきた。スペインはそれを守っている。一方、減っているのはイタリアへの輸出だ。2023年には18.4%あったのが2024年は4.4%に減った。スペインとイタリアの外交関係が原因で減っているとの見方もある。イタリアはアルジェリアからの輸入を増やした。いずれにせよ、スペインはガスの29.6%をアルジェリアから輸入し、19%をロシアから輸入している。アルジェリアとの関係維持が安定的ガス供給にとって重要だ。(Atalayar, 23 Aug. 2024)
https://www.atalayar.com/articulo/economia-y-empresas/gas-espanol-fluye-marruecos-exportaciones-europa-quedan-segundo-plano/20240823090000204392.html
https://archive.is/yLjoq

【米国】
中国リチウム電池部門のモロッコ進出に米国が譲歩
 7月上旬、ワシントンでモロッコのリヤド・メズール工業相と米国のフェルナンデス経済成長・資源・環境長官は、自由貿易協定の監視を行う合同委員会において、議論を行った。そこで米国は電気自動車の生産に必要な鉱物採掘についての連携をモロッコと進める考えを提示した。背景には、電気自動車のバッテリー部門で中国がモロッコに積極的に進出しているに対する米国の懸念があった。中国はコンゴ民主共和国やジンバブエでリチウム、コバルト採掘に巨額の投資を行っており、中国はこの分野で優位を確立した。5月、米国は中国の電気自動車への関税を100%増やし、電池への関税を7%から25%に増やした。インフレ緩和法(Inflation Reduction Act)によって自国の電気自動車バッテリー工場を保護するためだ。モロッコは両者との関係で利益をえることになった。米国からは関税免除の措置をえて、タンジェの港と北米の港の流通が活発化した。タンジェ港は鉱物資源の積出港でもある。そうなると、中国がモロッコを拠点に生産するものは北米へも輸出されることになる。
 韓国のLGグループは、当初中国企業との連携を模索したが、それは実現せず、モロッコのOCPグループとタグを組もうとしてうまくいかなかった。モロッコのメディアによると、最終的に、LGグループは単独でモロッコにリチウム電池工場を設立することになった。
 現在、バッテリー部門でモロッコに拠点を置いている中国企業は、BTR New Material Group、海亮(ハイリャン)(Hailiang)、星城(湖南中科星城石墨有限公司、略してシンツーム)(Shinzoom)でいずれもタンジェ・テック(工業団地)にある。それらに加えて6月、中国の国軒高科学(こっけんこうか)股份有限公司(Gotion High Tech Co. Ltd)はケニトラに最初のバッテリー工場を建設すると発表した。投資額は128億ディルハム(12億ユーロ)だ。(Africa Intelligence, 1 Aug. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/08/01/washington-s-accommode-des-gigafactories-chinoises-dans-le-royaume%2C110273972-eve

【インド】
インド製薬会社のモロッコ進出
 インドは米国と自由貿易協定をもっていない。そのため、インドの製薬会社がモロッコで生産し、米国に輸出する戦略をとろうとしている。インド・アメリカ商工会議所の会長であるクマール氏がモロッコを訪問した。目的は米国への薬品輸出のためのモロッコ・米国・インド3者の協定締結だ。2019年以来、インドのサン・ファーマグループ(Sun Pharma Group)はカサブランカ近郊に工場をもっている。7月初めに中国系ケミファーム社の子会社を完全買収した。(Africa Intelligence, Aug. 2024)
https://www.africaintelligence.fr/afrique-du-nord/2024/08/20/industrie-pharmaceutique–la-piste-marocaine-pour-un-futur-hub-entre-l-inde-et-les-etats-unis%2C110277226-bre

以上。